大西雅之の発言 (予算委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○大西公述人 本日は、衆議院予算委員会公聴会で発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 私は、北海道阿寒湖温泉の地域DMOであります阿寒観光協会まちづくり推進機構の会長を務めております。旅館経営者であります。また、昨年六月までは、一般社団法人日本旅館協会会長を務めておりました。その立場から、本日は、観光をめぐる現在の状況を皆様に御理解をいただき、今後の発展に向けた政策要望を中心に意見を述べさせていただきます。
 私どもの日本旅館協会は、全国の旅館、ホテル、約二千二百の施設を会員として構成しております。会員からは様々な要望が寄せられておりますが、国の予算事項として御支援いただきたい分野について今日は発言をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、これまでの観光立国の動きについて振り返りをさせていただきます。
 今から二十二年ほど前、二〇〇三年一月、当時の小泉内閣総理大臣により、観光立国が国の主要施策として位置づけられました。このことは、私ども観光業界に身を置くものとして、画期的な出来事でありました。ビジット・ジャパン・キャンペーンをスタートさせ、以来、訪日外国人数の年ごとの顕著な増加や、アジアを中心に訪日客の旺盛な消費活動といったものを肌で感じました。また、二〇〇七年には、観光立国推進基本計画が策定され、訪日外国人誘致など具体的数値目標の下、様々な施策が展開されてまいりました。
 私も、二〇一五年には、当時の安倍内閣総理大臣の下で開催されました、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議に委員として参画させていただき、地方空港の活性化や国立公園の商業利用の拡大など、意見を申し述べさせていただきました。二〇三〇年に訪日外国人客を六千万人にする、国の壮大な構想を実感し、思わず背筋が伸びたことが思い出されます。
 これらを受けまして、宿泊業界でも訪日客の増加を見込み、快適な観光をお楽しみいただけるよう、受入れ体制の充実を図ってまいりました。WiFiなど通信環境を整備したり、情報提供面でもホームページの多言語化やキャッシュレス決済の導入など、多くの施設で取組を進めた結果、滞在時の利便性は大きく高まったのではないかと思っております。政府のインバウンド振興策と相まって、地域の魅力の磨き上げも進み、地方の消費拡大にも大いに寄与できたのではないかと実感しています。
 このような取組の中で、この二十年の間、大規模地震や火山噴火、台風や豪雨などの自然災害に加えて、国際関係、経済情勢などの変化により、観光立国の動きにおいては浮き沈みがありましたが、昨年の訪日外国人数は、二〇〇三年当時の五百二十万人から、その七倍に相当する三千六百八十七万人にも達し、往時を知る者としては隔世の感を禁じ得ません。
 一方で、こうした観光立国の流れの中で、私ども宿泊業界は、必ずしも順風満帆であったわけではありません。
 先ほど申し上げた自然災害では、東日本大震災、北海道胆振東部地震、熊本地震、そして、一年を経過した能登半島地震など、幾つもの災害を経験しています。能登半島地震につきましては、この後、改めて申し述べさせていただきます。
 また、何といっても二〇二〇年から三年もの長きにわたる新型コロナウイルスによる人流抑制の影響は、宿泊業の経営に大きな打撃を与えるものとなりました。今に至るまで、その影響を引きずっております。これまでの様々な危機の中でも、特別のダメージを受け、私自身、もう旅館を続けられないのではと覚悟をしたときもあります。実際、経営から撤退した事業者も多く、今年度においても、長い歴史を持った名門の宿泊施設の廃業や譲渡が続いております。
 宿泊施設は装置産業と言われ、定期的なリニューアルのための設備投資が必要であり、過去より一定の負債を有しておりましたが、コロナ禍により、過大な有利子負債を抱えることになりました。二〇一三年の耐震改修促進法の改正により、多額の費用をかけた耐震補強工事を終え、さあこれからというときに発生したコロナ禍により、更なる借入れを余儀なくされました。コロナ禍に苦しんだ令和四年度決算に関して会員にアンケートを取ったところ、約四割の会員が債務超過に陥っておりました。
 コロナ禍の危機状況の中、GoToトラベルなどの旅行支援策を様々な御意見がある中で強力に推し進めていただいたおかげで、人流が完全に途絶えたどん底の状態から短期間で回復してくることができました。この施策がなければ、日本の観光産業は間違いなく沈没していたのではないかと今でも思っております。心より深く感謝を申し上げます。
 昨今の旅行需要の回復によって直近のキャッシュフローは好転してきましたが、ストックとして過大に累積した債務は短期間の好調だけでは正常化できません。大手で構成される日本ホテル協会の発表でも、会員平均、コロナ禍三年で四十三年分の負債を負ったと発表がありました。是非とも、息の長い御支援をお願いしたく存じます。
 コロナ禍の間、私ども業界は、経営維持のための運転資金の確保と旅行需要喚起策の早期実施を重点的に活動してまいりました。
 特に、従業員の雇用継続を図るための雇用調整助成金の充実や、金融面でも、コロナ対策としてのゼロゼロ融資や資本性劣後ローンなどの融資枠の拡大、期限の延長等、生き残るための支援の充実を図っていただきました。大変ありがたいことと感謝をしております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、いまだにコロナ禍の影響を引きずっている宿泊施設も多く、そうした施設には融資返済に係る負担軽減などの御支援をよろしくお願いしたいと思います。
 また、コロナ期間から実施されてきました既存観光地の高付加価値化事業については、政府において地域の要望を受け止めていただき、様々な改善を行っていただきました。これらの事業で、観光地の中核である旅館は、長らく更新できなかった施設の高付加価値化へのリニューアルを進めることができました。
 しかし、旅館だけがよくなっても温泉地の魅力は高まりません。旅館に加えて、土産店や周辺の観光施設への支援拡充により、地域全体としての魅力を高めることができ、現在のインバウンド復活の備えになりました。
 この高付加価値化補助事業については、単に宿泊施設の改修にとどまらず、地域全体の持続可能な観光地経営に資する非常に有用な施策であると考えます。コロナ禍で出遅れてしまった多くの地域がこの存続を切望しており、引き続き継続的な実施をお願いしたく存じます。
 続きまして、昨年一月に発生しました能登半島地震について申し上げます。
 既に発生から一年以上が経過しましたが、能登地域における復旧復興の状況は遅々として進んでおらず、和倉温泉、輪島地区、その他、能登半島所在の多くの施設が休業を余儀なくされ、いまだ復旧のめども立っておりません。
 私も、昨年、現地を訪れた際に被害の深刻さを目の当たりにしました。今なお、和倉地区二十九宿泊施設で完全営業できているのは四施設のみです。復旧復興には長い道のりが控えておりますが、再びにぎわいを取り戻すまで、これはまさに官民挙げて取組を行っていかなければならないと改めて痛感をいたしております。
 多くの被災した施設は、コロナ融資により過剰債務の問題を抱えています。
 既に返済を開始したところ、あるいは近々に返済開始を迎えますが、コロナ禍に加え、能登半島地震で壊滅的な被害を受け、加えて豪雨災害など度重なる災難が続き、地域の復興までには相当の期間が必要と考えます。是非とも、円滑な借換えや返済条件の緩和など、より一層の御尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 続きまして、インバウンドが過去最高になったことによる弊害、オーバーツーリズムについて申し上げます。
 インバウンド復活の状況は、数字の上でもはっきりと見て取れますが、首都圏や大都市圏以外の地域では、まだその恩恵を享受できていない地域も多々あります。地域間格差や業態間格差がますます広がっていると言わざるを得ません。
 私ども旅館協会では、会員に対する宿泊人数調査のアンケートを県別、エリア別に毎月実施しています。その推移を見ますと、本年一月に入っても、例えば北海道では、ジェット燃料の供給体制の課題もあり、コロナ前と比べて二〇%減といった状況が続いております。
 観光庁におかれましても、地方への誘客分散化に向けた取組が行われているところですが、私どもは、機会があるたびに、ダイレクトインバウンドということを申し上げております。オーバーツーリズム回避のためにも、海外から地方に直接来ていただくこと、これが重要であります。二〇一五年の、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議では、地方空港の活性化ということを申し上げましたが、改めて、その必要性を痛感しているところです。
 コロナ禍を経ても、国は、二〇三〇年、インバウンド六千万人、消費額十五兆円の目標を継続して掲げてくれています。
 基幹空港のキャパシティーに限界が見えており、大きな目標を実現していくためには、全国津々浦々にインバウンドの恩恵を広げる必要があります。もちろん、これには、CIQや検疫体制、グランドハンドリングの問題に加え、空港からのアクセスの問題、二次交通などの情報を束ねる観光型MaaSの推進など、様々な解決すべき課題があると承知しております。
 個々の自治体や企業だけではその解決は難しいと考えられ、国として早急な体制整備が必要ではないかと強く要望するところであります。
 続きまして、日本の観光の更なる魅力向上について申し上げます。
 日本には、いまだ日本人の気づいていない観光資源が豊富にあります。こうした他の国では楽しむことのできない日本観光の魅力を更に磨き上げ、伸ばしていく必要があると考えます。この点、日本の豊かな自然環境を生かしたアドベンチャーツーリズムという旅行形態もあります。これは世界でも七十兆円の市場規模があるとされており、SDGsの観点からも推奨されて、今後大きく伸びる可能性を秘めた有望市場だと思っています。
 是非、こうした伸び代のある観光市場の拡大に向けた取組にも御理解を賜りたいと存じます。
 また、宿泊業界も、こうした日本の魅力を提供する重要な役割を担っています。四季折々の季節を感じ、雄大な自然の下、その土地土地で育まれた歴史に思いをはせ、また、祭りや伝統文化、そして温泉文化に触れ、その地域でしか味わえない食を体験することができます。
 こうした日本の魅力を伝える観光拠点である旅館、そして温泉観光地を大切に守っていきたいと思っています。
 特に、温泉文化についてつけ加えさせていただきますと、多くの国会議員の先生にも御協力いただき、現在、観光業界が中心となり、温泉文化を世界ブランドにすること、温泉文化のユネスコ世界無形文化遺産登録に向け、運動を推進しております。二〇二六年の国内候補決定、二〇二八年のユネスコ登録を目指しておりますが、実現の暁には、インバウンド推進に大きな力になると確信しております。
 以上のようなツーリズムの在り方を進めていくためには、私ども業界を取り巻く問題、例えば、人手不足への対応、DX化、ユニバーサルツーリズムへの対応など、課題がいろいろとあるところです。
 人手不足が各産業とも深刻ですが、とりわけ観光産業のうち宿泊業については改善の兆しが見えておりません。再び夢のある観光産業になるためには、各事業者が給与水準を含めた労働環境の改善に全力を尽くすことが重要だと考えております。外国人の雇用制度につきましても、手続の円滑化など制度の改善に御配慮いただけますと、インバウンド対策だけではなく、強力な人手不足対策につながると思っております。
 さらに、宿泊業においては、主に現業部門で人手不足が顕著で、中でも調理部門では調理師の確保が難しく、とりわけ和食の調理人が足りないとされております。旅館における和食の提供という重要な役割が果たせなくなってしまうのではないかと危機感を抱いております。ガストロノミー文化が浸透するフランスや南欧のように、調理師の地位を高め、国立の養成機関の設立や様々な料理人コンペティションを通じて認知を広める必要があると考えております。
 最後になりますが、目標年次である二〇三〇年まで五年を切りました。私ども業界はもちろんのこと、観光産業全体として目標達成に向けた取組を着実に進めてまいる所存でございます。その推進に当たっての観光予算につきまして、引き続き戦略的な確保をお願い申し上げ、私の発言とさせていただきます。
 本日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121705262X00120250225_008

発言者: 大西雅之

speaker_id: 33319

日付: 2025-02-25

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会