大野輝之の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(大野輝之君) 御紹介いただきました自然エネルギー財団の大野でございます。
 本日は、こういう場をいただきまして大変ありがとうございます。(資料映写)
 私からは、表題に記載していますが、脱炭素時代のエネルギー安全保障を考えるということで、これから脱炭素化が進んでいくわけですが、その中でエネルギー安全保障というのがどういうふうに変わっていくのか、あるいは変わらなければならないのかというようなお話を申し上げたいと思います。
 昨年十二月、COP28が開催されました。その中でやっぱりいろんな議論があったわけですけれども、最終的には全員一致で合意が決定されまして、化石燃料からの脱却ということが決まりました。エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を進めると。公正で秩序立った公平なやり方で進めていくと。このクリティカルな十年間に取組を加速していくんだということが決まったわけでございます。そのための一つの大きな方法として、二〇三〇年までに世界の自然エネルギーの設備容量を三倍にすると。同時に、エネルギー効率の改善率を二倍にすると決まったわけですが、自然エネルギーを大幅に増やしていくということが決まりました。
 こういう時代背景の中で、これからそのエネルギー安全保障で考えなきゃならないのが、化石燃料からの脱却ということが世界の目標になった時代の中でエネルギー安全保障をどう実現するのかということだと思います。
 その考えるヒントになるのが、IEA、国際エネルギー機関が出しているいろんなレポートだと思っています。御承知のように、IEAは、五十年前の一九七三年の石油危機のときに、石油の安定供給を保障するためにつくられた機関でございます。昨年発表されました世界経済見通し、ワールド・エナジー・アウトルック二〇二三年版の冒頭に、IEA事務局長のファティ・ビロルさんが、一九七三年のエネルギー危機と現在のエネルギー危機を比べると三つの違いがあるというお話をされています。
 一つは、一九七三年のエネルギー危機というのは専ら石油危機であったということであります。これに対して、現在の危機は複合的な危機であると。一つは天然ガスの危機、これはもうロシアの話、お二人からもお話がありました。もう一つは、化石燃料が原因となる深刻な気候危機への対応が求められていると、こういう違いがあるんだということをおっしゃっています。
 二つ目は、一九七三年には存在しなかった石油に代わる、化石燃料に代わる太陽光、風力の効率化、電気自動車と、こういう技術が確立し、直ちに利用が可能になっているという指摘をしています。
 三点目は、一九七三年にはなかったIEAが存在していると、多少これは宣伝が入っていると思うんですけれども。IEAが、各国それぞれ、各国の特徴に合った対策を進めていくんだけれども道しるべが必要であると、その道しるべをIEAが提供しているんだというお話を書かれています。
 じゃ、どういう道しるべかということですが、このワールド・エナジー・アウトルックの中では三つのシナリオが書かれています。それが、折れ線グラフで示しました、STEPS、APS、NZEと書かれています。このSTEPSというのは、現在の各国が取っている政策をそのまま実行していった場合にどんなふうなエネルギーの未来があるかというものでございます。APSというのは、アナウンスト・プレッジズ・シナリオですから、各国政府がこれから政策をこのように強化していくんだと、変えていくんだというアナウンスをしたものが本当に公約が守られた場合にどうなるかということでございます。最後のNZEというのは、これは一・五度目標を達成するためにどういうふうなエネルギーの変化が必要なのかということを示したものでございます。
 日本も含めて、二〇五〇年には温室効果ガスの実質排出ゼロということを目指しているわけなんですけれども、この二〇五〇年の排出ゼロを達成するのは、この最後の緑色のNZEだけということになっております。
 実際、じゃ、ほかの経路で行った場合に、その気温上昇はどうなるかという推測もIEAがしているわけなんですけれども、このSTEPS、今のシナリオのままで行った場合には、二一〇〇年時点で二度目標は達成できずに二・四度ぐらいになってしまうと。それから、APSの場合も、二度目標は達成するんだけれども今目指している一・五度には達しない、一・七度になってしまうと。唯一このNZEだけが、一旦一・六度近くになるんだけれども、二一〇〇年には約一・四度になって一・五度目標を達成すると。こういうふうな三つのシナリオ分析を示しています。
 当然、我々は、一・五度目標を守り、気候変動を抑えるということを進めていくことが、各国がコミットしていることですから、以下では、主にこのNZEに示すロードマップについてお話をしたいと思います。
 まず、全てのエネルギー供給、電力だけでなくて、燃料、熱も含めた全てのエネルギー供給がどういうふうに変わっていくのか、変わっていけるのか、変わっていく必要があるのかということを示したものでございます。
 これを見ていただきますと、まず化石燃料の割合でございます。お話も今までありましたように、現在で見ますと、エネルギー供給の七八%、約八割は化石燃料でございます。これが二〇五〇年には二三%まで減っていくということになっています。同時に、この場合はこういうふうにしていく必要があるというものであるんですけれども、同じくこの二〇二三年版では、現在の政策のままでも二〇三〇年には化石燃料消費がピークを打つということも記載をされています。一方、増えていくのは自然エネルギーでございまして、二〇三〇年までにほぼ倍増し、二〇五〇年には六七%を占めるということでございます。
 これは全エネルギーでございますけれども、より端的な変化が起きるのは電力であります。電力をやっぱり一番早く脱炭素化をしていく、エネルギー全体の脱炭素化の先導役になっていくということが期待されているわけです。
 まず、全体に、エネルギー供給の中に占める電力の割合は増えていきます。電化をしてより効率化をしていくことになりますので、全体の電力の消費量、使用量は二〇二二年から二〇五〇年までで二・六倍になると見通しを立てています。
 その中で、全体のボリュームが増えていく中でも、太陽光、風力を中心に自然エネルギー発電が増えていって、二〇三〇年には五九%、二〇五〇年には八九%、約九割になっていくというふうなシナリオを示しております。注目すべきは、これは一・五度シナリオなわけなんですけれども、既存の政策のままのこのSTEPSのシナリオでも二〇五〇年には七〇%、それから公約をしているシナリオ、既に各国政府が公約をしているシナリオ、これでも八〇%になるということで、いずれにしましても非常に高い伸びを自然エネルギー電力が示していくという見通しを立てています。
 原子力発電については、確かに幾つかの国でこれをもう一回力を入れるんだというふうな取組が始まってはいるわけなんですけれども、発電量は増えますけれども、二〇五〇年の割合でいきますと八%までに減っていくと。現在も九%ですが、微減して八%になるということです。
 ですから、脱炭素電源の中では、原子力発電も一定の役割は果たすだろうけれども、圧倒的に自然エネルギー電力の果たす役目は大きいというのがIEAの見立てということになります。
 こうしたIEAの見通しは、既に実際に米国でもEUでも実際の政策に移っておりまして、米国もEUも、ロシアの侵略以降、自然エネルギーの拡大をすることによって安全保障と脱炭素化を両方を追求するという政策を実行に移しております。
 米国の場合は、二〇二二年の八月にインフレ抑制法、IRAというふうに言われていますけれども、が可決されました。これが可決されたときにバイデン大統領が声明を出しているんですけれども、まさにそのエネルギー安全保障を強化して、アメリカ国内でアメリカの労働者が太陽光パネル、風力タービン、電気自動車を生産して雇用をつくり出すということで、脱炭素化だけでなくてエネルギー安全保障という観点からもやっていくという方針、見方を鮮明にしております。実際に、インフレ抑制法が成立して以降、アメリカにおける自然エネルギー投資、クリーンエネルギー投資は非常に勢いを増しているという状況でございます。
 それからEUでございます。EUは、まさにそのお話があったように、ロシアの化石燃料に依存したことによって非常に大きなダメージを受けたわけでございますけれども、二〇二二年の五月にリパワーEUプランというのを作りました。化石燃料への依存を強化するということでなくて、化石燃料への依存を終了させると。で、気候危機に挑むという目標を立てて自然エネルギー目標を高める、クリーンエネルギー効率化の目標を高めるというふうな方向で転換を図っております。
 ちなみに昨日ですね、ちょうど欧州委員会が二〇四〇年の新しい目標を発表して、九〇%削減というのを出しましたけれども、それを見ても、同じように自然エネルギー、化石燃料への依存を減らして自然エネルギーを増やしていくという方向が明確にうたい込まれております。
 では、何でこんなふうに、IEAもまさにその石油危機から、石油の安定供給を、目指す行動と、機関も含めて、自然エネルギーを増やしていくという方向に変わっていくのかという理由はいろいろあるわけですけれども、一番大きいのはやっぱり発電コストの劇的な低下ということでございます。
 これはブルームバーグが発表した数字でございますけれども、太陽光発電はこの黄色であります。これが、十四年前に比べると、まさに十分の一に低下をしているということです。現在では、新設電源の平均コストで一キロワットアワー当たり四セント台で太陽光発電も風力発電も供給されると。ですから、日本円にすると六円、七円ぐらいですかね、というふうなところまで下がっています。原子力発電は二十二・五セントということですから非常に高いというふうな状況になっております。
 ちなみに、これは、これ自身は単体の発電コストですけれども、IEAのレポートを見ますと、統合コストと言われるものを含めてもやはり自然エネルギーが安いという分析も示されております。
 こうした状況を踏まえると、これからのエネルギー安全保障というのは、少しやっぱり今までとは変わった考え方が必要ではないかと思います。
 まず第一に、化石燃料は二〇三〇年代まで、あるいはそれ以降も含めてだと思いますけれども、エネルギー供給の多くを占めます。ですから、その確保は引き続き重要だと、これは、前のお二人がおっしゃったことはそのとおりだと思います。
 同時に考えなきゃならないのは、化石燃料消費というのは二〇三〇年までにピークを迎えるというふうに予測をされています。また、COP28ではこの十年間に化石燃料からの脱却を進める行動を強化すると言っておりますので、これらを考慮すると、新規の化石燃料、発電への投資というのは、座礁資産となってしまわないようにやっぱり慎重な検討が必要であるということであると思います。
 三点目は、やっぱり自然エネルギーの重要性であります。
 ネットゼロシナリオでは、二〇五〇年には電力供給の九割、全エネルギーでも三分の二を占めるということになります。こうなってきますと、まさにエネルギー安全保障、エネルギーの安定供給を確保するためにこそこの自然エネルギーを自分の国でしっかりと確保すると、これ抜きにはエネルギー安全保障はもう実現しないと、こういう時代に入っていくということが非常に大きなパラダイムの転換ということではないかというふうに思います。
 化石燃料にこれまで日本は依存をしてまいりました。これはもう、脆弱性があるということについては今までお話があったとおりであります。非常に自給率が低いということであります。これはあえて繰り返しません。
 で、ここにお示ししたのは、国際再生可能エネルギー機関という、IRENAというIEAとは別の国際機関がございまして、ここは再生可能エネルギーの拡大を目的にした機関なんですけれども、ここが二〇一九年の一月に「新たな世界」というレポートを発表しています。これは非常に、今からもう五年前ですか、になるわけなんですけれども、この中で書かれていたのは、要するに再生可能エネルギーが中心になっていく時代の中で、エネルギー供給というのはもはや少数の国家が独占するものではなくなっていくと。大半の国々がエネルギーの自立性を実現できる能力を持つようになって、自国の発展と安全保障を高めることができると、そういう将来ビジョンを描いているわけでございます。
 日本のエネルギー安全保障は、これまでは専ら化石燃料に依存してまいりましたので、化石燃料をどう確保するかという観点の中で働いてまいりました。引き続きその観点は重要なわけですけれども、今後を考えると、やはり国産が可能な自然エネルギーをいかに増やしていくかということがやはりエネルギー安全保障の観点からも非常に重要になるということだというふうに思います。
 じゃ、日本では本当にそんな大きな大量の自然エネルギーが確保可能なのかということでございますけれども、ポテンシャルが非常に大きくあるということでございます。
 洋上風力、政府も大変最近力を入れておられます。日本の領海とEEZ、これを合わせますと、これは海の深さとそれから風況でカウントしたものでございますけれども、千百二十八ギガワットのポテンシャルがあるということが分かっております。もちろん、これの全部が実現できるわけではございません。漁業権の方との調整等々あります。ただ、この十分の一が実現しただけでも相当に十分な洋上風力が実現できるということであります。
 特に、その最近の入札、十二月に入札があったわけですけれども、三つの海域で入札があったわけですが、二つの海域では再エネ賦課金がゼロになる、要するに、これを実現しても公的な負担がなしに実現すると、そういうレベルの入札が行われております。
 太陽光発電です。太陽光発電も、ここにお示ししたのは環境省の調査ですが、建物の屋根でありますとか低未利用地、これを使うことによって千四百六十五ギガワットの太陽光発電ポテンシャルがあるということであります。
 こちらの方も、入札が昨年十一月にございましたけれども、最低落札額が七・九四円、八円を切るという状況になっておりまして、これは卸売電力の平均価格を下回っているということです。ですから、こういう傾向が続いていけば、太陽光発電についても国民負担をなしに、新たな公的な支援がなしに導入していけるという状況がなっていくと考えられると思います。
 さらに、そのあるべき方向の三番ですけれども、もちろんその電化が進んでいきますけれども、当然電気では脱炭素化できないエネルギーもございます。鉄鋼、製鉄でございますとかセメント等々がございます。そういうところについてはやっぱり水素を使うと、グリーン水素を使っていくということが必要になるわけですけれども、これも大量の発電設備、大量の太陽光発電、風力発電を入れることによりまして需要を超えて発電するときがありますので、そういうときに余った電力でグリーン水素を作るということができます。そのグリーン水素で産業の脱炭素化等々を進めていくという方向が考えられるということであります。
 グラフで示しておりますのは、私どもの財団が二〇五〇年の需給バランスをシミュレーションしたものでございまして、太陽光発電が通常の需要を上回って発電をしますので、その分で水素ができると、水素ができるという試算をしております。
 今まで、自然エネルギーを増やすことによってこういう変化が起きるというお話を申し上げてきましたが、もちろん、自然エネルギーの時代になればエネルギー安全保障についての心配が全てなくなるということではございません。これもお話ありましたように、自然エネルギー発電でありますとかあるいはEVを造るために希少鉱物が必要でございます。これの生産国がコンゴとか豪州、チリ、それから中国、こういうところに偏っているということがございますので、その確保は引き続き重要な問題になると思います。
 もう一つが、やっぱり太陽光発電、それから風力発電の生産能力が中国に非常に集中をしてしまっているということであります。これもお二人からも御指摘がございました。そのとおりでございます。太陽光発電モジュールの生産能力を見ますと、中国が八割を占めております。これがこのままですね、このままの状態で更に太陽光発電が何倍になっていくということになれば、これは余り極端に中国に依存し過ぎることになってしまいます。これは非常に大きな問題だと思います。
 ですから、この点についてはようやく米国も欧州も問題点を把握をいたしまして、先ほどのIRAでありますとかEUの中で、自国の中で、あるいは域内の中で太陽光発電の生産能力を強化するという取組を始めております。
 やっぱり日本の場合には、日本の国内でももちろん努力をする必要がございますけれども、日本だけではなくて、米国でありますとかあるいは東南アジアですね。この円グラフを見ていただきますと、圧倒的に大きいのは中国ですけれども、その次に九・三%を占めるのは東南アジアであります。ですから、東南アジアの国々、米国と、あるいは欧州とですね、同志国の中でこういう供給能力を高めていくということがエネルギー安全保障上も非常に大事だというふうに考えております。
 こうした観点から見て、現在の国のエネルギー政策は大丈夫なんだろうかということでございますけれども、いろんな御努力をされているわけですけれども、少し懸念があるのは、やっぱり自然エネルギーを本当に増やしていくという点への転換が不十分ではなかろうかということです。
 二〇五〇年エネルギーミックスというのを国は、経産省は発表されています。その中で御注目いただきたいのが電源の割合なんですけれども、下のボックスにございますが、二〇五〇年でも自然エネルギー電力の割合は五〇%から六〇%としております。IEAのネットゼロプランでは九〇%自然エネルギーということでありました。それから、公約シナリオでも八〇%、それから既存の政策でも七〇%ということでありました。ですから、これらと比べますと極めて低いということになります。自然エネルギーがこれぐらいの低さになってしまいますと、どうしても化石燃料を使い続けるということにならざるを得ません。
 そうすると、やっぱりエネルギー安全保障という観点からは、私は四つの懸念があると思います。一つは、発電部門でも三割近くを化石燃料に依存し続けるということであります。それから、電力以外でも化石燃料への依存が続くということです。それからもう一つは、これから水素やアンモニア、グリーン水素やグリーンアンモニアの重要性が増していくわけなんですが、国内の自然エネルギー発電設備が足りませんと、それもまた輸入をする必要があります。ですから、そういう意味でも輸入依存がこの脱炭素の時代になっても続いてしまうという懸念があります。もう一つは、CCSという方法で、回収したCO2を貯留するという方法もあるわけですけれども、これも日本の国内には残念ながらCO2を貯留する場所がありません。ですから、政府はこれも輸出をするということに今力を入れておられるんですが、そうなってしまいますと、輸入だけでなくて出口の方も、CO2の処理も海外に依存するということになりますので、そういう意味での新たな海外依存が発生するということかと思います。
 こうしたいろんな議論があるわけですけれども、最後でございますが、今年、第七次のエネルギー基本計画の改正が行われます。このエネルギー基本計画の改正の中で、エネルギー安全保障、脱炭素を実現するエネルギー政策はどうあるべきかということについて議論をしていくことが必要だろうと考えております。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 121315364X00120240207_016

発言者: 大野輝之

speaker_id: 18969

日付: 2024-02-07

院: 参議院

会議名: 資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会