2025-04-18
参議院
石垣のりこ
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
石垣のりこの発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)
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○石垣のりこ君 ODA調査派遣第一班について御報告いたします。
当班は、令和六年八月二十六日から九月四日までの十日間、ベトナム社会主義共和国、マレーシア及びタイ王国に派遣されました。
派遣議員は、団長の中西祐介議員、窪田哲也議員、そして私、石垣のりこの三名です。
今回訪問したベトナムではフォック副首相兼財政大臣やズン計画投資大臣、マレーシアではモハマド外務副大臣、タイではスリヤ副首相兼運輸大臣といった要人との面会の機会に恵まれるなど、様々な関係者と意見交換を重ねつつ、主要なODA案件の視察も行うことができました。
以下、それぞれの国における現地視察や関係者との意見交換等を通じて得られた所見を中心に御報告いたします。
まず、ベトナム社会主義共和国について申し上げます。
ベトナムは、近年、おおむね五%から八%という安定的成長を遂げており、また、メコン地域の発展の牽引役として重要性が高まっています。日本とベトナムは二〇二三年に外交樹立五十周年の節目を迎え、両国関係は包括的戦略的パートナーシップに引き上げられました。両国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPを実現するためにも関係を強化し、地域全体の安定と繁栄を促進する様々な取組についてODAを戦略的に活用していくことが重要と言えます。
今回、ベトナム海上警察に無償資金協力により供与した船舶を視察し、不正な漁業の取締り等に活用されている実態の説明を受けましたが、法の支配に基づく自由で開かれた秩序をつくるため両国が理念を共有するとともに、違法、無報告、無規制に行われるIUU漁業の対策強化など、海の安全確保のための支援強化の重要性を改めて認識いたしました。また、気象水文総局のレーダー塔を視察した際、日本の気象衛星「ひまわり」のデータを解析して国民に気象情報の提供が行われていると説明を受けました。日本の経験、技術を生かした支援によりベトナムの防災・災害対処能力が強化され、さらにメコン地域諸国をベトナムの気象分野の技術によって導いていくことになれば、地域全体の被害軽減にも資するものと考えます。
また、ベトナムでODA案件に携わっている日系企業の方々と意見交換した際、円借款で進められている事業の工期が大幅な遅れが生じているものがあり、スピード感を持って進めることが重要との意見が出されました。ODA案件の進捗に明らかな遅れがある場合には、原因を調査し、必要に応じて事業の早期実施を相手国政府等に働きかける必要があります。ODAの実施に関する行政手続の簡素化や迅速化等について、関係機関が調整等の役割を十分発揮することが重要と考えます。
日本の開発協力は、物を作って終わりではなく、その後の成長に向けた技術協力や人の交流も含めて継続させていくことを前提としたものです。これが日本の強みを生かした協力です。インフラ整備の中でも鉄道案件は日系企業の投資を後押しする重要なプロジェクトで、ハノイとホーチミンを結ぶ南北高速鉄道について、ズン計画投資大臣は、ベトナム側にとって良い条件のODAとしてほしい、必ずしも日系企業が受注できるものではなく、国際入札も考えていると発言していました。日本のインフラ整備の特徴を根気よく説明すると同時に、鉄道案件は投資額も多額になるため、例えば、官民オールジャパンで組成した国内検討会議のような場を設けて計画案やローン条件等を検討、調整するなど、ODAの活用を戦略的に考えていく必要があると考えます。
ベトナムは、二〇四五年の先進国入りを見据え、半導体産業を基幹産業とすることを目指しており、そのための人材育成を進めています。したがって、日本とベトナム両国の協力の下、この分野におけるベトナムの人材育成を行い、日本の企業への人材供給ができれば戦略的な協力になると思われます。例えば、ベトナムの学生が日本に留学する際に奨学金を日本側が支援するなど、日本とベトナムが連携することが重要と考えます。両国が中長期的に技術協力や人の交流を含めて連携し、開発協力を進めることが必要と考えます。
次に、マレーシアについて申し上げます。
今回、職業訓練指導員・上級技能者養成センター、CIASTでは、アジア、アフリカ諸国を中心とした第三国研修のプログラムが実施されていますが、第三国研修を通じたサポートが行われる意義は大きいと改めて認識しました。マレーシア国内では援助機関設立に向けた取組が進められているとのことで、アジア地域を越えた国際社会の課題に日本と共同で取り組むグローバルな開発パートナーとしての関係に発展していくことが期待されます。
対マレーシアODAでは、産業人材育成や高等教育支援への協力に力を入れ、中でも、マハティール首相が提唱した東方政策を通じた日本への留学、研修は現在に至るまで継続されています。今回訪問したマレーシア日本国際工科院、MJIITでは、講座制による多数の専門プログラムが用意されており、これを継続、発展させていくことが重要と考えます。そのためには、マレーシア工科大学と日本の大学、企業間における双方向での交流が進められる必要があります。
マレーシアでは、産業の高度化、高付加価値化、高度産業技術等に高いニーズがある一方で、環境保全、社会的弱者、障害者等の支援、廃棄物処理、防災等が課題となっています。経済成長の裏で都市部と地方の経済及び所得の格差は大きくなっており、これらの課題解決のため支援を行うことは、均衡の取れた発展を後押しするものと考えます。
この点において、JICA海外協力隊員が使命感を持って精力的に支援活動を行っており、その情熱に感銘を受けました。自身の専門的な知識を生かしながら、現地の人々とともに生活し、同じ目線で開発ニーズや課題解決のために支援を行うことは、我が国らしい支援として信頼を集める源泉になっています。協力隊員としての経験は何にも得難く、社会にとっても大きな財産であることから、協力隊員に対する帰国後の就職支援、また大学院進学等について、国としても最大限のサポートをお願いしたいと思います。
マレーシアは、国際海上交通の要衝でありまして、日本にとっても重要なシーレーンであるマラッカ海峡を有するなど、南シナ海の沿岸国として地政学的に重要な位置を占めています。日本はマレーシアとの海上保安分野での協力を重視しており、JICA長期専門家、海上保安アドバイザーを海上法令執行庁へ派遣し、鑑識技術や海上捜索救助等の分野での研修や、アジア、アフリカ諸国を対象とした第三国研修をマレーシア側とともに実施しています。これらの協力は、ルールに基づく海洋秩序の維持につながるものであり、更なる協力強化が期待されます。
次に、タイ王国について申し上げます。
日本はタイにとって一貫して最大のODA供与国となっており、これまでに総額二・八兆円の支援を実施してきました。こうした結果、タイは高中所得国となり、メコン地域において最大の経済規模を有しています。他方で、中進国のわなからの脱却に向けた産業の高度化や産業人材の育成、交通渋滞や大気汚染等に代表される都市環境問題への取組などが課題となっています。
今回、バンコク都市鉄道レッドライン及びパープルラインを視察しましたが、鉄道のメンテナンスには日本の技術が採用され、輸送障害の発生がゼロになっていると説明を受けました。現在、規格に違いがある路線の統一が今後進められていく場合にも、日本の技術基準が採用されるように実績を積み重ねていくとともに、鉄道の安全は質の高いメンテナンスによって支えられているという理解を促進する必要があると考えます。また、日本の開発協力は、投資をして終わりではなく、技術を伝承し、人を育て、環境負荷にも強く、安全性も兼ね備えていることをタイ側にも積極的に説明し、日系企業が十分に強みを生かせるよう後押しすることが重要です。
インド洋と南シナ海の両海に面するタイは、地政学的に重要な位置を占め、ASEANにおいて中核的役割を担うとともに、自由で開かれたインド太平洋、FOIPにおけるメコン地域の発展の鍵とされています。ASEAN諸国等を対象とした第三国研修や専門家派遣に一層に取り組むなど、日本とタイの開発パートナーとしての関係を強化し、ASEAN・メコン地域の発展に貢献することが重要です。
また、日本の高専制度を導入したモンクット王工科大学ラカバン校附属高等専門学校、こちらは二〇二四年三月に一期生が卒業しました。日系企業や現地産業界から非常に注目を集めています。中進国のわなに直面するタイにおいて、経済発展を考える上では、こうしたタイ高専のような科学技術産業への高度人材の育成などが重要になるため、日本としても協力を惜しまない姿勢が必要と考えます。他方で、タイ高専の学校数が現在よりも増加した場合の教員の確保に備えてタイ人の教員を養成する必要性などといった課題にも対処することが求められています。
最後に、ODAに関する国民の理解及び戦略性について申し上げます。
マレーシアやタイのような中進国から高所得国入りを目標とし、ASEANを始めとした第三国の課題に対する支援も行っている国に対するODAは、ニーズを見極めた上で、技術協力、円借款及び海外投融資等を戦略的に検討し、国民に理解を得ることが重要と考えます。
結びに、今回の派遣に当たっては、視察先の関係者を始め、外務省及び在外公館、JICA等、内外の関係機関の方々に多大なる御協力と御尽力をいただきました。改めて深く感謝を申し上げまして、報告を終わります。