駒村康平の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(駒村康平君) 慶應義塾大学、駒村康平でございます。
本日は、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私の資料を用意させていただいております。パワーポイントを打ち出したものでございまして、今日お話しさせていただきたい内容が、この構成、二枚目にございます。年金制度を評価する評価軸、それから、私は今日は基礎年金の給付水準の底上げの議論を中心にお話をしたいと思いますので、この大きなテーマである基礎年金の給付水準をどう考えていくのかということ。それから、これを、その給付水準の底上げをめぐる三つの課題と、こういったものをお話しさせていただくつもりでございます。
資料は、本体、これについて、資料と続けて、資料一、二、三、四、五点、まあ細かい説明はまたこちらを読んでいただくということで補わさせていただきたいと思います。
では、三ページ目の方に入っていきたいと思います。
年金制度をどう評価するのかと、その改革をどう評価するのかというと、三つの基準があるだろうと思います。
一つは、財政的な持続可能性が確保できているかどうかと。これは、マクロ経済スライドで調整するということで現在持続可能性を確保しているわけでありますけれども、一方、その給付調整を行うことによって、今度は給付の十分性ですね、これが損なわれてしまっても困るということで、今回、これが基礎年金に対するマクロ経済スライドの早期停止の議論に関わっているということでございます。こういうふうに、財政的な問題とは別に、社会経済状況は常に変化していくということで、今、堀参考人からもお話がありましたように、就業形態、家族形態は常に変化を続けていると。これに対応していかなければいけないということで、適用拡大、遺族年金、在職老齢年金と、こういう改革が行われているということでございます。
高齢化が進む中で、その一番、二番のバランスはかなり厳しい状態ではありますけれども、一方で、三に対応する改革をすることによって過度に悲観をするような状態までではまだないだろうと思っています。それから、三は、ゴールはないと、世の中は変わっていく以上、必ず改革が必要になってくるということでございます。
では、四ページ目の方に入りたいと思います。
この中で、今回最大の問題の一つになったのが、基礎年金の代替率、所得代替率が低下をしていくという問題でございます。
二〇〇四年にこのマクロ経済スライドを導入したときの見通しは、報酬比例部分がそのモデル年金の四割、そして基礎年金の六を占めるんだと、こういうバランスで組んでいこうと、こういう予定であったわけですけれども、実はこの現行制度は、このまま、現行の状態がこのままいくと、この四対六のバランスが崩れて、五対五までの状態になってくると。要するに、基礎年金が非常に大きくゆがんで小さくなっていくというのが分かってきたと。
当初のイメージ、基礎年金と厚生年金の報酬比例部分がバランスよく同じピッチで減るはずだったのが、これが、基礎年金に集中的にマクロ経済スライドが長期にわたって掛かっていくと。これが問題になってきたということでございまして、これを何とかするためには、マクロ経済スライドを基礎年金に対して早期に停止しなければいけないということで、これをやるために積立金を使って調整をしていこうということでございます。特に二〇四〇年から退職する氷河期世代を直撃する、基礎年金へのマクロ経済スライドが直撃するようなルートに入っていますので、これをずらすという意味もあっただろうと思います。
この基礎年金の給付水準が下がるということは一体どういうことなのかと、これが五ページ目でございます。
日本の所得保障政策は、生活保護が要石で一番最後にあるわけですけれども、その上に心柱のように基礎年金制度が乗っかっているということで、日本の所得保障制度の中核になっていると。これは、老齢年金のみならず、障害基礎年金、遺族基礎年金もカバーをしていますので、マクロ経済スライドは、この障害年金、遺族基礎年金も含めて三割ぐらい下げてしまうという非常に深刻な問題が起きてくるということでございます。
ちなみに、障害基礎年金受給者は現在約二百十八万人、二兆円をこの部分で給付をしていると。特に二十歳前障害と言われている方、かなり、生まれた直後から障害を持たれているような方は百十八万人ということでございまして、こういう人たちの年金まで道連れに下げていくということが非常に深刻なことを生み出すのではないかということになると思います。恐らく、老齢年金の方でもこの生活保護を受給するような方、あるいは障害年金の方の低下によって障害者で生活保護の方に行く方も増えていくのではないかと思います。
年金の給付水準を下げるとどういうことが起きるのかというのは、この三ポツに書いてありますように、最近もOECDの過去のデータをかなり厳密に分析した研究結果が発表されていまして、これ、基本的に、年金の給付水準を下げると高齢者の貧困率は上昇するということは、まず間違いなくコンセンサスが得られているということでございます。
したがって、この貧困率が上がるイコール生活保護が増えるところまで行くかどうかはまた別の部分で、いわゆる捕捉率という問題がありますので、一〇〇%の貧困者が生活保護を受けられるというわけではございません。日本は捕捉率二〇から二五の幅だと言われていますので、必ずしもストレートに行くというわけではありませんけれども、仮に捕捉率が一緒であれば当然ながら生活保護受給者が増えていく可能性があるということであります。
また、基礎年金の給付水準の低下は、基礎年金のみの方のみならず、報酬比例部分が低い厚生年金加入者にとっても当然ながらダメージが大きいということでございます。
また、次のページでありますように、年金は当然ながら高齢者率、高齢化が進んだ地域ほど依存率が高いと、経済に占める依存率が高いということで、六ページは対高齢化率と年金が県民所得の何%を占めるのかという相関関係を見たものでございまして、当然ながら高齢化が進むところほどこの年金依存率は高いと。
したがって、特にこの基礎年金の動向なんかもこれから非常に注意をしておかなければいけないということになるだろうと思います。
さて、七ページ、マクロ経済スライドの基礎年金に対する影響をどう抑えていくのかということで、所得代替率ベースで見ると大体三割ぐらい下がっていくだろうということが想定されていると。分解して見ると、いろいろな方法が選択肢としてありまして、現在、給付水準三六・二%が二五・五%まで落ちると。これ一〇・七%落ちるということになりますけれども、この一〇・七をどう回復するのかということで幾つか選択肢がありまして、四十五年加入だと四%回復できると、二百万人適用だと一・七%回復できると、そしてマクロ経済スライド基礎年金の適用を短縮すると七・七%回復できるということでございまして、この中で一番基礎年金の給付水準を底上げする効果が大きいのは、短縮、マクロ経済スライドを基礎年金に適用する期間を短縮して、厚生年金のマクロ経済スライドと同時に終わらせるというのが一番効果が高いということでございます。
また、過去三十年ケースで見ると、厚生年金のマクロ経済スライドが二年ぐらいのうちに終わってしまいますので、そういう意味でも今手当てをしなければ遅くなってしまう、手遅れになってしまうということもあって、時間的にもインパクト的にも、適用拡大なども効果はありますけれども、マクロ経済スライドの短縮というのを、基礎年金に対するマクロ経済スライドの短縮が極めて大きいということがこれで分かるということでございます。
今基礎年金に対する効果を説明しましたけれども、八ページの方は、当然ながら、先ほどもお話ししましたように、これをやることによって、厚生年金のモデル年金の方も、放っておけば代替率が一八%下がる部分を、これが代替率八%の低下まで抑え込むことができるということで、サラリーマングループ全員にとっても、これほぼ全員にとっても、これは非常に有益な効果があるということでございます。
これに対して、九ページのように、三つの壁があると私は評価しています。
一つは、積立金の流用がされているんではないかという誤認というか誤解があると。これはある種やむを得ない部分もあって、実は厚生年金と国民年金と基礎年金の関係が国民の皆様に十分伝わり切っていないんじゃないかという部分はございます。
まず、国民年金というのは、基本的には徴収する窓口でございまして、給付する方で基礎年金ということになるということでありまして、その基礎年金は、別名、厚生年金の一階部分であるということの理解でございます。
それから、積立金というのは、個々人に所有権があるものではなくて、基本的には高齢化のピークを乗り越えるためのバッファーファンドであると、あくまでも給付を支えるための資金であって、個々人に所有権があるというわけではないということ。
さらに、この方法を取らないと、実は国民年金の積立金が今十二兆、厚生年金の積立金は二百四十三兆というふうに極めて厚生年金の方のウエートが大きくて、この調整をやらないと、今度はちっちゃい国民年金の積立金の変動結果が基礎年金の給付水準を大きく左右してしまうという非常に困った状態になりますので、これを防ぐためにもこの積立金の活用というのは必要であるということになるだろうと思います。
一方、その二番目の課題としては、世代間の連帯をどう考えていくのかと。
氷河期世代が厳しい状態のまま老後を迎えていくという問題に対してほかの世代がどういうふうに対応するのか、氷河期世代という世代ガチャみたいな問題に対して社会はどういうふうに対応すべきなのかという問題。
それから、最後に、基礎年金を上げる以上、国庫負担も増えてくるということはございます。ただ、先ほど申し上げたように、何もしなければ生活保護も増える可能性がありますので、その差分でどのぐらい国庫負担が増えてくるかという視点も大事ではないかと思います。
十ページの方に行きたいと思います。
今、先ほど申し上げたように、国民年金、基礎年金、自営業年金、で、厚生年金、サラリーマン年金という職業対立的な捉え方をされてしまっていると。しかしながら、国民年金の保険料の負担と厚生年金加入者の保険料の負担はまた違う部分もございます。また、国民年金イコール自営業者というわけでもないという点も押さえておきたいと思います。
十一ページの方でありますけれども、結局、基礎年金とは一体どういうものなのかというと、人生のキャリアが全部集約されたものであると。だから、人生全く一号にしか入っていませんでしたよという人は、要するに現在四十歳の世代を取り除いてみても、取り上げてみてもですね、五・六%にすぎず、残り九五%近くは国民年金、厚生年金二号、三号の経験があると。つまり、積立金に貢献してきたグループであるということでございまして、この基礎年金全体に対してその積立金を活用していくということでございます。
十二ページ、十三ページは、これはストックベースで見たときに、どのくらい積立金が百年間で厚生年金グループの方にきちんと返ってくるのかどうなのかということを見たものでございます。十二、十三はそういうものでございます。
十四ページは、こういうその社会保険の性格についてやはりちゃんと押さえておかなければいけないと。社会保険は、保険原則を持ちながら扶養性の原則も同時に入っている二重性格を持っていますので、保険の内部に既に再分配効果が内蔵されていますし、保険間の再分配効果も当初から入っているという点も押さえておかなければいけないと思っております。
十五ページの方は、この氷河期世代という厳しい世代に対して他の世代がどう考えていくのか。今回は、氷河期世代よりも上の世代が多少我慢してもらう部分が出てくると思います。
そういう意味では、まれに、若い世代から高齢者世代への移転というのが、年金制度はそういう見方ばっかりだったんですけど、今回は逆に流れていくという問題が起きているということで、ここの社会的コンセンサスをどう得るのかというのはやや課題かと思いますけれども、ここは先生、皆様がきちんと議論していただいて、特定の世代がひどい目に遭った世代を見捨てないという姿勢を出すことが私は大事ではないかなと思っております。
十六ページ、最後でございます。
国庫負担というものはどうしても発生するというのは事実だろうと思います。一方で、放置すれば生活保護の方で費用も掛かるという部分でありますので、そういったものも考慮した上でこの国庫負担をどう確保していくのかということになりますと、やはり年金だけを取り上げて議論をするんではなくて、年金、医療、介護、労働問題、居住問題、福祉問題、生活保護問題、税制、こういったものを、社会保障に関わる様々な制度を横断的に議論していくということで国庫のプライオリティーを決めていく。そういう会議体を、与野党の議員の先生、学識者、担当省庁の責任者、労使等が入る形で、根拠に基づいて、長期的、論理的な、恒常的な会議体、これ、かつてあった社会保障制度審議会といったものを再び回復するということが私は必要ではないかと思います。そのことによって、透明性で持続性があり、公正な制度、まさに信なくば立たずということでございますけれども、信の、国民から信が持たれる制度ができるんではないかと思っております。
以上でございます。どうもありがとうございます。