広瀬佳一の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(広瀬佳一君) それでは、私の方から、現在のロシア・ウクライナ戦争におけるNATOの役割と停戦の行方、まさに今、現在進行形で動いているわけですけれども、この問題について、私の専門であるNATOの観点から見るとどのような意義があるのか、そして停戦の行方はどのように考えられるのか、最後に東アジアにとってどのような影響があるのかということについて申し述べさせていただきたいと思います。
 なお、私の報告はあくまで公開情報に基づく一研究者としての私見ですので、何ら所属組織とは関係ないということを最初に申し述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に、このNATOという問題ですけれども、これ、実は、昨年総理がアジア版NATOということを言い出してえらく脚光を浴びてしまって、一体どういうことなんだろうというふうなお気持ちが皆さんの中にもおありになるんではないかと思いますけれども、このNATOというものが、アジア版NATOという議論のときに、とかくその抑止と防衛とか核共有とかそういったところに議論が集まりがちで、批判的に見られることが多かったというふうにも思っているわけですけれども、実はNATOというのはかなり冷戦後に変容しておりまして、いわゆる一般的な同盟というような言葉では言い表せないほどの形となっています。その辺をまず最初にちょっと簡単に御紹介したいと思います。
 冷戦期は、間違いなくNATOというのは、この北大西洋条約第五条が、これが集団防衛を規定しておりますけれども、この機能によってそのいわゆる冷たい平和というものを支える基盤であったわけですが、冷戦が終わり、ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約機構が解体しますと、機能の拡大を開始いたします。それはどういうことかというと、集団防衛に加えて、危機管理、そして協調的安全保障という、この三つを主任務だというふうにNATO自身も自称するようになります。
 危機管理というのは、例えば九〇年代のボスニア紛争とかコソボ紛争、あるいは二〇〇一年から続いたアフガニスタン戦争、あるいはリビアの空爆といったような事案にNATOが加盟国ではないのに関わるということを行いました。これは、場合によっては国連安保理の決議があったり、ない場合でもNATO自体としての決議があったりして行ったものであります。
 それから、協調的安全保障というのは、NATO加盟国が、それ以外の国とその加盟国の間で壁ができないように、中東の国々とか広くアジアの国々とパートナーシップを行うということを制度化したものでありまして、実は東方拡大というのもこの協調的安全保障、協調的安全保障というのはそもそも敵を想定しない安全保障の考え方なんですね。だから、敵ではなくて同じ価値を持っている国の共同体を拡大するという観点からこの東方拡大も始められたわけであります。
 この三つの機能を持っているNATOというのが、九〇年代から二〇〇〇年代、二〇一〇年代前半ぐらいまでの協調的な国際秩序というものを支えてきた。そういう意味で、私は、これはNATOによる平和という側面があったんではないかというふうに考えています。
 この状況が一変するのがロシア・ウクライナ戦争であります。この戦争によって再び権威主義体制がルールに基づく秩序というものを脅かしているわけですから、NATOも当然、集団防衛にと重心をシフトいたします。例えば、ロシアに近いバルト三国やポーランドの防衛体制を強化するとか、あるいは各国の防衛支出をもっと増やそうと。
 これは、トランプ第一次政権のときにも大きく話題になりましたけど、元々は、二〇〇二年ぐらいに、NATOが広く拡大するときに、防衛費が余りにも違い過ぎるのはフェアではないという考え方、これは別にトランプさんに限らず多くのアメリカ人が持っている考え方ですけど、それで大体二〇〇二年ぐらいに当時のNATO加盟国の防衛費をざっと並べてみて中央値を取ったんですね。それが大体二%だったんですよ、GDP比二%。だから、このGDP比二%というのを取りあえずの目標にしようというふうに決めて、それが今独り歩きしてGDP比二%ということになっておりまして、一応去年までにみんなでその合意しようねということでやってきたわけですが、去年の段階でNATOの三十二か国のうち二十四か国が達成しております。
 まだ依然として達成していない国もありますが、もはやトランプ政権、第二次政権ができますと、この二%では足りないという議論が主流になりつつあって、今年の夏にハーグで行われるNATOの首脳会議では三%かそれ以上を今ルッテ事務総長は提案すると言われておりまして、これに対して、つい先月の世界経済フォーラムでトランプさんは、五%にしろと、こういうことを言い出して、アメリカすら五%達成していないわけですけど、そういうことを言い出しておりまして、この数字がちょっと独り歩きしている現象がありまして、でも、これは日本にとってもただ事ではなくて、もしNATOが本当に今年の六月に三%あるいはそれ以上というふうにしてしまうと、日本にもその議論の影響は出る可能性はあるということであります。
 二〇二二年、戦争が始まってすぐにNATOは戦略概念というのを発表しまして、そこで初めてやっぱりロシアは脅威だということを明確に規定しますし、ここで初めてNATOは中国にも規定したんです、中国も挑戦だと。これはチャレンジという言い方で、スレットとはちょっと違うんですけど、やっぱり警戒すべき挑戦であるということを言い出しましたし、これまたNATOの公文書で初めてインド太平洋という言葉、これが使われるんですね。これは、故安倍総理が、インド太平洋の安全を、開かれた、広く開かれた秩序としてのインド太平洋ということをおっしゃって、それが一つのきっかけになって広がった概念ですけど、NATOもそれを使うようになり、このインド太平洋の問題というのは欧州大西洋に直接影響を及ぼすんだという認識を持ったことによって、ロシア・ウクライナ戦争の持っているグローバル性というのが浮かび上がってくるわけであります。
 そのような形で、NATOは同盟としても加盟国としてもこのウクライナの支援に非常に尽力を注いだわけですが、二年以上たった今、もう三年たっていますか、NATOにとっていろんな課題が出てきております。これを次に紹介したいと思います。
 一つは、東方拡大、これをめぐる問題です。これは、よく言われるように、ウクライナをNATOに入れておけば戦争は起きなかったんじゃないかという議論がよくあるんですけれども、この議論の原点になっているのが、二〇〇八年、今から二十年近く前ですけど、ブカレストというところで行われた首脳宣言で、ここでNATOは、ウクライナとジョージアは将来加盟国となるだろうとはっきりと書いてしまったんですね。これが政策的に良かったかどうかというのはちょっと議論が分かれるところですけど、これにプーチン大統領は強く反発して、同じ年にジョージア紛争を開始しましたし、今回のウクライナ侵攻の背景の一つにもこのNATOがウクライナを入れるという問題があるというふうに言われています。
 で、戦争始まったので、やっぱりこれ入れなきゃいけないんじゃないかという議論が次に出てきて、それでどうしたかというと、NATOがなかなか決断できないわけです。例えば、二〇二三年のビリニュスの首脳会議では、条件が整い、全加盟国が一致した場合にはすぐ入れようと言っているんですけど、これなかなか全加盟国一致しないものですから、これは余り意味なかったわけです。去年にまた批判があって、もっとはっきりと入れるという方向を出そうと、それによってロシアを抑止しようというふうな議論があったんですけど、でも、そこでも文言としては、加盟への不可逆的な道を引き続き支援するという、何だかよく分からないお役所的な言葉で、これは何なんだろうと。加盟に実は、言葉は、レトリックを変えていますけど、実は一歩も進んでいないんですね。つまり、NATOはこのように、結果的にそのレトリックをいじるだけで、偽りの約束を連発しているということが言えます。やっぱりコンセンサスが得られないわけですよ。NATOの意思決定はコンセンサスなので、一国でも反対すると駄目なわけです。
 この結果どういうことになったかというと、ウクライナ側に対しては何かすぐ入れるんじゃないかという期待値を上げてしまっている。だから、ゼレンスキー大統領は盛んに、唯一の安全の保証はNATOだということを盛んに言って、もうすぐにでも入るという、そういう勢いの発言が連発されています。他方、ロシアに対しては、いや、これ本当に入るんではないかと、曖昧な形ですけど入るんではないかと思わせることによって、むしろNATOの拡大こそがこの戦争の元凶なんだというプーチン大統領の論理に正当性を与えてしまっている面もあるんじゃないかというふうに思います。
 それから、武器支援ですね。これ一生懸命やっているんですけど、この武器支援にはかなり実は格差があります。
 図の一を御覧ください。
 これは、戦争が始まって以来昨年の十月三十一日までのデータなんですけど、これを集めたものです。図の一です、二国間軍事支援の状況。これを見るとすぐお分かりになると思うのは、やっぱりアメリカが突出しているわけですね。アメリカ一国で六百億ユーロぐらい出していて、その他のヨーロッパ全部合わせてもそれより少ないわけです。
 個別国家見ると、一番多いのはドイツですけど、たかだか百億ユーロちょっとなんですね。政治的にいろんな発言をするフランスとかイタリアはドイツの三分の一でしかなかったり、イタリアに至ってはドイツの八分の一の十億ユーロですので、何とこの表に入っていないんですね。
 こんなふうに、ドイツとフランスはヨーロッパの中心でありながら軍事支援についてははるかに少ないということが分かって、やっぱり軍事支援というものがウクライナ戦争の推移に影響をするという点から見ると、アメリカ依存という構造は余り変わっていない。ヨーロッパが自立性ということを盛んに政治家が主張しますけれども、かなりそれは現実とレトリックにギャップがあるということであります。
 それからもう一つ、世論を見ていただきたいんですけれども、まずアメリカですが、図の二を御覧ください。
 これは、アメリカにおいて、ウクライナ支援は多過ぎるのか、トゥーマッチなのか、アバウトライト、ちょうどいいのか、あるいはノットイナフ、不十分なのかということを聞いた質問で、これ世論調査行われたのはつい先月、今月ですね、三日に行われています。
 これも一目瞭然なのは、もう多過ぎるというのが三〇%で一番多くて、それが不十分だというのが二二%になっていまして、党派別に見るともっとはっきりしまして、やっぱりリパブリカンですね、共和党系の人たちはもう四七%が支援は多過ぎるということを言っているわけで、このように、アメリカ国民全体としても支援に対して批判的であり、特に今のトランプ政権を支える共和党の人たちはかなり批判的であるということがここからも浮かんできます。
 ヨーロッパについても、いろんな世論調査があるんですけど、一つだけ御紹介させてください。それは図の三です。
 これちょっと面白い調査で、ヨーロッパはいろんな調査があるんですけど、これは面白い調査で、何が面白いかというと、これ去年行われたんですけど、もしアメリカの新大統領が、これはトランプさんのことです、もしアメリカの新大統領がウクライナ支援を劇的に減らした場合にヨーロッパはどうすべきかという質問なんですね。青が支援を増やしてウクライナが戦闘を継続できるように頑張るべきだというんですね。それに対して、ピンクはアメリカに倣って支援を減らそうと、それで和平を促そうという、こういう数字なんです。
 これを見るとちょっと驚くんですけど、ヨーロッパの政治指導者はウクライナを支援しなきゃいけないということを盛んに言うんだけど、世論では一番多いのは、アメリカに倣って支援を削減し交渉を促そうというような、これが三三%で一番多いということが分かります。国による差も結構ありますけれども、でも、全体的にアベレージでいうと三三%ですから、そこが一番多いというのがこの世論の割と冷めた部分で、これがいわゆる支援疲れとも言われますし、あるいは厭戦機運とも言われますけれども、そういう雰囲気がもう既に昨年ぐらいから漂っているということであります。
 そういう状況を背景に、次に、じゃ、停戦の話を少ししてみたいと思います、今ちょうど話題になっておりますので。
 停戦可能な条件というのを考えると、これ、今ちょうど戦死者も、もう死傷者含めると百万人突破していますし、トランプ政権できたということで停戦何とかしようという話がありますが、ポイントは三つありまして、一つはどのような停戦ラインを推進するのか。これ、言ってみれば公正さの問題です。明らかに侵略者がいて、そして明らかに被害者がいるわけですけど、それでどういうふうに線を引くのかという問題。二番目が、将来誰が再びロシアの攻撃を行われないように安全を保証するのか。これ、持続的な平和を誰がどうつくるかという問題です。三番目は、ウクライナをヨーロッパの中でどう位置付けるかという問題ですね、これが三番目。
 こういう話をめぐって、これまでいろんな学者さんとかが、政治家含めていろんなプランが出ていて、例えば、ここにある平和の公式、西ドイツモデル、フィンランドモデル、プーチンの要求、そしてトランプ政権の現在の構想とあるわけですけれども、それぞれ簡単に申し上げますと、まず平和の公式というのは、これは元々ゼレンスキー大統領が唱えたことで、要するに、ロシア軍の撤退とか戦犯の訴追とか原発の安全保障なんかを言った上で、独立時の国境、つまりクリミア半島も含めて全部返せという要求であります。停戦後の安全の保証はNATOがこれを保証する、だからNATOに入るということですね。停戦後にはEUにも入って、ヨーロッパに復帰するということであります。
 しかし、このゼレンスキーさんの考え方は、欧米もこれを基本的に、国際法的にも合致しているわけなので支持していたんですけれども、ゼレンスキーさん自身が、トランプ大統領の当選によって見通しが非常に厳しいということを悟って、十二月にこれを断念するということを正式に言っています。
 二番目のが西ドイツモデルと言われているやつで、これは要するに西ドイツ、西ドイツって、一九五五年に東独と分かれたときに、西ドイツの部分はNATOに入ると、西ドイツは東独を併合しようとして武力を使うことをしないという、武力不行使の宣言をするという前提の下にNATOに入って、つまり西ドイツの領域だけNATOに入ったわけです。それで、ECとともに経済的発展を遂げて、やがて三十五年後に東ドイツを取り戻しました。こういう形ですね。
 だから、今のロシア・ウクライナ戦争に例えて言うならば、現時点での前線で一旦停戦を協定し、国境線変更をめぐる武力不行使宣言を出して、その上でロシア支配地以外のウクライナでNATOに入ると、そして復興に努力し、EUに入るという、こういう考え方です。ゼレンスキーは、今この考え方にゼレンスキー大統領さんも近いということが言えます。
 三番目は、フィンランドモデルといいまして、これも一部の学者が追求しているものですけど、フィンランドは元々、ソ連との二度の戦争の末に領土を一〇%割譲させられ、かつ、中立を明記した当時のソ連との相互援助条約を締結させられ、そして独立をいたしました。現状に合わせて言うと、ロシアと停戦だけじゃなくて、NATO加盟もしないで中立を宣言すると、で、やがてはEUに入るというようなパターンになるかと思いますが。
 ただ、ここで一つ考えてほしいのは、戦後のフィンランドというのは東欧、ポーランドやチェコやハンガリーが歩んだ道を歩んでいなかったということであります。フィンランドは非常に豊かな国になって、つまりソ連ブロックとは違う豊かな国になれたわけです。それは、政治的にはソ連のお情けにすがっているんじゃないかと言われることもありましたけれども、でも、違う道をたどったことで成功したと。つまり、言ってみれば小国の英知とリアリズム的な冷徹さ、こういうものがあったのではないかと。この場合、リーダーシップの問題も非常に大きいと思います。
 プーチンが、プーチン大統領が要求しているのは、御存じのように、クリミアとか南部・東部四州全域のロシア併合であって、かつ、NATO加盟なんかとんでもないということで、絶対駄目、断念しろと。停戦後の安全の保証は、ちょっとこれよく分からないところもあるんですけど、一応P5、国連の安保理ですね、常任理事国P5プラス、例えばトルコとかドイツが加わるというようなことを、少なくとも二二年の和平交渉のときには言っていました。
 そして、プーチン大統領が最近言っているのは、ゼレンスキー大統領の選挙すべきであると。つまり、大統領のもう正統性がないんだということを言って、これは恐らく政権交代というのをインプリケーションとして持っているのではないかというふうに思います。
 こうした中でトランプ政権が何を考えているかというところなんですけど、これは、トランプ政権もいろんなアクターがいて、いろんなメディアで紹介されていて、それぞれがお互いにちょっと矛盾したりするものですから分かりにくいんですけれども、でも、何か最大公約数的なものを見ると、まず第一に、停戦後の領土はやっぱりどうやら現時点での前線であろうかということです。じゃ、誰がその保証をするのかというと、これよく分からないんですね。これ直接引用したんですけど、ケロッグさんの、ケロッグ特使ですか、ウクライナ特使の論文があって、それに書いてあったことなんですけど、直接引用したんですけど、要するに包括的で検証可能な取決めというので、何かよく分からないですね、こういうものです。それから、停戦後はどうかというと、NATOは絶対駄目ということです。ただ、EUはいいというような発言もあるので、EUはオーケー。停戦監視はヨーロッパ中心でやればいいよ、ただし米軍は絶対参加しないということですから、その意味では朝鮮半島モデルにもなっていないんですよ。
 朝鮮半島モデルという場合には、これ米軍が参加するということが前提ですから、そういうふうにもなっていないということでありまして、このようにトランプ構想は、被害者と侵略者を同等に扱っているという点で公正さについて少し問題があるのと、持続可能な平和になるかというところも何かよく分からないところがあります。
 他方、ヨーロッパは、公正さを非常に重視しているのは分かるんですけれども、現実可能なプランBというのがないわけですね。その中で、西ドイツモデルというのは、公正さに若干の問題はあっても一つの可能性として、これが失われた機会になっていくんじゃないかという気がしております。これはあくまで個人的見解です。
 最後、もう時間もありませんので、最後に日本にとっての課題ということを少しだけ申し上げたいと思いますが、今日ウクライナで起きていることは明日東アジアで起きるかもしれない、これは岸田前総理がおっしゃって、この言葉は結構世界に広がって、ストルテンベルグ事務総長もこれを好んで引用しております。NATOの演説なんかでも好んで引用しています。つまり、ルールに基づく国際秩序を脅かす事態への危機感をヨーロッパで共有するという視点になるわけですね。
 このことは、私たち日本のウクライナ支援を考える際の重要な指標になるような気がします。つまり、日本がウクライナ支援においてどのようなリスクとコストを掛けるべきなのかということを考えるときに、それは、東アジアに危機が起きたときに、いかなるリスクやコストを欧米に、価値観を同じくする欧米に期待するのかというところで決まってくる、あるいはそういうことも考えなきゃいけないんではないかということであります。
 現在、日本を取り巻く安全保障枠組みとしましては、そこの表の二に書きましたように、日米安保というのがこれ集団防衛で一番中核にあるわけですけれども、そのほか、最近はミニラテラルといいまして、共通の価値と共通の能力を持つ少数の国々との共同訓練などを行って、柔軟で適応力のある協力をしようと、そして安定化を図るという意味でミニラテラルというのが、はやりかもしれませんけど、ANZUSとかAUKUSとかクアッドとかスクアッドとかというのがいろいろ出てきて、ミニラテラルな協力をするということが一つの方向性として出てきて、アメリカもこれを部分的には推進しているということがあります。
 最後に、このハイブリッド協力ということで挙げたのが日・NATO協力でありまして、今のような背景の下にこれからのアジアの安全保障を考える場合に、やっぱりこの日・NATO協力というのを、これまで私が申し述べたヨーロッパにおけるNATOによる平和ということを考える上で、日・NATO協力というのは一つのヒントになるんではないかということで、最後に取り上げさせていただきました。
 日・NATO協力、言うまでもなく日本とNATOが協力するわけですけど、これ、元々は、ナイン・イレブンの後、テロをめぐって日本とNATOが海洋安全保障とかサイバーとかで協力できるんじゃないかということで始まったものであって、日本がサイバー協力で自衛官が派遣されたり、あるいはNATO本部に自衛官が派遣されたりということで始まって、少しずつ今協力していまして、これがロシア・ウクライナ戦争で一気に花開いたと言うとあれですけど、一気に協力が拡大されました。
 皆さんも御承知のように、二〇二二年から、日本の総理は二二年、二三年、二四年と毎年のNATO首脳会議にも参加していますし、それから、IP4というんですけど、このNATOのIP4、インド・パシフィック4ですね、インド・パシフィック4として、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがそれぞれNATOとの個別適合化パートナーシップ計画というのを調印して、ここに書いてあるサイバー、テロ、安保、宇宙安保、偽情報対策、新興破壊技術などの分野で協力関係を行っているということがありまして、意義は二つです。一つは、多機能なNATOのような同盟と協力すること自体が抑止力の強化になると。もう一つは、マルチなんですけど、このIP4のようにミニラテラルな協力が進むという、そういう可能性を内包している、そういう意味でハイブリッドだというふうに思うわけです。
 ですから、もうこれで最後にしますけれども、アジア版NATOっていきなり何か抑止と防衛に話を進めるんではなくて、まず実務的なこの日・NATO協力、あるいは日本のIP4協力というものを推進し、それによって協力領域を拡大し深化させ、その下でルールに基づく国際秩序を支えるアジアの安全保障、アジア版安全保障協力というものになっていく、もしかしたらそれが日米安保を強化することになるんではないかというふうに考えておりますので、これを最後に一応報告をやめさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 広瀬佳一

speaker_id: 32903

日付: 2025-02-19

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会