奥村政佳の発言 (本会議)
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○奥村政佳君 立憲民主・社民・無所属の奥村政佳です。
まず冒頭、今回、衆議院における予算案の審議において、与党が我が立憲民主党の修正要求に応じ、二十八年ぶりに予算案を修正、能登半島への支援一千億円が実質的に増額されました。さらには、補正予算案での修正は戦後初、新たな歴史の一ページがしっかりと刻まれました。衆議院予算委員会の安住委員長を始め、与野党理事、委員、修正案提出者、皆様に深く敬意を表します。
今回議題となっている補正予算は本来、突発的な災害や経済危機、安全保障上の急変など、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出、そこに限定されるべきものです。財政法第二十九条にもしっかりとその旨は明記されています。
しかしながら、採決を前にして、この巨大な本補正予算案には委員会質問を経た後にも大きな疑問が残ったままです。その点より、会派を代表して、ただいま議題となりました令和六年度補正予算案三案に対し、反対の立場で討論いたします。
さて、私は、この四月まで約十年間、保育園で保育士として働いてきました。今回、この原稿も、かつて関わってきた多くの子供たちのことも思い浮かべながら何度も書き直しました。未来への責任、我々国会議員には未来への責任があるからです。今本当に必要な政策を見極め、どう予算を組むべきか、子供たちの未来のためにも、私たちは丁寧に議論し、的確に判断しなければなりません。
ところが、特に近年、巨額の補正予算が毎年のように組まれ、当初予算に盛り込む予算まで補正予算に盛り込む手法が当たり前になりつつあります。これでは、当初予算で精査をする努力が薄れ、財政規律の形骸化を招く危険があるのではないでしょうか。
例えば、マイナンバーカード関連予算を見てみます。当初予算では、交付事業費、事務費補助金合わせて四百五十四億円だったものが、この補正で一千億円以上追加され、結果一千五百億円強、当初予算の三倍以上に膨れ上がりました。
計画的なデジタル推進をうたうのであれば、なぜ今年度の当初予算で十分な積算を行わなかったのか。これが予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費、そう本当に胸を張れるのか。また、そのほかに関しても、必要な予算だとして、来年度の当初予算では間に合わないほどの緊要性があるのか、大いに疑問です。
また、この間、政府は物価高対策として巨額の財政出動を繰り返しています。しかし、現下の物価高は、主として輸入コストの上昇や、それを増幅する過度な円安が背景にあります。こうした根本原因を解決せず、赤字国債乱発による財政出動を続ければ、いずれ円に対する信認が失われ、円の価値が低下し、更なる物価高を招くことになるでしょう。
本来ならば、問題の上流側にしっかりと目を向けた施策をすべきであり、食料やエネルギーの輸入依存を改めるべきです。例えば、食料自給率を高めるため農業者への直接支援を拡充する、エネルギーの観点ではソーラーシェアリングや再生可能エネルギーも活用しながら地域分散型のエネルギー社会を構築するなど、本質的な施策を力強く進めていこうではありませんか。
今後の財政健全化と将来世代のことを真剣に考えるのであれば、一様のばらまきではなく、例えば、今まさに所得面においても資産面においても今最も困っている低所得の一人親世帯、そこへの支援など、現状をしっかりと分析した上で本当に必要な皆様に支援を届ける、そんな視点を提示すべきではありませんか。
今年五月、財政制度等審議会は、我が国の財政運営の進むべき方向という建議書をまとめました。建議書では、経済指標が回復し、物価、賃金、金利が上向いた今だからこそ、歳出構造を平時に戻し、健全な財政基盤の上で社会保障、子育て支援、成長分野への投資を行うべきと示されています。
単純な緊縮策でなく、必要な投資は継続しつつ、しかし無原則な支出拡大を避ける。つまり、財政規律と成長投資のバランスを取ることを求めています。だからこそ、当初予算の作成時にしっかりと議論を行い、取り組むべきなのです。基金に取りあえず積んでおこうでは余りにも無責任ではありませんか。
世界を見れば、コロナ禍で一時的に巨額の財政出動を行った欧米各国はそれぞれ出口を模索しています。例えば、アメリカは安定財源を確保しながらインフラ投資や子育て支援を強化、イギリスは法人税率等の引上げ等で財源を確保し中長期的な持続性を重視、EUは新型コロナ復興基金の返済に向け独自財源を検討中です。つまり、世界は財政再建一辺倒ではなく、将来に備えた財政基盤づくりと必要な投資をセットで進め、安全な出口を探っています。
こうした中で、日本だけが補正予算を濫用し、緊急性なき支出を増やすと、世界の方向性に逆行することになり、金融市場にも不安を与えかねません。行き過ぎた金融緩和を是正し、物価の安定を狙い、必要な分野に的確な支出を行うことで、生活に対する大きな負担増につながらないよう、国民生活を守る道を模索することが最も大切です。
少子高齢化が予想以上のスピードで進んでいます。社会保障分野での持続可能性を確保するためにも、まさに中長期的な視点が不可欠です。南海トラフ地震、首都直下地震、激甚化する気象災害、パンデミックや地政学的リスクにも対応するため、いざというときの財政的余裕も求められます。
そのためにも、本当に必要な支出は計画的に当初予算を組み、補正予算では緊要性のあるものだけをしっかりと選ぶ、そんなめり張りが求められているのではありませんか。そうした判断を適切に行うためにも、我が党がかねてから提案している独立財政機関を国会内に設けることも早急に実現すべきです。
今、私たちは、この補正予算を決める上で将来世代への責任を考えなければなりません。目まぐるしく変化をするこの現代、国家百年の計とまでは申しません。しかし、今の子供たちが日本の中心となる二十年後、三十年後にはこの国がどうなっているのか、現在の氷河期世代が七十代、八十代と今後年齢を重ねていく中で生きる希望が持てる世の中をどう描くのか、我々は次の時代に対し、しっかりと責任を持つべきです。
目下の少子化は、未来を見通せない現役世代からのメッセージ、声なき声かもしれない、そういうことも我々は自覚すべきです。私も含め、今この議場に座っている半数以上の皆さんは、二十年後、三十年後にはここには座っていないでしょう。だからこそ、だからこそ、今後の日本の豊かな社会や労働環境、質が高い教育機会や福祉サービスを支えるため、安易な補正依存ではなく、責任を持った戦略的な財政運営が必須なのです。
五月の建議書には、政府においては、本建議の趣旨に沿い、今後の財政運営に当たるよう強く要請するとあります。果たして、この巨大な補正予算案はその要請にも応えたものと言えるでしょうか。私にはそうは思えません。
我々国会議員は、日本国憲法八十六条にも示されているように、しっかりと予算の審議、そして責任を持った採決を行う必要があります。今回の採決でノーの意思を示すことが、国会としてのチェック機能を示し、それは良識の府、参議院の矜持でもあり、これからの長期的展望に立った財政、金融、経済全体の再設計へようやく踏み出す第一歩になると確信するものであります。
最後に、改めて、今回の補正予算案には依然として財政法の要件を欠く多くの支出が含まれていると考えます。このままでは、今後も無原則、無計画な歳出拡大を助長しかねません。
以上の理由から、令和六年度補正予算案には反対をいたします。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)