嘉田由紀子の発言 (本会議)
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○嘉田由紀子君 日本維新の会の嘉田由紀子です。
私は、会派を代表し、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対して質問いたします。
人類の歴史を振り返ってみますと、新しい情報技術の誕生は、人類の知的活動に変革をもたらし、大きく時代を動かし、社会的秩序の在り方にも大きな影響を与えてきました。私自身は元々アフリカと社会変動の研究をしてまいりましたが、無文字社会のアフリカが十九世紀以降ヨーロッパ諸国により植民地化された背景には、印刷技術の進展による文字記録の現地社会への導入が社会の権力構造を大きく変えたという歴史があります。
二十世紀後半に普及したデジタル技術は、大量の情報を場所や時間を超えて共有できる特性を持つがゆえに、知識の蓄積や伝達方法が劇的に変わり、社会や経済、文化に大きな影響を与えてきました。
特に今回、国民の生殺与奪の権を持ち得る刑事訴訟法におけるデジタル技術の導入をめぐっては、技術的な利便性や合理性が高まることは社会的に求められておりますが、立法府としては、人権や社会構造的影響まで広く深く配慮する必要があります。いかがでしょうか。
と申しますのも、刑事事件の一連の流れを見ますと、ある日突然、普通の市民が逮捕され、もちろん犯罪行為を行った容疑者は刑事的手続を経て社会的制裁を受ける必要があるでしょうが、身に覚えのない、まさに冤罪で刑事罰を科される場面では、取調べ過程での丸裸の被疑者と大量のデジタル情報を持つ捜査側では情報の格差は歴然としています。不当な自白も起こりかねません。
私自身、滋賀県知事時代を振り返りますと、知事には警察権を行使する直接的な権限はないのですが、公安委員会の委員任命権はありました。県全体の治安維持とともに、県民が不条理な冤罪に巻き込まれないよう、人権維持に心を寄せてまいりました。ただ、残念ながら、湖東記念病院事件や日野町事件のような冤罪事件が起きてしまいました。じくじたる思いがあります。
刑事手続は、真実の発見と同時に、被疑者、被告人の権利の保障を目的とし、適正な手続に基づき正しく執行される必要があります。その技術的手段である刑事手続のデジタル化は、あくまでも手続の合理化、簡易化を目的としており、その必要性は肯定できるものの、被疑者、被告人の権利保障を後退させるものであってはなりません。
そこで、鈴木法務大臣に伺います。
国際的に見て日本のDX化は遅れていると言われておりますが、今回の日本の刑事デジタル法は、特に被疑者、被告人の権利保障の配慮について、諸外国、例えばフランス、アメリカなどと比べてどのような特色があるでしょうか。
改正案では、第一に、刑事手続において取り扱う書類について、電磁的方法により作成、管理、利用するとともに、オンラインによる発受が可能となっております。逮捕、捜索、差押え等に必要な令状についても、これまで紙の書類でやり取りしていたものが、請求時も、発付、執行時もオンラインで可能になります。
令状のデジタル化によって警察の捜査にどれほどの利点があるのか、令状を輸送するための緊急走行はどれほど減少させることができるのか、さらに、一般国民の日常生活の安全性の向上に寄与するものなのか、国家公安委員会委員長の所見を伺います。
オンラインで迅速化が進む一方で、紙による令状主義に比べ、リアルな人権に対する意識が希薄になり、配慮を欠いた不当な捜索や逮捕が横行するのではないのかという懸念の声もあります。令状のオンライン化による捜査当局者の意識の希薄化を防ぐ手だてが必要だと考えますが、法務大臣の答弁を求めます。
改正案では供述調書等の証拠書類もデジタル化するとしておりますが、過去にはデジタル化された証拠を検察当局が改変、捏造した冤罪事件も起きております。
二〇〇九年当時、厚生労働省職員だった村木厚子さんは、障害者向け郵便割引制度を悪用したという罪で大阪地検に逮捕されました。私は、村木さん、知り合いでございましたので、大変心を痛めておりました。その証拠とされたフロッピーディスク内の記録が地検の検事によって改ざんされていた事実がその後判明し、村木さんは冤罪を晴らすことができました。村木さんが冤罪の罪におとしめられた当時はフロッピーディスクの時代です。偽造の手口も今から見れば稚拙なものでしたが、デジタル技術もその偽造手法も大変高度化され、現在では見破ることも困難となっているのではないでしょうか。
検察としては、デジタルデータそのものを捏造したことをどのように反省しているのか。刑事デジタル化を進めようとしている今こそ確実に生かさなければならないと思いますが、法務大臣、いかがですか。具体的に、電子化された供述調書等の証拠書類、証拠物の改ざんや捏造をどのように防ぐのか、併せて法務大臣にお聞きします。
改正案は第二に、映像と音声の送受信、いわゆるビデオリンクを取調べや公判など一連の司法手続に活用するとしております。しかし、日本弁護士連合会が強く求めている勾留されている被疑者との弁護士の接見について、ビデオリンク等のオンライン接見は改正案に盛り込まれませんでした。
三月二十七日の衆議院本会議において、オンライン接見について、被告人等の権利として位置付けることは相当ではないと法務大臣は答弁され、身体拘束中の被告人等へのデジタルデータの授受や閲覧についても、モニター等の機器が破壊されるおそれや自傷他害行為に用いられるおそれを理由に権利として認めていません。被疑者が破壊行為をするというのは、ややステレオタイプ的な偏見ではないでしょうか。いかがでしょうか。
刑事施設の職員が同席するなどすれば不当な行為は防げるはずです。弁護士との接見は現行法でも大変重要な被疑者、被告人の権利として認められています。それをオンライン化することに障壁はないはずだと考えます。イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、韓国では既にテレビ電話等での接見を認めております。
オンライン接見の権利をこれからもずっと認めないのか、近い将来には認めようとするのか、法務大臣の明確な方針をお示しください。
また現在、権利ではなく運用上の措置として行っている各地のアクセスポイントからのオンライン接見は、今後拡充する計画はあるのでしょうか、お聞きします。その際、アクセスポイントは都市部のみに設置するのではなく、島嶼部などにも配慮し、弁護士活動が地域的に偏在しないようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。法務大臣の答弁を求めます。
今回の法改正は捜査から裁判に至るまで刑事手続をデジタル化するものですが、私は、デジタル技術やITやAIを有罪確定後の受刑者の矯正教育や社会復帰に向けた職業訓練にも大いに取り入れるべきと考えます。いかがでしょうか。
現代社会において、社会復帰後、デジタル環境に対応することは不可欠です。既に一部の刑務所ではIT技術の活用が始まっていると聞いております。その成果と今後の展望をお示しください。また、受刑者の管理にAIを導入すれば刑務官の業務負担を軽減することもできると考えますが、いかがでしょうか。併せて法務大臣の答弁を求めます。
日本維新の会は、あらゆる分野でDXを推進すること、それにより国民生活をより豊かにすることを求めておりますが、同時に、人々の人権を守りながら、社会としての安心を埋め込み、暮らしの満足度を高めるウエルビーイングを求める方向も目指しております。刑事司法の分野も例外ではありません。デジタル化の推進によって社会から取り残される人々がいてはなりません。こうした課題に今後も全力で取り組んでいくことをお約束し、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣鈴木馨祐君登壇、拍手〕