神崎哲の発言 (国土交通委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○神崎参考人 京都の弁護士の神崎哲と申します。
 欠陥住宅被害全国連絡協議会の幹事長を務めております。本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 さて、私は、これまで三十年にわたり欠陥住宅問題に取り組み、住宅分野で約千件の相談を受け、三百件以上の事件を担当してまいりました。そうした経験から申し上げますと、今般の区分所有法二十六条の改正案の内容は明らかに改悪であると断言できます。
 以下、その理由について御説明させていただきます。
 私の意見の詳細は、私の配付資料、参考資料P一から六の六枚のポンチ絵に整理しておりますので、適宜御参照ください。
 今般の区分所有法二十六条改正案は、東京地裁平成二十八年七月二十九日判決が示した不都合な法解釈を是正するための案です。この東京地裁判決は、第一に、区分所有権が転売された後も旧区分所有者は損害賠償請求権を持ち続けるといった誤った前提に立ち、第二に、旧区分所有者全員から債権譲渡を受け、現区分所有者の全員が請求権を持っている場合でなければ管理者は原告になれないという極めて不当な法解釈をして、原告の訴えを却下しました。
 このような不都合な結論を法改正で是正するため、今般の二十六条改正案では、管理者が旧区分所有者も代理できると修正しようとしています。あわせて、改正法案は、旧区分所有者が自ら請求するんだと別段の意思表示をした場合には管理者による代理ができないこと、また、管理者が旧区分所有者を代理するときは旧区分所有者に通知することも定めようとしています。
 しかし、この改正法案は、東京地裁判決と同様に、考え方が誤っています。資料一のP二を御覧ください。
 そもそも分譲マンションの共用部分の共有関係は、区分所有法によって、民法の共有とは明らかに異なる特別な共有として規定されています。
 区分所有法では、共用部分の共有持分について、次のような原則があるのです。第一に、共用部分の共有持分は、分割を請求することが禁止されています。争いのない通説である分割請求の禁止の原則です。第二に、区分所有権が転売されれば、共有持分もそれに伴って移転するとされています。区分所有法十五条一項が定める随伴性の原則です。第三に、専有部分と切り離して共有持分を処分することができないとされています。区分所有法十五条二項が定める分離処分の禁止の原則です。
 そして、共用部分に欠陥があった場合の補修に代わる損害賠償請求権は、欠陥によって損なわれた共用部分を本来の状態に回復させるための請求権です。したがって、その損害賠償請求権は、共用部分の価値が姿を変えたものであり、共用部分と同様に、特別な共有の性質を持っていると考えられます。
 それにもかかわらず、今回の改正法案は、この共用部分に関する損害賠償請求権について、第一に、各区分所有者に分割しているのだ、第二に、転売してマンションから出ていった後も旧区分所有者が損害賠償請求権を持ち続けるのだといった、区分所有法の考え方に反する誤った前提に立っています。その上、改正法案は、旧区分所有者が別段の意思表示をした場合について、管理者による一元行使の例外としていますから、第三に、旧区分所有者が損害賠償請求権を単独で行使できるのだということまでも認めているのです。
 このような改正法案が成立すると、マンション管理組合は欠陥の補修費用の一〇〇%の損害賠償金が得られなくなって、共用部分の欠陥の補修費用が不足してしまいます。
 なぜかといいますと、転売してマンションから出ていった旧区分所有者が、自分の共有持分は自分で請求するのだと別段の意思表示をすれば、その分の損害賠償を請求できなくなるからです。また、損害賠償金を得られたとしても、旧区分所有者から、自分の共有持分をよこせと請求されれば、拒むことができなくなるからです。
 その結果、耐震強度が不足していたり、外壁タイルが剥離落下する危険性があったりするような共用部分の欠陥について、一〇〇%補修することができなくなります。これでは、現にマンションに居住している現在の区分所有者の利益が守られませんし、近隣住民やマンションの周りで遊ぶ子供たちの生命身体に対する重大な危険となります。
 この点について、法制審議会では、旧区分所有者が実際に別段の意思表示をすることは少ないだろうから補修費用が不足する事態にならないなどと説明されていました。確かに、今現在ならばそうかもしれません。マンションを売って出ていった後も共用部分に関する損害賠償請求権を持ち続け、自分だけで請求できるなどと考える人はまずいません。それが一般的で健全な市民感覚です。
 しかし、改正法案は、その一般的で健全な市民感覚から外れた、誤った内容を法律で定めようとしているのです。改正法案が通れば、管理者が原告として請求するときには旧区分所有者に通知をしなければなりませんから、この通知によって旧区分所有者は自分が損害賠償請求権を持っていることを知ることになります。そうすると、自分に権利があると知った旧区分所有者は、賠償金を自分にもよこせと要求することが容易に予想されます。
 例えば、テレビやネットなどの過払い金請求の広告のように、以前に売ったマンションについて通知が届いた方は賠償金をもらえる可能性がありますよ、是非御相談くださいと、法律事務所などがテレビやネットでこのような広告を始める可能性すらあります。
 このような改正法案が招く不都合について、法制審議会は明らかに過小評価していたと言わざるを得ません。
 例えば、私が担当した事件で、二十九棟、合計六百五十四住戸から成るマンションの共用部分の欠陥施工について、補修費用約四億円の損害賠償を請求した事件がありました。その事件では、訴え提起までの七年間で所有権が移転した区画が百五十住戸ありました。この事件は、被告会社からの申出によって、補修による和解で解決しました。
 しかし、もし今回の改正法案が通れば、このような解決は不可能になるでしょう。なぜなら、被告会社は、旧区分所有者から別段の意思表示をして請求された場合を考えると、自ら進んで瑕疵を認めて全面補修を申し出ることを恐れるからです。そうすると、このような和解をするためには、全ての旧区分所有者から債権譲渡を受けるという不可能を強いられることになります。
 転売してマンションを出ていった旧区分所有者から債権譲渡を受けない限り一〇〇%の補修が実現できない、そんな結果を招く法改正をすることは明らかに誤っています。これでは、共用部分の欠陥に関する損害賠償請求を円滑にするどころか、かえって困難にします。その結果、共用部分に重大な欠陥があっても補修することができずに放置される事態を招き、マンションの管理不全や老朽化を促進することになるでしょう。
 以上が、私が今回の二十六条改正案が改悪であると申し上げる理由です。
 では、この問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか。
 それは、資料一、P一の末尾に記載した案しかありません。一枚目です。一番下を御覧ください。
 すなわち、共用部分に関する損害賠償請求権は、区分所有権が移転したら当然に新しい区分所有者に承継され、各区分所有者による個別行使や分割請求を認めないという確認規定を設けるという案です。そうすることによって、先ほどの東京地裁平成二十八年判決のような誤った法解釈ができないようにします。そして、これらの規定が改正前から存在する区分所有マンションにも適用される旨を附則に定めるという改正案です。
 区分所有マンションの共用部分の欠陥について一〇〇%の補修を実現するためには、以上のように、損害賠償請求権の当然承継を区分所有法で明確に定める改正こそが必要です。
 この当然承継を認めるという案に対しては、旧区分所有者の財産権を侵害することになるのではないかとか、法改正前の転売に当然承継を適用すると法律関係の混乱をもたらさないかとか、損害賠償金の使途を限定する管理規約の改正でも対処可能なのではないかなどといった意見も聞かれます。
 しかし、それらは、現実の紛争や管理規約の実態を全く無視したものでしかなく、私たちの提案する法改正を否定する理由になっておりません。このことは、この後の質疑において詳しく御説明できればと思います。
 議員の皆様におかれましては、政府提案の改正法案を修正していただき、是非とも、当然承継を認める法改正を実現していただければと存じます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121704319X01320250509_008

発言者: 神崎哲

speaker_id: 20206

日付: 2025-05-09

院: 衆議院

会議名: 国土交通委員会