佐藤秀美の発言 (文教科学委員会)
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○参考人(佐藤秀美君) おはようございます。福島市教育委員会教育長の佐藤秀美でございます。
このような国会質疑の場で意見陳述を行う機会をいただき、誠にありがとうございます。
堂故委員長を始め皆様には、学校現場の厳しい状況を踏まえ、教師を取り巻く環境を整備するため、熱心な御審議をいただいておりますことに感謝を申し上げます。
私は現在、教育長の職に就いておりますが、それ以前は小学校の教諭や校長として、また県教育委員会では小中学校の教員の採用や人事を担当する立場で職務に当たってまいりました。本日は、そうした現場での経験も踏まえつつ、教育長としての立場から意見陳述をさせていただきます。
初めに、今回の法案に対する評価を申し上げます。
資料の三ページを御覧ください。
本法案は、学校における働き方改革、学校の組織マネジメントの強化、教師の処遇改善という言わば三本の矢を一体的に進めていくものであり、非常に厳しい学校現場の状況を踏まえ、国、教育委員会、首長部局、学校、地域がそれぞれの立場で取組を進めるための重要な仕組みを設けていただく法案であると評価しております。
本市も深刻な教員不足の状況にあり、教師を志す人材を増やしていくことが不可欠です。これさえやれば解決するという特効薬があるわけではなく、それぞれの立場でできることを確実に実行することが重要です。特に、設置者であり、服務監督権者である教育委員会の役割は極めて大きいものがあります。働き方改革を進める計画の策定、実施状況の公表を中心に、しっかりと役割を果たしつつ、学校現場の取組を促していく、そうした仕組みをつくっていただいていると受け止めております。
また、学校現場は様々な課題が複雑化、多様化してきており、学校内外との総合的な調整が必要な業務も増えています。そうした役割を担う職として主務教諭の職を新たに設けるという点についても、各自治体の選択肢を増やしていただくという観点から、賛意を示します。
そして、教師に優れた人材を確保するには、昭和四十九年の人材確保法の理念に立ち返った処遇改善が必須です。国として教師の働きに見合った処遇へと改善していく道筋を示していただいたことは、学校現場はもちろん、これからの教師志願者にとっても大変意義深いと考えております。
本日は、特に今回の法案に盛り込まれた働き方改革を進めるための仕組みにつきまして、本市の取組を御紹介しつつ、意見陳述をさせていただきます。
四ページを御覧ください。
本市における学校の働き方改革の意義、目的は、子供たちに質の高い学びを提供することと、持続可能な学校を実現することにあります。教職員が授業準備をしたり子供たちと向き合う時間等を確保したりすることで、子供たちの質の高い学びを実現でき、子供たちの成長や笑顔につながる、その姿に教職員はやりがいを実感し、自信と新たな創意工夫が生まれる、そのような学校に保護者や地域の方々はこれまで以上に信頼を寄せ、応援していただける、ひいては教職を志す若者が増えていく、こうした好循環を生み出していきたいと考えています。
五ページを御覧ください。
文科大臣が示す上限指針、市の学校管理規則では、時間外在校等時間の上限が一か月四十五時間以内、年間三百六十時間以内とされています。本市においても、統合型校務支援システムの導入やスクールサポートスタッフの全校配置、長期休業中の学校閉庁日の設定や部活動休養日の設定、健康観察、出欠連絡のためのアプリの導入など、様々な取組を進めてまいりました。その成果として、教職員の時間外在校等時間は改善傾向が見られますが、令和五年十月時点では、約三割の教職員が月当たり四十五時間を超えている状況でありました。
このため、総合教育会議での二度の議論を経て昨年三月に策定したのが、お手元にある働き方改革推進パッケージであります。また、学校における働き方改革を推進していくに当たっては、各学校では大胆な業務内容の精選や教育活動の見直し、保護者や地域との役割分担の見直しも必要となることから、パッケージを推進するに当たり、市長と教育長とが連名で市民の皆様宛てのメッセージを発出いたしました。
パッケージでは、質の高い学びと持続可能な学校の実現に向けてというスローガンを掲げ、未来に向けた十のチャレンジを明示しました。その中でも、とりわけ令和六年度は、余剰時数ゼロ、標準授業時数で教育課程を編成すること、留守番電話の全校実施、失礼しました、完全実施、評価、いわゆる通知表の二期制の推奨、日課表の見直し推奨、職員会議等のペーパーレス化を各学校に指示いたしました。
幾つか具体例を申し上げます。八ページを御覧ください。
例えば、余剰時数ゼロで教育課程を編成することについては、その趣旨を学校現場に丁寧に説明いたしました。本市では、年に一度、全校一斉オンライン授業の日を設定しており、教員も子供たちも双方向での授業ノウハウを身に付けています。したがって、臨時休校等の際はオンラインで学びを保障することによって、必ずしも過大な教育課程を編成する必要はありません。本市では、学校現場と先生方を信頼することで、過大な教育課程を編成する必要はないことを伝えました。各学校では、行事等を減らすことだけを考えず、各活動の狙いを達成する上で必要な時数を確保するという考えの下、年度当初の余剰時数の設定をゼロとした教育課程の編成を行っています。
九ページを御覧ください。
これは、モデル校の一つである福島第四小学校の働き方改革宣言です。校長のリーダーシップの下、ミドルリーダーが中心となって様々な取組を進めています。真ん中の右側に赤四角で、日課表の見直しという表記があります。この日課表についても、第四小学校では前例にとらわれない見直しを行い、それまで六校時の終了が十五時四十分だったところ、十四時五十分には六校時が終了し、十五時には完全下校ができるようにしました。その際、試行期間を設定し、保護者や児童の意見を丁寧に聞き取り、無理のない形で見直しを進めました。
十ページを御覧ください。
これまでは十六時に子供を下校させてから仕事をしていた、でも、今は十五時には職員室で子供の話をしている先生方の笑顔がある。将来は自分も管理職を目指したい。教材研究を学校にいる時間にできなかったが、今は違う、自分がしたかったことができる。改革を牽引した教員三名に直接私が聞いた言葉です。教育委員会がしっかりと方向性を示しつつ、各学校が実情に合わせて働き方改革を進める事例であると考えています。
また、本市では、全国的にも珍しい市職員を部活動指導員として任用する部活サポート職員制度を創設しています。
十一ページを御覧ください。
通称ブカサポは、市の職員が兼職、兼業の許可を得て公立中学校の部活動指導員として活動する取組で、教職員の負担軽減はもとより、生徒がより専門的な指導を受けることが可能となりました。また、市職員が率先して教育に携わることで、地域全体で子供たちを育もうという機運の醸成にもつながっています。市長の理解と応援により実現した制度であり、総合教育会議を通じて、市長とともに学校の働き方改革推進パッケージを策定した成果の一つであると考えています。
資料にはございませんが、このほかにも、昨年十月から本市独自のスクールロイヤーを配置したこと、また、今年度、百社以上の企業等の賛同を得て学校を応援する仕組み、スクール・サポート企業登録制度も新たに誕生しました。これらも市長及び市長部局の理解と応援あってのことです。また、夏休み及び冬休みを迎える前にモデル校の効果的な取組事例をオンデマンドで各学校に配信するなど横展開を図ったことで、年度途中からの改革も広がってきました。
十二ページのグラフを御覧ください。
これは、時間外在校等時間が四十五時間超の教員数について令和五年度と令和六年度を比較したものです。年度後半になるにつれ、前年度より確実に減少していることが分かります。
十三ページの表を御覧ください。
これは、四十五時間超の教員の割合を比較したものです。小学校と中学校及び特別支援学校、いずれも前年度より減少しており、全校種合わせると二四・二%から二一・八%に二・五ポイント減少、三学期を比較すると二〇・六%から一五・五%に五・一ポイント減少するなど、確実に縮減が進んでいます。
一方、働き方改革は、時間外在校等時間の縮減だけを目指すのではなく、働きやすさと働きがいの両立を図ることも大切です。
昨年度、定期的に実施した、仕事に対するやりがいについての調査結果が十四ページのグラフです。いずれも肯定的な回答をした教員が八割を超えており、おおむね両立が図られているのではないかと受け止めています。
以上、本市における取組の一端を御紹介しましたが、本法案との関連について改めて申し上げます。
十五ページを御覧ください。
第一に、教育委員会が計画を策定し、取組状況を可視化していく重要性です。
働き方改革は、防災と同様、自助、共助、公助の視点が重要です。教育委員会がしっかりと役割を果たした上で、学校自身も働きやすさと働きがいの両立を目指す改革を進めようという意思が不可欠です。教育委員会が方針を示し、状況を見える化することが重要です。
第二に、首長部局としっかり連携することが地域全体で改革を進めることにつながるという点です。
法案においても計画の内容及び実施状況について総合教育会議への報告が盛り込まれていますが、本市の実践を踏まえても納得感があり、その効果を強く実感しています。
第三に、地域との関係です。
地域の理解、協力がなければ改革は進みません。本市では市長と教育長で市民に対する共同メッセージを発しましたが、各学校でも保護者にそのメッセージを配信するなど、保護者や地域にしっかりと伝えてもらいました。法案においても学校運営協議会の仕組みを活用することが位置付けられており、効果が期待できると考えます。
最後になります。十六ページを御覧ください。
学校における働き方改革は、単に現在の教員をめぐる課題、つまりマイナスをゼロにする取組ではありません。むしろ、人材育成の面ではプラスにする挑戦であると、このように考えています。教育委員会と校長がしっかりとその役割を果たしつつ、教職員一人一人が当事者意識を持って学校運営に参画することで、学校は自分たちで変えることができるという自信につながります。子供の学びの相似形として、教職員もまた働き方改革を通じて協働的で探究的な学びを実現し、その資質、能力を向上させていく契機にもなるものです。それぞれの立場で危機を共有し、責任を共有し、そして何より希望を共有する、これが大切だと考えます。
この法案は、希望を共有する、その一助になると私は受け止めています。その重要性を指摘いたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。