小谷哲男の発言 (安全保障委員会)

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○小谷参考人 明海大学の小谷でございます。
 まずは、本委員会にお呼びいただきましてありがとうございます。
 私からは、既に三名の参考人がお話しになった内容と一部かぶるところもございますけれども、まず冒頭で、岸田・バイデン政権下において見られた日米協力の新しい展開、それから、トランプ政権の同盟政策について、最後に、日米同盟を更に強化するために何をするべきかということをお話しさせていただきたいと思います。
 岸田政権の下で新しい国家安保戦略が作られまして、防衛費のほぼ倍増、反撃能力の導入など、日本独自の努力が見られましたけれども、一方で、バイデン政権との間で様々な新しい日米協力が進みました。
 一つが、在日米軍の再編であります。例えば、在日海兵隊を海兵沿岸連隊に改編したことでありますとか、在日米軍の中に統合軍司令部をつくるというような動きがあり、新たに設置されました自衛隊の統合作戦司令部との間で日米の指揮統制面での連携が進んでいくということがございます。
 もう一つが、日米の間で極超音速ミサイル迎撃に関する共同研究、共同開発が進んでいくということで、とりわけ滑空段階における迎撃ミサイルの開発が進んでいる。これも統合防空ミサイル防衛を進める上で非常に重要な動きであると考えております。
 また、防衛産業基盤レベルでの協力に関しましては、米軍の艦船でありますとか航空機を日本においてメンテナンスする、オーバーホールをするという取決めもできまして、この点でも日米の協力が更に進んだと言えるかと思います。
 加えまして、日米と第三国の間の連携強化も岸田・バイデン時代の間に進んだと言えます。とりわけ韓国それからフィリピンとの間での具体的な協力が進んでいきまして、フィリピンとの間では円滑化協定を結ぶ、また、米軍の方はフィリピンでアクセスできる施設を拡大しているということで、非常に重要な動きが見られたと思います。
 加えまして、イギリス、フランス、ドイツを始めとしましたNATO諸国との間でも日米同盟の協力関係が進んだことで、岸田・バイデン時代の間に日米同盟は新たな段階に入ったと言えると思います。
 その上で、現在のトランプ政権をどのように理解するのか、トランプ政権の同盟政策をどのように理解すればいいのかという点ですけれども、まず、トランプ政権は、安全保障政策の方針としまして、力による平和というものを掲げております。これは、アメリカの軍事的な優越性によって抑止力を高め、平和、安定を維持するという方針であって、これは同盟国から見ても歓迎すべき方針だろうと考えます。
 また、トランプ大統領は今年一月二十日の就任演説で、自らがピースメーカーになる、平和の維持者になるということを強調されました。既に起こっている紛争を止めるだけではなく、今後起こるかもしれない紛争も止めるということで、抑止力を強化する方針が示されましたので、とりわけ東アジアにおいては台湾有事の可能性が議論されている中、トランプ政権がピースメーカーを目指すという方針は、同盟関係を強化する上で非常に歓迎すべきものであると考えております。
 一方、モチヅキ参考人からもございましたとおり、トランプ政権の外交、安全保障政策、あるいは同盟政策には様々な混乱が見られます。
 これもモチヅキ参考人が言及されましたけれども、私は、とりわけ、トランプ政権における優先主義者と抑制主義者の間のバランスというものがトランプ政権の同盟政策を大きく動かす原動力であろうと考えております。
 元々、トランプ政権においては、優先主義者、つまり、最大の競争相手である中国と向き合うために、ヨーロッパや中東から手を引いていくという考え、これが優勢であったように見えました。しかし、今現在、トランプ政権内では抑制主義者がかなり影響力を増していると見ております。この抑制主義というのは、アメリカの死活的利益が脅かされない限り対外的な介入は行うべきではないというものでありますけれども、この抑制主義が今トランプ政権の中で思想としても人事面でもかなり広がっているというふうに考えております。
 事実上解任されましたマイク・ウォルツ前国家安保担当補佐官、彼は優先主義者であって、それが実際に解任につながった大きな理由であると政権関係者からは聞いております。また、元々優先主義と見られていたマルコ・ルビオ国務長官、彼も最近の発言を聞きますと抑制主義にかなり傾いているということが言えます。そして、ワシントンを代表する優先主義者であるエルブリッジ・コルビー現国防次官、彼も最近の発言は優先主義よりも抑制主義に偏ってきていると考えられます。つまり、これは、抑制主義者でなければトランプ政権の中で生き残れないということだと思います。
 この抑制主義がトランプ政権の対外政策あるいは同盟政策の基調となるのであれば、アメリカから見て死活的に重要な同盟国とみなされない限り、アメリカとの防衛協力が難しくなるということを表しているのだと考えられます。
 それから、トランプ政権は、特に同盟国に対して厳しい関税措置を取っております。トランプ政権の基本的な考えは、同盟国はこれまでのアメリカによる防衛の提供に感謝していない。逆に、アメリカに製品を売りつけて貿易赤字をつくり上げてきた。つまり、同盟国がアメリカを搾取してきた、そういう不満が大前提としてあるということが見られます。日本自体も、今、関税交渉を行い、自動車関税、鉄鋼関税、そして相互関税の撤廃に向けて協議を行っているところでありますけれども、根底にトランプ政権が抱える不満があるということを認識する必要があると思います。
 また、赤澤大臣が最初に訪米されたときにトランプ大統領が予想外に出てこられまして、一番最初に言及されたのが駐留経費の問題であったと聞いております。つまり、トランプ政権二期目においても日本に対して駐留経費の増額を求めてくることは十分考えられますし、また、防衛費そのものの増額を求めてくることも考えられると思います。
 以上のように、岸田・バイデン政権の下で進んだ日米協力、そしてトランプ政権の対外政策の方針を受けて、日本が目指すべき方針、日米関係、日米同盟を強化するために必要なことは何か。
 まず、一言で申しますと、日本自身がアメリカにとって死活的に重要な国であるとアメリカに認識させることだろうと思います。それは経済的な重要性はもちろん、軍事的、防衛面での重要性を理解してもらうことだと思います。
 そのために、日本が安全保障政策として、同盟政策としてまず取り組むべきものは、日米が共に戦う姿勢、共に戦う体制、これを築いていくことではないかと考えます。
 その上で、私の方から具体的に六つの方針についてお話をさせていただきたいと思います。
 まず一つ目が、現在、日米の間で指揮統制面での連携が進んでいることを受けまして、これが完成した暁には日米の常設の統合任務部隊をつくることが必要ではないかと考えております。とりわけ南西諸島を守るための常設の任務部隊を常に日米でつくっておくことで、いざ有事が起こった際にはすぐに共に戦える、そういう体制をつくっておくことが今後日米同盟を強化する上で必要ではないか。そして、アメリカから見ても日本が欠かせない安全保障上のパートナーであると感じてもらえるのではないかと考えます。
 それから、二つ目ですけれども、今の常設の統合任務部隊の設置にも関わることではありますが、現在、アメリカ陸軍では、マルチドメイン任務部隊を編成しまして、宇宙ですとかサイバーに加えまして、長距離の攻撃能力を持った部隊をアジア地域に展開しようと考えているところです。
 このマルチドメイン任務部隊は、今後、二〇一九年に失効しましたINF条約で禁じられていた射程五百から五千五百キロの長距離ミサイルを保有していくことになります。例えば、HIMARSから射出するPrSMと呼ばれるミサイルでありますとか、あるいは、タイフォンと呼ばれる発射システムから撃つトマホークあるいはSM6。そして、現在、米陸軍が最も力を入れている長距離の極超音速ミサイル、ダークイーグル、これらをこの地域に配備したいと考えています。
 米陸軍の本音は、常に日本にこの部隊を置くということであろうと考えます。とりわけ、米陸軍がこれから持つミサイルの射程を考えますと、九州が最も理想的な配備先ということになろうかと思います。その点も含めまして、政治的に非常に敏感な問題ではございますが、日米の抑止力を高めるためにも、九州において米陸軍のミサイル部隊を受け入れることについて日米で協議を始める必要があるのではないかと考えております。
 それから、指向性エネルギー兵器の共同開発というものも必要ではないかと思っております。
 現在、日米はそれぞれ指向性エネルギー兵器の研究開発を行っています。レールガンですとかレーザー、さらにはマイクロ波ですけれども、この指向性エネルギー兵器は、迎撃に係る費用自体は非常に安価なものになりますが、これの開発、製造には莫大な予算がかかります。その点を踏まえまして、日米で共同で行うことによってコストを下げることができるでしょうし、現在トランプ政権が検討しているゴールデンドーム、アメリカ本土のミサイル防衛ですけれども、これに日本も貢献することができるかと思いますので、その点、検討する価値があるかと思っております。
 それから、拡大抑止につきましては、既にほかの参考人の方も述べておりますけれども、日米の間で協力関係はかなり深まっております。ただ、私から見て一番心配な点は、現在、この戦域に米軍の低出力の核がないことでございます。
 アメリカの戦略核に対する信頼性が揺らいでいるとは私は思いませんけれども、米軍の低出力の核がこの地域にないところで、今、北朝鮮や中国がまさにこの低出力の核に力を入れているわけです。万が一、北朝鮮や中国が低出力の核を日本に対して使った場合、果たしてアメリカは戦略核でこれに報復するでしょうか。低出力に対して戦略核を使えばオーバーキルになる可能性がありますので、抑止の信頼性が揺らぐ可能性があります。
 その点、現在アメリカで開発がストップされている海洋発射型の核巡航ミサイルの開発を再び行ってもらう、そして、それを搭載した潜水艦をこの地域に展開してもらうことが日米の核の傘の信頼性を高めることにつながると思います。核を積んだ潜水艦がこの辺りに配備されるということは、それがいずれ日本にも寄港する可能性もございますので、これも黒江参考人からございましたとおり、非核三原則の三つ目の原則、持ち込ませないということについて国民的な議論をして再検討する必要があるのではないかと思います。
 それから、現在、関税交渉の一環で、日本からアメリカの造船業への投資が検討されていると仄聞しておりますが、これは非常に重要なポイントであろうと考えます。アメリカは、毎年二隻の原子力潜水艦を造らなければ、この先、全体の潜水艦の数が減っていくのですが、実態として毎年一隻しか造れていないのが実情です。
 アメリカの造船業を復活させることはアメリカの即応態勢を高めることになり、ひいては日本に対する防衛を担保することにもつながります。とりわけアメリカではオートメーション化が遅れていますので、造船業への投資をするとともに、オートメーション化の技術についても日本からアメリカに提供することで協力関係を更に深めることができるだろうと考えております。
 最後に、多国間の防衛協力でありますが、これまで日米豪印というクアッドが日本にとって安全保障の大きな枠組みでございましたが、近年は日米豪比の四か国協力が進んできております。これは俗に、クアッドをもじりましてスクワッドというふうに呼ばれておりますけれども、第一列島線の平和と安定を守る上でスクワッドの四か国協力というのは非常に重要なものであると考えます。とりわけ、ここに韓国ですとかベトナム、さらには台湾を巻き込むことで第一列島線を地域の関係国で守ることができると思いますので、この辺りについても日米で協力していくという方針を確認する必要があるのではないかと考えております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121703815X01020250530_010

発言者: 小谷哲男

speaker_id: 2668

日付: 2025-05-30

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会