近藤絢子の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
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○参考人(近藤絢子君) よろしくお願いいたします。
早速始めたいと思います。(資料映写)
まず最初に、ちょっと私がどういうバックグラウンドの人間かということをお話ししたいんですけれども、私、専門が労働経済学で、特に外的な要因に対して個々の労働者や個人がどう反応したかということを実証するのが主な研究対象になっておりまして、そのため、企業行動の分析というのは余りしておりません。なので、安定した雇用というテーマでお話いただいたんですけれども、安定した雇用を創出するための方法というのはやっぱり企業の方の分析をしている人じゃないとなかなか分かりませんので、ちょっとその提言はできないということを御理解いただければと思います。
今回、これからお話しする話は主に就職氷河期世代の話を中心に、安定した雇用が確保できていない実態とその対策についてのお話をさせていただければと思います。ほかに、年収の壁ですとか女性のキャリアパスみたいな話も研究しておりますので、もし質問のときに必要でしたらばそういった話も対応可能です。
では、早速本題に入らせていただきます。
就職氷河期世代という言葉自体は非常にもう皆さん御存じかと思うんですけれども、これをどのように、ほかの世代と比べるとどうであるかということで、既に知られていることではありますけれども、論点を整理するためにお話しさせていただきます。
私が「就職氷河期世代」という本を書いたんですけれども、その本の中では世代をこのように分けました。
まず、バブル世代というのは氷河期世代のすぐ上の世代なんですけれども、これは八七年から九二年、おおむねバブルの景気が良かったときに就職活動をした世代で、現在の年齢ですと、大卒ですと五十代後半、高卒ですと五十代前半に相当する人たちで、この世代は必ずしもそれより更に上と比べて恵まれているわけじゃないんですけれども、下の世代に比べると年収が高くて大企業の正社員の割合が多いので、あくまで氷河期世代と比べると、この世代まではかなり大企業が多かったり年収が安定したりしていたと。
その下の氷河期前期世代というのが、バブル崩壊してから金融危機が起こる前までの間に就職した世代で、大卒ですと五十歳前後、高卒ですと四十代後半に当たりますけれども、実は彼らは、それより下の世代よりは数値自体は良いということは余り知られていないかもしれないんですが、ただ、すぐ上がバブル世代なので、それとのギャップが大きいので非常に目立つという世代になります。
その後、後期世代というふうに名付けていますけれども、これが二〇〇〇年前後の一番失業率が高かった時期に卒業した世代で、彼らは客観的な数字で見て最も状況の悪い世代になっています。これが今大卒で四十五歳前後、高卒ですと四十代前半の人たちですね。
その次の世代、この世代がすごい非常に誤解されやすい世代なんですけれども、二〇〇五年から二〇〇九年、ちょうど景気が回復し始めたと言われていた時期からリーマン・ショックまでの時期ですね、に卒業した世代というのは、現在、大卒が四十歳前後で高卒が三十代半ばですけれども、大卒の就職は確かにやや回復しているんですけれども、実は大卒以外の人たちというのはそれほど回復していませんで、非正規雇用も全然減っていなくて、その後すぐにリーマン・ショックが来ていますので、実はこの世代は全然状況は良くなっていないと。
さらに、リーマン・ショックから東日本大震災ぐらいの時期に就職活動をした世代というのが、現在の大卒で三十代後半、高卒ですと三十代前半ぐらいの人たちですね。彼らは、もう若年期の状況は氷河期後期と同じぐらい厳しかったんですが、まだ三十代ですのでこれから先どうなるかはまだ分からないというような感じで分けております。
主な主張としては、氷河期と呼ばれているこの氷河期前期、氷河期後期だけの話ではなくて、もうバブル世代と氷河期世代の間に境目があって、そこから先の世代はもうみんな同じぐらい大変な状況になっているということが私のメインの主張であります。
これ、ちょっと図が小さくて見づらいんですけれども、こちらの図見ていただくと、正規雇用の比率と年収をグラフにしたものですけれども、やっぱり、上に何か、どのグラフも上に実線が飛んでいる感じになっているの、これがバブル世代ですね。やっぱり、バブル世代はそれより下の世代に比べると正規雇用比率も高いですし年収も高いと。で、その下にある点線が氷河期前期世代で、それより下の世代、もうぐちゃぐちゃっとなっていて判別不能な感じになっていると思うんですけれども、これは何を意味しているかというと、氷河期前期世代とバブル世代の間にはっきり差があるんですけど、氷河期前期世代とそれより下の世代の間にも結構差があると。
高校卒に関しては正規雇用比率が低いまま年を取っても差が縮まらないんですが、大卒や高専、短大卒の場合は、男性に関しては正規雇用比率自体は十五年ぐらいたつと上の世代に追い付いていると。なので、一応、非正規が多い非正規が多いと言われますけれども、卒業してから十数年たってくると大半の人は一応正規雇用にはなっていると。ただ、正規雇用の中身が何であるかというのはまた別の問題で。
年収を見てみると、年収の格差というのは卒業後十五年たってもまだ全然厳然として残っているので、正規、非正規というそのディメンションだけじゃなくて、平均的な年収というのは正規雇用の中でも年収に差が付いているだろうということが示唆されます。
女性の方は、ちょっとこの世代間の比較をすると別の要因が入ってきます。晩婚化とか出産が遅くなったというタイミング、出産のタイミングが遅くなったということもありますし、それから、結婚して子供を持っている女性の就業率が上がったり、正社員として就業を続ける確率が上がったりといった、そういう時代の変化も入ってきます。なので、男性と違って、そのスタート時点は男性同様バブル世代が一番正規雇用比率も高いし年収も高いんですけれども、その後どんどん逆転していきます。女性の場合は、若い方がより正規雇用を続けやすくなっていますし、年収に関しても、正規雇用を続けている人が多いために若い世代の方が年収が高くなっています。ただ、これ、賃金センサスという別の統計を使ってフルタイム雇用者だけ見ると男性と女性で全然傾向が同じなので、これは平均年収が上がっているというのは、単純に正規雇用で働き続ける人が増えていることが影響しています。
この変化が、特に世代が若くなるほど正規雇用を続けやすくなる、年収が高くなるという変化が大卒の方が顕著ですので、女性の場合は学歴が高い層では若い世代の方が実は現在のパフォーマンスは良くなっているというような感じになっています。なので、男女で結構状況が違っています。
それから、ここから、今まで平均の話をしていたんですけれども、少し、より困難な状況にある人たちの話をさせていただくと、いろんな定義が、話が、言葉があるんですけれども、概念があるんですけれども、取りあえず、有名なものとしてニートとスネップそれぞれについて、ちょっと人口に占める割合というのを計算したのがこちらのグラフになります。
ニートは、労働力調査を使ってニートの数を計算するに当たっては、求職活動をしていない未婚の無業者で、主な活動に学校や家事を挙げていない人という定義で計算してみました。こちら見ていただくと、まず、高校卒と短大、高専卒、大卒で全然レベルが違うんですね。高校卒の方がすごく多くなっています。こちら、グラフは縦軸がもう、縦軸の目盛りがもう全然違う目盛りになっています。
男女で差があるように見えるのは、これ、女性は家事手伝いを自称しやすい問題というのがあって、家事を主な活動に挙げている未婚の人というのをニートに含めると女性の方が多くなりますので、必ずしも男性の方が多いとは一概には言えないところがあります。ただ、高卒と短大卒以上で明らかに差があると。
それから、あとは、こちら、若い世代の方が多いんですけれども、その世代の中では年を取っても余り減っていかない。なので、ニートというと若者の問題というイメージがあるかもしれませんけれども、それはニートという話が出てきた頃、その世代が若者だったせいであって、必ずしも若い人だけではなくて、ずっと続いていると。
同じような傾向が、スネップ、こちらはニートとはちょっと定義が違いまして、無業者のうちふだん家族以外と会わない人という定義になっていまして、こちらはスネップの人数を、玄田有史先生が試算したものを私が人口で割って計算したものですけれども、これもやっぱり同じように若い世代の方が多くなっていると。同じ世代の三十代前半と三十代後半を比べると余り減っていないというような感じになっています。これは無業者ですね。
無業者というのは本当に仕事をしていない人ですので、次のスライドに出てくるのは、無業者ではなくて、仕事をしている人も含むんですけれども、親と同居していて、仕事が非正規雇用であったり、あるいは今失業中であったりする人ですね。なので、これニートとかスネップとは全然違う概念であることは強調しておきたいんですけれども。この人たちの人口に占める割合というのをやっぱり学歴別に見てみると、これはやっぱりニートやSNEPよりは全然数が多いです、やっぱり非正規で働いている人が入ってきますので。男性、高卒の男性ですと、七〇年代後半生まれですと、もう人口の一割ぐらいを占めますし、女性に関しても、女性とか、あと大卒の男性とかでも人口の五%ぐらいを占めています。
この人たちはどういう人たちかというと、働いている人たちの方が多分、数としてはずっと多いんですけれども、働いてはいるのだけれども、独り暮らしをするほどの安定した収入がなくて親と同居している、そして未婚であるという人の割合だと考えてください。これが人口の五%とかぐらいのオーダーで存在しているというのが就職氷河期以降の世代になります。
この世代が今もう既に中年になっているわけですけれども、これから高齢期を迎えるに当たって心配されることとして、親世代の加齢による生活困窮者の増加の懸念があります。今まで親と同居することによって生活費が、住居費とか食費が節約されていたりとか、親にも年金収入があったりとかといったような人たちなわけですけれども、これ、住居や食事などを親に頼っている低所得の独身者が、親が加齢によって亡くなる、亡くなれば年金なくなりますし、あとは、介護が必要になったりとかすると、逆に今度は子供が親を助けなきゃいけない立場になったりとかしますので、そうなってきたときに困窮するおそれがあります。
一番よく、極端なケースが、八〇五〇問題と言われている、五十代の引きこもりの子と八十代の親がいて、八十代の親がもう限界を迎えてというような話があると思いますけれども、そのイメージだけでこの問題を見るとちょっとミスリーディングで、大多数はこのようなパターンの、大多数は不安定雇用ながらも就業している、今、いわゆるワーキングプアと呼ばれる言葉が以前ありましたけれども、いわゆるワーキングプア層であると推測されていて、これは長期無業者とは違います。既に働いているので、とにかく就業につなげようという段階の人たちではなくて、ちゃんと働いているんだけれども収入が足りていない人たちというのが、親と同居することで今は何とか回っているんだけれども、それが破綻するおそれがあるという人たちが相当数いるということです。
まだ氷河期世代の親の大半は現時点で七十代以下、七十代、六十代ですので、まだまだ元気なんですね。なので、これから増えていくことが懸念されます。ただ、氷河期世代の中で一番年配の団塊ジュニア世代では、もう既に親が八十近くなって顕在化してきています。もっと下の世代の方が人口比は高いですので、これからどんどん増えてくるであろうことが予想されます。
しかも、この状況で本人の生活もつらいところに、さらに介護の負担が生じてしまうと更に追い打ちを掛けてきますし、また、未婚率は非正規雇用者の方が高いので、世代の中で経済的に恵まれない人の方が単身者である確率が高いんですね。なので、家庭内分業も困難になってきますので、一人で全部どうにかしなきゃいけない立場になってしまって破綻してしまうという人が増えてくるおそれがあります。
現行の就職氷河期世代活躍支援、私が把握している限りなので、もし私が認識していないことがあったら申し訳ないんですけれども、基本的には、就職氷河期世代活躍支援の三つの柱は、ハローワークによる就職支援と無業者を対象としたサポステと、あと引きこもりなどの相談サポートをする各種支援機関であるということで、就労支援がメインになっています。
これはやっぱり、二〇〇〇年代につくられた若年向けの自立支援、就労支援の仕組みがそのまま延長されているものが大半であるように見受けられて、なので、四十代、五十代である氷河期世代が二十代、三十代の時期に失われた機会について、これから就労することで取り戻すというのは非常に難しいのではないかと思います。
なので、どちらかというとこれ、この三つの柱が有効なのは、まだ三十代のリーマン・ショック世代の方にこそ有効なので、何か世代で切るというよりは、この支援自体は世代で切らずにそのままあった方がいいんですけれども、対象となる年齢層というのはちょっと氷河期世代より少し下の年齢層の方にマッチしているような感じになっているのではないかと思います。
あと、長期無業者を念頭に置いた社会参加の支援というのは、昔に比べると随分充実してきて、それ自体は非常にいいことだと思うんですけれども、ただやっぱり、大多数の不安定雇用者というのは収入は低くても継続的に就業していますので、とにかく就業につなげましょうという段階ではなくて、その次の段階の人なんですね。その人たちに対して何もないというのが現状です。
よくあるパターンでは、雇用主に対して働きかけて彼らの収入を引き上げるようにするというのがあるんですけれども、それはやっぱり、企業は営利企業ですので、営利企業に対してその採算が取れないような賃金設定を強いるということはやっぱりできませんので、それはちょっと非現実的であろうと。やっぱり、それならばもうちょっとストレートに所得再分配みたいなことをした方がいいのではないかというのが個人的な私の意見になります。
というわけで、セーフティーネットの拡充が必要であるというお話なんですけれども、大前提として、もう少し若い世代のためには、既に行われている各種の就労支援を継続して、能力開発の機会を提供したりとか、非正規雇用の正社員登用を促進したりすることは今後も必要です。
もちろん、氷河期世代の人たちであっても本人に就労意欲が高い人たちというのは、こういった支援によって就労につなげたり、あるいは既に就労している人たちをステップアップさせたりと、そういった政策自体を否定するわけじゃなくて、それ自体は非常に大事だと思います。
ただ、それだけでは問題の全ては解決できなくて、やっぱり年齢重ねれば教育訓練投資の効率は下がってしまいますから、投資を回収できる期間が短くなりますので、やっぱり企業としても同じ条件だったらより長く勤めてくれそうな若い人を雇うというふうになるのは自然な話なので、やっぱりそこだけに任せておくのでは恐らく全ての解決することは難しいと。
やっぱり、既に中高年となってしまった氷河期世代に関しては、就労による経済的自立が難しい層が一定数存在するということ、そのこと自体はやっぱりもう受け入れて、それを前提として政策を考えていかなければいけない段階になっていて、それはやっぱり就労支援じゃなくて福祉の拡充という形を考えていくべきだろうと思います。
やっぱりワーキングプア対策としては、やっぱり現役世代内でもう少しその所得の再分配みたいなことを行う必要が恐らくあって、もちろん累進課税制度ではあるんですけれども、所得の下の方の階層に対する再分配の方がやっぱり薄い。それから、あと老後の貧困対策というのも、やっぱり若年期に不安定雇用だった人というのは、貯蓄もないし年金の額も低いという、その若いときに困窮していた人の方が老後も困窮しやすいという、その若年期と老後がつながっているということを考えて考えていく必要があると思います。
やっぱり現行の社会保障制度の弱点としては、現役世代の再分配が薄い。ちょっとこちら、皆さんも御存じの図かとは思うんですけれども、所得再分配調査を見てみると、所得再分配前後のこのジニ係数の変化、もちろん再分配すると少し縮むんですけど、非常に変化が小さいんですね、年齢層で見ると。高齢層で物すごく再分配があるんですけど、これは年金なので、年金以外のところの再分配が余りないというのが日本の現状になっています。
雇用保険の失業給付金とかでどうにかしようとしても、やっぱり雇用保険って働いている人が納めた保険料で賄っている制度ですので、もう無理があると。あと、生活保護は基準が厳しくて、生活保護基準を満たすほど困窮してしまうとそこから挽回するのは難しいので、その手前で何かあった方がいいだろうと考えています。
それから、将来低年金に陥る人たちがいっぱいいるであろうことはもうほぼ確定していますので、それに対する対策も必要です。ただ、ここは非常に政治的に難しいということは私も理解はしておりますので、トレードオフがあるかなと思います。
済みません、ちょっと時間がオーバーしてしまいますので、ここなんですけど、最後に一言言わせていただきますと、社会保障制度の変革も同時に進めていかなければいけないだろうと、雇用だけではないだろうというのが私のメインの意見であります。
済みません、時間が足りなくなってしまいました。ありがとうございます。