高木りつの発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(高木りつ君) 全国労働組合総連合副議長の高木りつと申します。
 本日は、このような貴重な機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
 全国の公務と民間の職場で働く者の立場から、仕事の世界におけるハラスメントや暴力、差別を根絶するための更なる修正を求め、以下申し上げます。
 まず、この場にいらっしゃる皆さんに、私たちの仲間の声をお伝えし、問いかけます。皆さんそれぞれのお立場で、この現状について御尽力いただけることは出し尽くされているでしょうか。法案審議に当たって、より一層労働者の置かれている実態を踏まえた議論となりますよう、お願い申し上げます。(資料提示)
 働く仲間からの訴えです。おまえはやる気があるのか、おまえには期待していなかったなどと毎日のように嫌みや圧を掛けられる。休みの日に相談があると呼び出されて車に無理やり乗せられ、挙げ句の果てにホテルに連れていかれる。また、日本自治体労働組合総連合の実施した調査では、公務職場でカスハラを受けたことがあるという職員が四七・六%と約半数に上り、受けた内容として最も多いのは、侮辱、大声で威圧するなど乱暴な暴言が八四・四%でした。
 医療、介護の現場からは、体を触られたり卑わいな言葉を掛けられたり、看護師なんだから言うとおりにしろと言われたり、殴られたり蹴られたりする、入浴介助中、排せつ介助中、検温中などに体に触ってくる、自分の局部を触らせようとする、私生活や体のサイズを異常に聞いてくるなどです。医療系三組織による労働実態調査によると、セクハラはこのような患者からのものが最も多く七八・七%、次に医師からのセクハラが二〇・九%、患者家族からのセクハラは二・一%でした。
 御存じのように、医療、介護の現場で働く仲間は、この間、賃金、待遇が非常に厳しい状況が続いています。その上このようなハラスメントの被害に遭っていれば仕事を続けることは難しいケースも少なくなく、ケア労働の現場での人手不足に拍車が掛かる原因の一つにもなっています。
 厚生労働省が公表した過労死等の労災補償状況においても、医療、福祉の分野で精神障害に関する事案の請求件数、支給決定件数が一番多く、他業種の約二倍程度です。全体の支給決定件数も増加しており、業務における強い心理的負荷、精神障害の発病に関与した事象には、パワハラを受けた、セクハラを受けたがトップスリーに入っており、働く人を守るためにハラスメントを禁止する法律が必要です。
 さらに、加盟の地方組織が運営する労働相談センターに寄せられたハラスメントに関する労働相談事例から三つのケースを御紹介します。
 一つ目は、会計年度任用職員として市役所で働く仲間からです。上司のわがままや気分に振り回されていて、精神的に疲弊している。仕事時間外の飲み会への送迎を強制される。プライベートの時間に個人的なLINEが来たり、社内メールで自分が飲んだペットボトルを捨てろとか空気を読んで休めと言われる。会計年度任用職員は使い捨てとばかり、精神を病むと解雇するという契約上の規約がある。そのため、夜も眠れなくて安定剤を服用したときもある。送迎の件は前の上司にも相談したが、我慢してほしいと言われた。
 二つ目は、小売営業職の仲間からです。店長のハラスメントで店員が辞めていく。店長の陰口がひどい。会社にハラスメントの相談窓口がない。長く勤めているが健康診断が行われていない。就業規則を見たことがなく、出退勤はパソコン管理だが、店長が勝手に改ざんし、労働時間どおりの賃金が支払われていない。
 三つ目は、公務の職場で働く仲間からです。内部通報が議員のところにあり、議員が担当部局に問合せをした。担当部局長は、管理職に同通報があったことを伝え、犯人捜しをしないようにと指示した。しかし、管理職の一人が同通報者の特定に動き、Aさんを通報者の協力者ではないかと疑い、執拗に通報に協力したのではないかと聞いてきた。Aさんは執拗な問いかけに恐怖を感じたが、穏やかに対応し否定した。その後、Aさんは業務の忙しさもあって精神疾患を発症し、休職。職場のハラスメント委員会に調査を依頼したが、ハラスメントに該当しないとの判断をされた。
 このように、職場内で弱い立場の労働者に対する暴言や仕事上でのしわ寄せ、仕事外しが頻発しています。心身の健康が損なわれ、休職に追い込まれたり、改善を求める声を上げればたたき潰され、上司に相談してもまともに取り合ってくれない場合が多く、当事者がますます孤立感を深めていく事例もあります。加えて、経営側は会社都合で退職させたくないので、ハラスメントで自己都合退職に追い込もうとするケースや、解雇や労働条件切下げを行う事例も少なからず存在しています。
 ハラスメントは人権侵害であること、憲法で定められた基本的人権の問題であることを皆さんと共有し、皆さんお一人お一人の人権意識が問われているという点をまず申し上げたく存じます。
 私たち全国労働組合総連合は、性別や性自認にかかわらず全ての労働者が働き続けられる職場環境を整えること、全てのハラスメントと暴力を禁止する禁止法を罰則規定付きで制定すること、国の責任で個人通報できる独立した人権機関の設立、ILO第百九十号、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約を日本も批准することを求めています。
 今回の法律案では、労働施策総合推進法改正案でカスハラ対策の強化、男女雇用機会均等法改正案で求職者等に対するセクハラ対策の強化等、前進面があり、私たちも一定、職場からの声に応えるものであると受け止めております。しかし、そもそも、カスハラも就活生へのセクハラも、その他あらゆるハラスメントもないのが本来あるべき姿です。
 労働施策総合推進法改正案の職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて、国民の規範意識を醸成の部分については、セクハラがどのようなものであり、してはいけないことだという規範意識は十分醸成されていると考えていますが、被害は増え続けています。
 現行法では事業主に相談窓口の設置と対処を義務付けていますが、被害者は職場を辞めざるを得ず、キャリアも人生も棒に振ることになる一方、加害者は変わらず勤務し続けられます。力の強い者が弱い者に対して行うのがハラスメントの本質です。弱い側が心身共に傷つけられて、泣いて泣いて何キロも痩せて、心療内科に通って、仕事も辞めて、トラウマになって、時には自死に追い込まれてというこのサイクルをもう止めなければいけない。そのために、事業主に任せるだけではなく、法的に定義し禁止することが必要です。
 女性活躍推進法改正に関わっては、男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表について、対象事業主の規模拡大や女性の健康上の特性への配慮、基本方針へのハラスメント対策の位置付けなど前進面があります。しかし、同法の下、様々な施策が取られてきたにもかかわらず、国際的に見て、男女間賃金差異が依然として大きく、縮まらないこと、女性管理職比率が依然として低いことに加え、同法施行から十年、日本のジェンダーギャップ指数がG7最下位と低迷が続いていることを踏まえれば、まだ不十分です。
 さらに、情報公表の対象について、日本企業の九九・七%を中小企業が占めている上、従業員の構成比で女性が四割以上を占める卸・小売業、生活関連サービス業、医療、福祉等は百人未満の企業規模が多いことからも、全ての企業、事業主を情報公表の対象とし、実効性を担保すべきです。
 ほかにも不十分な点として、以下申し上げます。
 労政審で挙げられていた職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律に明記するものではない点、ハラスメントの定義がなく、罰則規定付きで包括的にハラスメントを禁止する法律ではない点、独立した人権機関の設立について触れられていない点です。さらに、二〇一九年、第百九十八国会、女性活躍推進法改正の附帯決議で、ILO第百九十号条約に関連して、ILO総会において条約成立後は批准に向けて検討を行うこととされていましたが、現在まで条約批准がされておらず、その間にも被害は増え続けています。
 世界に目を向ければ、暴力とハラスメントのない仕事の世界に対する全ての者の権利を尊重、促進、実現することを求めるILO第百九十号条約は、二〇一九年六月に採択され、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなど、四十九の国が批准しています。
 日本の職場にも正規、非正規など契約の違いもあり、様々な条件で働く労働者、就活生等の求職者、インターンシップ、外国人技能実習生、移住労働者、ボランティア等がいます。ILOは、百九十号条約で明確に暴力とハラスメントは人権侵害であると定めた上で、これらを始めとする全ての働く人に対して、民間、公務、都市、農村、取引先、顧客、患者、公共空間にいる人など第三者行為や、メール等オンライン上、通勤時、休憩時も含め、仕事の世界においてハラスメントと暴力を撤廃する必要があるとしています。日本で暮らしていても、世界水準で人権が尊重されていてハラスメントも暴力もない職場環境実現を求めます。
 昨年六月、国連人権理事会に国連ビジネスと人権作業部会による二〇二三年訪日調査報告が提出されました。その報告によると、日本における構造的な人権課題がビジネスと人権分野における国や民間セクターの取組の一環として十分に対処されていないことを懸念するとした上で、日本の女性やLGBTQI+の人々、技能実習生や移住労働者などマイノリティーグループはリスクにさらされているグループと指摘されています。不平等と差別の構造を完全に解体することが急務と報告されており、人権を保護する国家の義務として、独立した国内人権機関の設立やデューデリジェンス法の採択等が勧告されました。国際水準に見合う国家の義務を果たすとともに、勧告にある企業の責任や救済アクセスを整えるために必要な制度、支援を行うことを求めます。
 LGBTQI+等の性的マイノリティーの仲間が感じている職場での働きづらさを少しでも解消できるよう、SOGIハラに関わる施策も求めます。LGBTQI+の人々は日本に一〇%前後いるとされていますが、差別や偏見によって言い出せない、言えない人がまだ圧倒的に多いのが現状です。あるNPO法人の調査によると、就活時にトランスジェンダーの八九%の人が困難、ハラスメントを経験し、そのうち九六%が相談できなかったとのことです。働く仲間からは、カミングアウトして解雇されないか不安で職場に言えない、職場での更衣室、トイレの使用で困っているなどの声が上がっています。当事者が相談したい場合に抵抗なく相談できる制度、安心して働き続けられる職場環境の充実が急がれます。
 仕事の世界で最もひどいジェンダー不平等はハラスメントと差別と暴力です。女性や性的マイノリティーであることに加えて、相手側がパワーを持っていることも複雑に絡み合っています。セクハラ掛けるパワハラ、SOGIハラ掛けるパワハラで被害は増大です。これに加えて、マタハラ、イクハラ、ケアハラ、カスハラ、ジタハラ、モラハラと掛け合わさっていくと、被害は更に膨れ上がります。
 私は教員として学校現場で働いていたので、全ての取組に子供たちの未来をイメージしています。子供たちが働くようになったとき、職場に差別やハラスメントはあるけれど、昔よりはジェンダーかいわいましになってきているからもういいわけはありません。差別はあるかないか、ハラスメントはあるかないか、暴力も性暴力もあるかないかです。私たちはもう我慢したくないし、我慢させたくありません。
 改めて、今後の御審議において、以下五点の内容が盛り込まれた法案となるよう、修正を期待するものです。
 第一に、ハラスメントの定義です。職場では様々な種類のハラスメントが複合的に絡み合っているのが実態です。複合的であるからこそ現行法に収まるものではありません。全体像を包括的に見る必要があります。
 第二に、包括的ハラスメント禁止法を罰則規定付きで制定されるよう強く求めます。事業主の雇用管理上の防止措置義務が課されて十八年たちますが、昨年の厚生労働省の調査では、セクハラ、パワハラ対策に取り組んでいない勤務先が六〇%を超えています。労働者がセクハラ、パワハラを受けていることを認識した際の勤務先の対応として、特に何もしなかったがセクハラで四〇%以上、パワハラでは五〇%以上に上っています。
 第三に、国連が指摘するように、国の責任で独立した人権機関の設立を求めます。
 第四に、賃金や管理職比率など、男女格差を縮め、最終的には実質の平等となるよう、実効ある取組を求めます。
 第五に、日本にいても国際水準レベルで安心して働き続けることができるよう、ILO百九十号条約の批准を求めます。仕事の世界に暴力もハラスメントも要りません。
 最後に、国際水準に見合う職場での人権意識を底上げする政策、国の責任であらゆる差別とハラスメント及び暴力を構造的に根絶するための法改正となることを強く求めます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121714260X01620250529_009

発言者: 高木りつ

speaker_id: 8355

日付: 2025-05-29

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会