江島潔の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)

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○江島潔君 それでは、ODA調査派遣第三班について御報告を申し上げます。
 当班は、昨年九月一日から九日までの九日間、フィジー共和国及びトンガ王国に派遣されました。
 派遣議員は、団長の藤川政人議員及び私、江島潔の二名でございます。
 大洋州地域に広がる島嶼国の多くは、国土が狭い、広範囲に散在する、人口が少ない、自然災害が多いなど、開発上不利な面を少なからず抱えており、開発課題を克服するために、国際社会の支援が重要な役割を果たしています。
 同地域に対する開発協力では、従来、歴史的なつながりもある豪州やニュージーランドなどが主要なドナー国でしたが、近年は中国が積極的な支援を行っており、それがどういった影響を与えるのか、見極め、必要な対応を取っていくことも求められています。
 そうした中、今般、参議院のODA調査として、同地域の中心的な国であるフィジーを再び訪れたほか、同地域唯一の王国であるトンガを初めて訪問し、案件視察のほか、政府要人や関係者と我が国の開発協力に対する評価や期待などについて意見交換ができたことは、大変有意義であったと思っております。
 以下、調査を踏まえた派遣団としての所見の概要を申し上げます。
 第一に、我が国と太平洋島嶼国は様々な分野で課題を共有しており、そうした分野で我が国が培ってきた経験等に基づく比較優位を活用した支援の有効性を実感をしました。
 トンガで調査しました無償資金協力、全国早期警報システム導入及び防災通信能力強化計画では、支援で導入したシステムにより、それまで九十分程度要していた全国への警報伝達が九分弱に短縮されており、トンガ側の評価も高く、早期警報の重要性に関する我が国の知見が生かされていることが確認できました。
 また、先般の開発協力大綱の改定の際に打ち出されたオファー型協力として、フィジーとの間で準天頂衛星システム「みちびき」を活用した災害危機管理通報サービスの導入に向けた取組も進んでおり、フィジー側のニーズも踏まえつつ、より良い支援としていただきたいと思います。
 気候変動対策の関連で注目される再生可能エネルギー導入支援では、トンガにおける無償資金協力、風力発電システム導入計画を調査をしました。この支援では、トンガがサイクロンの常襲地域であることから、同様に台風対策が必要な沖縄での実績がある可倒式風車が活用されており、我が国の強みを生かした支援となっています。今後は、部品供給やメンテナンスの面などでも適切なフォローアップが必要になるだろうと考えます。
 我が国同様、海とともに生きてきた太平洋島嶼国に対しては、海洋利用に関する知見や技術、経験を共有することも重要であります。
 我が国はこれまで長きにわたり、フィジーにある地域の中心的な高等教育機関である南太平洋大学における持続可能な水産資源の活用に向けた支援などを行ってきています。現在も技術協力、太平洋島嶼国のSDG14、海の豊かさを守ろうプロジェクト、これを実施をしておりますが、これは南南協力による成果の地域全体への普及も目指したもので、効果的な支援であると思います。
 なお、以前支援した施設等に老朽化も見られる中、近年は様々な国から共同研究などの大型プロジェクトの提案が増えてきているとのことで、我が国としてもこれまでのプレゼンスを維持できるような支援の継続が期待をされます。
 また、高い造船技術も、これも我が国の強みでありますが、無償資金協力、経済社会開発計画で供与したタグボートは、地域でも屈指の牽引能力を持つものであることに加えまして、災害救援や船舶火災にも対応できるなど大変多機能であり、トンガにおける海洋利用の可能性を広げるものと確信をしました。ちなみに、このタグボートは下関の造船所で建造されたものです。
 第二に、情報通信分野に関する開発協力の重要性を指摘したいと思います。
 トンガでは、二〇二二年の海底火山の噴火の際、海底ケーブルが損壊し、一定期間、国内外で情報伝達が困難になりました。これは、今日の情報化社会における海底ケーブルの重要性を認識をするものであります。
 我が国は米国や豪州と連携した東部ミクロネシア海底ケーブル事業などに取り組んでおり、こうした動きを評価したいと思います。
 情報通信ネットワークは人々の生命や財産を守るライフラインであり、サイバーセキュリティーに関する支援の強化、ネットワークの強靱化にも取り組む必要があり、多様な技術を総合的に活用していくため、国内で培ったノウハウを開発協力へ活用していくべきと考えます。
 第三に、人間の安全保障にもつながる、きめ細やかな草の根支援の重要性であります。
 今回の調査では、両国政府要人との意見交換において、我が国の草の根・人間の安全保障無償資金協力を高く評価する声がしばしば聞かれました。
 一例を挙げますと、草の根レベルでの学校整備、災害時に避難所として使われていることも想定したコミュニティーホールの建設等々に謝意が述べられました。特に後者のような支援は我が国らしい視点が生かされており、援助では必要な規模を確保した上で、そうした面で他国との差別化が効果的であると気付かされました。
 なお、フィジーでは、会計検査院の令和四年度決算検査報告において指摘を受けていた、このスキームによるナヴアケゼ・ディストリクト小学校整備計画も調査をして、その後の対応について説明聴取を行いました。
 フィジー政府の協力も得て校舎が完成をし、引き渡されておりましたが、援助効果の発現について、会計検査院の指摘を受けたことは遺憾であります。
 このスキームで生じやすい問題について、各在外公館におけるグッドプラクティスの共有を図るなど、再発防止を図り、柔軟性と機動性というこのスキームの強みを生かした、より良い協力を実施していただきたいと思います。
 第四に、無償資金協力等と技術協力とを効果的に連携させる重要性が挙げられます。
 大型インフラ整備のような案件がほぼ行われていないフィジー、トンガ両国では、一見地味ですが、無償資金協力と技術協力との効果的な組合せが成功している例が少なくありません。その代表例がフィジー気象局への協力であり、我が国の無償資金協力により施設や観測機器等が整備されたのを契機に世界気象機関、WMOの地域特別気象中枢に認定をされ、その後も技術協力で人材育成に協力してきた結果、今では地域のサイクロン予報、警報や人材育成等の拠点にまで成長しています。
 こうした物の支援と、それをどう効果的に使うかというノウハウを伝える技術協力は車の両輪であり、こうした連携が日本の強みとして両国で高く評価されていたことは指摘しておきたいと思います。
 第五に、JICA海外協力隊が多面的に活躍できる環境整備、支援の重要性であります。
 JICA海外協力隊は今年六十周年を迎えますが、彼らが行っている草の根でのきめ細やかな開発協力は我が国の強みであるとともに、隊員を介して我が国やあるいは日本人に対する理解促進も期待され、効果的な活用が期待されます。
 協力隊に関しては、過去の参議院のODA調査でも、現地での仕事とのミスマッチや帰国後の再就職支援などについて指摘があり、今回、意見交換した隊員からは特に問題点や不安は聞かれませんでしたが、JICAには引き続き、安心して意欲的に職務に当たれるような支援をお願いしたいと思います。
 また、帰国した隊員が、現地で身に付けた知識や経験を我が国社会に還元できるような取組の強化も求められるほか、四十六歳以上を対象とする海外協力隊の更なる活用の可能性も検討してほしいと思います。
 第六に、自由で開かれたインド太平洋の実現に資する開発協力を目指していく上で留意すべき点であります。
 今日、自由や民主主義、あるいは法の支配に基づく国際秩序が重大な挑戦に直面する中、我が国は自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、開発協力も戦略的に行っていくべきと考えます。
 こうした中、中国は開発協力を通じて太平洋島嶼国にも影響を拡大していますが、ここで留意すべきは、これらの国々は中国も重要な開発パートナーとして捉えており、二者択一を迫るようなアプローチは必ずしも効果的ではないと思われる点であります。
 我が国は太平洋島嶼国に対し、太平洋・島サミットなどの場を通じて、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の意義の重要性について、これらの国々との共通理解を深めていくことが重要だと考えます。
 その際には、海洋法に関する人材育成を積極的に支援することや、あるいは領海基線の問題など、島嶼国が関心を持つ海洋法上の問題について、我が国の国益にも留意しつつ、緊密に連携していくことも一案ではないかと思っています。
 最後に、今、大洋州地域は国際秩序をめぐるせめぎ合いの場になっており、参議院としても、同地域により積極的にODA調査団を派遣する必要があるように思います。
 以上が第三班の所見及び提言です。
 最後になりますが、調査に御協力いただいた視察先及び内外の関係機関の方々、全ての皆様に心から感謝を申し上げ、報告を終わります。

発言情報

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発言者: 江島潔

speaker_id: 19303

日付: 2025-04-18

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会