高橋正人の発言 (法務委員会)

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○高橋参考人 ただいま御紹介にあずかりました弁護士の高橋正人と申します。
 私は、平成三十年に一度解散いたしました、あすの会のときに副代表幹事をやっておりまして、被害者参加制度の創設に深く携わらせていただきました。弁護士になって二十六年になりますけれども、ほぼ途切れなく被害者支援の仕事ばかりしてまいりました。今回は、犯罪被害者の立場からは、再審法について意見を述べさせていただきたいと思っております。
 幾つか論点がありますけれども、まず一番最初に申し上げたいのは、要件の緩和についてでございます。
 日本弁護士連合会は、確かに、現行法では、無罪などを言い渡すべき明らかな証拠がある場合、そういう場合のみしか再審の開始ができない、そこに対して、事実誤認があると疑うに足りる証拠があれば再審の開始ができるという改正法を案として提示しております。
 そもそも、罪を犯したことについて合理的な疑いを超える余地がない、その程度の立証があったからこそ、地裁、高裁、最高裁で有罪、無罪が決まったわけであります。地裁、高裁、最高裁に上訴するに当たっての要件というのは、まさに、罪を犯したことについて合理的な疑いがあるかどうか、これを審議するわけであります。これはまさに、今回、日弁連が改正案と言っている、事実誤認があると疑うに足りる証拠と同じことであります。
 そうしますと、同じ要件で再審の開始をするということは、結局のところは、四審制、五審制、六審制、七審制、八審制、九審制、永遠に審理が続くということであります。
 ということは、犯罪被害者の立場からしますと、いつまでたっても事件に区切りがつけられない、自分の人生に、事件に区切りをつけて、新たな一歩を踏み出したいと思っているのに、それが永遠に続くということであります。ひょっとしたら、自分が天寿を全うしてしまうそのときまでも、まだ確定しないかもしれない。これでは被害者に対して一生苦しみを与えることになりますから、この要件の緩和については、私は非常に反対でございます。
 犯罪被害者からすれば、いつ犯人が、被告人が収監されるか、あるいはいつ死刑が執行されるかについて、毎日祈るような気持ちで待っているわけであります。にもかかわらず、やっと有罪判決が最高裁で確定したのに、また最初からやり直しか、それも、しかも、無罪を言い渡すべき明らかな証拠がなくて、ただ単に今までと同じような上訴の要件だけで裁判をやり直すということになれば、生涯苦しみ続けることになるわけであります。ですから、このようなことについては、私どもは反対であります。
 そして、意外と法律家でも忘れている条文があります。それは憲法第七十六条第一項であります。何て書いてあるか。「司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と書いてあります。つまり、憲法上は最高裁判所と一つの下級裁判所があれば合憲なんです。つまり、憲法上は二審制でよろしいんです。
 にもかかわらず、今、法律で三審制になっています。それはなぜかといったら、慎重に審理をする、そのために、わざわざ、憲法で二審制と書いてあるものを三審制にしているわけであります。にもかかわらず、ここに更に四審制、五審制、六審制、七審制、八審制、永遠審を設けたら、私は、これは憲法違反の疑いが出てくると思います。
 そもそも、事件というのはどこかで社会的な決着をつけなきゃいけません。その決着がつかないで一生苦しみ続けるということは、言ってみれば、犯罪被害者等基本法第三条、犯罪被害者等は、その尊厳が重んじられ、尊厳にふさわしい処遇の保障を受ける権利があるという、その犯罪被害者等基本法にも反すると思います。
 したがいまして、被害者が一生苦しみを続けるようなこういう要件の緩和については、ちょっと言葉はきついかもしれませんけれども、主張自体、私は失当ではないかと思っております。
 次に、二番目、検察官の不服申立て権についてであります。
 不服申立て権、これを禁止するという案が出ておりますが、再審を開始するかどうかの第一審、あれは実は、法律をよく読みますと、合議である必要はないんですね。一人の裁判官で決定することも法律上は許されております。そうしますと、不服申立て権がないということは、たった一人の裁判官の判断だけで再審かどうかが決まってしまうということであります。これは、裁判官が非常に優秀で人格的にも優れているということが大前提になっていると思うんですが、実際は本当にそうなんでしょうか。
 私はいろいろな事件に携わってきました。物理の法則とか、あるいは数学的な能力、そういった基本的なことすらも理解していない、そういう裁判官も見てまいりました。特に性犯罪におきましては、ちょっと被害者の立場から見ると認知にゆがみがあるんじゃないかと思われるような裁判官すらたくさんおりました。そうしたときに、たった一人の裁判官が再審の開始を決定する、それで、これに対して不服申立てができない、本当にこれでよろしいんでしょうか。私は大変な疑問を持っております。
 そもそも、裁判官が優秀であり人格的にも優れている、そういう前提が私は誤っているのではないかと思います。裁判官に対する審査というのは、下級裁判官に対してはたった十年に一回だけ審議をするだけです。最高裁になりますと、もうほとんど機能していない国民審査制度しかありません。下級裁判官に対して再任拒否するのは三つしかないんです、理由は。一つは、眠っていた。二つ目、記録を読んでいない。三つ目、暴言を吐いた。当たり前です、こんなことは。内容については一切問わずに再任されます。
 もちろん裁判官の独立はありますから、係属中の裁判に対して介入すべきではありません。昔は、平賀書簡事件というのがあって、係属中の裁判官に対して、違憲判決を出そうとしたから、一審の所長が一先輩のアドバイスということで手紙を書いて、国会で大問題になりました。しかし、裁判が確定したらどうでしょうか。そうしたら、本当にその裁判の内容がよかったのか、正しかったのかどうか、裁判所の中で検証すべきではないでしょうか。
 裁判官に独立がある、独立があるのであれば、自浄能力がなきゃ駄目です。もちろん、こんな偉そうなことを言っていますが、正直言いまして、私どもが入っている弁護士会が一番自浄能力がありません。それは認めます。しかし、裁判所は判断権者なんですから、独立が認められている以上は自浄能力がなきゃ駄目です。それがないというところが非常に大きな問題だと思っております。それにもかかわらず不服申立て権を認めないというのは、いかがなものでしょうか。
 次に、日弁連の資料によりますと、不服申立てをした十七件のうち十二件で再審開始決定が確定したということであります。これは、逆に言いますと、五件は不服申立てが認められたということであります。不服申立て権がもしなければ、この五件は逆冤罪になります。
 被害者とすれば、Aさんが犯人だと思って執行されるのをずっと待っていた、ところが、ある日突然、この人は罪は犯しているかもしれないけれども、犯していないんだよと言われる。被害者は、亡くなった子供とか配偶者の墓前に何と報告するんでしょうか。こんなことが認められるのは、私は不正義だと思います。
 こういった日弁連の再審法の改正法というのは、被害者を本当に苦しめ続けることになります。ですから、再審法の改正に当たりましては、被害者の立場にもどうか配慮していただきたい、これが一番の願いであります。
 続いて、証拠の開示であります。
 証拠の開示については、私は賛成であります。早く証拠は開示してください。
 しかし、理由が全く違います。私どもが言っている証拠の開示を早くしてくれというのは、例えば、三十年たってから証拠を開示して冤罪だと分かった、じゃ、被害者はどうするんだ。もう時効になっているじゃないですか、真犯人は。もちろん殺人事件は、時効は廃止されました。しかし、三十年もたっていれば、もう証拠は存在しません。散逸しています。証人は死んでいます。事実上、捕まりません。被害者はどうすればいいんでしょう。今までこの人が犯人だとずっと思っていたのに、いや、もうあの人は無罪なんですよ、ひょっとしたら、真犯人はあなたの隣に座っているかもしれませんよ、あるいは、スーパーでにこにこして笑いながらあなたを通り過ぎているかもしれませんよ、こういう事態になってしまう。これは耐え難い。
 だから、一日も早く、本当に冤罪であるならば、記録を全部開示していただいて、早く冤罪かどうかを決めていただいて、真犯人を捕まえるための時間的な余裕をいただきたい。そういう意味で、記録は開示していただきたいということであります。
 ただし、条件付であります。性犯罪の被害者というのは、事実を隠して生活をしております。結婚する際にも言わないことが多いです。いつ再審で蒸し返されるかもしれないと思いますと、安心して生活することがとてもできません。
 刑法改正によって撮影罪、いわゆる盗撮罪ができました。この規定によると、検察官は性的画像を消去、破棄できるようになりました。再審になってそれらの客観的な証拠がない、無罪になるんでしょうか。いや、そうではない。だったら、性的画像を保存しておけばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そのような画像が世の中に存在しているということ自体が性犯罪の被害者にとっては耐え難い苦痛なんです。もし性的な画像を消去、破棄できないようにするのであれば、先ほどの刑法改正の趣旨に今度は反することになります。
 しかも、性犯罪は、不合理な否認をする人が非常に多いです。被害者は、加害者が有罪になっても、逆恨みして更に仕返ししてくるんじゃないかといつも恐れております。そういう加害者に限って、再審開始の乱発をいたします。被害者は一生おびえ続けなければいけません。
 したがいまして、性的画像については物理的に破棄し、再審開始決定に当たっての開示の対象からは物理的に除去していただきたい。これが条件付の証拠開示についての賛成であります。
 続きまして、裁判官の忌避と除斥ですけれども、これは当然であります。当たり前のことです。利益相反です。しかし、これを検察官の責任にしてはいけません。そもそも、この手だてをしてこなかったのは裁判所です。裁判所の私は手抜きだと思っております。
 五番目、再審請求手続の義務的死刑執行停止なんですが、これを認めたら、死刑執行を免れるために、再審請求が、再審開始のための請求が乱発されます。永遠に死刑が執行できないことになります。被害者は永遠に回復できません。こういった義務的な死刑の執行停止というのは、結局のところは、死刑制度を事実上廃止したいという死刑制度廃止派の隠れみのではないかと被害者からは見えます。
 そのようなわけで、要件緩和については、これは大反対、不服申立て権の禁止も大反対であります。そして、証拠の開示については条件付で賛成、除斥と忌避は当然、義務的死刑執行停止は死刑制度廃止と同じことですから、反対であります。
 以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 高橋正人

speaker_id: 19027

日付: 2025-03-26

院: 衆議院

会議名: 法務委員会