礒崎哲史の発言 (本会議)
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○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史です。
下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、質問いたします。
一九九〇年代後半以降、いわゆるデフレ経済が続く中、労働者の平均賃金は上がらず、日本の国際競争力も低下の一途をたどりました。こうした状況を打開すべく、二〇一三年、いわゆるアベノミクス三本の矢が放たれましたが、賃金上昇は起こりませんでした。金融政策、財政政策、成長産業政策の三つは政府が重要視すべき経済政策の基本的要素であり、思い切った金融緩和政策を講じたにもかかわらず、賃金上昇の道筋をつくれなかった点において失敗であったと言わざるを得ません。
その流れはコロナ禍を機に大きく変わり始めました。感染症の収束に伴うグローバルでの経済活動復活とともに物価が上昇。日本においても労働者の賃金が上がり始め、連合の集計によれば、本年度の賃上げ水準も三十数年ぶりの高水準を維持しており、この流れを絶対に止めてはいけません。一方で、現在の物価上昇はエネルギー価格の高騰などコストプッシュ型の要因も含まれており、さらに、アメリカの相互関税の影響も懸念される中、物価上昇に負けない賃上げの実現には引き続き様々な対策が必要な状況です。
近年、政府も持続的な賃上げの環境づくり、とりわけ労働者の七割を占める中小企業の賃上げ環境整備に向けて様々な取組を実施してきました。
一昨年、二〇二三年十一月末には、公正取引委員会と内閣官房によるガイドライン、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が策定され、また中小企業を中心に企業アンケートにも力を入れ、ガイドラインへの対応が不十分とされた企業は公正取引委員会のホームページにおいて企業名を公表、フォロー対象とするなど、取組の強化を図ってきたと承知をしています。
今般の下請法等改正案は、こうした政府方針に基づく様々な取組に対し、法律上の権限や位置付けを明確にし、また他の業法との結び付きを強化をしていく内容であり、一日も早い成立を労働界、連合からも求められているものであります。
その意味において、本改正案に関する争点は多くないとは考えますが、適正取引の実現、賃上げの実現は待ったなしであり、本法律案を含め、施策の実効性を高めていく観点で、以下、質問をいたします。
ここ数年の物価上昇を受け、適切な価格転嫁が行われる取引環境の整備のために政府は様々な施策に取り組んでこられましたが、これまでの施策についてどのように評価し、またどのような課題があると考えているか、武藤経済産業大臣、お答え願います。
規制対象の追加について伺います。
平成十五年の下請法改正では、役務提供委託が下請法の適用対象に追加され、運送サービスについても元請運送事業者と下請運送事業者の取引が下請法の対象となりました。他方で、荷主と運送事業者との間の運送委託契約は下請法の適用対象とはされませんでした。
今般の下請法改正案では、発荷主が運送事業者に対して、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を対象取引に追加することとしていますが、平成十五年の改正で運送委託契約が対象とならなかった理由及び今回新たに対象として追加した理由について、前回改正時との社会的変化も踏まえて、公正取引委員会を担当する伊東国務大臣、御説明願います。
また、運送事業者による着荷主への役務提供については、荷降ろしにとどまらず、敷地内搬送や倉庫内整理、棚への陳列など多岐にわたっていますが、今般の見直しによって法律上どのように整理されることとなるのか、併せて伊東大臣に伺います。
次に、従業員基準の見直しについて伺います。
現行下請法では、適用対象となる下請取引の範囲を、事業者の資本金の額及び取引の内容、例えば製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託などの両面から定めています。
本法律案では、いわゆる下請法逃れへの対応として新たに従業員基準を追加することとしていますが、どのような下請法逃れがあったのか、具体的な事例について伊東大臣に伺います。
また、従業員基準を従業員数三百名、役務提供委託等は百名とする理由についても併せて伺います。
加えて、中小企業庁と公正取引委員会が開催する関係有識者から成る企業取引研究会の検討段階においては、従業員基準以外にも案が検討されたとありますけれども、他の案を採用しなかった理由についても、伊東大臣、御説明願います。
現行下請法では、第四条第一項第七号において、親事業者の違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁長官に知らせることを理由に、その下請事業者に対して不利益な取扱いをする報復措置を禁止しています。しかし、省庁や関係団体によるアンケート及び聞き取り調査からは、下請事業者が取引数量の削減、取引停止などの報復を恐れ、所管省庁へ知らせることにとどまらず、価格転嫁の申入れやアンケートに回答することすらちゅうちょするとの実態が浮き彫りになっています。
また、各行政機関の有する権限については、公正取引委員会による調査及び検査、勧告が規定され、中小企業庁に関しては、調査及び検査、公正取引委員会に対する措置請求が規定されています。一方で、事業所管省庁には、中小企業庁長官の措置請求に協力するために、特に必要なときの調査及び検査が規定されています。
本法律案では、事業所管省庁の主務大臣に新たに指導及び助言の権限を付与することとしていますが、本見直しによる効果としてどのようなことを期待しているか、経済産業大臣、お答え願います。
また、関係行政機関における相互情報提供に係る規定が新設されますが、各省庁間でどのような情報を共有し、活用していくのか、期待する効果についても併せて、経産大臣、御答弁願います。
この間、適正取引の実態の把握と改善活動を目的として下請Gメンが設置され、その人数規模も増強が図られてきました。また、新たにトラック・物流Gメン、建設Gメンの活動も始まり、各業界においての一層の取組強化がなされていると承知しています。
一方で、先ほどの質問でも述べましたが、現場では報復措置を恐れ、実態を明かすことをちゅうちょする状況も続いています。各種Gメンの取組の効果は十分評価をしていますが、事を慎重に進める必要があるがゆえに調査に手間と時間が掛かることも悩ましい点です。
そこで、実効性を高めていく上で、事業者が知らせたのではなく、隠せない状況をつくり出すために、取組を公表した上で大々的な実態調査ローラー作戦を実施してはいかがでしょうか。経産大臣の御所見をお伺いします。
関係有識者から成る企業取引研究会が今回の法改正に先立って取りまとめた報告書では、デフレ型商慣習から脱却するためには、法的手当てと併せてより一層の価格転嫁対策に係る施策を推進していくことが求められるとしていますが、本法案の提出以外に今後どのような取組が必要であると考えているか、経産大臣に伺います。
例えば、価格転嫁に苦労し、依然として物流の二〇二四年問題を抱える運送業界からは、従前より、通販における送料無料の表記の改善を求める声が届けられていました。本来、送料を事業者側が負担することを意味するはずですが、あたかも送料が値切り対象であるかのような印象を与えることになってはいないでしょうか。送料は無料ではありません。安全に時間どおりに丁寧に運ぶという付加価値に見合った適正な価格転嫁が必要です。
こうした身の回りにある日常的な商慣習の見直しにも改めて目を向け、それぞれの労働の価値や付加価値に基づいた適正な取引の実現に向けて、経産大臣を始め関係各所の皆様には力強く活動を推進していただくことをお願いし、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣伊東良孝君登壇、拍手〕