高良鉄美の発言 (憲法審査会)
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○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
緊急集会についてということですが、日本国憲法八十七条、「予見し難い」という文言があります。一瞬これは緊急事態かなと思わせるんですけれども、その後に続くのが、「予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、」とありますので、直接的な緊急事態ということではないと思います。
実際に緊急という文字が使われているのは、先ほどからあります憲法の五十四条の規定にだけです。そこにあるのは、衆議院が解散時にある内閣が求める「緊急」の必要な際に参議院の「緊急集会」を求めることができると。この緊急の際にということですね。それから、二項にも、「緊急集会」という言葉で、この三つだけが緊急という言葉が続いています。この規定によれば、衆議院の任期の延長の問題などは出てくるはずがない。しかも、緊急集会の要求は衆議院がするわけではなくて内閣が求めるものだということなので、この規定からすれば、衆議院の任期延長の合理性というのがどうしても希薄になってくるものだと思います。
さて、この緊急の用語というのは、実際、天皇主権の明治憲法の八条、いわゆる緊急勅令のところにあります。「天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス」と。法律の代わりということですね。帝国議会、この当時は三か月が会期です。今と全然違います。はるかに閉会中の時間が多いということになります。
そして、二項で、「此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ」と、よく似た規定がありますけれども、同じく七十条にもまた似たような規定が「緊急ノ需用」があってということで使われております。
政府の専断を恐れている、権力の集中を恐れる、そして、チェック・アンド・バランスと国会の中心主義というものをしっかりと混ぜ合わせたこの日本国憲法では、参議院のみの措置で国会の権限行使として認める仕組みをしたと思います。海外でもほとんど例を見ないですけれども、やっぱり国民主権等を取っているこの主権者の代表である国会にこだわった規定だと思います。
マッカーサー案にはなかったということですけれども、日本政府が最初出していた案には、衆議院の解散その他の事由により国会を召集することがあたわざる場合において公共の安全を保持するために緊急の必要があるときは、内閣は事後において国会の協賛を得ることを条件として法律又は予算に代わるべき閣令を制定することを得るとしていました。
憲法の文献等では、まさに明治憲法の八条の緊急勅令と七十条の緊急財政処分と同じことを当初考えて出されていたと言われています。その後の議論でしっかりと、緊急の場合でも国会、つまりここでは参議院に委ねる民主的な案に変更されています。仮に衆参同時選挙で国会が閉会中であっても、参議院の半数はおります。これは、国会に残っていますので、定足数も三分の一を満たしていると。きちんと緊急集会の権能、役割を果たすことができる仕組みになっています。
緊急集会の要件はいろいろ先ほどから出ていますので、緊急性と必要性と、それから衆議院の解散中であるということですけれども、こういったタイミングはまさに万に一つという可能性であると思います。
参議院の優越を二院制に組み込んで、国会、憲法の構造と整合性を有していると。立法とか予算の審議など、基本的に憲法上は衆議院と同じ資質、性質を持っている上に解散がない参議院の存在意義が強く示されているものだと思います。
法の支配からいえば、衆議院議員の任期延長は憲法の趣旨をゆがめ、人の支配に属する類いのものと言えます。法の原理的意図なのか、あるいは人の政治的意図なのか、しっかりと憲法規定の目標を分析することが肝要であることを訴えまして、私の意見といたします。