厚生労働委員会

2025-05-29 参議院 全267発言

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会議録情報#0
令和七年五月二十九日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十七日
    辞任         補欠選任
     高橋 次郎君     新妻 秀規君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         柘植 芳文君
    理 事
                神谷 政幸君
                羽生田 俊君
                三浦  靖君
                森本 真治君
                秋野 公造君
    委 員
                石田 昌宏君
                衛藤 晟一君
                こやり隆史君
                自見はなこ君
                比嘉奈津美君
                星  北斗君
                山田  宏君
                石橋 通宏君
                大椿ゆうこ君
                高木 真理君
                塩田 博昭君
                新妻 秀規君
                猪瀬 直樹君
                山口 和之君
                田村 まみ君
                倉林 明子君
                天畠 大輔君
       発議者      石橋 通宏君
       発議者      田村 まみ君
   衆議院議員
       修正案提出者   岡本 充功君
   国務大臣
       厚生労働大臣   福岡 資麿君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐伯 道子君
   政府参考人
       人事院事務総局
       人材局審議官   荒竹 宏之君
       内閣府大臣官房
       審議官      原  典久君
       内閣府大臣官房
       審議官      江浪 武志君
       総務省自治行政
       局公務員部長   小池 信之君
       文部科学省大臣
       官房文部科学戦
       略官       松坂 浩史君
       厚生労働省労働
       基準局長     岸本 武史君
       厚生労働省労働
       基準局安全衛生
       部長       井内  努君
       厚生労働省雇用
       環境・均等局長  田中佐智子君
       中小企業庁事業
       環境部長     山本 和徳君
   参考人
       弁護士      中井 智子君
       独立行政法人労
       働政策研究・研
       修機構副主任研
       究員       内藤  忍君
       久留米大学保健
       管理センター・
       久留米大学医学
       部神経精神医学
       講座准教授    大江美佐里君
       全国労働組合総
       連合副議長    高木 りつ君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(閣法第五〇号)(衆議院送付)
○労働安全衛生法及び特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(参第七号)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
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柘植芳文#1
○委員長(柘植芳文君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、高橋次郎君が委員を辞任され、その補欠として新妻秀規君が選任されました。
    ─────────────
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柘植芳文#2
○委員長(柘植芳文君) 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案及び労働安全衛生法及び特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
 御出席をいただいております参考人は、弁護士中井智子さん、独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員内藤忍さん、久留米大学保健管理センター・久留米大学医学部神経精神医学講座准教授大江美佐里さん及び全国労働組合総連合副議長高木りつさんでございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございました。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、中井参考人、内藤参考人、大江参考人、高木参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきを願います。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず中井参考人からお願いいたします。中井参考人。
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中井智子#3
○参考人(中井智子君) 皆様、おはようございます。私は弁護士の中井と申します。
 本日は、労働施策総合推進法等の改正法案の審議に際しまして、同法案に対する意見を述べさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、弁護士として、日頃、主に使用者側からの御相談を受けて相談あるいは紛争に対応している弁護士でございます。昨今、やはりハラスメントに関する相談が増えてきているという実感を持っております。
 ところで、本改正では様々な点に関する複数の法律の改正案が提起されておりますけれども、私からは、自身の実務上の経験を踏まえまして、その改正点のうち一部を取り上げさせていただき、意見を述べさせていただきます。
 さて、初めに、今回の労働施策総合推進法等の改正の目玉の一つとも言うべきカスタマーハラスメントに関する意見を述べさせていただきます。
 昨今、カスタマーハラスメントに関するトラブル事例が報告、報道されたり、あるいは東京都ではカスタマーハラスメント条例の施行が本年四月より開始しております。また、皆様、普通にスマートフォンを持っているというのが普通の時代になりました。これによって、例えば、無断で写真撮影をされる、動画撮影をされるというようなことも増えてまいりましたし、こういったことがSNSにアップされて拡散をしていくという、こういうおそれが格段に高くなっているという、こういう時代になっています。
 やはり、今回、この時代においては、一個人の発言や発信力というのが非常に力を増しているということがあって、この対応に苦慮しているという場面が多くなってきていると、このように実感をしております。
 ただ、カスタマーハラスメントという事象がかつて全くなかったかというと、そういうことではないというふうに思います。かつてよりそういう問題はあって、これまでも対応してきたという経緯はあったと思います。しかし、過去は、どちらかというと対応がうまい、あるいはあしらいがうまいと、こういう労働者がその対応を一身に背負っていると、こういう個人の力量に頼っていた面もあったのではないかと私は考えます。
 しかし、事業主側としては、今後、人材の獲得が難しくなると、少子高齢化によって難しくなると、こういう時代を迎えて、こういった対応を見直す必要があるというふうに考えます。カスタマーハラスメントを個人の力量に頼る時代はもう終わったというふうに考えます。使用者は、カスタマーハラスメントについて組織をもって対応するということに切り替え、そして、労働者の職場環境を良好なものにしていかなければならないというふうに考えます。カスタマーハラスメント問題に直面して対応に困って困惑すると、こういった労働者が離職をしていくというようなことは絶対避けるべきであり、事業主側としては、必要な人材を確保し育てていくこともこういうことでは困難になってしまうということを危惧します。そういう点では事業主にとっても大きな損失を被る可能性があると、こういう問題だというふうに認識をしております。
 したがいまして、カスタマーハラスメントについて、事業主に一定の雇用管理上の義務を、措置義務を義務付けるということをして、そして、もってカスタマーハラスメントの対策を図るという本改正の方針については、事業主としては、人材を確保し、そして育て、そしてその価値を最大限に引き出していくということのその前提として、事業主に求められる具体的な行為規範を示すものであるというふうに評価をいたします。これは、別の面から言えば、事業主の危機管理体制の整備の一つになるということも言えると考えております。私は、その点で、このカスタマーハラスメントに関する法改正の方針について賛成をいたします。
 カスタマーハラスメントの法改正に関して、少々細かい実務上の問題について以下述べさせていただきます。
 カスタマーハラスメントについては法令でその定義が整備される予定となっております。もちろん、事業主にカスタマーハラスメントの一定の措置義務を設ける以上は、その対象、ターゲットたるカスタマーハラスメントの概念が明確になっているという必要はあります。ただ、法令案では、社会通念上許容される範囲を超えたというものになっておりますが、これは多分に評価を含む概念ということになります。この概念を事業主が分析していくためにはどういうアプローチをすればいいのかということについては、今後より具体的に示していただく必要があると、このように考えています。
 また、事業主によってはその業態、それから業種、そして商慣習、そういったものも実に様々でございまして、最終的には個々の事業主が検討しなければならない課題であろうということは認識をしております。もうその検討に当たって、業界ごとに共通するような類似事例を共有して分析をするということは効率的な対応に資すると、このように考えます。
 また、もう一つ、カスタマーハラスメントに関しては、各種法令等抵触する場面というものもあります。例えば、その例としては、医師、医師法に定める応招義務などに関しては、カスタマーハラスメントと応招義務のぶつかり合いの場面が出てくるということになります。これは、法令上は正当な理由というものがあれば応招義務は免れると、こういうふうに定められておりますし、現時点でも患者の迷惑な行為に関して例として挙げられています。しかし、今後、カスタマーハラスメントの法整備がされた場合には、更にこの法制度との整合性の観点から、より解釈について整合性を取ったものを作っていくことも有用ではないかなというふうに思います。そのために、これは今例を申し上げましたけれども、その他の業態においても各種監督官庁との調整といったものは必要になってくる場面が多いと、このように私は考えます。
 また、先ほど業界ごとに検討するのもよいということを申し上げましたけれども、これは、抵触する法令があるかどうかということに限らず、適切に対応するために必要な体制の整備というのは何なのかというのを事業主として検討するために、効率的な検討に資するということが業界での取組ということがつながると私は考えます。業界が同じであれば同じ問題を抱えている、必ず共通点があるはずでございまして、この共通点を業界をまたいで、失礼、業界の中で事業主をまたいで共有することで、連携して有効な対応策を確保することができるのではないかと、このように考えております。
 次の問題ですけれども、カスタマーハラスメントについては、他のハラスメント類型とは異なる点があります。今から申し上げたいのは、国、事業主、労働者、そして顧客等についての責務について定めている規定に関する私の意見になります。
 これまで法で整備されてきたセクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントあるいはパワーハラスメントというのは、原則として事業主の中で起きたものに対する対応です。行為者も、そして被害者と目される者も同じ事業主の中にいるというのが原則でございます。カスタマーハラスメントはそうではありません。類型上は必ずその行為者というのは事業主の外にいると、こういう関係にあると。ここが今までのハラスメント法制とは決定的に違います。
 そのために、今まで、三つの申し上げたハラスメントではその予防策というのを取るというのも有効だというふうに言われてきていますけれども、カスタマーハラスメントに関してはなかなかその行為者に対する予防教育というのを実効的に行うというのは難しい面があります。
 最近では、例えば駅、そして例えばタクシー、店、そういったところにカスハラはいけないという趣旨のポスターが貼られているというのを御覧になった方も多いかと思います。これは、業界あるいは一事業主としてカスハラ予防のために一生懸命啓蒙活動を行っているという一つの表れでございます。こういったことは一定のカスハラ予防のための意義はあると思いますけれども、やはり限界もあるというふうに考えます。
 国が、顧客等に対しても、カスハラはいけないんだと、啓蒙活動取り組んでいくんだと、こういう趣旨の条項を取り込んでいただくということは、事業主が今後カスタマーハラスメントに対する対応策を検討していく、そして対応策を推進していくに当たって追い風になっていただくというふうに、私はそのように捉えております。
 それからもう一点、カスタマーハラスメントについては、もう一つ、先ほど行為者が外部、事業主の外部にいるということを申し上げましたけれども、事業主の内部に行為者がいるのであれば、注意、懲戒処分、配置転換、そういった、労働者ですから、指揮命令に基づいて一定の措置がとれますけれども、カスタマーハラスメントはそういった関係にはございません。
 それから、緊急事態というか、もっと緊急的に対応しなければいけないというようなケースというのも多く想定されるということになります。そういった場合は、例えばですけれども、警察などの外部機関とも連携して対応することが必要になるということも十分考えられます。
 こういった対応を事業主が速やかに行うことができるように、例えば指針その他で外部連携との重要性をうたっていただくということも事業主の取組の一つの後押しになっていただくのではないかと、このように考えております。
 最後に、私からは、主に就活生、就職活動をしている学生などを想定していると思いますけれども、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの対応措置についての法改正について意見を述べさせていただきます。
 今、例えば就職活動を行っている学生、あるいはインターンシップによって企業内で就業体験をするという学生に対するセクシュアルハラスメントの問題がよく報道等でされることもあります。
 就職活動を行う学生というのはOBやOGと例えばマッチングアプリを使って個人的につながるといったこともありまして、企業が完全に活動を把握できていないというようなケースもあります。そういった場面で個人的に連絡を取り合ったり連絡先を交換したりして、その後にその問題がセクシュアルハラスメントにつながっていくという可能性があります。
 せっかく自分の企業に興味を持って、そして就職の意欲を示してくれたという者に対してこの自社の社員がセクシュアルハラスメントなどを行えば、その企業について失望しますし、就業する意欲はなくすというのは当然の流れだと、こういうふうに思います。事業主にとっては、大事な求職者を失うという点で大きな損失だというふうに考えます。そして、事業主の信用失墜も大きいと、このように考えます。これは事業主にとっても大きな法的なリスクということが言えます。
 また、もう一つの問題として、就職活動等の場面のセクシュアルハラスメントというのはなかなか問題が表面化しないという問題もあります。就職活動をやめるということで問題が終わりになってしまうということも多いというふうに認識をしております。その結果、事業主、企業にとっては認識していない法的リスクは実はたくさんあると、こういうことが起きてしまうと。こういう問題もこの求職者等のセクハラ問題にはあるというふうに考えています。
 ということで、こういう事態になると後で大きなリスクになるというのは、跳ね返ってくるのは事業主でございますので、今回議論されている求職者に対するセクシュアルハラスメントの雇用措置をとるということについては、これは、教育や周知、労働者に教育や周知を行っていくことはとても大事だと思います。したがいまして、私は、今回初めて事業主の外の求職者に対するセクハラについて防止に向けた雇用管理上の措置をとるという考え方、この本改正の方針について賛成をいたします。
 以上、私より意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
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柘植芳文#4
○委員長(柘植芳文君) ありがとうございました。
 次に、内藤参考人にお願いをいたします。内藤参考人。
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内藤忍#5
○参考人(内藤忍君) おはようございます。労働政策研究副主任研究員の内藤忍と申します。
 今日は、貴重な場で意見陳述の機会を賜りまして、ありがとうございます。
 私は、労働法分野で、主に仕事上のハラスメントの防止策についての研究を進めてきた者でございます。ハラスメント関係では、これまで過去に、厚労省でパワハラ関係の複数の会議の委員を務めてきたほか、二〇二一年度から自治労のカスハラのマニュアル作成に関わりまして、その後、二〇二三年度からは東京都のカスハラ条例の検討部会の委員などを務めております。
 さて、今回は労働施策総合推進法等の改正法案ということで、幾つかの改正点が含まれていますが、今日は時間の制約上、私からは主に現行のハラスメント法制の課題について意見を述べさせていただきたいと思います。
 最初に、残念なことをお伝えしなければなりません。それは、今日の準備のために現行のハラスメント法制を見て意見を述べるべき項目を書き出してみますと、それは二〇一九年の前回のハラスメントの法改正時に衆議院厚労委員会で参考人としてお話しした項目とほぼ同じでした。六年もたったのに指摘する内容もほとんど変わっておりません。今のままのハラスメント法制、若しくは改正するにしてもこのように余りにも時間が掛かる法改正のスピードでは、ハラスメントや、その被害の深刻さに対する無理解からくる不適切な対応や、二次被害に苦しむ人は減りません。
 そして、適切な救済制度がない日本において、多くのハラスメント被害者が泣き寝入りを強いられています。被害者は我慢し続けるので、結果、心身に影響を及ぼすことも多く、今、中井参考人からもお話ありましたが、人材の流出にもつながるということで、企業のリスクにもなり得る問題です。
 今回、カスハラ、求職者等へのセクハラへの対策として提案されたのは、これまでも日本のハラスメントの法規制の中心であった事業主の措置義務という形です。これらについて、指針で事業主は取り組むことが望ましいとされている現段階からすれば、事業主の義務化自体は良い方向と考え、私は賛成いたします。
 しかし、そもそも現行のハラスメントの措置義務には、履行率が低いという問題点があります。現在、ハラスメント指針で義務化されている十項目の措置のうち全義務を履行している事業主の割合はといえば、セクハラの場合は、措置は、三十人以上の規模の企業で四八・三%が全て取り組んでいるであり、つまり、四五・九%が一部取り組んでいない取組がある、五・八%が取り組んでいないと回答しています。パワハラもほぼ同様の割合です。
 つまり、現在、過半数の企業が義務違反の状態にあるというわけです。セクハラの場合、二〇〇七年に均等法の措置義務が施行されて十八年もたちます。それなのに、半数以上の事業主が法を守れていないのです。これが日本のハラスメントの中心的な規制なのにです。
 事業主がハラスメントを予防したり対応したりすることはハラスメントをなくしていく上で大切なことなので、この措置義務という手法がハラスメント法の中に取り込まれることは評価すべきです。
 仕事の世界における暴力とハラスメントに関するILO百九十号条約でも、使用者に防止措置を求める法整備は求められています。だとすれば、措置義務という手法を取ると同時にこの措置義務の取組率を高める仕組みも考えなければ、実効性は低いものとなってしまい、ハラスメントは減らないでしょう。
 本法案の措置義務化も、これまでのハラスメントと横並びに法律に盛り込むことだけが目標化してしまっていなかったでしょうか。措置を遵守しない場合、法に基づき、行政は事業主に対し是正指導することができますが、不遵守に対する罰則はなく、唯一の制裁と言える企業名の公表制度でも、ハラスメントの措置義務違反で企業名が公表されたことはありません。その理由は、指導されれば是正する事業主がほとんどだからですが、企業名公表規定が措置義務履行を促進するよう、より機能する方向で運用の在り方についての検討を進めるべきと考えます。
 なお、前回、二〇一九年の法改正時の参議院の附帯決議で、指導に従わない場合の企業名公表の効果的な運用方法について検討を行うことと、既に政府に注文が付いていたことを付言しておきます。
 法が求めている措置に関する別の問題点としては、それらの義務が必ずしもハラスメント防止や解決に有効なものとなっているわけではないということです。国は、均等法や労働施策総合推進法で事業主にハラスメントの相談窓口の設置、周知を義務付けていますが、実際に相談するハラスメント被害者は非常に少ないのです。
 厚労省調査では、例えばセクハラでは、社内の相談窓口への相談は被害者の二・八%、被害者のです。人事等の社内の相談部署にも三・八%の被害者しか相談していません。職場でセクハラを受けて、何もしなかった、つまり我慢している人が含まれますが、と回答した人は五一・七%と、事後の対応としては最も多いままです。
 つまり、法は相談窓口の設置と周知を求めていますが、ただ形ばかり窓口を設置、周知しても、利用されない、実効的でないということです。ハラスメント対策として事業主に措置を課すということであれば、どのような取組をどう取り組めば社内風土が変わって、ハラスメントを実際に防止できたり、当事者が納得できる解決が得られたりするのかをきちんと検証した上で企業に義務化する必要があると考えます。
 次に、救済です。前回、こちらの参議院の附帯決議でも、ハラスメント被害の救済状況について民間、地方公務員の両方について調査をし、実効性ある救済手段の在り方について検討することとされましたが、私が知る限り、実効性ある救済手段の在り方の検討はなされていないと思います。
 民間労働者はハラスメントの紛争解決のため労働局を使用することができるわけですけれども、セクハラの相談は七千四百十四件ありますけれども、紛争解決の援助申立ては九十件、調停は七十六件と、紛争解決、救済に至るケースというのは非常に少ないです。裁判や労働審判を利用するのは非常に大変ですので、行政の紛争解決が利用しやすいようにしなければならないというふうに思っています。
 先ほど述べたILO百九十号条約では、加盟国は暴力やハラスメントが生じた場合に適切かつ効果的な救済、安全かつ公正で効果的な報告並びに紛争解決のための制度等を利用できることを確保する措置をとると加盟国に求めています。しかし、現在の日本の労働局の紛争解決の特徴の一つは互譲性とうたわれ、当事者同士が譲り合う、歩み寄りによる紛争の現実的な解決を図るというふうに書かれています。
 ハラスメントはあってはならないもの、この社会からなくすべきものとして法制化を進めていると思いますけれども、いざハラスメント事案が起きた際の解決において被害者が譲らなければならない制度が適切なものなのか、ILOの言う適切かつ効果的な救済なのかは検討が必要だと思います。
 地方公務員の救済についてです。
 今年度行われた総務省が行った地方公共団体における各種ハラスメント対策の取組状況に関する調査によれば、ハラスメントについて第三者による紛争解決援助として人事委員会、公平委員会への苦情相談が可能な旨の周知を行っている市区町村は約七割のみでした。つまり三割はやっていません。
 しかし、同じく二〇二四年度に行った別の地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査では、地方公共団体の職員に聞くと、パワハラもセクハラも二、三割しか周知されていないと回答しています。同調査でセクハラ被害を受けて人事委員会、公平委員会に相談、通報したと回答した人は、被害者のうち〇・〇%でした。パワハラ被害では〇・二%でした。つまり、地方公共団体側の回答と異なり、制度の周知も二、三割にしか届いておらず、制度は被害者に全く使われていません。
 地方公務もハラスメントの措置義務の対象でありますけれども、第三者による紛争解決制度である労働局の相談、紛争解決制度については地方公務員は適用除外されています。したがって、この人事委員会、公平委員会が使いやすいものでなければならないのではないでしょうか。
 地方公務員にとって第三者による救済制度が保障されていない状態です。国が批准を目指すILO条約に言う適切かつ効果的な救済をどう地方公務員にも保障するか、課題であると思います。
 ハラスメントの抑止の観点から、本法案で提案されている規範意識を醸成するための国の啓発活動といったものにとどまらず、法が明確にハラスメントを禁止することを併せて検討すべきだと考えます。
 なお、ハラスメントの禁止規定については、海外の多くの国で禁止されており、ILO百九十号条約でも法律で禁じることが盛り込まれております。さらに、国連の女性差別撤廃委員会は、複数回にわたり日本政府に対し禁止規定の導入を勧告していることも併せて付言しておきます。
 二次被害対策についてです。
 禁止規定がないことも関連しますが、ハラスメント、特に性被害であるところのセクハラの深刻さを軽視することや無理解につながっている可能性があります。前回法改正時に附帯決議に入っていたように、政府の宿題だったと思われますが、検討は進んでおりません。
 「#私が退職した本当の理由」というものを御存じでしょうか。このハッシュタグの名前が表すように、多くの人は本当の理由を、ハラスメントを受けても本当の理由を告げずに去っています。先ほど中井参考人からもそのようなお話がありましたけれども、告げずに去っています。その理由は、相談担当者とか周囲の人の無理解に傷ついて、本当の退職理由を言えずに辞めているということです。こういうハッシュタグが数か月前にはやって、テレビ番組でも取り上げられたところです。
 第三者からのセクハラ対策についてです。
 今回、カスタマーハラスメントについてが本法案の中で措置義務化盛り込まれていますけれども、第三者からのセクシュアルなハラスメントについては均等法、男女雇用機会均等法で既に措置義務の対象となっております。これについては、セクハラ的カスハラについては既に措置義務なのに知られていないという側面があります。
 フジテレビのような事案が起きた場合に、均等法では、事業主は相談に迅速かつ適切に応じ、事実確認しなければなりません。これをしない場合には行政指導の対象になるはずです。そして、相手方に調査への協力を求めたり、調査の結果次第では取引の中止等、自社の社員を守るための何らかの対応をしなければならないことになっています。
 しかし、フジテレビほどの大企業でもこれが知られていなかったのではないでしょうか。今回のカスハラとともに、セクハラ、第三者からのセクハラについても措置義務の対象に既になっていることについて広めていただいた方がいいのではないでしょうか。
 最後に、求職者等へのハラスメントについてです。
 性別、性的指向、性自認、ジェンダーアイデンティティー等の属性に関するハラスメントも、労働者から求職者等に対して起きています。前回法改正時にパワハラにこれらの属性に関するハラスメントは類型化されております。指針や通達に記載されております。
 パワハラに類型化されたこれらのハラスメントは、求職者等に対してあっていいというわけではありません。今回、セクハラが対応されるということですが、セクハラだけではなく、あらゆるハラスメントについても対応される必要があるというふうに考えます。
 以上です。
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柘植芳文#6
○委員長(柘植芳文君) ありがとうございました。
 次に、大江参考人にお願いをいたします。大江参考人。
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大江美佐里#7
○参考人(大江美佐里君) おはようございます。久留米大学の大江美佐里と申します。
 本日は、参考人として発言させていただく機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、精神科医の立場より、パワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントが精神面に及ぼす影響についてお話をさせていただきたいと思います。
 本日は、その影響の疾患、どのような疾患になるかというところに関しまして、適応反応症、これは、病名に関しましては以前より適応障害と呼ばれて、現在もそのように呼ばれているところございますが、適応反応症という病名に今後変わっていく過渡期にございまして、今ちょっと両方とも併記させていただいております。そして、うつ病、そして心的外傷後ストレス症あるいは心的外傷後ストレス障害、PTSDという疾患、三つの疾患が今日の焦点を当てる疾患としてお話をさせていただきたいと思います。
 令和五年度の職場のハラスメントに関する実態調査の結果によりますと、パワハラ、セクハラに関しましては、怒りや不満、不安などを感じた、仕事に対する意欲が減退したといった心身への影響が多く見られます。特にメンタルヘルスに関しては非常に大きな影響を受けていると。不眠になったり、実際に会社を休む、あるいは会社に出勤していても集中力に欠けてしまうといったようなことが認められるかと思います。
 こういったハラスメントという現象について、ストレス、人間にストレスが掛かるということで、ハラスメントというのは、その原因としてストレッサー、あるいはストレスの原因、ストレス因というような言い方をしますけれども、そのようなストレッサーが人間に与える影響ということに関しましては、心身面の影響に関して、ストレス脆弱モデルということが精神科領域では言われております。
 図に、横軸にストレスに弱い強いといったような脆弱性、縦軸にストレスが掛かるような出来事というようなグラフを作ってストレス脆弱性モデルを示しますと、個人によってストレスに弱い方、強い方というのはいらっしゃいますが、どんなにストレスに強い性質をお持ちの方であっても、非常に強いストレス因、ストレッサーに接しますとメンタルヘルス不調になるというふうに言われております。これがストレス脆弱性モデルでございます。
 そして、そのような心理的ストレッサーというものが、ストレス因というものを、もう少し非常に重いものになりますと、これが心的外傷的出来事あるいはトラウマ体験といったようなところになってございまして、PTSDという疾患になる出来事というのは心的外傷的出来事というふうに決まっておりまして、例としましては身体的暴行、性的暴行などがございますが、このように考えますと、パワハラ、セクハラに関しましては、ストレッサーの範囲に収まるものと、非常に程度が重いものになりますとトラウマ体験、心的外傷的出来事として捉えるべきものが両方合わさってハラスメントとなる原因の行動というものがあるというふうに考えられます。
 職場のハラスメントに関する令和五年の実態調査によりますと、パワハラの種類として最も多いものは精神的な攻撃ということですけれども、過大な要求、そして、まあ数は若干少ないかもしれませんが、明らかな身体的な攻撃なども入っておりますので、このような出来事の中にストレッサーに入るものとトラウマに入るものがあるというふうに言えるかと思います。
 そして、その対象、パワハラの場合の対象となる、それを行う者ですけれども、最も多いのが上司あるいは会社の幹部ということで、もちろん同僚などほかの方もいらっしゃいますけれども、上下関係があって、相手を、自身が相手の方をコントロールできるのではないかというふうに、その職務上の権限とその相手との関係性というのをやはり少し上司に当たる方が取り違えてしまうということも背景要因としてあるかと思います。
 セクハラに関しましても、同様の令和五年の調査では、最も多いものは性的な冗談やからかいというところになってございますが、身体への接触、性的な関係の強要とまでなりますと、これは明らかにトラウマ体験というふうに言えるのではないかというふうに思います。
 そして、このトラウマ、心的外傷的出来事に関して二〇二三年に改定されたアメリカの診断基準のDSM―5―TRというものがございます。DSM―5というのはアメリカの診断、精神科に関する診断基準ですけれども、その解説の部分がテキストリビジョンということで二〇二三年に改訂になりまして、そこに性的なトラウマ、要するに性的なことに関するトラウマ体験に関して新たに段落が追加されております。
 性的トラウマには、現実の又は差し迫った性的暴力又は強要とあるんですけれども、その例が、内容の広がりが、その以前のバージョンよりも内容が広がっておりまして、すなわちそれは、強制的な性的挿入、アルコール、薬物による合意のない性的挿入、他の望まない性的接触、接触を伴わない他の望まない性的体験、すなわち、ポルノ鑑賞を強制される、露出狂による性器の露出を目撃する、望まない性的内容の写真やビデオ撮影及びこれらの写真やビデオの望まない流出の被害者となるということで、こういった内容、特に今動画とかそういったものの影響というのが非常に、技術の発達にもよりましてこういった問題というのは非常に広がってきております。そして、アルコールや薬物などによって合意のない性被害に遭ってしまうといったようなことも含まれて表現されています。このように、セクハラに関してはトラウマ体験というところも併せて考える必要がございます。
 適応反応症、うつ病、PTSDの簡単な、どのような病気かというところでございますけれども、適応反応症、適応障害は、はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから三か月以内に情動面、例えば気分の落ち込みや不安、又は行動面の症状、例えば出勤できないといったことが出現する疾患です。
 うつ病は、思考が十分働かない、気分が落ち込む、興味や関心の低下、眠れない、食欲がないといった症状が二週間以上ほぼ毎日続くという症状を示す疾患です。
 PTSDは、ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダーと申しまして、心的外傷後ストレス症又は心的外傷後ストレス障害という疾患でして、心的外傷的体験、トラウマ体験の後に、その体験の記憶が当時の恐怖や無力感とともに自分の意思とは無関係に思い出される、また、出来事に関する物事を避けたり自分自身を責めたりするという疾患になってございます。
 このような疾患に罹患しますと、もちろん症状によって治療を行ったりするわけですけれども、その結果、改善するということはもちろんございますが、非常に重症な場合に自殺の危険性というのが非常に高いということを私としては非常に懸念をいたしております。
 定義上は、適応反応症という、適応障害という疾患は、もしその同じ方がうつ病という診断が付きますと、適応反応症の診断は該当せず、うつ病の診断になるということになるわけです。ですので、定義上、うつ病の方が疾患としては重いわけですが、張先生らの御研究によって、重症の自殺企図の方のどのような疾患によって自殺企図に至ったかというのを研究しているものがございますけれども、そちらの研究の結果を見ますと、必ずしも適応障害、適応反応症が軽いというわけではございませんで、二三%、その自殺企図をした方五百六十四名中、うつ病などの気分障害の方が二三%でしたけれども、適応障害の方も一九%いらっしゃいました。ですので、適応障害、適応反応症の方も直接自殺に至る可能性が非常に高いということで、見かけの疾患として軽く見えても、実際には自殺といった非常に重い、精神科医としては最も避けたい出来事であることの一つに至ってしまう可能性があるというふうに言われております。張先生によりますと、自殺のプロセスというのは、ライフイベントがあり、その上でサポートが不足した場合にうつ状態になって、それが加速して自殺というふうな状況になるということですので、一部には、適応反応症の方の一部にはうつ病になっていてもそれが見逃されているという可能性もございますけれども、適応反応症という疾患も自殺を及ぼす可能性が高いというふうなことが言えます。
 PTSDに関しましては、うつ病の併存率が五一から八二%と非常に高いことが知られておりまして、PTSDにおいても自殺の問題、非常に大きく取り上げられてございます。
 海外研究ですけれども、海外の先進国での自殺の理由となる精神疾患のPTSDは三位を占めており、発展途上国という表現にこの論文ではさせていただいておりますが、では、自殺する可能性の高い疾患の一位がPTSDということになってございます。
 そして、PTSDとなるようなトラウマ体験と自殺の関連で、どのような出来事が自殺と結び付くかということになりますと、性暴力が一位、対人間暴力が二位ということでして、やはりこれ、この研究に関しましてはパワハラ、セクハラ以外の、もちろん性暴力、対人間暴力も含みますけれども、暴力といったものが非常に自殺との関連が強いというところが示されております。
 PTSDとうつ病が合併しますとなお重くなりまして、PTSDとうつ病が合併しますと自殺の既遂率というのも非常に高くなることが知られております。
 で、PTSDに関して言いますと、自然災害のような出来事においてももちろんPTSDというのは発症するんですけれども、人との関係における、他者が何らかの意図を持って他者を傷つけるような意図的に引き起こすトラウマ体験とそうでないトラウマ体験を比較した場合に、意図的に誰かの、他者が意図的に起こす、例えば大規模なものでいえばテロ攻撃みたいなものになりますけれども、そういったものであると人は非常に傷つくということで、PTSDの有病率もそれ以外の出来事に関して比較しますと、時間の経過とともにPTSDの発症率が下がらずむしろ上がるといった、一年以内の間にどのように変化するかということに関して解析している海外論文によりますと、人との関係によって起こされたトラウマ体験ですとPTSDの影響は長く続くということが言われております。
 しかし、そういったことはございますが、回復の過程という、トラウマ体験後の自殺に対してどのようなことが予防できるのかということの、予防、それを防ぐ因子、あるいはトラウマ体験後にそれを緩衝させる因子というのは研究されていますけれども、ソーシャルサポートというのが非常に強くPTSDの経過に対して良い影響を与えると。つまり、人は人によって傷つくんですけれども、人は人との関係によって回復するというようなことが言われております。
 適応反応症の方の同僚とどのように接したらよいかということに関しましては、薬をやめさせようとしないこと、困ったことがあれば早めに声を掛けてもらうように伝えていただく。これは心理的安全性といって、組織の中で自分の考えが周囲と違っていても罰せられないといった感覚、そして健康的な側面があることを忘れないというところが重要でございます。
 久留米大学では、心が傷ついても、その後違う形で、器、心の器というのを、器の比喩として「こころの金継ぎ」という回復像を久留米大学の私たちの研究グループでは提唱しておりまして、一度心が壊れても人と人との間のつながりでよみがえっていくということを考えておりますけれども、そうは申しましても、やはりこのハラスメントというものがなくなることが一番大切であるというふうに考えております。
 私からは以上です。ありがとうございました。
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柘植芳文#8
○委員長(柘植芳文君) ありがとうございました。
 次に、高木参考人にお願いをいたします。高木参考人。
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高木りつ#9
○参考人(高木りつ君) 全国労働組合総連合副議長の高木りつと申します。
 本日は、このような貴重な機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
 全国の公務と民間の職場で働く者の立場から、仕事の世界におけるハラスメントや暴力、差別を根絶するための更なる修正を求め、以下申し上げます。
 まず、この場にいらっしゃる皆さんに、私たちの仲間の声をお伝えし、問いかけます。皆さんそれぞれのお立場で、この現状について御尽力いただけることは出し尽くされているでしょうか。法案審議に当たって、より一層労働者の置かれている実態を踏まえた議論となりますよう、お願い申し上げます。(資料提示)
 働く仲間からの訴えです。おまえはやる気があるのか、おまえには期待していなかったなどと毎日のように嫌みや圧を掛けられる。休みの日に相談があると呼び出されて車に無理やり乗せられ、挙げ句の果てにホテルに連れていかれる。また、日本自治体労働組合総連合の実施した調査では、公務職場でカスハラを受けたことがあるという職員が四七・六%と約半数に上り、受けた内容として最も多いのは、侮辱、大声で威圧するなど乱暴な暴言が八四・四%でした。
 医療、介護の現場からは、体を触られたり卑わいな言葉を掛けられたり、看護師なんだから言うとおりにしろと言われたり、殴られたり蹴られたりする、入浴介助中、排せつ介助中、検温中などに体に触ってくる、自分の局部を触らせようとする、私生活や体のサイズを異常に聞いてくるなどです。医療系三組織による労働実態調査によると、セクハラはこのような患者からのものが最も多く七八・七%、次に医師からのセクハラが二〇・九%、患者家族からのセクハラは二・一%でした。
 御存じのように、医療、介護の現場で働く仲間は、この間、賃金、待遇が非常に厳しい状況が続いています。その上このようなハラスメントの被害に遭っていれば仕事を続けることは難しいケースも少なくなく、ケア労働の現場での人手不足に拍車が掛かる原因の一つにもなっています。
 厚生労働省が公表した過労死等の労災補償状況においても、医療、福祉の分野で精神障害に関する事案の請求件数、支給決定件数が一番多く、他業種の約二倍程度です。全体の支給決定件数も増加しており、業務における強い心理的負荷、精神障害の発病に関与した事象には、パワハラを受けた、セクハラを受けたがトップスリーに入っており、働く人を守るためにハラスメントを禁止する法律が必要です。
 さらに、加盟の地方組織が運営する労働相談センターに寄せられたハラスメントに関する労働相談事例から三つのケースを御紹介します。
 一つ目は、会計年度任用職員として市役所で働く仲間からです。上司のわがままや気分に振り回されていて、精神的に疲弊している。仕事時間外の飲み会への送迎を強制される。プライベートの時間に個人的なLINEが来たり、社内メールで自分が飲んだペットボトルを捨てろとか空気を読んで休めと言われる。会計年度任用職員は使い捨てとばかり、精神を病むと解雇するという契約上の規約がある。そのため、夜も眠れなくて安定剤を服用したときもある。送迎の件は前の上司にも相談したが、我慢してほしいと言われた。
 二つ目は、小売営業職の仲間からです。店長のハラスメントで店員が辞めていく。店長の陰口がひどい。会社にハラスメントの相談窓口がない。長く勤めているが健康診断が行われていない。就業規則を見たことがなく、出退勤はパソコン管理だが、店長が勝手に改ざんし、労働時間どおりの賃金が支払われていない。
 三つ目は、公務の職場で働く仲間からです。内部通報が議員のところにあり、議員が担当部局に問合せをした。担当部局長は、管理職に同通報があったことを伝え、犯人捜しをしないようにと指示した。しかし、管理職の一人が同通報者の特定に動き、Aさんを通報者の協力者ではないかと疑い、執拗に通報に協力したのではないかと聞いてきた。Aさんは執拗な問いかけに恐怖を感じたが、穏やかに対応し否定した。その後、Aさんは業務の忙しさもあって精神疾患を発症し、休職。職場のハラスメント委員会に調査を依頼したが、ハラスメントに該当しないとの判断をされた。
 このように、職場内で弱い立場の労働者に対する暴言や仕事上でのしわ寄せ、仕事外しが頻発しています。心身の健康が損なわれ、休職に追い込まれたり、改善を求める声を上げればたたき潰され、上司に相談してもまともに取り合ってくれない場合が多く、当事者がますます孤立感を深めていく事例もあります。加えて、経営側は会社都合で退職させたくないので、ハラスメントで自己都合退職に追い込もうとするケースや、解雇や労働条件切下げを行う事例も少なからず存在しています。
 ハラスメントは人権侵害であること、憲法で定められた基本的人権の問題であることを皆さんと共有し、皆さんお一人お一人の人権意識が問われているという点をまず申し上げたく存じます。
 私たち全国労働組合総連合は、性別や性自認にかかわらず全ての労働者が働き続けられる職場環境を整えること、全てのハラスメントと暴力を禁止する禁止法を罰則規定付きで制定すること、国の責任で個人通報できる独立した人権機関の設立、ILO第百九十号、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約を日本も批准することを求めています。
 今回の法律案では、労働施策総合推進法改正案でカスハラ対策の強化、男女雇用機会均等法改正案で求職者等に対するセクハラ対策の強化等、前進面があり、私たちも一定、職場からの声に応えるものであると受け止めております。しかし、そもそも、カスハラも就活生へのセクハラも、その他あらゆるハラスメントもないのが本来あるべき姿です。
 労働施策総合推進法改正案の職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて、国民の規範意識を醸成の部分については、セクハラがどのようなものであり、してはいけないことだという規範意識は十分醸成されていると考えていますが、被害は増え続けています。
 現行法では事業主に相談窓口の設置と対処を義務付けていますが、被害者は職場を辞めざるを得ず、キャリアも人生も棒に振ることになる一方、加害者は変わらず勤務し続けられます。力の強い者が弱い者に対して行うのがハラスメントの本質です。弱い側が心身共に傷つけられて、泣いて泣いて何キロも痩せて、心療内科に通って、仕事も辞めて、トラウマになって、時には自死に追い込まれてというこのサイクルをもう止めなければいけない。そのために、事業主に任せるだけではなく、法的に定義し禁止することが必要です。
 女性活躍推進法改正に関わっては、男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表について、対象事業主の規模拡大や女性の健康上の特性への配慮、基本方針へのハラスメント対策の位置付けなど前進面があります。しかし、同法の下、様々な施策が取られてきたにもかかわらず、国際的に見て、男女間賃金差異が依然として大きく、縮まらないこと、女性管理職比率が依然として低いことに加え、同法施行から十年、日本のジェンダーギャップ指数がG7最下位と低迷が続いていることを踏まえれば、まだ不十分です。
 さらに、情報公表の対象について、日本企業の九九・七%を中小企業が占めている上、従業員の構成比で女性が四割以上を占める卸・小売業、生活関連サービス業、医療、福祉等は百人未満の企業規模が多いことからも、全ての企業、事業主を情報公表の対象とし、実効性を担保すべきです。
 ほかにも不十分な点として、以下申し上げます。
 労政審で挙げられていた職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律に明記するものではない点、ハラスメントの定義がなく、罰則規定付きで包括的にハラスメントを禁止する法律ではない点、独立した人権機関の設立について触れられていない点です。さらに、二〇一九年、第百九十八国会、女性活躍推進法改正の附帯決議で、ILO第百九十号条約に関連して、ILO総会において条約成立後は批准に向けて検討を行うこととされていましたが、現在まで条約批准がされておらず、その間にも被害は増え続けています。
 世界に目を向ければ、暴力とハラスメントのない仕事の世界に対する全ての者の権利を尊重、促進、実現することを求めるILO第百九十号条約は、二〇一九年六月に採択され、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなど、四十九の国が批准しています。
 日本の職場にも正規、非正規など契約の違いもあり、様々な条件で働く労働者、就活生等の求職者、インターンシップ、外国人技能実習生、移住労働者、ボランティア等がいます。ILOは、百九十号条約で明確に暴力とハラスメントは人権侵害であると定めた上で、これらを始めとする全ての働く人に対して、民間、公務、都市、農村、取引先、顧客、患者、公共空間にいる人など第三者行為や、メール等オンライン上、通勤時、休憩時も含め、仕事の世界においてハラスメントと暴力を撤廃する必要があるとしています。日本で暮らしていても、世界水準で人権が尊重されていてハラスメントも暴力もない職場環境実現を求めます。
 昨年六月、国連人権理事会に国連ビジネスと人権作業部会による二〇二三年訪日調査報告が提出されました。その報告によると、日本における構造的な人権課題がビジネスと人権分野における国や民間セクターの取組の一環として十分に対処されていないことを懸念するとした上で、日本の女性やLGBTQI+の人々、技能実習生や移住労働者などマイノリティーグループはリスクにさらされているグループと指摘されています。不平等と差別の構造を完全に解体することが急務と報告されており、人権を保護する国家の義務として、独立した国内人権機関の設立やデューデリジェンス法の採択等が勧告されました。国際水準に見合う国家の義務を果たすとともに、勧告にある企業の責任や救済アクセスを整えるために必要な制度、支援を行うことを求めます。
 LGBTQI+等の性的マイノリティーの仲間が感じている職場での働きづらさを少しでも解消できるよう、SOGIハラに関わる施策も求めます。LGBTQI+の人々は日本に一〇%前後いるとされていますが、差別や偏見によって言い出せない、言えない人がまだ圧倒的に多いのが現状です。あるNPO法人の調査によると、就活時にトランスジェンダーの八九%の人が困難、ハラスメントを経験し、そのうち九六%が相談できなかったとのことです。働く仲間からは、カミングアウトして解雇されないか不安で職場に言えない、職場での更衣室、トイレの使用で困っているなどの声が上がっています。当事者が相談したい場合に抵抗なく相談できる制度、安心して働き続けられる職場環境の充実が急がれます。
 仕事の世界で最もひどいジェンダー不平等はハラスメントと差別と暴力です。女性や性的マイノリティーであることに加えて、相手側がパワーを持っていることも複雑に絡み合っています。セクハラ掛けるパワハラ、SOGIハラ掛けるパワハラで被害は増大です。これに加えて、マタハラ、イクハラ、ケアハラ、カスハラ、ジタハラ、モラハラと掛け合わさっていくと、被害は更に膨れ上がります。
 私は教員として学校現場で働いていたので、全ての取組に子供たちの未来をイメージしています。子供たちが働くようになったとき、職場に差別やハラスメントはあるけれど、昔よりはジェンダーかいわいましになってきているからもういいわけはありません。差別はあるかないか、ハラスメントはあるかないか、暴力も性暴力もあるかないかです。私たちはもう我慢したくないし、我慢させたくありません。
 改めて、今後の御審議において、以下五点の内容が盛り込まれた法案となるよう、修正を期待するものです。
 第一に、ハラスメントの定義です。職場では様々な種類のハラスメントが複合的に絡み合っているのが実態です。複合的であるからこそ現行法に収まるものではありません。全体像を包括的に見る必要があります。
 第二に、包括的ハラスメント禁止法を罰則規定付きで制定されるよう強く求めます。事業主の雇用管理上の防止措置義務が課されて十八年たちますが、昨年の厚生労働省の調査では、セクハラ、パワハラ対策に取り組んでいない勤務先が六〇%を超えています。労働者がセクハラ、パワハラを受けていることを認識した際の勤務先の対応として、特に何もしなかったがセクハラで四〇%以上、パワハラでは五〇%以上に上っています。
 第三に、国連が指摘するように、国の責任で独立した人権機関の設立を求めます。
 第四に、賃金や管理職比率など、男女格差を縮め、最終的には実質の平等となるよう、実効ある取組を求めます。
 第五に、日本にいても国際水準レベルで安心して働き続けることができるよう、ILO百九十号条約の批准を求めます。仕事の世界に暴力もハラスメントも要りません。
 最後に、国際水準に見合う職場での人権意識を底上げする政策、国の責任であらゆる差別とハラスメント及び暴力を構造的に根絶するための法改正となることを強く求めます。
 御清聴ありがとうございました。
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柘植芳文#10
○委員長(柘植芳文君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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こやり隆史#11
○こやり隆史君 自民党のこやりと申します。
 四名の参考人の皆様方には、本当にお忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
 時間も短いですので、早速質問をさせていただきたいと思います。
 まず、大江参考人にお話を、質問させていただきます。
 ストレス脆弱性モデルの御説明、そしてストレッサーであったりトラウマの要因の御説明を頂戴をいたしました。ハラスメントについては、やっぱり難しい、非常に、制度的にどうやって、なくすという目的は多分みんな一緒だと思います、その中でどうやってなくしていくか、あるいはどういう手法でなくしていくかということを具体的に措置を規定することが大変難しい分野であるなというふうに思っています。
 このストレス脆弱性のモデルでも、受け手とストレスそのものの強度の相乗効果、これは多分個人によっても違います。先生、だけど、例えば規制をするときにはどこかで線を引くことになります。科学的にまずこういうどこかで線を引くということ、で、線を引くと、この線までは禁止だ、駄目だけど、ここまではぎりぎりとかですね、ごめんなさい、少し、何というか、線があることゆえに、何というか、そのできることも明らかになってくるわけですね。
 そういうことも含めて、科学的に一般論として、そのハラスメントにおいて線を引くということの可能性というか妥当性というか、そういうものについて御見解を少し教えていただければと思います。
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大江美佐里#12
○参考人(大江美佐里君) 御質問ありがとうございます。
 非常に難しい点の御質問でございまして、例えば、私、先ほどストレス因とトラウマ体験といいますか、そういったものの違いというようなことも申し上げましたけれども、実際の事例に関して、これは心的外傷的出来事に該当するのかという御質問に関して講義などをする際には、もう個別具体的な事案において決まるので、簡単にこの出来事であればこれというふうに決められないというふうに申し上げるわけです。そういうふうに申しますと、その受ける側、受講されるその方は、決まってほしい、例えばこういう事例であればもう必ずトラウマである、必ずストレッサーであるというふうに決めてほしいというところではありますけれども、なかなかそういう具合にいかないというところがございます。
 先ほどのストレス脆弱性モデルに関しましても、では、このぐらいのストレッサーであればというところが簡単には申し上げられないというところになっているかと存じます。
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こやり隆史#13
○こやり隆史君 ありがとうございます。
 様々な事例が積み重なっていけば、またそういう、ある程度の線を引くということは科学的にできる可能性があるかもしれませんけれども、現状、やっぱり個々のケースによって大分違うというのがやっぱり基本的な現状であるというふうに承知をいたしました。
 それで、今回、今日、参考人の皆様も、罰則付きの禁止を措置すべきだというような御意見もありました。多分そこが一番の、法律を構成する上で、どういう手法でこのハラスメントというのをなくしていくかと、何が一番近道になるのか、あるいは何が現実的かということを考えながら多分法体系つくっていかないといけないと思います。
 やはり、罰則付きの禁止規定を設ける以上、多分、これ特に、日本の法体系では特にそうだとは思うんですけれども、やっぱり厳格に、構成要因であったり、厳格にこれ線を、罰則がある以上ですね、引いていかなければならないという現実があると思います。
 海外の例も、海外では禁止規定措置されているということをお話をいただきましたけれども、その海外の事例も含めて、今回、そのハラスメント全般に対する禁止規定というのを入れようとする場合、何というか、その現実的な困難性はある、まあ重々承知だとは思いますけれども、具体的に今現実にこの線を引くということについて、何というんですかね、質問も難しいんですけど、具体的に、可能、できるのかどうかということの見解を、中井参考人、内藤参考人、高木参考人に、済みません、短いコメントで結構ですので、コメントいただければと思います。中井参考人からお願いします。
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中井智子#14
○参考人(中井智子君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 特に罰則付きのハラスメント禁止規定を入れていけるかどうかという点について、私の考えを述べさせていただきます。
 私も弁護士、実務家でございますので、罰則というのであればその対象が明確になっていなければならない、こういう価値判断で物を考えます。そういった場合に、例えばなんですけれども、既に法制度でできているパワハラを例にしますけれども、パワハラは、社会通念上相当性を超えたかどうかというところは、パワハラ指針で様々なものを総合考慮するとなっています。例えばその言動、言動に至る経緯、それからどんな、労働者の属性は何だ、それから労働者の心身の状況はどうか、そういった個別具体的なものも総合考慮してハラスメント該当性を出しています。
 これを考えると、やっぱりケース・バイ・ケースになってしまうんですね。なので、ハラスメントしてはいけないという考え方を浸透させていこうということは私は全く反対しません。そのとおりだと思います。しかし、罰則付きということになりますと、既に法制度で整備されているパワーハラスメント一つ取っても、そのターゲットを一義的に線を引くと、線を囲むというちょっとそういう表現をします、これをすることは非常に難しい面があるのではないかと。私はその点は、罰則付きについては消極的な意見でございます。
 私からは以上でございます。
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内藤忍#15
○参考人(内藤忍君) 御質問ありがとうございます。
 よく禁止規定といいますと必ず罰則の話が出てきて、これが必ずセットでなくてはならないかのような話になっているのですが、必ずしもそうではないと思います。まあ、もちろん罰則が付いているものもあり得るし、その方がいい場合もあります。
 しかし、私はイギリスの労働法が専門なんですけれども、イギリスにおいては、このハラスメントの禁止については、一つは二〇一〇年平等法という反差別法、差別禁止法制の下で禁止される行為として規定されているんですが、その効果としては、雇用審判所というところに訴えることができる、そしてそこで補償金、賠償金が得られることになるという、そういう法的効果があると。だから、司法的効力、司法的効果がある、を有する規定ということになります。
 こちらでも、前回、二〇一九年の法改正のときに、損害賠償請求ができる、の根拠規定となる法規定の検討をすべしということを政府に対して御注文付けられていますが、そういうことと似ているのかなというふうに思います。
 あと、関連することとして、先ほど私、東京都のカスハラ条例の委員をやっているというふうに申しましたが、東京都のカスハラ条例では、カスタマーハラスメントの話ではありますが、第四条において、何人もあらゆる場においてカスタマーハラスメントを行ってはならないという禁止規定を入れました。これは罰則が付いているわけではなくて、メディアには罰則がないというふうに書かれましたけれども、今カスハラのこの段階を考えますと、啓発が重要であるということでして、こういった規定ぶりもあるのかなというふうに思っております。
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こやり隆史#16
○こやり隆史君 済みません、高木参考人にも御意見を伺いたかったんですけど、時間が来てしまいましたので、ほかの質問者に譲りたいと思います。
 ありがとうございました。
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高木真理#17
○高木真理君 参考人の皆さん、参考になる大変貴重な御意見ありがとうございました。
 まず最初に内藤参考人に伺いたいというふうに思いますけれども、今回も含めて、これまでこのハラスメント関係は事業主の措置義務という形で対応する体系でやってきたけれども、しかし、その履行率が低いという点についての御指摘がありました。
 これなんですけれど、私、この後に行われる質問の準備をしているときに、今回も措置義務なので、それでは弱いのではないかということを厚労省にレクの段階で伺いましたところ、いえいえと、すごくやっていますと、みんな措置に応じていただいていますということで、資料ももらったんですね。もう、セクハラで、規模によって違うけれども、全体で八六%、五千人以上のところはもう一〇〇%です。マタハラも、全体で八二・七%、五千人以上は一〇〇%だし、規模が小さいところでも八割近くやっているとか、パワハラも似たような感じの数字がデータでもらいまして、こんなに認識が、実態が、やっていますと思っていたら、こういう方向でしかやらないんじゃないかというふうに思ったんですけど、研究していらっしゃる中で、先ほどはそうじゃない数字を御紹介いただきましたけれども、この政府側の認識の違いみたいなところを感じたことはありますでしょうか。
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内藤忍#18
○参考人(内藤忍君) 御質問ありがとうございます。
 厚労省が間違っているわけではありません。認識の違いといいますか、ちょっと注目しているポイントが違いまして、先ほど申し上げましたが、措置義務というのはハラスメント指針に書いてあるんですけど、セクハラやパワハラの場合は十項目書かれています。この十項目全てを履行しなきゃいけないということになっています、事業主は。
 で、厚労省の言ったのは、このうちどれかを取り組んでいる場合はその高い割合で取り組んでいるというわけで、それ自体は間違っていません。そういう聞き方もしています。でも、私が先ほど申し上げたように、全て取り組んでいるかといいますと、セクハラの場合ですと三十人以上規模で四八・三%ということで、過半数が全部は取り組んでいないということになります。ですから、法違反が生じているということになるというわけです。
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高木真理#19
○高木真理君 ありがとうございました。
 でも、いろいろ取り組まないと前に進まないというのもあるので、やっぱりこれ、厚労省も本当、認識をそういう意味でもしっかり持ってほしいなと思いながら今のお答えを聞きました。
 もう一つ内藤参考人に伺いたいんですけれども、被害者の救済のところで、制度も知られていないし、さらに利用もされていないという実態についての御報告をいただきました。
 これ、だから制度をもっと広めて利用してもらう方に行こうということもあろうかとは思うんですけれども、制度自体が余り期待できないシステムであるためこういう結果が生まれてしまっているのではないかということも考えられるのではないかとお話を伺っていて思いました。
 ここに相談をしてこういうふうにやっていけば解決するということが成功事例、好事例としてみんながそれをやっていけばそれが広まっていくけれども、結果、それ使ってもなというようなことだと広まらないんじゃないかなというふうにも思ったんですけれども、その点についていかがでしょうか。
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内藤忍#20
○参考人(内藤忍君) そうですね、確かに、そこのその救済制度を利用したい被害者、被害を訴えている人と制度側のミスマッチが生じていると思っています。制度側が提供しているのは、調整的な手続、譲り合う手続。しかし、被害者たちにインタビューしますと、自分たちが求めているのは、私たち、私が受けた行為はハラスメントであると、いけない行為であるということ、それから謝罪や補償、そして、私たちの職場でもう二度と起きてほしくないということなんですが、それがこの労働局、行政の現在の紛争解決制度では得られるものとなっておらず、先生おっしゃるとおり、ここにそのミスマッチが生じているということがあるかなというふうに思います。
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高木真理#21
○高木真理君 ありがとうございました。
 次に、大江参考人に伺いたいんですけれども、お話の中で、自殺に至るような大変重いケースでは、PTSDは性暴力あるいは対人暴力によるところが大きいという話があったんですけれども、セクハラとかカスハラというのは、その受けた暴力のところに加えて、要素として、自分の対応が少し違っていたら、違う行動がちょっとどこかで取れたら違う結果だったかもしれないとか、周りの反応がそういうことを言ってくるみたいなことがあって、更に心に重い負荷になってしまうような傾向があるのではないかなというふうに思うんですけれども、そういった点どうでしょうか。
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大江美佐里#22
○参考人(大江美佐里君) 御質問ありがとうございます。
 自分が別の行動が取れたのではないかというような被害を受けた方の御発言というのは、PTSDの症状として、症状の、このことが必ずしもそのトラウマ体験だったかというのはちょっと出来事によって違うところもございますが、もしトラウマ体験ということになりますと、PTSDの症状の診断基準の中に、自分のやったことを過度に責めるような症状というのも、状態も記載がありまして、それが、その後から思い出してこうすれば良かったというのは、その実際体験している中では予測ができなかった、実際のところではできないわけですけれども、後から、結果が出てから思い返してみると、そういうことができたんじゃないだろうかといって御自身を責めて、それがうつ症状につながりというところはございます。
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高木真理#23
○高木真理君 ありがとうございました。
 そういうこともあるので、もう行為自体が悪い、やっちゃ駄目なことなのであって、被害者のせいではないということをしっかり禁止規定とかでうたっていくことがこれからますます必要になっていくなというふうに思いました。ありがとうございます。
 次に、中井参考人に伺いたいんですが、業種ごとにいろいろ様態も違うので、細かくそういったところを規定をして、同じ業界同士の知恵なども集めていくべきだというようなお話もあったんですけれども、これ、個々の業種ごとにそれを伝えていくというような手法も必要なんですが、それをやっていったときに、結果的に、事業主側もあるいはカスハラをしてしまうかもしれない国民の側もいろいろな対応があるということで、なかなか周知という意味では分かりにくくなるというような側面があるのではないかなというふうにも思うんですけれども、そういったときに、今回カスハラのことですけれども、ほかのハラスメントも含めて包括的に、もうこういうこともハラスメント、こういうこともハラスメントだから駄目ということを、大きくそれに国が取り組んでいるんだというようなことがぱあんと出ていくこととかがこのカスハラにとっても有効な方法になっていくのではないかなというようにも思うんですけど、その点いかがでしょうか。
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中井智子#24
○参考人(中井智子君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 カスタマーハラスメントに関してまずお話をすれば、今御指摘をいただいたように、外に向かって発信をしていくと、こういったことは駄目だという問題提起を外に向かってしていくというのは大変有効な手段ではないかなというふうに思います。
 業界での検討と申し上げたのは、これは各事業主の検討の一助になればという趣旨で申し上げた次第でございまして、例えば業界全体でのメッセージを出していくということも一つの方法ではないかなというふうに私は思います。事業主側の個々の検討の中でそれが役に立てばという趣旨で先ほど申し上げました。
 以上でございます。
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高木真理#25
○高木真理君 最後に、高木参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほど内藤参考人にもお伺いをした、なかなか救済の今ある制度も使われていないといういろいろ事例の中でも出てきていたかと思うんですが、これはどうして使われないようになっているのかというところ、現場で感じていらっしゃること簡単にお願いします。ヤジ
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柘植芳文#26
○委員長(柘植芳文君) 挙手をしてからお願いします。
 高木さん、時間が来ておりますので、簡潔にまとめていただきたいと思います。
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高木りつ#27
○参考人(高木りつ君) はい。失礼しました。
 パワーバランスで弱い側が受けるものですので、相談そもそもしづらい。相談すると解雇されるのではないか、仕事外しに遭うのではないかというのが、パワーバランス、弱い側にいる者の立場です。
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高木真理#28
○高木真理君 ありがとうございました。
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秋野公造#29
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。
 今日は、本当に、四人の先生方、ありがとうございました。
 大江先生にお伺いをいたします。
 先生は、国際トラウマティック・ストレス学会の理事として世界的にも御活躍をされた日本を代表するお立場の先生であります。海外のことをよく知る先生に、私たちが議論をしているハラスメントの防止とは日本独特の課題なのかということをちょっと浮き彫りにしたく、海外のハラスメントの状況とか海外のハラスメントが起きたときの対応、こういったものが異なるかということをまずお伺いをしたいと思います。
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