坂爪浩史の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(坂爪浩史君) 北海道大学大学院農学研究院の坂爪と申します。本日はよろしくお願いします。
 このような機会を設けていただきまして、大変光栄に存じます。
 私の資料は四ページ物になっておりますけれども、タイトル「説明資料」とありますが、内容的には価格変動と需給調整ということをめぐるお話をさせていただきまして、直接法案についてどうこうということでないものになっておりますので、あらかじめ御了解いただきたいと思います。
 一つ目は、農産物価格、今問題になっております高騰の二つの要因ということを改めて確認させていただきたいと思います。
 一つは、中長期の要因でありまして、先ほど井村様からもありましたように、生産コストの継続的な上昇というのがあって、これによって今の価格が高騰している面があります。令和の米騒動と今言われておりますけれども、この米騒動というのは非常に混乱しているわけですけれども、スーパーの店頭などでの値頃感という、私はこれもガラスの天井の一種だというふうに思っておりますけれども、これを壊すというプラスの効果はあったんではないかというふうに考えております。
 二つ目の、もう一つの要因は短期的な要因で、言うまでもなく需要に対する供給の不足というものでございます。保存の利かない野菜の場合には、全国の産地リレーによって安定供給が図られているわけですけれども、これが異常気象でこのリレーのスケジュールが狂いますと、過剰になったり不足になったりということで価格の変動というのが大きくなるということです。
 二点目は、二点目に申し上げたいのは、法案の中にもございますけれども、この持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した、あるいは反映した価格というのが私は難しいんじゃないかということで常々思っているものですから、それを幾つかの点について整理をしてまいりました。
 二ページ目を御覧ください。
 これは、かつて日本経済新聞に載せさせていただいた図を若干アップデートしたものです。品目示しておりませんけれども、この冬から春にかけて高騰が問題になった野菜五品目と、家計購入の方では米の方もデータがありますのでプロットをしております。
 ここで明らかなのは、高騰しても購入量はそれほど落ちていないということであります。このa、家計購入というのの右側のグラフは縦横の比率をそろえたものです。数量が一〇〇、価格が一〇〇というところが基点になるわけですけれども、いろいろな野菜が価格が倍になった、二・五倍になったということがございましたけれども、それでも購入量はそんなに減っていない。つまり、倍になったら半分に減るかというと減っておりません。御案内のように、米は、この右側に二つ大きくそれているのが米ですけれども、価格が上がって消費量、購入量は増えております。
 このような消費の特徴から、次のb、これは卸売市場での野菜の価格を見たものですけれども、これも出荷量と価格の変化を、二〇二五年の二月、これはその前の年の二月と比べておりますけれども、一年前と比べて出荷量は二割しか減っていないのに二倍以上に価格が高騰しているということがここで御覧いただけるかと思います。
 野菜は、御案内のとおり今価格が落ち着いておりますのでそれほど今は問題になっていないかもしれませんけれども、このように、購入量から考えると、価格が幾ら上がってもそれほど購入量が変わらないという特徴があります。そうしますと、供給から考えていった場合には、ほんの少しの供給量の変化が大きな価格変動をもたらすという、これが、石破総理も委員会等でも国会等でも度々言っております需要の価格弾力性が低いという、そのことになるわけです。
 つまり、僅かな生産量の増減で価格が大きく上下するということでイメージの絵を描いてみたのが図表の三ということになるわけですけれども、この揺れ動く中心線というのは当然あるわけですけれども、これは言うまでもなく再生産価格ということになります。市場価格が再生産価格を上回れば、利益が取れるということで生産が増えます。生産がどんどん増えますと、供給が過剰になって価格が落ちる。再生産価格を下回れば、これでは経営がやっていけないということで生産が縮小しまして、価格がまた上昇に転じていくという、改めて説明するまでもありませんけれども、このようになっているわけです。
 適正価格の議論というところに関して申し上げたいのは、この適正価格というのが、日々の、あるいは年次の価格変動の中で市場価格がこの適正価格と一致するのは一瞬だということです。
 続いて三ページの方に入りたいと思いますけれども、次に申し上げたいのは、契約栽培のパラドックスというテーマです。
 再生産価格というのを実現するためには契約栽培を推進するという、これはあり得る選択かと思っておりますけれども、私は楽観できないというふうに思っております。
 この図表四のa、bは、生協産直(個配)の、昔、共同購入と言っていたものの例を示しておるわけですけれども、大体、生協と産地で価格決めるのは八週前ということで、大体三か月前です。作ってみると豊作だったり不作だったりするわけですが、豊作だった場合には、全体に供給量が増えますので市場の価格が下がる、そうしますと小売の価格も下がる。そうしますと、生協のカタログ価格が相対的に高くなりますので、生協への注文は減ります。減った注文がどういう産地に行くかというと、豊作の産地に参ります。産地では注文を非常に待っているわけですけど、全然来ないということになります。
 逆はもっと大変でありまして、実際やってみて不作だったときには、市場の価格が上がり、スーパーの店頭価格が上がる。そうすると、生協のカタログ価格というのが割に安いよねという話になりまして、生協への注文が増加します。その増えた注文は不作の産地に行くということです。
 上の豊作のときの注文量を一としたときに不作のときどのくらい来るかって綾町の農協の人に聞いたことがありますけど、六倍ということを言っていました。逆、逆に行くということです。
 これは不公正な取引のように見えますけれども、実はこの引き金を引いているのは消費者だということです。スーパーと産地の間ではスーパーがこういうことをやるということであるかもしれませんけど、産直の場合には生協組合員が引き金引いちゃっているということですけれども、これはもうやむを得ないという、こういうことが常に起こるということを考えておく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
 三点目、安値のときだけ使えるかというのが私の心配であります。
 卸売市場における価格形成への再生産価格の適用は、価格下落局面では生産者に当然メリットはあることだと思いますけれども、現在のように価格上昇局面において、買手の方から再生産価格での取引はできないのかというふうに言われる可能性はないのかということが私はちょっと心配であります。法案の理解不足かもしれませんけど、それはお許しください。
 四ページ目、もう最後のページになりますけれども、そもそも再生産価格というのは収量によって変わるということを改めて私は認識する必要があると思います。
 合理的な費用を考慮した価格というのは、当然、面積当たりの収量で面積当たりの合理的な費用を割ったものということになるわけです。これが単価ということになるわけですけれども、これから行われます指定品目ごと、産地ごとの単収の正確な把握はできるんだろうかということが私はちょっと心配なところであります。
 米は一年一作ですから、まあ何とかなるかなというふうに思います。今までの食糧事務所の経験等もございますでしょうからいいと思うんですけど、野菜はどんどん産地が入れ替わっていきますので、会議をやっている間にその産地の出荷は終わっちゃうという問題はないのかということです。
 以上が、適正価格というか、私は再生産価格という言葉を使っておりますけれども、いろんな観点で実用が難しいんじゃないかなというふうにちょっと思ったということを説明させていただきました。
 最後に、求められる政策の考え方、こういう発言を私に求められているかどうかは微妙ですけれども、私なりに考えてみたことを今から説明をさせていただきます。
 冒頭に申し上げたいのは、やはり、書いてはございませんけれども、やはり需要の価格弾力性の低さということをもう一度考えてみる必要がある。石破総理も、今、高値の説明に、需要の価格弾力性が低いのでぱあんって価格が上がるんだという答弁をされていると思いますけれども、逆も考えておかなきゃいけないということです。適正な流通量を少しでも上回れば、価格は簡単に大幅に下落します。
 ですから、私が大事だと思っているのはこの一点であります。生産基盤が脆弱化していて、生産の復元力が落ちているということです。一旦生産が縮小しますと、価格が上昇しても生産はなかなか戻り切らないと。今、井村さんの話もございましたけれども。昔であれば、インターバル走のように、走って休んで走って休んでというのをずっと続けられたんですけれども、今、全速力で走って休憩してまた全速力で走れるかというと、走れない産地が非常に増えているということであります。
 ですから、私が言いたいのは、供給過剰、価格下落局面でも対策をちゃんとやってほしいということです。このときにはもう国会議員の皆さんも消費者も皆もう忘れちゃっているかもしれませんけど、そのときの対策が私は鍵になるんじゃないかというふうに思っております。
 豊作貧乏的な状況の緩和、そのための、まあ私も具体的にどういう政策があり得るかということは知りませんけれども、いろんな経済的なフォローというのを生産現場に対してやっていただきたいというふうに思っております。農産物の供給過剰というのを異常と思わずに受け入れて、価格支持というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、こういったところへの予算投入というのを許容していくという必要があるというふうに考えております。
 再生産価格は民間の自助努力で頑張ってくださいというのではなくて、政府の直接的な関与によって実現するべきであるというふうに思います。例えば、収入保険の算定というのは今、過去の収入を基準にして計算されていると思いますけれども、これを合理的な費用に基づいたものに変えていただくという、こういったことだけでも大分変わってくるんじゃないかなというふうに思います。これが一点目です。
 二点目、改めて、米は依然として特別な食料品だったということです。
 米は不可欠な食料品であるという国民的なコンセンサス、これだけ人口が減って米の消費も減ってきていますよといっても、やっぱり米は別物であるということが我々消費者も含めて改めて認識した、しているというのが今の米騒動の現状だと思います。ですから、国のより積極的な関与が求められていると思います。現に様々な努力を行われていると思いますけれども、これは市場メカニズムにのっとったものではないという、それをいろいろ政府がやっているときに我々消費者は一定これを受け入れているという、これは忘れてはいけないことだと思います。
 先ほども申し上げましたけれども、供給過剰、価格低落というのは必ずこれから来ます。私はもうこの春に来ると思っていましたけど、まあ来ていないですが、この秋に来ないという保証は全然ございません。価格低落時において再生産価格での政府の買入れとか、あるいは今もうすっからかんになりつつある備蓄の積み増しとか、こういったことをきちんとやっていただきたいと思っております。
 皆様もう、平成の米騒動、御記憶にある年代の方々だけだと思いますけれども、平成の米騒動のときは、食管法にとどめを刺したというのが平成の米騒動だったとすれば、私は、令和の米騒動というのは食糧法に大転換を迫るものではないかというふうに、あるいは迫るべきものではないかというふうに考えております。それは、言ってみれば適切な国家管理のあるいは国家の関与の復活という方向性であって、間違っても生産調整の枠組みの撤廃じゃないというふうに私は考えております。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 坂爪浩史

speaker_id: 24634

日付: 2025-06-05

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会