原科幸彦の発言 (環境委員会)

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○参考人(原科幸彦君) 東京科学大学名誉教授の原科幸彦でございます。
 この三月までは、千葉商科大学の学長を務めておりました。私、社会工学が専門でございまして、環境計画とか政策の分野の研究をしてまいりました。特に参加とか合意形成研究でございますが、環境アセスメントはその代表的な領域ですね、その中でございます。ということで、この分野の基幹学会であります国際影響評価学会という、IAIAと書いてありますけれども、この会長も務めました。
 そんなことから、国際的な見地から意見を申したいと思います。こういった機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 早速ですが、今、阿部参考人が御紹介になった二つの改正点、いずれも御説明のようなことで、大変いい方向だと思っておりますが、ただ問題点もありますので、それを少し申し上げたいと思います。
 資料のこれは二ページですね、スライド番号が付いています。一の一です。配慮書手続の緩和ということがなされますね。
 ただ、この検討の段階で、配慮書に関しては複数案の比較検討、これをきちっとできるような、そういったサポートをしなきゃいけないとか、あるいは報告書手続では、発電所アセスの報告書の扱いについて提案がありました。今、これは国が関与する格好が基本なんですが、発電所は電気事業法の特例によりまして関与をしない格好になっていますね。しかし、これは、同じ考えというか、なぜ関与するかという考えをもっと、例えば環境省が入手して環境大臣が意見を述べると、そういう形にするのが望ましいと思います。そういう提案もありました。しかし、こういったことは今回は法案には反映されておりませんので、この件は更に改善の方向をお考えいただきたいと思います。
 陸上風力発電の導入促進、この検討もされました。これは、脱炭素に向けてという政府の基本的な方向に向かったことで、大変いい方向だと思いますね。そういうことでございますが、そのために、ここに書きましたように、立地誘導による導入促進とか対象事業、規模が小さくてもアセスをやるとか、あるいは建て替え事業、今御説明あったとおりでございますが、そういったことで検討してきましたけれども。
 建て替え事業の緩和だけは決まりましたけど、この議論の中では、風力発電、まさにモニタリングの結果というのは、事後調査報告書の手続ができたおかげで報告書が手に入りますので、それで情報があるということなんですね。ですから、こういった情報がない場合には、同じように提供するわけにいかないですね。ただ、今回の法案では、風力発電にかかわらず、いろいろな事業に対して対応できる格好になっておりますので、ここはこの法改正案の趣旨に沿って、きちんと情報が使える場合に制約しないとおかしなこと起こりますね。特に、報告書手続のない二〇一一年以前の火力発電所とか原子力発電所、これは情報がないわけですよ。だから、周辺環境はこの間、十年、二十年たってどう変わったか分からないですね。だから、その場合も同じように提供してしまうと、後で大きな問題を起こすと思います。これは次のページ見ていただくと、そこに書いてありますが。
 さて、改正点の二番です。アセス図書の継続的公開でございます。
 これも、まあいい方向になったと思います。私たち環境アセスメント学会からも要請を出しまして、いろんな形で専門家が声を出しておりましたが、これが実現する、大変うれしく思います。ただ、事業者の同意が必要という条件が付いていますね。これは必要ないと思います。と申しますのは、縦覧期間に既に公開しているわけですね。ですから、それをただ期間を延ばすだけでございますから、本質的にそんな大きな問題はないわけでございますから、これは、こういった事業者の同意が必要という条件は外していただきたいと思いますね。
 そして、このことは環境アセスメントという制度の根幹に関わるといいますか、この仕組みの根幹なんですね。つまり、環境アセスメントは規制ではないんですね。枠組み規制的手法といいまして、要するに、手続を守ってくれれば、あとは事業者が自主的に環境配慮をする、それを促進するための仕組みなんですよ。
 それはどうやってやるかというと、アカウンタビリティーなんです。アカウンタビリティーというのは、単なる説明責任ではなくて、証拠に基づく説明責任です。この場合の証拠は何かというと、評価書なんです。評価書で予測評価しまして、影響を、そして、それに対する環境保全対策を講じますと約束するわけですよ。その約束するための評価書なんでございますから、これ、その後、一回出して一月ほどたって後は出さないというのでは、どんな約束したか分からないですよね。だから、これは大変具合が悪いです。しかも、その縦覧期間に見た人はこの情報分かりますけれども、後で気が付いた人は情報分かりませんよね。これ不公平でしょう。行政の不公平生じますから、これどう考えても継続して公開しなきゃおかしいと思います。実際にアメリカ等各国では、もう最初からしっかり公開しております。例外なく継続的公開をお願いしたいと思います。
 では、次のページです。
 今、そういうことで、さっと改正法に関して申し上げましたけれども、あとは、実は中央環境審議会ではたくさんの検討がされまして、答申にもたくさんの項目が出ていますよね。だから、二項目しか今回反映していませんから、残された宿題いっぱいあるわけですよ。これはもう長年の懸案でございましたので、そのうち、私、三つだけ申し上げます。
 一つ目は、戦略的環境アセスメントです。ストラテジック・エンバイロメント・アセスメント、SEAと略しております。これは、事業より上位の計画段階です。配慮書段階つくる前に、実は私たち、我が国では、SEAの共通ガイドラインを持っていたんです。
 この議論は、実は一九七二年、このアセスの仕組みを導入するという閣議了解ができた頃からありまして、当時は計画アセスメントという言葉を使っておりました。その後、九七年の法制定のときも議論がありました。しかし、そのときは情報公開制度がまだできていなかったんですね。ですから、時期尚早ということで先延ばしになりました。そして、二〇〇六年から七年にかけて環境省がSEA検討会をつくりまして、各省庁共通のガイドラインを作ったんですよ。二〇一一年、今、阿部参考人がお話しになったように、ここに反映されるような議論があったんですが、実際には反映できなかったんですね。ところが、反映されるという議論があったので、そのガイドラインを廃止してしまったんです。したがって、日本は今、SEAについては国のレビューや仕組みがないんです。ところが、この下の図を見てください。世界はもうみんな持っています、これ。隣の韓国、中国、みんな持っているんですよ。だから、日本もそろそろというか、もうとてもこの点では遅れていると思いますね。この点をよく認識していただきたいと思います。
 じゃ、SEAをやったらどんな効果があるか。次のページ、愛知万博のアセスメントの例を付けておきました。
 こんな具合に、これは計画案が変わったんですね、変化しました。計画案を変更することができたのはSEAのおかげなんですが、結果どうなったか。この万博、始まる前は赤字間違いないと、ところが、計画が変わったものですから、すばらしい魅力的計画になって、何と想定の入場者数の一・五倍ぐらい来てくれたんですよ。だから、百億円の黒字でございました。つまり、環境配慮が大きな経済的利益を生んだんですね。こういう経験を我々はしているわけですよ。だから、これを生かさない手はないというのが私の意見でございます。
 では、追加の二つ目ですね。次のページです。異議申立て制度の導入でございます。
 これも先ほど申し上げたように、アセスメントの本質に関わります。つまり、評価書がきちっとしたものでないと、これは約束にならないですよね。そうすると、評価書を検討していく、準備書から評価書に直していくわけですが、いろいろな点で問題が起こる。データの間違いとか分析の瑕疵とか、あるいは意見が十分反映されていない。そういう場合に、審査会で数字はチェックするんですが、十分なチェックし切れません。そうすると、いろんな意見があってもそのまま先へ行ってしまうんですね。そこで普通は、ちょっと待ったんですよ。異議申立てができるはずなんですが、日本国内の制度ではそれがないんです。じゃ、裁判に。裁判も時間が掛かりますから、もう手遅れですよ。だから、異議申立て制度を盛り込むことは大変大事なことなんです。
 私は世界を見ていますから、国際協力の分野では、実は日本の政府機関はみんな持っているんです。書きましたけれども、国際協力機構、それから国際協力銀行、それから日本貿易保険、みんな持っていますし、しかも、すばらしい運用をしています。
 どういうことかといいますと、この下に書きましたけど、世界銀行よりもパフォーマンスが良くて、二〇一九年にはIAIAから表彰されました。インスティテューショナルアワードをもらったぐらいですから、すばらしい成果がありますから、これを基に、これを参考に是非日本でも、国内でも異議申立て制度を導入していただきたいと思います。
 最後、三つ目ですが、じゃ、更に良くするにはどうしたらいいか。事業者の負担を減らす、こういう手続の修正があります。
 配慮書の件に関しましては、実はこれは、事業の計画段階ですから事業アセスメントですね。本来のスコーピングというのは、複数案、どんな複数案を検討するか、評価項目をどうするか、そして調査や評価の方法をどうするか、三つのことを決めるんです。
 ところが、そのことを私、昔、法制化のときに申しました、公聴会で申しましたけど、ところが複数案は外れちゃったんですよ。ようやく配慮書によって複数案の検討が前倒しでやるようになったので、これは本来スコーピングでやるべきことなのでワンセットにしちゃったんです。そうすると段階が一つ減りますよね。事業者の負担減りますよ、これ。ですから、こういったことをやらなきゃいけないんですね。是非これをお願いしたいと思います。
 この下の図を見ていただくと、日本の環境影響評価法は配慮書手続がありますね。アメリカの、世界のモデルになったNEPAのシステムはないんです。その代わり簡易アセスなんですよ。
 この簡易アセスというのは、非常に具合がいいんです。つまり、とても簡単なチェック、集団検診的なアセスメントです。日本はフルアセスですから精密検査です。だから、対象事業によっては、精密検査、三年、四年掛けてやるんですけれども、集団検診は数か月でいいんですね。費用も少ない。そこでオーケーになればフルアセスしなくていいんです。アメリカのパーセントはどうか書きました。九九・五%は簡易アセスで終わっちゃうんです。
 だから、たとえ規模が大きくても、事業者が環境配慮をしっかりやっている、これを皆さんが認めれば、それでオーケーなんですよ。だから、事業者の努力がこれ評価されますね。こういう仕組みにしなきゃいけないんです。これはもう、私たち十分、四半世紀以上の経験がありますから、アセスメントの経験がありますからいけると思いますね。
 次のページ見ていただくと、アセスメントの導入件数。アメリカは、この図を見てください、上の図ですね、一千倍。中国はもっとやっています。つまり、仕組み次第なんですね。たくさんのアセスやるけれども、簡単なアセスなので負担感はとても少ないんですよ。ところが、それによって、みんながアセスのことを知る機会が増えますね。公衆協議の場が増えるんですよ。これは民主主義社会の根本なんですね。
 昨年、国連総会の人権理事会で、日本の明治神宮外苑、あの再開発の問題が挙げられました。つまり、公衆協議が余りにもプアというか不適正だということで。これは、公衆協議をしっかりやることは民主主義社会においても人権なんですね。そういう概念が国際的な感覚であります。
 最後にもう一つ申しましょう。
 ということで、そのことに関して、私、詳しいことはいろいろお話しする時間がないので、日経の「経済教室」に、もう十年前ですけど、改正後に書いたものありますから、これ是非読んでください。
 簡易アセスやると本当に良くなる。しかも、産業振興上もいいんですよ。日本の情報化が進展とかいろんな点でいい例がありますから、こういう形でアセスの負担感をなくすことによってしっかり社会を良くしていく、こういうことが大事だと思います。
 今すぐにはできないですから、でも、十年後と言わないで、こういった改革は五年後にお願いしたいと思います。何しろ過去五十年近くから経験あるわけですから、いろいろ議論してきたんですよ。十分もう中身あります。だから、その次をどうするか。五年後ですね、あるいはもっと早くてもいいかもしれないです。
 そして、一つ、今回できたら参議院で変えていただきたいのがあるんですが、人々の懸念するのは、規模が大きいからじゃないんですよ、環境影響が著しいことなんですよ。だから、これだけでいいんですね。今、冒頭にこう書いています。真ん中辺ですけど、第一条、目的です。規模が大きく環境影響の程度が著しくなるおそれのある事業。この六文字に減らせますね。環境影響の程度が著しくなるおそれのある事業、これでいいでしょう。そうすると、さっき風力発電なんかでも、規模が小さくてもチェックしなきゃいけない話とか、あるいは逆に、規模が大きくても簡易アセスで終わることできるんですよ。そうすると、事業者にとっては大変大きな福音になりますので、そういった改善を是非ともお願いしたいと思う次第でございます。
 ほぼ時間になったと思いますので。時間ありますか。

発言情報

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発言者: 原科幸彦

speaker_id: 9795

日付: 2025-06-10

院: 参議院

会議名: 環境委員会