若松謙維の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)

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○若松謙維君 ODA調査派遣第二班について御報告いたします。
 当班は、令和六年八月二十七日から九月二日までの七日間、インド共和国に派遣されました。
 派遣議員は、団長の青木一彦議員、青山繁晴議員、石川大我議員及び私、若松謙維の四名でございます。
 インドは、十四億人の人口を抱え、近年、著しい経済発展を続けており、世界最大の民主主義国家として安定した内政運営が行われております。また、国際社会においては、いわゆるグローバルサウスの中心国としてますます存在感を高めています。
 一方、経済成長の成果は国民に広く行き渡るには至っておらず、貧富の格差は依然として大きく、失業率は八%前後で推移しており、特に高学歴の若者の失業率は二八・七%と高くなっています。急速な都市化や人口増加にインフラ整備が追い付いておらず、環境面では大気汚染や水質汚染の問題を抱えるなど、様々な社会課題が存在しています。
 以下、現地の視察、政府要人や関係者との意見交換等を通じて得られた所見を中心に御報告いたします。
 第一に、ODAの戦略的活用について申し上げます。
 インドは、インド洋の中心に位置する日本に友好的な民主主義国家であり、国際社会における影響力も大きな国です。我が国が掲げる自由で開かれたインド太平洋、FOIPの重要性について認識を共有しており、これを実現する上で欠くことができない非常に重要なパートナーです。今後もODAを懸け橋としてインドとの連携を更に強化し、FOIPの推進力として協働していくことが望まれます。
 また、ODAを活用し、インドに進出している日系企業にも恩恵が及ぶ投資環境整備を行うことも重要です。
 政府には、ODA開始から七十年の経験を生かし、我が国にも援助を受ける開発途上国にも裨益する効果的なODAの在り方の検討に一層注力することが求められます。
 なお、ODAは、日本企業にとってもインド進出の足掛かりとなりますが、インドでは調達先が援助供与国に限定されないアンタイドの事業が原則となっているため、日本企業においては、ODA事業を国際競争入札において受注しやすくなるよう、低廉な価格設定と相応の品質の製品開発といった現実的、戦略的な対応が求められます。
 第二に、インドに対するODAの在り方について申し上げます。
 持続可能な開発目標、SDGsは、誰一人取り残さない持続可能でより良い社会の実現を目指す世界共通の目標であり、我が国の開発協力の特色である質の高い経済成長や人間の安全保障といった概念と高い親和性があります。インドは、SDGs達成に積極的に取り組んでおり、我が国は、持続的で包摂的な成長の支援、産業競争力の強化、連結性の強化という方針の下、インドのSDGs達成を後押ししています。人口が非常に多く、貧富の格差も大きいインドにおいてSDGsを達成することは容易ではなく、様々な社会課題の統合的な解決に資するSDGs達成の支援に一層力を入れるべきだと考えています。
 また、膨大な人口を抱えるインドでは、莫大な資金を投じても効果が全国民には行き渡らず限定的になってしまうという側面もあります。インドにおける制度の改善を促すODAに力を入れるほか、国際機関や民間資金との連携も有効だと考えます。
 インドにおける雇用問題には、高い失業率に加え、靴磨きや露天商等、行政の指導を受けない小規模な経済活動であるインフォーマルセクターの労働の問題もあります。国際労働機関、ILOによると、インドではインフォーマルセクターにおける労働が全体の九割を占めており、労働法の適用を受けないため、低賃金や健康問題の温床となっているとされています。雇用のミスマッチを避け、それぞれの能力に応じた適切な雇用を確保するため、職業訓練や幅広い業種の産業の育成が必要です。その際、今般調査したタミル・ナド州投資促進プログラムのような総合的な投資環境整備事業が有効であると考えます。適切な雇用の確保によって、貧困層の生活水準が向上し、貧富の格差解消につながることや、働きがいのある人間らしい仕事、ディーセントワークの実現が期待されます。
 一方、経済発展を遂げ、国民全体の生活水準が上がった場合、インドでは食料やエネルギーの更なる消費拡大が見込まれます。これを国内で賄うことができるよう、農業の生産性と持続可能性の強化や多角化、再生可能エネルギーの普及やエネルギー効率化への支援を強化することも重要です。さらに、今般視察したオクラ下水処理場における汚泥由来のガスを有効活用した発電、デリーメトロやムンバイメトロ三号線における電力回生のような取組も有効であり、今後も可能な限り導入するよう努めるべきであると考えます。
 経済成長による貧困削減では救い切れない貧困層への支援という点では、必要な予算は比較的少額であるものの、脆弱な立場の人々に対して、直接、きめ細やかな対応が可能となる草の根・人間の安全保障無償資金協力の推進が必要です。在外公館においては、支援を必要としている団体に必要な情報が届き、高い理念と熱い情熱を持った団体を発掘できるよう、様々な機会を通じて積極的な周知を行うことが求められます。
 第三に、ODAの運用上留意すべき点について申し上げます。
 今般視察したタミル・ナド州都市保健強化計画におけるキルポーク医科大学病院の整備においては、インド側が希望していた日本製医療機器を導入するには事業期間の延長が必要でしたが、延長が認められず、代わりに外国製医療機器が導入されました。今後、事業期間の延長判断に当たっては、事業の実施管理の観点とともに、日本企業の参画についても十分に考慮することが望まれます。
 今般意見交換を行った日系企業関係者からは、ODA事業を受注して契約した後、発注者であるインド側の事業実施機関から多くの追加要求が行われるものの、契約金額が変更されないこともあり、受注企業としては厳しい側面があるとの意見がありました。要求内容を加味した上で契約価格の調整が適切に行われれば受注企業も過度な負担を強いられることなく事業を遂行でき、ODA事業を受注しようとする企業の裾野を広げることにもつながるのではないでしょうか。JICAにおいては、契約金額の見直しに向けた発注者と受注者の仲介も行っていることを受注企業に周知するとともに、発注者からの追加要求の状況にも留意しつつ、発注者、受注者双方と十分にコミュニケーションを取りながら、積極的に仲介を行うことが望まれます。
 JICA海外協力隊制度に関しては、原則として配属先機関が用意することになっている住居の隊員間格差が生じているほか、帰国後のキャリアに不安を感じている隊員もいました。JICA海外協力隊員は日本の宝であり、使命感を持って精力的に活動している隊員が安心して活動に専念できる環境の確保、隊員としての活動が適正に評価される環境醸成やキャリア形成支援が必要です。JICAにおいて、既に様々な支援が行われていることは承知していますが、一層の尽力をお願いします。
 第四に、ODAに関する情報発信の重要性について申し上げます。
 厳しい財政状況の下、ODA予算を維持拡大していくためには、国民の理解を得るための一層の努力が必要です。我が国のODAはインドにおいて高く評価されていましたが、ODAは、援助を受ける開発途上国だけではなく、援助を行う我が国の国益にも資するものであることを国民に理解してもらうことが重要であり、ODAに対する国民の理解を促進するための情報発信に一層力を入れることを政府に求めます。
 ODAに関する情報発信は、援助の対象となる開発途上国においても、在外公館やJICAが積極的に取り組む必要があります。ODA事業が行われている間や事業終了直後だけでなく、事業終了から時間が経過した後も我が国のODAによって支援を受けた事業であることを認識し続けてもらい、日本のプレゼンスを維持していくためには、日頃からの情報発信が欠かせません。ODAに関する情報発信もJICAの重要な業務の一つとして、更に積極的に取り組むことを望みます。特に、ODA調査派遣議員団の視察は情報発信の好機であり、是非有効に活用してほしいと思います。また、先ほども述べたように、草の根・人間の安全保障無償資金協力による支援を必要としている団体を発掘する上でも情報発信は重要です。さらに、日本の技術を活用したODAの成功例を周知して、高い技術力を広め、日本企業が新たなビジネスチャンスをつかむことができれば、日本経済にとっても有益だと考えます。
 最後に、ODA調査派遣の意義について申し上げます。
 二〇〇三年七月の参議院改革協議会報告書の提言を受け、参議院では二〇〇四年度からODA調査のための海外派遣が実施されています。二〇二四年度までに十八回にわたり、六十九班が延べ百七十の国・地域に派遣されています。派遣議員団が実際に現地に赴き、自らの目で見て生のお声を聞いて調査を行うことは、かけがえのない非常に貴重な機会です。こうした経験を踏まえ、ODAに関する議論を深めていくことは、ODAに対する国民の理解を促進する上でも重要であると考えます。
 結びに、今般の派遣に当たって多大な御協力をいただきましたインド政府、州政府、視察先関係者、外務省本省、在外公館、JICA、国際機関邦人職員、JICA海外協力隊員、日系企業関係者等の方々に改めて感謝を申し上げるとともに、インドにおける日本の顔として活躍されている皆様に心から敬意を表し、第二班の報告といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 若松謙維

speaker_id: 28195

日付: 2025-04-18

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会