国土交通委員会

2025-05-09 衆議院 全107発言

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会議録情報#0
令和七年五月九日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 井上 貴博君
   理事 勝俣 孝明君 理事 加藤 鮎子君
   理事 中谷 真一君 理事 城井  崇君
   理事 神津たけし君 理事 森山 浩行君
   理事 奥下 剛光君 理事 西岡 秀子君
      五十嵐 清君    石橋林太郎君
      大西 洋平君    梶山 弘志君
      加藤 竜祥君    金子 恭之君
      工藤 彰三君    国定 勇人君
      小寺 裕雄君    小森 卓郎君
      高木  啓君    高見 康裕君
      田所 嘉徳君    谷  公一君
      土屋 品子君    三反園 訓君
      阿久津幸彦君    尾辻かな子君
      小宮山泰子君    篠田奈保子君
      下条 みつ君    白石 洋一君
      津村 啓介君   長友よしひろ君
      伴野  豊君    松田  功君
      馬淵 澄夫君    谷田川 元君
      阿部 弘樹君    井上 英孝君
      徳安 淳子君    鳩山紀一郎君
      古川 元久君    赤羽 一嘉君
      中川 康洋君    たがや 亮君
      堀川あきこ君    福島 伸享君
    …………………………………
   国土交通大臣政務官    高見 康裕君
   国土交通大臣政務官    国定 勇人君
   参考人
   (横浜市立大学国際教養学部教授)         齊藤 広子君
   参考人
   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      沖野 眞已君
   参考人
   (丸の内総合法律事務所弁護士)          中野 明安君
   参考人
   (欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長)       神崎  哲君
   国土交通委員会専門員   國廣 勇人君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月九日
 辞任         補欠選任
  西田 昭二君     五十嵐 清君
  谷田川 元君     篠田奈保子君
同日
 辞任         補欠選任
  五十嵐 清君     高木  啓君
  篠田奈保子君     谷田川 元君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  啓君     西田 昭二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)
     ――――◇―――――
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井上貴博#1
○井上委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、横浜市立大学国際教養学部教授齊藤広子君、東京大学大学院法学政治学研究科教授沖野眞已君、丸の内総合法律事務所弁護士中野明安君及び欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長神崎哲君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、齊藤参考人、沖野参考人、中野参考人、神崎参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず齊藤参考人、お願いいたします。
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齊藤広子#2
○齊藤参考人 横浜市立大学の齊藤広子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、法務省法制審議会区分所有法制部会の委員として、また、国土交通省社会資本整備審議会住宅宅地分科会マンション政策小委員会の委員長として、制度の見直しの検討に参加させていただきました。今回の改正法案は、そこで丁寧に議論をし、取りまとめた内容を反映した、充実したものになっていると考えています。
 今抱えているマンションの管理、再生の問題に対応した法改正案となっていることから、マンションの区分所有者、管理組合、そして関係者の皆様として管理組合を支えている専門家や自治体の方々、事業者からも成立を心待ちにしているという声を聞いているところでございます。
 本日は、改正法案の内容も踏まえ、多様なマンションがある中で、これからマンションで安心、安全に暮らし、資産価値の維持向上だけではなく、地域の資産としてマンションを適正に維持管理していくために何が必要か、私の意見を申し上げます。
 現在、マンションストックは約七百万戸。二十三年前の区分所有法の改正のときと何が大きく変わっているでしょうか。一つには、築年数のたったマンションの増加、建物の老いです。二つ目には、建物の多様化があります。三つ目には、区分所有者の高齢化、人の老いです。四つ目には、所有者の不在化、所有者不明、そしてグローバル化などがあります。
 こうした状況の中で、総会で物事が決まらない、管理組合の役員のなり手がない、だから第三者を管理者にしましょう、第三者管理者方式ですね、や、大規模修繕ができない、建物が時代に合っていない、専有部分の修繕も一緒にしたいのになかなかできない、こうして、いわゆる管理不全マンションが登場してまいりました。さらに、再生が円滑にいかない、災害時にはいろいろな体制に不備がありました。
 こうした問題のそもそもの原因を明らかにし、そこから根本的に改善していく必要があります。改正案では、原因にどのように対応しているのでしょうか。
 原因の一つ目に、区分所有者の関心が低いということがありますので、まずは区分所有者の責務が位置づけられております。原因の二つ目には、建物や人の状態の変化に対応した新たな管理体制がないということです。
 そこで、新たな管理体制の構築として、所在等不明の所有者を裁判所が認めた場合に集会決議から除外する仕組み、出席者多数で決議をする仕組み、こうして総会での決議をしやすく、さらに、国外での区分所有者には国内管理人を選んでくださいねという制度も用意されることになります。所有権のグローバル化は確実に進み、運営上の課題が多くありましたが、国内管理人により、総会の委任状の回収などがしやすくなります。これにより、総会の決議が、よりスムーズになるということになっていきます。また、建物の性能向上という決議も行いやすくなることになります。
 さらに、築年数のたったマンションでは、共用部分だけではなく、専有部分の給排水管の取替えも管理組合が一緒にやってほしいという区分所有者の需要が高まっており、その点については、規約で明記すれば専有部分の給排水管などの取替えを管理組合が行うことが可能になります。マンション全体を合理的に、効率的に、総合的に管理できる体制ができます。
 そして、役員のなり手不足から、第三者を管理者にお願いすること、管理業者にお願いすることが増えてきています。管理者は、そのマンションの管理の最高責任者にもなりますし、実質的には多くの権限を持っています。そこで、区分所有者の中から管理者を選ぶわけではないので、区分所有者から見れば、私たちの意見がちゃんと反映できるんだろうか、大規模修繕を勝手に発注しないだろうか、特に管理業者の関係の会社などにという不安や懸念が出てまいります。
 私も、第三者管理方式を実施している幾つかのマンションでお話をお伺いいたしましたが、大事なことは区分所有者自身で判断できる体制をしっかりとつくることが基本というふうに考えております。
 そこで、管理業者管理者方式を導入する際には、既に作成されているガイドラインなどを参考にし、管理業者の説明を聞き、区分所有者自身が判断できる説明会の開催を、大事な工事も、管理業者やその関係者が関与する場合には、説明会の開催を行うことが法律で規定されています。
 また、管理組合が、管理費を滞納している住戸で、新しく買ってくれる買主がなかなか決まらない場合に、管理組合で買い取りたいという需要が高まってきています。管理組合がそんなことできるのかというのが不明確でしたが、管理組合法人が、区分所有権、土地を取得することが、法案で明確になっております。
 次の原因として、供給当初から適正な管理体制がないということがあります。実は、管理不全マンションの調査をこの数年、幾つかの都市で実施してまいりましたが、今、深刻な状態になっている管理不全マンションに共通していることは、新築時から管理組合が機能していない、規約がない、総会、理事会がない、長期修繕計画がない、それに基づいた修繕積立金がない、だから大規模修繕もしていないということです。
 そこで、今回の改正案では、新築時から、管理組合が総会を開く体制を持ち、適正な規約、長期修繕計画、それに見合った修繕積立金の体制を整えてスタートできるように、管理計画認定制度を新築時から利用できるようにしています。管理計画認定制度を受けたマンションでは、住民が管理を誇りに思い、管理への関心が高まるなどの効果も見られています。
 そして、あなたのマンションは管理計画認定を受けていますよ、分かりやすく言いますと、行政がこのマンションはちゃんと管理する体制がありますよと認定していますということですので、これを見える化する表示制度もつくることになっています。これにより、新築時から管理適正化が期待でき、かつ、国民の皆さんにとって、マンションを買うなら管理を買えとよく言われますが、何を買えばいいのか、分かりやすくなります。マンションの管理が市場で評価されやすくなっています。
 次に、再生について見てまいります。
 実は、今まで日本の国では、マンションが古くなりました、では再生しましょうとなっても、多数決で決議できるのは、基本、建て替えだけでした。ところが、東日本大震災から流れが大きく変わってきました。大きな被害を受けたマンションでは、建て替えを選ぶのではなく、多数決により、建物を取り壊し、敷地を売って、管理組合を解散しようという方法を選択するケースも増えてきています。まさに、人口、世帯減少時代の先取りではないでしょうか。
 一方で、老朽化マンションを調べてみますと、多々課題がございました。まずは、こうした敷地売却が多数決でできるように、さらには、一棟リノベーションという形で、建物を取り壊さずに、大きな壁や柱を残し、中を大規模なリノベーションするような再生手法も、今まで想定していなかったので全員合意が必要でしたが、今回の改正法案では、これを多数決でできるようになっています。
 こうして再生のメニューを用意し、かつ、再生の要求が高い、耐震性の低いマンションなどは四分の三以上の賛成で再生が可能になっていること、今まで課題となっていた、借家で住んでいる方の補償金を払っての退去、隣の敷地を取り込んでの再生などができるようになっています。
 さらに、災害時の再生の課題に対しても、速やかで、かつ合理的な対応が可能となる仕組みが創設されています。課題としてあった事業法の整備、共に、融資面での支援も強化されることになります。
 誰もが安心してマンションに住み続けられ、かつ円滑な再生の実行には、再生時の居住支援が、より重要になってきます。居住政策だけではなく、福祉政策、そして金融政策との強い連携が必要になってくるということです。
 最後の原因として、私有財であるマンションに行政が関与しにくいという点については、管理不全マンションの予防、解消のための行政の権限強化がされています。修繕等の勧告制度、建て替え等の勧告制度と、専門家派遣制度の体制ができます。この行政を支援していく地域のサポート体制として、マンション管理適正化支援法人の登録ができるようになります。管理組合が主体的に管理を進めるためには、行政や専門家など、地域全体での支援体制を強化することが必要です。
 マンション管理適正化法ができて二十五年。適正化法は、頑張る管理組合を応援するサポート体制を整備した法律とも言えますが、人の老い、建物の老いが、地域の新たな支援体制を求めています。それに応じるのが支援法人になります。
 地域で、行政だけではなく、共に学び合う管理組合の連合会、協議会のメンバー、専門家として管理組合を支えるマンションの管理士、建築士、弁護士など、様々な専門家のネットワークとサポート実践体制がますます重要になると考えています。そこでは、知識や技術の共有だけではなく、アクティブに動くチームとして、問題、課題を対処する実践体制を構築すべきであると考え、私が所属する横浜のマンションみらいネットワークでも、こうした取組を始めているところでございます。
 最後に、今回の改正法案は、マンションの管理、再生を円滑に進めるための様々な措置が講じられています。国民の皆様が、誰もが安心して暮らせるように、マンションというもののすばらしさをもっと引き出し、安心、安全な居住の場にするために今必要なことは何か、今後どのように取り組んでいけばよいか、御検討いただければと思います。
 以上です。拍手
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井上貴博#3
○井上委員長 ありがとうございました。
 次に、沖野参考人、お願いいたします。
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沖野眞已#4
○沖野参考人 ありがとうございます。沖野でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 私も齊藤委員と同様に、法制審議会区分所有法制部会の委員を務めておりました。
 同部会は、諮問百二十四号によりまして、区分所有建物の管理の円滑化、建て替えの実施等の区分所有建物の再生の円滑化、また、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化の観点からの、区分所有法制の見直しが要請されたものでございます。令和四年十月より、約一年三か月ですが、合計十七回にわたる審議を経て要綱案が策定されまして、改正法案の、これらに関連する法律の部分については、この要綱案を踏まえたものというふうに承知をしております。
 そこで、本日は、このような経験を踏まえまして、本法律案の五つの法律の改正のうち、専ら区分所有法及び被災区分所有法の改正についてお話をさせていただきます。
 以下では、多数の項目がございますことから、四つの項目に絞ってお話をさせていただきます。
 第一は、集会決議の要件、第二は、所有者不明や管理不全への対応、第三は、建て替えの円滑化のための措置、第四は、区分所有権の譲渡の場合の共用部分についての損害賠償債権等の行使の円滑化でございます。
 早速、第一でございますけれども、第一は、集会決議の要件の合理化であります。
 区分所有建物の管理、再生の円滑化を図るために、区分所有者による団体的な意思決定の仕組みである集会の決議につきまして、建て替え決議を含む全ての決議を対象として、裁判所の関与の下、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みが創設されております。
 また、区分所有権の処分を伴う決議以外の決議を対象といたしまして、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みが創設されております。
 これらは、現在、様々な問題がある中で、所在等が不明である区分所有者や関心のない区分所有者の存在を前にして、そのために、まさに望まれる決議ができないという状態に対応するものでございます。
 このような問題というのは、実は、民法上の共有関係につきましても、いわゆる所有者不明土地問題の一環として問題がございました。これにつきましては、令和三年に民法の改正が先行してなされておりまして、民法上の共有関係につき、所在等不明共有者や賛否が不明の共有者を除外して共有物の管理などをすることができるという仕組みが導入をされております。区分所有法のこの改正というのは、この民法の改正を基礎としたものであります。
 一方、除外されてしまう人への配慮ということでございますけれども、所在等不明の区分所有者の母数からの除外につきましては、裁判所の関与を必要とすることで、その利益への配慮を実現しています。
 出席者多数決の仕組みにつきましては、対象となる決議を限定しているほか、その対象となる決議のうち、普通決議以外の決議につきましては、集会の定足数を設けております。これがないと、ごく少数の人の出席で、その多数決で可決ができることになってしまうということがあり、それが問題であるということから、このような定足数の規律を入れているということでございます。決議の正当性に配慮するものというふうに言えます。
 第二は、所有者不明や管理不全への対応です。
 改正法案では、所有者不明の専有部分、管理不全の専有部分や共用部分について、裁判所が選任した管理人にその管理を行わせる新たな財産管理制度を創設しています。この財産管理制度は、これもまた、令和三年の民法改正におきまして創設されました所有不明建物管理制度、管理不全建物管理制度に倣うものであります。所有者が不明であるとか管理不全である、そういう専有部分等の適切な管理に資する制度と考えられます。
 第三が、建て替えの円滑化のための措置です。
 齊藤委員からも御指摘あったところでございますけれども、まず、改正法案では、区分所有建物の建て替え決議につきまして、建て替え決議の多数決要件を、一定の客観的事由の存在を要件として、五分の四以上から四分の三以上に引き下げ、さらに、被災した建物については三分の二以上に引き下げることとしています。一定の客観的事由とは、具体的には、耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥離により周辺に危害を生ずるおそれ、給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ、バリアフリー基準への不適合のいずれかの事由でありまして、それが認められる場合に建て替え決議の多数決要件が引き下げられます。
 建物が客観的に危険な状態にあるなど、建て替えを円滑に行う必要が高い場合に限って決議の要件を引き下げるもので、建て替えに反対する区分所有者の権利に配慮して、円滑、機動的な決議への要請との間で、調整を図る規律となっていると評価されます。
 次に、改正法案では、建て替え決議後の建て替えの円滑化の観点から、賃貸借について、その終了請求の規律を設けています。
 建て替え決議があった場合には、建て替えに反対するなどして建て替えに参加しない区分所有権者であっても、区分所有権を失うことになります。賃借権というのは、その区分所有権の上に乗っているというわけでございますけれども、そこで、それとの権衡を考慮して、賃借権について、一定の補償の下で終了させるとするものでございます。補償金の支払いによって、通常生ずる損失というのが補償されるということのほか、補償金の支払いと賃借人の明渡しとを同時履行、その提供があるまで明渡しというのが求められないという形になっておりますので、それによって補償金の確保に配慮し、賃借人の保護にも配慮した規律となっております。
 次に、共用部分等に関する請求権の行使の円滑化についてお話ししたいと思います。
 本改正案は、区分所有者等の有する共用部分等について生じた損害賠償金等の請求権の行使の円滑化を図るという観点から、管理者は、当該請求権を有する区分所有者又は旧区分所有者を代理し、訴訟追行をすることができるものといたしまして、区分所有権が譲渡された、損害賠償債権が行使されないままに譲渡されたという場合でも、当該請求権について、管理者による代理行使、さらには訴訟追行が可能であるということを明確にしています。
 これは、現行法下におきまして、区分所有法の解釈として、区分所有権の譲渡があったとき、管理人は、譲渡をした旧区分所有者、区分所有権者を代理することはできず、かつ、全員を代理するのでなければ管理者による訴訟追行はできないとした東京地裁の判決があったために、これが制度趣旨を没却するとして問題点が指摘されていた、そういう状況に対応したものでございます。
 この規律に関しましては、法制審議会区分所有法制部会におきましても様々な議論がなされ、かなりの時間等を議論に割いて、最終的にはこのような結論となったわけでございます。幾つか、その考え方について御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、前提となる法律関係を確認いたしますと、例えば、分譲業者からマンションの一室を購入したところ、共用部分にいわゆる瑕疵があった、外壁のタイルが剥がれてくるとか、そういったことがあったという場合には、これは、元々の分譲業者と買主である区分所有権者との間の売買契約に基づいて、契約不適合による損害賠償債権が発生します。もちろん、民法上の規定の要件を満たすということが前提でありますけれども。これは元々の分譲のときの売買契約に基づくものですので、契約の当事者である最初の区分所有権者がそのような権利を持つ、損害賠償債権を持っているということでございます。
 では、その区分所有権者が自分の専有部分というものを譲渡したらどうなるかということですが、専有部分に共用部分の持分もついていくわけですけれども、損害賠償債権が果たして同じように譲渡されていくのかというと、あくまで、その区分所有権の譲渡契約ですので、それとは異なる別の契約に基づく損害賠償債権がどうなるかというのは、結局、譲渡契約でどのような合意がされたかによって決まることになります。譲渡契約において債権も譲渡するというふうに当事者が合意して決めていれば、もちろんそれは譲渡されるわけであります。しかし、そうではない、当事者は譲渡しないと決めていれば、それは元の債権者が持ったままということになるわけであります。
 したがいまして、特に譲渡契約において損害賠償債権が譲渡されていなかったとすれば、旧区分所有権者が損害賠償債権を持っているということになり、そして、元からいる区分所有権者も、そのような損害賠償権を、それぞれの契約に基づいて持っているということになるわけです。このような旧区分所有権者が持っている損害賠償債権も管理者が代理行使できるようにしよう、一元的な管理を実現しようというのが、今回の提案であります。
 ただ、代理という制度は、本人が代理人をコントロールできるということによって、その適正化を図る仕組みです。現在の区分所有権者であれば、まさに区分所有法における団体的な規律によって管理者に対するコントロールを及ぼすことができるわけですけれども、もはや旧区分所有権者になっている者は、そのような制度を利用することができません。
 適切な管理者に対するコントロールを及ぼすことができないにもかかわらず、この人に代理行使させなければいけないということになってしまいますので、その正当化をどう図れるのかという問題があり、その正当化を基礎づけるのが別段の意思表示であります。それは書面や電磁的記録などで明確にしてもらうという形になっておりまして、この別段の意思表示があることが、ここの正当化を支えるという考え方になっておるわけでございます。
 多くの場合には、自分で行使するということも意味がない、例えば証明などもしていかなければいけないときに、まとめて行使してもらった方がいいということであれば、そのような意思表示はしないということが一般的でしょうし、あるいは、自分はもう関係から離脱するんだということであれば、そもそもの譲渡契約において債権も譲渡するということも考えられるわけであります。
 今のような考え方に改正法案は立っているわけでございますけれども、部会におきましては様々な考え方が出されておりました。一つは、共用部分等に生じた損害賠償金の請求権については、区分所有権を譲渡したときには、当然に旧区分所有者から現区分所有者に承継がされるという規律を設けるべきではないかという御議論も非常に有力にあったところでございます。これは、かなり長い時間をかけて検討がされましたけれども、最終的には、部会としては採用しないということになりました。
 なぜかということなんですが、一つは、先ほどは、誰に行使させるかということでさえも、それをコントロールできない人に強制していいのかという問題に対して、別段の意思表示が支えているわけですが、これは、債権の帰属自体も強制的に移してしまうということですので、一番意味があるのは、区分所有権の譲渡のときに、債権は譲渡しないと当事者が合意したとしても、それはもう強制してしまうというところにこそ一番のポイントがあるんですけれども、その正当化をいかに図れるのかという、いわば理屈の問題ということになります。
 もう一つは、実質的に、実際上どうなのかということにつきまして、例えば、建築時や分譲契約時から瑕疵があって契約不適合を負っているというときに、そのまま知らずに譲渡をしたという場合には、あるいはうまく当てはまるのかもしれないんですが、そういう場合ばかりとは限りません。既に瑕疵が明らかになって、場合によっては、もう修補もしてしまおう、管理費を払って修理をしてしまおうという場合もあります。待っていればいいというのがあるかもしれませんが、転勤しなければいけないとか、売らなければいけないということがありますので、そういうときにでも強制的にこの債権を承継させるということが果たして適切なのかということであります。
 それに対しまして、様々な場面があることを考えると、このような規律を設けるのは、実際も含めて適切ではなかろうと。では、どういうことで対応するのかというと、規約での定め、あるいは譲渡契約において一つのモデル契約を作るとか、そういうような形での対応ということが考えられるわけでございます。
 このような形で法律の規定としているからには、一場面だけを対象にして考えることはできないというのが部会の考え方だということでございまして、本改正案の規律というのは、東京地裁の判断を克服して、管理者による一元的な行使を可能にして円滑を図るということで意義のあるものと考えております。
 超過して申し訳ございませんでした。ありがとうございました。拍手
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井上貴博#5
○井上委員長 ありがとうございました。
 次に、中野参考人、お願いいたします。
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中野明安#6
○中野参考人 丸の内総合法律事務所の中野明安と申します。本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 私は、今先生方にも出ましたけれども、法制審議会区分所有法制部会、以下、部会と申し上げます、この部会に幹事として参加しておりました。ちなみに、幹事の立場ですが、幹事とは、発言はできるが決議には参加できないという立場でございました。その席で、私は、マンションの共用部分に係る修補に代わる損害賠償請求権は、区分所有権の売買等において元の所有権者から新しい所有権者に当然承継される、以後は当然承継案と申し上げます、このような形で改正することが実質的に妥当であり、それは実務的にも必要な改正であること、その改正は理論的にも耐え得るものだということを意見として述べました。
 なお、私が述べた意見は、一弁護士としての個人的な意見ではございません。私の意見の大部分は、この問題に関する日弁連や多数の単位弁護士会の意見書に基づいたものです。この点は是非御承知おきいただきたいと思います。
 今般、改正法案が当然承継案を含まない内容で部会から答申されております。なぜそのような法案が提出されたのか、その経緯を御説明させていただきます。
 まず、部会では、共用部分の瑕疵、不具合等による損害賠償請求権は、区分所有者に分属するのか、性質上不可分なのか等が議論されました。分属とは、損害賠償請求権が個々の区分所有権者にそれぞれに帰属するという考え方であり、区分所有者が個々に行使できるという考え方となります。
 この点については、私は、損害賠償請求権は性質上不可分であると考え、意見を述べました。このように考える根拠は、この損害賠償請求権は共用部分の瑕疵に対する瑕疵修補に代わるものであるから、瑕疵修補請求はマンション管理組合による総会決議によって一体となって請求するものです、その瑕疵修補請求に代わる損害賠償請求なので、性質上不可分だというふうに考えたものでございます。
 次に、損害賠償請求権の行使は誰ができるのかということについて、事務局案では、損害賠償請求権は損害発生時の所有者に帰属するものだから、区分所有権、専有部分の譲渡により当然には移転しないという考え方が示されておりましたので、その点については、区分所有権の譲渡により損害賠償請求権も当然に移転するという当然承継案が合理的である、そのように立法することが必要であるという意見を述べました。
 本日、資料として部会議事録を提出しております。部会でどのような議論がなされてきたかを示すものでございます。
 まず、損害賠償請求権の帰属についてですが、金銭請求権については分属して帰属するという考えが示されておりましたので、私は、性質上不可分と考えるべきという意見を述べ、その性質上不可分と考えることについて、著名な民法学者の文献からも、そういうふうに考えても、それがかえって適切だというような意見を述べております。
 これは議事録、お手元にございますその議事録のページ数でいいますと十四ページ以降のところなんですが、大要は次のように記載されています。
 我妻栄先生ほかの先生方は、当然分割債権であるというような考え方は必ずしも正しくない。我妻栄先生は、分割債権であると考えることは、その長所も否定できないだろうが、その適用範囲に慎重な制限を加えないで漫然と多数当事者の債権関係の原則とすることは不都合な結果を生じることを免れない。星野英一先生も、個々の場合に応じ、できるだけ不可分債権等と解することが妥当であるという説が有力で、基本的にそれが妥当だと考える。さらに、潮見佳男先生は、可分か不可分かについては、どちらが原則ということではなくて、並列して、どちらがいいかフィフティー・フィフティーで考えて判断された方がよいというようなことを述べておられることを私は御説明をし、性質上不可分と考えることに理論的な問題はないという意見を述べました。
 また、損害賠償請求権が新所有者に当然承継させることが立法上必要であるということについても、時間をかけ、意見を述べさせていただきました。そして、この意見については、法務省の御担当者から、そのように考えることが適切な場面があると認めていただきました。
 これも、議事録十六ページ以降ですが、ちょっとそのまま述べますと、一つの場面とか、ある一事例を取り出したときには、このように共用部分等に係る請求権、これを専有部分の譲渡に伴って移転させると、こういう制度がうまくはまる場面もあるかもしれないというところは、場合によってはあり得るかもしれないですとされました。ただ、それを法律で決めてしまうという点については、そこは難しいのではないかとの意見が述べられたというふうに議事録になっております。
 すなわち、当然承継案が具体的に妥当する場面があることをお認めいただきながら、一方で、具体的な例が示されることなく、単に難しいのではないかという抽象的な意見が表明され、事務局案が維持され、今回の改正案となったものです。
 議論の最終局面、第十六回議事録にも記載されております。この点も、大要、以下のとおり、やり取りがなされた記録が残っています。これも、議事録でいいますと二十四ページ以降ですね、今日はお手元で一冊にまとめられていますが、通しページでいいますと九ページ、佐久間部会長の御発言です。
 中野さんの意見はもう十分伺っておりますし、皆さんにも伝わっていることと存じます。少し飛ばします。中野さんが御意見をこれだけずっと披露されてきたわけですし、ペーパーも出ているわけですから、今後もこの議論があったという事実は消えないと思っております。立法に踏み切れるかというと、それは立法には踏み切れないというのが事務局案です。恐らく、ここで中野さんのおっしゃるとおりに立法すべきであるという具体的提案が出てこないということは、多くの方が、事務局案で積極的にいいとまではおっしゃらないかもしれませんが、やむを得ないのではないかという程度には思っておられるのではないかと存じます。こういうような言い回しで御説明をされておられます。
 もう一つ言っていたのが、中野さんの意見は恐らくみんな理解はしていて、それには全面的には賛同できないということではないでしょうか、このような御発言もありました。私から疑問を呈しました。そうでしょうかというふうに申し上げたところ、まあ、僕がそうですとはちょっと言えませんけれども、大変拙い進行で申し訳ないですけれども、中野さんの意見に対する同調意見は、これまでも、今日に限らず、ずっと促し、求めてきたところ、当然承継かどうかという議論はもうこの辺りでと思っております、中野さんには不本意でいらっしゃると思いますけれども、よろしく云々、このような形で議論がなされたという点でございます。
 部会でも、改正案だと修繕費用の不足を招くという実際上の不都合については、ある程度御理解は得られたものと思いますが、当然承継案が部会で否定された最大の理由は、損害賠償請求権は金銭債権だから旧区分所有者に分割して帰属するという民法理論にこだわったためであると考えます。
 もう一点、申し上げます。
 全会一致で当然承継説が否定されたなどとも言われているように聞き及びますが、先ほど申し上げましたとおり、私は、当然承継案を意見として維持しております。ただ、私は幹事であり、意見は述べられるが決議には参加できないという立場でありました。
 さらに、実は、部会の休憩中に、ある熱心に議論に参加されている委員に御挨拶をしたところ、次のように言われました。中野さんの議論していることは正直私にはよく理解できていない、このように言われました。ここは個人的な見解ですが、部会の委員のうち、民法学者と弁護士以外は、民法理論に関する共有の議論は、もろもろの制約もあり、十分に御理解できなかったのではないかと心配しております。決して、部会で改正案の根拠とされた民法理論を理解して改正案に賛成したというわけではないと考えます。
 今回、資料として、中間試案についてのパブリックコメントの取りまとめも提出いたしました。本件論点に関するコメントも多く記載されております。一つ御紹介すれば、全国マンション管理組合連合会からは、請求権が分属するとか、個々に処分が可能というような建前に拘泥するべきではない、共用部分等に係る請求権が団体に帰属するという理解を前提にした立法がされるべきというふうに、意見がパブコメに出ております。さらに、ここは非常に重要です。技術的な立法で管理者等の一元行使を認めたかのような体裁をつくり、運用した際には結局全額の行使ができないことになりかねない立法をするのであれば、そんな立法はしない方がよいとまで言われています。その他も真摯なコメントが多く寄せられています。
 部会では、佐久間部会長を始め、委員、幹事の先生方及び事務局の皆様による真摯な、また熱心な議論がなされており、その御尽力には深く敬意を表するものですが、しかし、本件論点に関する限り、やや様相が異なっております。本件論点の議論の時間はございましたが、事務局案の修正がなされることはありませんでした。本件論点について、部会委員が内容をしっかり理解し、パブコメを読み込み、実質的な審議がなされなかったのではないかと思っております。
 最後になります。
 今回の改正は、民法の改正ではなく、特別法である区分所有法の改正である以上、民法理論にこだわって、修繕費用の不足という現実の問題を解消できない改正案を採用するべきではありません。日弁連の意見書には、改正案は民法理論に拘泥するものであって支持できない旨が明確に記載されています。これが私個人の意見ではなく、全国の弁護士の意見であることを国会議員の先生方には是非とも御理解していただきたいと思います。
 国会においては、本件論点について再考いただくことを是非ともお願いしたいと申し述べ、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。拍手
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井上貴博#7
○井上委員長 ありがとうございました。
 次に、神崎参考人、お願いいたします。
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神崎哲#8
○神崎参考人 京都の弁護士の神崎哲と申します。
 欠陥住宅被害全国連絡協議会の幹事長を務めております。本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 さて、私は、これまで三十年にわたり欠陥住宅問題に取り組み、住宅分野で約千件の相談を受け、三百件以上の事件を担当してまいりました。そうした経験から申し上げますと、今般の区分所有法二十六条の改正案の内容は明らかに改悪であると断言できます。
 以下、その理由について御説明させていただきます。
 私の意見の詳細は、私の配付資料、参考資料P一から六の六枚のポンチ絵に整理しておりますので、適宜御参照ください。
 今般の区分所有法二十六条改正案は、東京地裁平成二十八年七月二十九日判決が示した不都合な法解釈を是正するための案です。この東京地裁判決は、第一に、区分所有権が転売された後も旧区分所有者は損害賠償請求権を持ち続けるといった誤った前提に立ち、第二に、旧区分所有者全員から債権譲渡を受け、現区分所有者の全員が請求権を持っている場合でなければ管理者は原告になれないという極めて不当な法解釈をして、原告の訴えを却下しました。
 このような不都合な結論を法改正で是正するため、今般の二十六条改正案では、管理者が旧区分所有者も代理できると修正しようとしています。あわせて、改正法案は、旧区分所有者が自ら請求するんだと別段の意思表示をした場合には管理者による代理ができないこと、また、管理者が旧区分所有者を代理するときは旧区分所有者に通知することも定めようとしています。
 しかし、この改正法案は、東京地裁判決と同様に、考え方が誤っています。資料一のP二を御覧ください。
 そもそも分譲マンションの共用部分の共有関係は、区分所有法によって、民法の共有とは明らかに異なる特別な共有として規定されています。
 区分所有法では、共用部分の共有持分について、次のような原則があるのです。第一に、共用部分の共有持分は、分割を請求することが禁止されています。争いのない通説である分割請求の禁止の原則です。第二に、区分所有権が転売されれば、共有持分もそれに伴って移転するとされています。区分所有法十五条一項が定める随伴性の原則です。第三に、専有部分と切り離して共有持分を処分することができないとされています。区分所有法十五条二項が定める分離処分の禁止の原則です。
 そして、共用部分に欠陥があった場合の補修に代わる損害賠償請求権は、欠陥によって損なわれた共用部分を本来の状態に回復させるための請求権です。したがって、その損害賠償請求権は、共用部分の価値が姿を変えたものであり、共用部分と同様に、特別な共有の性質を持っていると考えられます。
 それにもかかわらず、今回の改正法案は、この共用部分に関する損害賠償請求権について、第一に、各区分所有者に分割しているのだ、第二に、転売してマンションから出ていった後も旧区分所有者が損害賠償請求権を持ち続けるのだといった、区分所有法の考え方に反する誤った前提に立っています。その上、改正法案は、旧区分所有者が別段の意思表示をした場合について、管理者による一元行使の例外としていますから、第三に、旧区分所有者が損害賠償請求権を単独で行使できるのだということまでも認めているのです。
 このような改正法案が成立すると、マンション管理組合は欠陥の補修費用の一〇〇%の損害賠償金が得られなくなって、共用部分の欠陥の補修費用が不足してしまいます。
 なぜかといいますと、転売してマンションから出ていった旧区分所有者が、自分の共有持分は自分で請求するのだと別段の意思表示をすれば、その分の損害賠償を請求できなくなるからです。また、損害賠償金を得られたとしても、旧区分所有者から、自分の共有持分をよこせと請求されれば、拒むことができなくなるからです。
 その結果、耐震強度が不足していたり、外壁タイルが剥離落下する危険性があったりするような共用部分の欠陥について、一〇〇%補修することができなくなります。これでは、現にマンションに居住している現在の区分所有者の利益が守られませんし、近隣住民やマンションの周りで遊ぶ子供たちの生命身体に対する重大な危険となります。
 この点について、法制審議会では、旧区分所有者が実際に別段の意思表示をすることは少ないだろうから補修費用が不足する事態にならないなどと説明されていました。確かに、今現在ならばそうかもしれません。マンションを売って出ていった後も共用部分に関する損害賠償請求権を持ち続け、自分だけで請求できるなどと考える人はまずいません。それが一般的で健全な市民感覚です。
 しかし、改正法案は、その一般的で健全な市民感覚から外れた、誤った内容を法律で定めようとしているのです。改正法案が通れば、管理者が原告として請求するときには旧区分所有者に通知をしなければなりませんから、この通知によって旧区分所有者は自分が損害賠償請求権を持っていることを知ることになります。そうすると、自分に権利があると知った旧区分所有者は、賠償金を自分にもよこせと要求することが容易に予想されます。
 例えば、テレビやネットなどの過払い金請求の広告のように、以前に売ったマンションについて通知が届いた方は賠償金をもらえる可能性がありますよ、是非御相談くださいと、法律事務所などがテレビやネットでこのような広告を始める可能性すらあります。
 このような改正法案が招く不都合について、法制審議会は明らかに過小評価していたと言わざるを得ません。
 例えば、私が担当した事件で、二十九棟、合計六百五十四住戸から成るマンションの共用部分の欠陥施工について、補修費用約四億円の損害賠償を請求した事件がありました。その事件では、訴え提起までの七年間で所有権が移転した区画が百五十住戸ありました。この事件は、被告会社からの申出によって、補修による和解で解決しました。
 しかし、もし今回の改正法案が通れば、このような解決は不可能になるでしょう。なぜなら、被告会社は、旧区分所有者から別段の意思表示をして請求された場合を考えると、自ら進んで瑕疵を認めて全面補修を申し出ることを恐れるからです。そうすると、このような和解をするためには、全ての旧区分所有者から債権譲渡を受けるという不可能を強いられることになります。
 転売してマンションを出ていった旧区分所有者から債権譲渡を受けない限り一〇〇%の補修が実現できない、そんな結果を招く法改正をすることは明らかに誤っています。これでは、共用部分の欠陥に関する損害賠償請求を円滑にするどころか、かえって困難にします。その結果、共用部分に重大な欠陥があっても補修することができずに放置される事態を招き、マンションの管理不全や老朽化を促進することになるでしょう。
 以上が、私が今回の二十六条改正案が改悪であると申し上げる理由です。
 では、この問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか。
 それは、資料一、P一の末尾に記載した案しかありません。一枚目です。一番下を御覧ください。
 すなわち、共用部分に関する損害賠償請求権は、区分所有権が移転したら当然に新しい区分所有者に承継され、各区分所有者による個別行使や分割請求を認めないという確認規定を設けるという案です。そうすることによって、先ほどの東京地裁平成二十八年判決のような誤った法解釈ができないようにします。そして、これらの規定が改正前から存在する区分所有マンションにも適用される旨を附則に定めるという改正案です。
 区分所有マンションの共用部分の欠陥について一〇〇%の補修を実現するためには、以上のように、損害賠償請求権の当然承継を区分所有法で明確に定める改正こそが必要です。
 この当然承継を認めるという案に対しては、旧区分所有者の財産権を侵害することになるのではないかとか、法改正前の転売に当然承継を適用すると法律関係の混乱をもたらさないかとか、損害賠償金の使途を限定する管理規約の改正でも対処可能なのではないかなどといった意見も聞かれます。
 しかし、それらは、現実の紛争や管理規約の実態を全く無視したものでしかなく、私たちの提案する法改正を否定する理由になっておりません。このことは、この後の質疑において詳しく御説明できればと思います。
 議員の皆様におかれましては、政府提案の改正法案を修正していただき、是非とも、当然承継を認める法改正を実現していただければと存じます。
 御清聴ありがとうございました。拍手
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井上貴博#9
○井上委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
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井上貴博#10
○井上委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申出がありますので、順次これを許します。三反園訓君。
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三反園訓#11
○三反園委員 自由民主党の三反園訓でございます。
 参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中に委員会に出席を賜りまして、本当にありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 さて、日本で我が国初めてと言われた分譲マンションの誕生から七十年が経過しまして、様々な問題が今出てきているわけであります。築四十年以上経過したマンションが増え続けて、そしてまた、そこに住み続けている人たちの高齢化が進んで、七十歳以上の方々が五割を今超えているわけであります。こうした二つの老いへの対応が待ったなしということで、今回の改正が行われたというふうに思っております。
 参考人の皆様方がおっしゃっているとおりでありまして、マンションというのは安心して安全に住み続けられるものでなければならないわけでありますけれども、しかし、修繕しなければならない、しかし、修繕積立金が足らない、不足している、さあ大変だ、どうしようかとか、また、意見集約をしなければならないけれども、なかなか難しく、前へ進まない、何も決まらない、そういう現状が今起こっているわけであります。
 そうした現状を、将来的にそういうふうにならないために、今回の改正では、新築時に、いわゆる分譲事業者が適切な長期修繕計画を作成して、そして、適切な積立金の額を設定した管理計画を作成して、それを認定が受けられる制度が今回つくられるわけであります。
 この管理計画がすごく私は大事だと思っておりまして、この管理計画をチェックできるかどうかということで、この認定制度ができたというふうに思っております。
 その認定割合を三%から五年後に二〇%に高めようというわけでありますけれども、私はもっと高めていく必要があるというふうに思っているわけであります。そうするためにはどのように対応したらいいかということを、齊藤先生にお聞きしたいと思います。
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齊藤広子#12
○齊藤参考人 ありがとうございます。
 三%から二〇%、もっと広げていくということだと思います。
 管理計画認定制度は、先ほどお話しさせていただきましたように、認定を受けた方々が、やはり自分のマンションをしっかり誇りに思っていただく、そして、認定を受けるときに、やはり自分たちの状態をチェックしていくということで、自分たちの何が悪いのかというところが改善されているという実態がございます。大体四分の三ぐらいの方がやはり認定を受けたいということで、規約を見直すとか長期修繕計画を見直すということをされておりますので、こういったことを普及していくのが大変重要かと思います。
 では、今まだ三%じゃないかということですが、これはしっかりと、この効果、そういったものが管理組合の皆さんにとって大変必須であるということをしっかりと広報していく必要がある。そういう意味では、そういう御理解をしていく場として、またそれをフォローしていく場として、支援法人というのが大変有効に働いていくのではないかと考えております。
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三反園訓#13
○三反園委員 将来、困った人が出ないためにも、しっかりとした管理計画を作って、そしてそれを認定してもらうということは大事でありまして、認定をしていただければ、一定以上の大規模な修繕計画の工事に関しては、固定資産税の減税とか、税制の優遇措置も受けられますし、融資の金利の優遇措置も受けられるわけでありますので、そうしたものをもう少し周知徹底することによって高めていく、それで進捗していく。
 私自身は、将来的には、本当に困る人がなくなるためにも、こういった、管理計画について認定することを義務化していく必要があるのではないかなということを、個人的にはそういうふうに思っております。
 そしてもう一つ、現実的な問題について、また齊藤先生にお聞きしたいんです。
 今現在、修繕をしたいけれども、修繕積立金が不足している、そして計画どおりの資金が足らない、そういった管理不全マンションとか管理放棄マンションとか、そういったマンションが今増え続けているわけであります。そのマンションをどうするかということが喫緊の課題でありまして、こうした課題についてどのように対応していけばいいのかということをお聞きしたいと思います。
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齊藤広子#14
○齊藤参考人 ありがとうございます。
 おっしゃられましたように、管理の質を上げていくという意味では、管理計画認定制度、大変重要だと思います。そういったものが、初期からの、供給当初からの管理の質の向上につながっていくということが大変重要かと思います。
 そしてもう一つは、修繕積立金が不足しているなどというような問題についての御指摘かと思います。
 これに関しましては、まず、修繕積立金が本当に不足しているのかという意味では、建物の長期修繕計画からしっかり立てる。それに基づいて、修繕が本当に足りないのか、どのくらい足りないのかということを理解していく。そして、足りない場合、それにはいろいろな方法があると思います。値上げをする、あるいは時期をずらしていく、そういったところをしっかりと専門家と相談する。場合によっては、お金を借りるということもあると思います。
 それをどういうふうにしていけばいいのかという、そのマンションに寄り添った形のアドバイスがしっかりしていけるということが重要になりますので、今後、より一層、専門家の支援体制、先ほどお話しさせていただきました支援法人といったところがしっかり機能していく必要があるのではないかと思っています。
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三反園訓#15
○三反園委員 ありがとうございます。
 もう一つの問題であります、管理組合の意見集約が進まなくてなかなか前へ進まないという問題を解決するために、今回の改正では、修繕でも、また建て替えでも、そしてリノベーションでも、全ての新しい様々なニーズに対応する決議について、出席者の多数決、割合は違うわけでありますけれども、で決められるように改正されることになるわけであります。
 こうした要件が緩和されることにつきまして、沖野先生、中野先生、神崎先生はどのようにお考えかをお聞きしたいと思います。
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沖野眞已#16
○沖野参考人 ありがとうございます。
 建て替え等、あるいは様々な形でのマンションの再生のために今回制度が用意されたわけですけれども、その要件といたしましては、これもまた大本からいえば、本来は全員一致というところを、現行法も多数決に変えているということでございます。しかし、それではやはり現実、動かないという、それを前にして、何とかこの決議要件を引き下げることで実質的な決議ができるようにしようという考え方でございますけれども、他方で、やはりこのままの形で住み続けたいという少数者の利益というものにも配慮する必要がございます。
 その観点から、今回の要件の引下げに当たっては、客観的な事由ということで、こういう事由があるのであれば、これは十分それを支えられるだろうという考え方からできておりますので、引下げとともに、この利害の調整をしっかりと図るという規律を内容としたものであって、適切なものであると考えております。
 以上です。
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中野明安#17
○中野参考人 特に私、この件に関しての御意見は持っておりませんので、よろしくお願いします。
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神崎哲#18
○神崎参考人 私の方も、二十六条の改正について議論してまいりましたけれども、この件について特に意見を持っているものではなく、沖野参考人の意見に特に異なる意見を持っておりません。
 以上です。
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三反園訓#19
○三反園委員 どうもありがとうございます。
 今回の改正によりまして、資金不足に陥らないようにする、そしてまた建て替え等をしやすくするとか、日照権の問題、容積率の緩和、高さ制限を緩和するとか、そしてまた意見集約ができるようにする。そしてもう一つは、助言、指導をすることによって地方自治体の役割も増していくわけであります。
 マンションは本当に安心して安全に住み続けられなければならないわけでありますので、そうした制度になるように、引き続きまた努力していきたいと思っております。
 ありがとうございました。
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井上貴博#20
○井上委員長 次に、長友よしひろ君。
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長友よしひろ#21
○長友(よ)委員 立憲民主党、長友よしひろです。
 本日は、参考人の先生方、貴重な御意見ありがとうございました。また、これまでに、今生じている課題について、それぞれのお立場で解決に向けて御尽力いただいてきたこと、私からも謝意を申し上げたいと思います。
 そこで、今日、大変貴重な御意見をいただいたわけでございますが、今回の改正案について、我々はこれまで数々提言もしてきたところでありまして、課題や不足部分の一部、これらが補われ、一定の前進が図られるものと、今改正案については期待をし、評価もしている立場でございます。
 その上で、本会議での代表質問やこれまでの委員会での質疑でも、その中でも課題や疑念というものがあるんじゃないですかということを述べてきたところなんですね。これらの課題、生じ得る可能性がある疑念について、改めて、今日の御意見も踏まえ、専門家、現場でこれまで取り組まれてきた知見、視点というものを、特に実務的な対応とその実効性の担保の観点から幾つか伺いたいと思います。
 時間が短いものですから、先ほどの御意見を伺って、明らかに御意見が分かれていたと思われる点について、今回の法改正において、マンションの管理、再生の最大の課題とも言えるんじゃないかというふうに思っておりますので、損害賠償請求権に関する部分、いわゆる当然承継と遡及に関する部分について伺いたいと思います。
 政府は、区分所有権の譲渡に伴い、共用部分について生じた損害賠償権については、譲受人に当然承継される制度は、財産権の保障の観点から正当化が困難である上、個別の事案によっては不当な結論を招くおそれがあると述べているところでございます。
 そこで、これらについて、それぞれ四人の参考人の皆様から、この政府の見解についてどういうふうにお考えになられるかというのを伺いたいと思います。区分所有権の譲渡の損害賠償権についてです。よろしくお願いいたします。
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齊藤広子#22
○齊藤参考人 大変重要な課題だと思っております。
 私、法制審議会の委員として出たときに、管理組合の方が一括してやはりこういうものを請求できるようにというふうに初めは考えたところでございますが、法制審議会の中で私としては丁寧な丁寧な議論を繰り返してきた中で、やはり財産権の問題からこういったことは難しいというふうにおっしゃられました。しかし、国民の皆さん、区分所有者、管理組合のことを考えたら難しいというのだけでは置いていられないので、それでは規約で何とかできないですか、予防のために売買契約で何とかできないですかということで、規約でしっかり対処していきましょうというふうに議論を進めてきたというふうに理解しているところでございます。
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沖野眞已#23
○沖野参考人 ありがとうございます。
 まず、財産権の保障の観点から問題があるという点につきましてですけれども、この点はまさにそのとおりだろうと思っております。
 私が理解するところでは、先ほども申し上げたところですけれども、損害賠償債権は、契約に基づく契約不適合を理由とする損害賠償債権であり、契約当事者が持つもの、債権者が持つものであります。それを、目的物である所有権という物権を移転したことによって、何の合意もなく当然についていくものではないということになりますので、当然承継は、それを意思に基づかず、強制的に移転させるということになります。
 それは、一般論といたしましても、金銭債権を持っている人が、私が反対だと言っても、当然にほかの人に移さなければならない。更に言うと、両当事者が、それはやめましょうと言ってもできないという仕組みを要求するわけですので、それは一般的に、まさに財産権の保障としてどうかということがあります。
 本日の御議論を聞きまして、より明確になったように思ったんですけれども、譲受人あるいは旧区分所有権者の財産権を侵害することは問題はない、むしろ修理を実現するためにはそのぐらい踏みつけてもいいんだという御議論だとすると、それはやはり正当化が非常に困難ではないかというふうに思っているところであります。
 それから、今回、中野先生が第十六回の議事録を出してくださって非常にありがたいと思いましたけれども、この問題は、むしろ第十四回及び第十五回において非常に多く議論もされておりますので、御紹介としましては、むしろそちらも御覧いただきたいのでございます。
 その中において、例えば、譲渡がされる場合というのは様々な場面がございます。典型的には、まだ欠陥なんかが分からない状態で、ちゃんとしたものだとして譲渡をしたところ、実はその後分かった、じゃ、損害賠償債権はどうなるのかというような話のときには非常に分かりやすいと思うんですけれども、そういう場合ばかりではございません。既に欠陥が明らかになって、修理をするのか損害賠償なのかとかいう話になっているところで譲渡をしたということもありますし、さらには、放っておくと危ないのでとにかく補修してしまおうというので補修した後、譲渡するということもございます。そのときに、しかし、損害賠償債権がなくなるわけではございませんので、損害賠償はできるわけであります。
 そういう様々な場面がある中で、譲渡契約の当事者の合意に委ねることもなく強制的に移転させるということが本当にいいのかという問題がありますし、さらには、欠陥が分かった段階で売らざるを得ないということであると、果たして、損害賠償債権自体を奪われるだけではなくて、適正に区分所有権を譲渡できるかという、その部分における財産権の問題というのも指摘されております。
 ですから、多様な場面を考えて規律を設ける必要があるということでございます。必要性があるという場面があるとしても、それだけを念頭に規律を置くということに対しては慎重であるべきだということになります。
 しかし、放っておいていいのかというのは一方で問題で、財産権の侵害になっても、それを上回る政策判断というのがあり得ないのかということでございますけれども、政府案の下におきましても、これは齊藤先生がお話しになったところですけれども、規約で書いておくということは考えられるわけで、別段の意思表示については、別段の意思表示はしないという形で規約を定めれば、後で抜ける人も既に拘束されている状態ですので、及んでいくと考えられます。
 それから、損害賠償債権そのものをどうするかという問題がございますけれども、ここは実は解釈の余地があるところではございますけれども、やはり、共有物の管理に関して、管理費をどうするか、修繕の積立金なり修繕費をどうするかという問題がございまして、その原資にこれを充てるというような規約の定めをすることで、管理の問題として引きつけて規定することもできるんじゃないか。
 直ちにそれをやればいいというのではなかなか進みませんので、モデルというか、標準管理規約に書いていただければ、こういう形にすればできるんだということが明らかになって、進むのではないかというふうに考えられます。さらに、私、個人的には、区分所有権の譲渡契約のモデルなどについても考えていった方がいいんじゃないかというふうに思っておるところです。
 それから、さらに、もしも、しかし、債権があるということで非常に濫用的な行使をする、吹っかけるとか、そういうことに対しては権利濫用という規律もございますので、政府案の下でも一定の配慮は十分される、また、そのための次のステップをこそ取っていただきたいというふうに考えているところでございます。標準管理規約の用意とかということを考えております。
 以上でございます。
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中野明安#24
○中野参考人 中野でございます。
 私が先ほど申し上げました御説明の中の議論の状況の中で、不都合が生じることについての具体的な事例というのは結局出てこなかったという点がございます。
 それからもう一つ、これは神崎先生から出された資料の一番最後のところ、「あるべき法改正」の部分にある十五条の一項のところ、これは民法上で言う従物理論という形で、主物に従って従物が処分されていく、これは民法の原則の中にも当然入っているものでございます。そのような処分の仕方ということも従来の民法にも入っているということでございまして、さほど不都合があるものとは考えておりません。
 以上でございます。
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神崎哲#25
○神崎参考人 まず、正当化が困難であって不都合が生じるということなんですけれども、場面が不明であると言わざるを得ません。譲渡人の財産権の保護を言っていると考えられますけれども、具体的にどのような場面で財産権が侵害されるのか、どのような不当な結論が招かれるのかが全く分かりません。
 私たちが四月三日に立憲民主党の国交・法務合同委員会でヒアリングを受けた際、法務省の職員が、我々の唱える当然承継案を遡及させると不都合が生じるという旨の発言をされたために、具体的な不都合性についてペーパーを出すように求められていたんですけれども、その後、そのペーパーが出されたという話は聞き及んでいません。
 少なくとも、私の知る限り、転売した旧区分所有者が共用部分の欠陥について補修費用相当の損害賠償請求権を個別行使して賠償金を取得したなどという事案は聞いたことがありません。
 東京地裁平成二十八年判決の解釈というのは極めて特殊なものでありまして、このような解釈が行き渡っているとは到底思えません。私たち欠陥住宅全国ネット、欠陥住宅被害全国連絡協議会の会員も、現在の区分所有者による管理組合総会で決議をして請求するのが一般的でした。実務上は、当然承継と結論的に同様の扱いをしてきた実態があると考えております。
 当然承継の考え方は、現行区分所有法の考え方から当然に導かれるものと考えておりまして、特別な考え方じゃないからこそ、これまで旧区分所有者がそのような特別な権利行使をしなかったわけですけれども、今般、このような法改正をすると、新たに旧区分所有者に権利を与えてしまうことになって、通知によってそれを知らせ、別段の意思表示にすることによって個別行使を許してしまうことになりますので、取り返しのつかないことになると思います。
 以上です。
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長友よしひろ#26
○長友(よ)委員 ありがとうございました。
 ちょっと時間がなくなってしまったので。
 今のお話を総合すると、私なりに解釈すると、当然承継を行うことができたならば、それによって、今住んでいる方、現の居住者で困られている方が救われるというような御意見だったというふうに認識しました。逆に、当然承継ということを行うことによって、元々の旧区分所有者の財産権というものが侵害されるおそれがあるということで、現と旧の、ここの差なんだということが明確になったと思います。
 そこで、先ほど御意見いただいた中、答弁の中でもあったんですけれども、標準管理規約のことについて聞きたいと思います。
 政府も、今後、標準管理規約で損害賠償金の使途の制限などを定める、こういうことを改定していこうということを述べています。一方で、規約の変更がされたとしたときに、その前の区分所有者でなくなった者、つまり旧区分所有者の方々は、遡ってその変更後の規約が適用されることはないわけであります。まあ、当たり前の話なんですよね。
 ここで是非伺いたいんですけれども、まず、沖野参考人と中野参考人にそれぞれお答えをいただければと思うんです。
 規約変更後の事案に、一定程度の実務的な対応で実効性が担保はされると思うんです、標準管理規約が改定されたならば。でも、旧区分所有者はそれについて義務を負わないわけですから、その規約が改定されても、それは義務を負わないわけですから、一定の前進はしたとしても、課題の解決には至っていない部分があるんじゃないかと。明らかにそうですよね、旧区分所有者はその義務を負わないわけですから。規約改定をすることはいいことです。でも、それはその後の方ですから。
 ということは、前の方々、今、現実として問題になっていることに果たして対応できているのかという意味からすると、そこに非常に懸念を、疑念を持つところです。
 ここについて、それぞれ、お答えを簡潔にお願いします。
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沖野眞已#27
○沖野参考人 ありがとうございます。
 議員がおっしゃったように、全くその規約の変更という形に、それに関わることもできなかった人に対して、その人の権利を強制的に奪うというような内容のものに拘束をかけるというのは、やはり無理だろうと思います。そうしたときに実効性がどうかというのは、その限りでは減じることになったとしても、そちらをやはり優先すべきだということと、もう一つ申し上げますと、本当に、しかし、一方で、提案されるようなものは十分な解決になっているのかということも少し疑問に思う点もございますので、そのことも少し付言だけさせていただきたいと思います。
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中野明安#28
○中野参考人 ありがとうございます。
 まさにそういうような場面があるので、我々は、当然承継という考え方を、この立法の中で改正すべきだというふうに考えております。
 立法につきましては、それは創設規定とか確認規定とか、いろいろな形があると思いますが、昔からそれは当然承継されるものだ、先ほど申し上げた主物、従物の理論という形で、自分の占有、所有権を譲渡するのであれば、それに付随する損害賠償請求権も一緒に処分されるという、その考え方は昔からの民法理論でもありますので、そのような確認規定だという考えで、当然、改正をすれば、それは今直ちに、困っている住民の皆さんも救われるのではないかなというふうに思っております。
 以上です。
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長友よしひろ#29
○長友(よ)委員 ありがとうございました。終わります。
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