佐藤暁の発言 (原子力問題調査特別委員会)

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○佐藤参考人 原子力コンサルタントの佐藤暁でございます。
 私の方からは、用意しておりますスライドはございません。代わりに、六ページの原子力利用に関わる諸課題と規制行政の在り方と題しましたレポートがございますので、これに沿って、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。
 あらかじめいただいておりました四項目をカバーしております。一点目が原子力発電所の活用ということで、再稼働とそれから新設、建て替えの話ですけれども、これは三つにブレークダウンして議論してございます。
 まず最初に、再稼働の加速ということなんですけれども、まずは、現状どうなっているのかということですが、三十三基中、再稼働にこぎ着けたのが今日現在までで十四基と。これを炉型別にブレークダウンしますと、PWRが十六基中で十二基、一方、BWRの方が十七基に対して二基というふうに、顕著な差が表れているということです。
 原因とか実態を更にブレークダウンしていきますと、このレポートに四つブレットがあるんですけれども、それの上から三つ目にちょっと注目していただきたいんですが、事業者がまだ申請書も出していないということで、審査のステージにすら進んでいないところが九基分あるということなんですね。ほかにもいろいろ、まだ工事が終わっていないとか、いろいろな事情を抱えているということです。
 それから、この項目の後段に述べてあるんですけれども、一方で、もし再稼働が順調に進んでいっていたときにどうなっていたかということを想定しますと、実は、バックエンドの方が行き詰まっていまして、順調に再稼働すると、使用済燃料がどんどん発生してきて、それが取り扱えなくなってしまって、止めざるを得ない、そういうパラドックスもあった。結局、再稼働が進まなかったのでそれが顕在化しなかったというようなおかしな現象も起こっていたということですね。
 これについて、どのように加速をしたらいいのかということについては、原因がいろいろ複合的に、多様な原因が複雑に関連しているということで、なかなか効果的な方法というものは見出しにくい。特にまだこの九基については申請書すら提出していないということですので、結果としては、この状態がまだこれからもしばらく続いていくということにならざるを得ないというふうに私としては観測をしております。
 それから、二つ目の再稼働後の方針ということですが、これは前々回の会のときに口頭でお話しさせていただきましたですけれども、五兆円、六兆円を費やして何とか再稼働にこぎ着けたプラントに対しては、これをなるべく有効に活用するべきであるというのが私の考えです。
 そういう観点から見ますと、資料の二ページ目に書いてありますけれども、二点問題がありまして、稼働率が極端に低い。今世界では四百十五基ありまして、それの平均稼働率が八三・二%、一方、日本は三十一か国中二十四位で、設備利用率は七一・九%と一〇%以上低い。日本がずっと手本にしてきておりましたアメリカと比べますと、アメリカは九十四基あるんですが、九三・三%ということで二〇%以上の開きがある。この稼働率が経済性を大きく引き下ろしているということです。
 それから、このブレットの最後の、四番目に書いてありますけれども、パワーアップレートをしていない、発電所が本来もっと発電の能力があるところを抑えて定格でずっと運転してきている。これも、これは個別に見ていかないと分かりませんですけれども、一五%くらいのまだ余裕がある。それを引き上げて運転をするならば、余分なコストをかけないで発電量を増やすことができる。
 そのように、稼働率で、例えば、設備利用率で一五%、それから余裕の分のパワーアップレートで一五%上げるということをもし実現したならば、今よりも三〇%発電量を増やすことができる。コストをかけないで発電することができる。これは、逆算すればコストをそれだけ下げることができるということになるわけです。
 ポイントは、せっかく再稼働にこぎ着けた発電所をなるべく有効に利用するべきではないかということです。もちろん安全第一ですけれども、そのための規制の整備、見直し等も必要ですけれども、目指す方向としてはそういうことは検討するべきではないかというふうに思います。
 それから、次の、新設、建て替えの件ですけれども、これに関しましては、冒頭にちょっと結論的なところを一つ書いてあるんですけれども、福島事故後の新設、建て替えプラントは、もしこれが検討されるとしても、福島事故前と同一の炉型であってはならない。今や安全設計思想の本流は、原子炉事故の防止と緩和に対し、熟練した運転員の判断や行動、いわんや厳しい環境の中に飛び込む勇気などではなく、自然の原理に委ねたパッシブ設計なのであり、産業界で言うところのジェネレーションスリープラスという炉型になってきております。
 ですので、建て替えとはいっても、古い発電所を潰して新しい発電所をまた造る、そういう発想ではならないということです。もう一つ世代の進んだプラントを建てなければならない、もしやるならばですね。
 ですけれども、既に世界ではそういうジェネレーションスリープラスの発電所をあちこちで建てているわけですが、その実績は決して芳しいものではありません。三ページに表にして示してありますけれども、スケジュールの遅れ、それからコストオーバーラン、これが非常に顕著です。今や発電所を一基建てるのに一兆円、二兆円、そういう数字になってきている。
 ですので、一般的な日本での感覚として、一基建てるのに三千、四千億円、建設工期としては五、六年、オーバーナイトコストとしては一キロワット当たり三十万円、そういう数字が頭の中にまだ残っている方々もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、今やもう、がらりとそれが変わってきている。工期は二、三倍長くなって、コストは数倍跳ね上がっている。ですので、ジェネレーションスリープラスも非常に悲観的な状況にあります。
 問題は、ただ、コストだけでなくて、ほかにもいろいろな別の問題を抱えております。これは四ページに、中段以降にブレットで示してありますけれども、先ほど工期が長引いて十数年かかっていると申しましたのは、これは実際に工事が始まってからの期間です。ですけれども、実際には、整地のためとか、用地買収とか、それから建てる原子炉の型式認定だとか、更にもっと時間がかかります。
 そういう時間を考えますと、電気が欲しいと言ってから原子力がそれに応えられるまでに二十年ぐらいかかってしまう。そういう二十年の間に、世の中どう変わるか分からないわけですね。産業構造も変わっていきます。国際情勢も変わっていきます。そういうものに機敏に対応するという意味で、原子力はふさわしくなくなっているのではないかというふうに観測されます。
 それから、ちょっと時間も大分過ぎていますので少し急ぎます。
 二番目の次世代革新炉の開発、五ページ目ですけれども、結論だけ申しますと、一番下の三行なんですが、今の日本の電力事業者にとって現有する既設炉の運営だけ、それから規制機関にとってはそれに対する規制業務、これだけでももう十分大きな負担になっているというときに、第四世代、ジェネレーションフォー、これを考える余力はまずないと。まだまだ課題が山積している中で、まずは既存の原子炉の安全をしばらくモニタリングしていくというところに注力すべきであって、ほかのところまで拡大するという余力はないというふうに感じております。
 推進行政と規制行政のバランスについては、技術的な点からすれば、今のところうまく規制機関は機能しているというのが私の見立てです。
 最後の人材確保ですが、これについては、いろいろな特徴があるというふうに見ているんですが、最後の二つだけちょっと申しますと、作業が運転停止期間中に集中して、休閑期と繁忙期の仕事量の差が極端で、収入や利益が不安定、休閑期の補償がないため安定雇用が維持しにくいという問題があります。
 それから、産業界が特定の元請企業を頂点に系列化しており、電力会社のコスト削減の試みが下層企業に対するほど厳しくなっている。その締めつけに大分嫌気が差してきているというのも大きな問題です。
 これに対する解決の方法として一つ可能性として考えられるのは、アメリカのような同業組合、ユニオン、これをつくって、共通に技量、資格を持った人たちが動き回れるような環境をつくる。アメリカの場合には、比較的これがうまく機能しているように見受けられます。ただ、日本の場合には、系列化の問題がありまして、それをやるときに消えないといけない会社とかが出てくるという問題が出てきて、反対も出てくるかと思いますけれども、一つの案として将来に向けた大きな改善として考えるときが来たのかなというふうに思っております。
 以上が私の意見でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 佐藤暁

speaker_id: 18907

日付: 2025-06-03

院: 衆議院

会議名: 原子力問題調査特別委員会