鍵屋一の発言 (災害対策特別委員会)

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○参考人(鍵屋一君) ありがとうございます。
 災害時も尊厳が守られる社会へというテーマでお話をさせていただきたいと思います。私の場合は国民の行動変容を促すということが非常に重要だと思っていますので、その観点から具体的な政策を六個ほど提案をさせていただきたいというふうに考えています。
 元々は東京都板橋区で防災課長あるいは福祉部長をやっておりまして、防災と福祉が大好物な男でございます。
 一枚おめくりいただきますと、法改正の目的、私なりの理解は、災害時も尊厳が守られる社会をつくっていこう。二つの前提条件があります。一つは、国難災害の確率はとても高いということです。もう一つは、社会はとても脆弱化しています。そうすると、福祉の視点で費用効果の高い事前防災をすることが、結果として被害を著しく減らすことができるというふうに考えています。六点ほどの御提案を持ってまいりました。
 最初、男鹿のなまはげの話をちょっとしたいと思うんですが、私、秋田県の男鹿半島出身でございまして、子供の頃にこうやってなまはげが家に来て、泣く子はいねがと脅かすわけですね。それをやっていたんですが、この頃は子供少なくなったんさ、だから、なまはげさんは年寄りのうちにも行くんですね。で、おやじどうしたって聞くと、いや、ばあさん転んで骨折したからね、今寝たきりになって大変なんだなんという話がなまはげさん分かるわけですよ。そうすると、いや、大変でねえかと、この持っているなまはげ台帳というのに書くわけですな。そして、それを仲間のなまはげと共有するわけです。そうなると、これ、津波が来るぞといったら、どこのうち助けに行かねばいけねえかというのは、なまはげさん、ちゃんと頭の中に入っているわけです。
 だから、こういう共助というのは物すごく大事であって、地域の伝統文化等に組み合わさった共助というのはもう物すごく価値のあるものだなと思うんですね。ただ、次に来る首都直下や南海トラフはそれに頼るだけでは十分ではないというふうに考えているんです。
 次の次のページですが、国難級地震の発生確率は、もう先生方御存じのとおり、南海トラフで八〇、首都直下では七〇としているんですが、これ、どっちかが来るというふうに考えるのがいいんでねえかなと思っているんです。三十年後に八〇、七〇というと、ちょっと随分先のような気がします。
 そこで、次のページ見てください。十年間だとどのくらいになるかということを専門家の先生にもお聞きしましたら、どちらかが発生する確率は五三%でした、詳しい説明は省きますけれども。五年間にしたら、どちらかが発生する確率は三七・四%もあります。決してずっと先の話でないですよ。もう目の前だというふうに考えながら対策を取っていく必要があると。
 社会はすごく脆弱化しています。特に、阪神・淡路大震災に比べると、次のページ御覧ください、七十五歳以上の方は三十年で約三倍に増えています。七十五歳以上になりますと、十一枚目の資料のところに書いてありますが、要介護、要支援の人が約三割になります。この人たちをいかに守るか、これを先に考えたいと思うんですね。
 要介護者の日常生活動作見ると、階段を上り下りできない人は八割います。五十メートル以上歩けない人は七割です。こういう人に対して、津波は徒歩避難で行ってくださいって、それは無理です。ちゃんと正面から見据えて、この人たちをいかに守るかを考えていかないといけない。
 それから、障害者も、今日JDFさんお見えになっていますけれども、これデータがうまくそろっていなくて申し訳ないんですが、二十五年で六二・五%。
 一方で、近所付き合いのデータもあります。一九九七年は四割以上の人が親しく付き合っていると言ったのに、二〇二二年になると八・六%です。何と五分の一なんです、親しく付き合っている人は。これが大問題なんです。だから、共助がなかなか厳しい。消防団員も、その次のページで、役所の職員も減っています。だから、自助、共助、公助っておまじないを唱えても、これ効かない社会になってきているんですよ。もちろん大事ですよ、大事なんだけど、それだけでは駄目だ。
 福祉の世界見ると、当然、自助、共助、公助なんです、福祉も。だけれども、それでは間に合わないので、介護保険や障害者総合支援法や生活困窮者支援や重層的支援体制整備事業など、いろんな政策開発をしながら大変な人たちを守っているわけです。そういうことを考えながら、防災も福祉の視点でアップデートする必要があるだろうと。
 そこで、六点の御提案です。
 一つ目は、住宅の耐震化です。
 これなくして地震対策はあり得ません。住宅の耐震化は全額公費でやっていいと思います、私は。耐震化するとその財産の価値が上がるから応益負担で払ってくださいというふうに言っていますけど、命を守る程度の最低限の耐震化は、もうこれは社会的な要請であります。応益負担できないでしょう、年金暮らしのお年寄りとかは。やっぱり、ここは福祉的視点で見れば応能負担です。払える人が、払えなければ、これは、でもやるしかないんですよ。何か専門家でいうと、もう診断なんかしないでブレースばんばん付けて、五十万円もあればできるんじゃないかと言う人もいらっしゃいますので、そういう政策開発しながら、技術開発をしながら全額公費でやると。これがやっぱり直接被害の大部分を軽減できますし、住宅がちゃんと残っていれば避難もできますし、火災を消火する人もいますし、避難生活の困難さも劇的に減らせる。
 これ、全国四百五十万戸ほどあるんですが、金額で見ると、木耐協さんというところの平均工事額が百六十七万円ですから、目安としては七・五兆円です。これ、五十万円でできると言う人もいますので、最低限でやればですね、そのくらいの感じ、年間でいくと七千五百億。
 これは大変ですが、それをやっているのが、実際やっているのは黒潮町です。その次のページを見ていただくと、一万人の人口で何と百五十四軒も耐震改修をしています。重要なのは自己負担の有無なんですね。福祉的視点から見れば応能負担で、払えない人はしようがないです。もうやるしかないんです。
 その次のページに、地震防災戦略による減災効果。一度内閣府が、平成十七年、地震防災戦略作成して、三年後に戦略の効果測定していますが、想定死者数の四千人の減少と経済被害十一兆円の減少となっています。このうち死者数の半数と経済被害の七割は住宅の耐震化の効果によるとされているわけです。
 そして、その次のグラフが阪神・淡路大震災の火災のグラフです。住宅が壊れない左側のところでは火災の発生件数は少ないし、たくさん壊れている右側の方に行くと火災の発生件数も増えるわけです。
 それからもう一つ、賃貸住宅は、じゃ、どうするんだと。これは耐震性を是非公表してもらいたいと思います。一九八一年六月、昭和五十六年六月以前に申請をした建物は極めて弱いです。もうこれ分からないですよ、普通の人は。だから、こういうふうに広告とかに表示すべきだなと思います。
 じゃ、二つ目です。緊急避難ですね。
 これ、「ひなんさんぽ」というのをやっているところがあるんです。これは、高齢者や障害者の逃げ遅れが多いですから、課題としては、「ひなんさんぽ」しておいて、ふだんから避難所へ行く道分かっておく、これによって避難の確率を高める、あるいは近所や知人との声掛け、つながる、さらにはフレイル予防、介護予防につながるので、全国展開で是非これはやっていかれるといいんじゃないかなというふうに思っています。全国の約一千万人の人が、じゃ、「ひなんさんぽ」にして、年に二回参加して、お茶代千円出せば二百億です。でも、これは国が出すというよりも地域で頑張れるお金かなと思います。
 その次が、訓練の効果ですね。「百考は一行に如かず」って書いてありますが、津波浸水域内にいるということを知っていた人は東日本大震災で三・四六倍逃げています。だから、訓練は物すごく有効です。
 ただし、訓練というと、どうしても避難だけではなく、AEDや初期消火、応急救護とかいろいろやりますので、役員さんも大変です。それから、高齢者、障害者も、避難場所まで行ってもお手伝いできないんで出番がないんですね。
 そこで、散歩だけでいいってやったのが岡崎市であります。次のページに書いてあります。そうしたら、皆さん、参加した人大喜びだということで、ふるさとの男鹿市でもやってもらいました。やっぱり、いろんな人が散歩だけだったらって来やすいんですね。
 で、訓練が終わったら振り返りをします。そこで計画作るんですが、ここで、いつも訓練というと、大体最後に期限切れ間近のアルファ米と水を配るというのが多いんですけれども、やっぱりここ大事なので、お茶菓子、地域の和菓子店からお茶菓子取って、それでここに予算を使って、おしゃべりして、そしていざというときに声掛けやすい関係をつくっていくということが効果があると思っています。
 個別避難計画というのは努力義務とされて、今まだ十分な数できていないんですけれども、私自身は、計画の完成度よりも、この作るプロセスでつながりをつくることが大事だというふうに思っています。これが地域共生社会につながっていくんだと。防災を道具にしながら社会を変えていくということです。
 三番目の提案です。簡易トイレの全戸配布です。
 とにかくトイレ不足というのが必ず課題になります。必ず課題になるので、これもう配ってしまうというのが一番早いと思います。全国民に四日分、まあ大体二十個ですね、簡易トイレ配布。これは、実は港区とか品川区ではもう既に実施しております。簡易トイレがあれば、在宅で避難ができます。しかも、四日分ありますから、二、三日は安心して家の中にいられるわけです。そして、トイレに行けるんで、水分や栄養素が取れます。トイレに行けるんで、安心して会社にも行けるわけです。こうやって社会の復興の迅速化。
 そして、トイレが配られたら、何だろうと思いますよね。いや、これ、あっ、そうか、地震ってこんな近いんだ、真剣にやらねばいけないんだと、政府もトイレ配るんだと、こういうことで国民の行動変容を促していく。三千円ぐらい掛かります、二十個、四日分で。三百七十一億四千万円でした、計算しました。まあ一年で配ってもいいし三年で配ってもいいんですけど、これくらいやると行動変容につながるんではないかと。
 トイレ不足は命に関わります。その次のページを見ていただくと、免疫機能で感染症にかかりやすい、誤嚥性肺炎やエコノミークラス症候群、そしてみんながいらいらして避難生活が危なくなります。
 能登半島地震では、八十代の女性が、トイレが使用できないので畑に行って転倒、自力で動けなくなって低体温症で亡くなるという、これが今の日本なんですよ。これを防ぐのは簡単です。トイレ配ればいいんです。
 ところが、災害用トイレを一回分でも備蓄している人は僅か二割です。四日分以上備蓄しているのは四%しかいません。もう首都直下地震の最大の問題なんです。
 その次からは、人は一日五回トイレへ行きますよ、でも、役所が用意しているトイレは、マンホールトイレや仮設トイレは一階にしかありませんよ、マンションから下りてくるんですか、エレベーター使えませんよ。そうすると、過去の災害ではみんな避難所に向かいます。あとは車中泊です。
 ところが、東京は避難所も精いっぱい、加藤さんおっしゃったように避難所も大変です。車中泊する場所もありません。どうなりますか。これは大変な問題ですね。そして、避難生活が困難なのに、俺会社に行くわって行けないんですよ。そういうこともありますので、トイレを配って何とかと思います。
 その次の写真が、関東大震災の上野の駅前広場です。このときの東京市の人口は約二百二十万人でした。今は一千万人近くいます。一体どこに避難すればいいんでしょうということになる。家しかないんです。家で避難してもらわないと駄目なんです。そのためにトイレなんです。
 その次です。全ての福祉施設を福祉避難所にということであります。
 高齢者、障害者の避難生活が厳しくて関連死が発生します。もう全ての福祉施設で一定程度、何日間か受け入れられるという状況をつくるのが一番早いかなと思っています。これ、福祉施設全部、七万七千八百あるそうですが、百万円ずつ配ると七百七十八億円くらいのイメージです。それは、特別支援学校は障害児の避難所に、それから、私は、跡見学園女子大学ってあります。ここは今、妊産婦・乳児救護所になっています。だから、ところが、横の国立大学は救護所になっていないんですよ。お母さん方、分からないですよね、跡見はなっているけど、よそはなっていないって分からないですよね。全ての女子大学でやっぱり受け入れられるようになるのがいいなというふうに夢を見ております。
 東日本大震災は、高齢者を支援する必要があるということは、この福祉避難所の実情をちょっと見ていただくと、二枚目くらいにマニュアル作っているのは一五%とかというのが出ます。それから、能登半島地震の福祉避難所の運営期間は平均すると百十日です。二週間とか言われていますが、実際はこういう状況でした。そして、その次の能登半島地震の福祉避難所の運営経費、ほとんど持ち出しがなかったのが三分の一、三分の二は持ち出してやっているんですね。大変な中に、更にお金の負担まで実際にはしているというのが実情であります。
 それから、その次が、災害福祉支援体制の整備、人材育成ということで、福祉関係者の被災者支援は、DMAT、医療に比べると始まったばかりでございます。まだまだ弱いです。そこで、DWAT、あるいは被災福祉施設の支援、福祉避難所の開設、運営などをやるような人材育成が必要です。都道府県社協に常設型の災害福祉支援センターをつくってもらいてえなと思っています。四名程度必要かなというイメージですが、人件費で十八億くらいでございます。このくらいで福祉人材の研修を回していくんだと、そして実際、現場へ行く。
 その次の介護保険給付費です。ちょっと独自に調べてみました。
 東日本大震災の全国の介護保険給付費の伸びと岩手、宮城、福島の伸びを比べました。二〇一一年度は三県とも減っています。これは、高齢者が亡くなってしまったからです。重度の方々が亡くなってしまった悲しみの量であります。ふいに親族や知人が亡くなってしまった悲しみの量がこのグラフの左側です。右側は、今度は重度化してお金が掛かるようになってしまった、それもまたつらいのでございます。
 ということで、もう時間が来たということなので飛ばしますが、非常に増えていますので、こういう悲しみの量を増やさないためには福祉支援が重要であります。今回の法改正の目玉になる部分だろうなと思っています。
 熊本地震でも、ごめんなさい、後はもう言葉でちょっといきます。亡くなった場所は避難所ではありません。在宅でございます。在宅への福祉支援が重要です。
 最後に、⑥というところで、法の目的に尊厳を加えるというのをお願いしたいと思っています。
 実際には、災害時に尊厳を守るという意識、弱いです。災害だから我慢しなさいとか、女の人はこうやりなさいとか、そういうことが非常に多いです、実際。おいしいもの食べさせると避難所に居着くとか、悲しい言葉も聞かれます。それは、災害時に尊厳を守るんだというような意識が弱いからなんですね。そこで、法の目的に尊厳を加えていただきたいというのが願いでございます。
 最後に、お金の話をしておきます。
 地震保険の政府積立金は、ちょっと私が見たところですが、約二兆円あります。これを災害後に使うよりも前に使いましょう。そうすると、これらのこと全部できます。宝くじも毎年三千億円分配金あります。縦割りの省庁の持っている、この管理しているのを横に動かして日本全体を減らすのは、もう政治家の皆さん方のお役目ではないかなというふうに思っています。
 ということで、地震の発生確率は、先ほど申しました、十年以内にどちらかが発生する確率は五割を超え、どちらかが五年以内でも三七%あります。必死になって取り組まなければいけないという思いを込めて、ちょっと時間超過して申し訳ないです、話させていただきました。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 鍵屋一

speaker_id: 30243

日付: 2025-05-09

院: 参議院

会議名: 災害対策特別委員会