川村和夫の発言 (農林水産委員会)

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○川村参考人 皆様、おはようございます。明治ホールディングスの代表取締役社長CEOを行っております川村と申します。食品メーカーの経営者として、また、一般財団法人食品産業センターの副会長として、長年、食品産業に携わってきているところでございます。
 食品産業センターは、我が国唯一の食品産業の業種横断的な全国団体であり、行政と業界の橋渡し役として、業界の発展に努めております。会員は、企業会員と団体会員等から構成されておりますが、地方の中小企業の方なども会員となっている都道府県の食品産業協議会等を束ねた団体も会員となっております。
 さて、本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。現在審議が行われております食料システム法案について、食品産業に身を置く当事者の観点から意見を述べさせていただきます。
 まず、我が国の食品産業の食料システムにおける位置づけについて説明をさせていただきます。
 我が国の農業、食料関連産業の国内生産額は百二十五兆円であり、全経済活動の国内生産額一千百六十兆円の約一一%を占めております。農業、食料関連産業は我が国の主要産業であります。このうち食品産業は百六兆円であり、また、国内農水産物の約六割が食品産業による製造、加工を経て消費者に流通いたします。農林水産業と食品産業は車の両輪としてウィン・ウィンの関係であり、この両者が発展していくことで食料システムが安定し、食品産業が発展するものと考えております。
 昨年、食料・農業・農村基本法が四半世紀ぶりに改正されました。この改正において、食品産業が、農業者や消費者と並び、食料システムの主たる構成員として明確に位置づけられました。また、国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、食品産業の事業基盤を強化していく必要があることが明記をされました。食品産業の関係者にとって大変心強く、国会で審議に当たられた先生方や関係の皆様に改めて感謝を申し上げたいと思います。
 今回の食料システム法案は、この改正食料・農業・農村基本法で示された方針を具体化するための法律と認識をしております。基本法が改正された背景と同様、食品産業についても、この四半世紀の間に大きな変化に直面してきたと考えております。
 食料システム法案については、大別して、食品産業の持続的な発展に係る措置と、合理的な費用を考慮した価格形成に関する措置から成ると承知しております。
 初めに、食品産業をめぐる四半世紀の変化と食品産業の持続的な発展に係る措置について意見を述べさせていただきます。
 食品産業がこの四半世紀に直面した変化としては、大きく三つあると考えております。
 まず第一に、輸入原材料の価格高騰と調達の不安定化です。
 御承知のとおり、新型コロナウイルスの世界的な拡大やロシアのウクライナ侵攻の影響により、世界の食料価格や海上運賃が高騰いたしました。我が国の輸入農産物価格は、二〇二〇年以降高騰し、現在でも以前と比較して高い水準が続いております。
 こうした中、一九九八年当時、日本は世界第一位の農林水産物の純輸入国であり、プライスメーカー的な地位でありましたが、近年はその地位が低下するなど、今後も我が国が安定的に輸入原材料を調達できるのか、非常に懸念するところでございます。
 原材料の安定的な調達は、食品産業にとって死活問題です。その意味で、輸入原材料の調達先の多角化も必要ですが、今後の世界の食料需給や為替の動向を考えた場合、国産原材料への更なる回帰も考えていく必要があると認識しております。食品産業においてもそのような動きが出てきたところでございます。
 しかしながら、国産原材料は、消費者ニーズが高い一方、品質や数量、価格の面で課題があります。農林水産業と食品産業が協力して、こうした課題を乗り越え、国産原材料の利用の拡大を図っていくことが必要ではないかと考えるところであります。
 第二に、環境や人権などへの国際的な関心の高まりであります。
 近年、SDGs、持続可能な開発目標など、環境や人権といった持続可能性に配慮した農林水産業、食品産業に関する議論が進展しております。我が国の食品産業におきましても、こうした持続可能性に配慮した取組への対応が求められております。
 例えば、環境については、気候変動や生物多様性、自然資本に係る情報開示が各国の会計基準に順次適用されることが求められております。また、人権については、二〇一一年、国連人権理事会においてビジネスと人権に関する指導原則が我が国も含む全会一致で支持されて以降、国際的に企業への人権尊重を求める声が強まっております。
 このため、食品産業においても環境や人権といった持続可能性に配慮した取組を積極的に行っていく必要があると考えております。これらの取組はサプライチェーン全体で評価されることから、川上から川下までの関係者が一体となって取り組む必要がありますが、中小企業にとっては、投資余力が限られ、また、人材不足が深刻であります。環境や人権などの取組を行う余力がないため、特に中小企業への支援が必要であると考えております。
 第三に、消費者の情報リテラシーの向上です。
 近年のSNSの爆発的な普及により、消費者の情報収集能力が向上しています。消費者においても、店頭で販売されている食品の背景にある情報への関心が高まっています。
 環境や人権などへの関心が高まる中で、食品についても、例えば、どのような農業者が生産した有機農産物なのか、環境負荷の少ない農産物を購入することでどの程度温室効果ガスの削減に貢献できるのかなど、消費者は様々な情報を求め、商品を選択しようとしています。
 SNSが爆発的に普及し、消費者も様々な情報に触れる中で、食品産業においても、正確な情報を消費者にお伝えすることが重要な課題になっています。食品産業を通じて農業生産現場の実情などを消費者に直接伝えることが必要になっていると考えております。
 このように、この四半世紀で食品産業の事業環境が大きく変化しました。食品産業が将来にわたりその持続的な発展を図るためには、このような環境変化に対して果敢に対応していくことが重要であります。
 今回の食料システム法案のうち、食品産業の持続的な発展に関する措置においては、食品産業が四つの取組に係る計画を策定し、農林水産大臣の認定を受けた場合、長期低利融資、税制特例など、各種支援措置を受けることが可能となっています。食品産業の持続的な発展を図る取組を後押しする制度であり、中小企業が大半を占める食品産業としても大変心強い制度になっていると評価をしています。
 次に、食料システム法案のもう一つの柱である、合理的な費用を考慮した価格形成に関する措置について、四点意見を述べさせていただきます。
 合理的な費用を考慮した価格形成につきましては、農林水産省において、適正な価格形成に関する協議会が開催されました。生産から消費まで、食料システムの関係者が一堂に会し、それぞれの立場で、コストがしっかりと転嫁できる仕組みを検討してきたところであります。食品産業センターも、食品産業を代表して参加してまいりました。
 まず一点目は、価格転嫁の基本的な考え方です。
 生産から消費までの食料システムのどこかにしわ寄せがなされる形は、適正な価格転嫁ではありません。生産者、食品製造業者、食品流通業者、食品小売業者の関係者が、それぞれのコスト増加をどのような形で適正に転嫁していくのか、それをどのような形で消費者の皆さんに御理解をいただくのかという、食料システム全体として解決していくことが重要だと考えております。
 このような観点を踏まえますと、今回の合理的な費用を考慮した価格形成については、特定の事業者を狙い撃ちするものではなく、生産者から食品小売業者までの関係者が食品の取引全体に努力義務を担っています。こうした点は評価できると考えております。
 二点目は、食料・農業・農村基本法の改正の際には、フランスのエガリム法の話が持ち上がり、同法のような、価格が自動的に改定されるような強制的な価格決定方式の議論がございました。このような措置は需給が考慮されなくなるため、食品産業においても非常に心配をしていたところです。
 今回の法案を見ますと、コストが反映されづらい品目を指定するとともに、指定品目団体がコスト指標を作成し、それに基づき、努力義務に沿った取引を促すというスキームとなっております。価格などの取引条件は当事者同士で決定するという原則を維持しており、市場経済の下で活動している関係者にとっては望ましい制度になったと考えております。
 三点目は、合理的な費用を考慮した価格形成を実現していくためには、何よりも消費者の皆様の理解を得ることが重要であります。
 今回の食料システム法案においては、指定品目について、生産から小売までの各段階のコスト構造を明らかにし、消費者の手元に届くまでにどれだけのコストがかかるのか、コスト指標として分かりやすく情報発信するとしています。こうした措置により、消費者の皆様の理解促進が図られると期待をしておるところであります。
 また、法案においては、国は広報活動などを通じ、国民理解を深めていくということとされております。現在国が行っておるフェアプライスプロジェクトなど、消費者向けの広報活動を今以上に積極的に行っていただきたいと考えております。
 四点目は、消費者の購買力を確保するためには、継続的な賃上げの実現が重要だということであります。
 令和五年十一月に労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が策定されたことにより、労務費のための価格転嫁が進めやすい環境を整備していただいたことは、食品産業としても非常にありがたいと考えております。
 一方、現場の感覚からすると、サプライチェーン全体で労務費を転嫁していくことは容易ではありません。我々民間側も労務費を含む価格転嫁に真摯に取り組んでいく必要があると考えていますが、適切に価格転嫁と賃上げの両立を図るには、賃金と物価の好循環により我が国の経済成長を実現していくためにも重要だと考えております。
 官民連携を深めるとともに、農林水産省においては、これまでと同様に、公正取引委員会など他省庁と連携しながら、食品の取引の適正化に取り組んでいただきたいと考えております。
 以上のとおり、食品産業に関わる当事者としては、合理的な費用を考慮した価格形成についても、これまでの協議会の議論を踏まえ、生産、小売までの各段階の関係者の理解が得られるものになっていると考えております。
 最後になりますが、我が国の農業、食品関連産業を取り巻く状況が厳しさを増す中、今回の食料システム法案が食料の持続的な供給を確保する上で大きな役割を果たすことを期待して、私の意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 川村和夫

speaker_id: 2199

日付: 2025-05-08

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会