藤波匠の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○参考人(藤波匠君) 日本総合研究所の藤波と申します。(資料映写)
 本日は、「希望が持てる地域社会の実現」という大きなテーマでオーダーをいただいておりまして、特に私はその中で、地域経済活動の担い手をいかに確保していくかという、そんなような視点でお話ができたらというふうに考えております。
 こちら、私の自己紹介になりますけれども、近年、私は、少子化問題、それから地方の人口減少などを主な研究テーマとして執筆活動などを行っております。
 早速本題に入ってまいりたいと思いますけれども、地方創生戦略、かれこれ十年ぐらいがたちますけれども、その成果といいますか、その状況を人口移動の観点から少し見ていきたいというふうに考えております。
 こちらは東京圏の転入超過数になります。
 地方創生戦略が実効的に始まったのが二〇一五年頃ということで、それ以降の東京の転入超過を見ていただいているわけですけれども、地方創生戦略立ち上がったときに、大きな目標として、東京圏転入超過をゼロにするという目標が掲げられておりました。
 しかし、現実には、こちら御覧いただくとおり、一五年以降横ばいから一九年にかけて非常に多い状況が続いておりました。コロナ禍になって、二〇二〇年、大きく減少したわけですけれども、二〇二〇年の一、二、三月までの水準を見ますと、実は一九年の水準とほとんど変わらない状況で、恐らくコロナ禍がなければ東京の転入超過というのは非常に高い水準を維持しただろうということは容易に想像できるわけです。
 ただ、コロナ禍で一旦減少し、その後緩やかに回復途上にある、まだ一九年の水準は回復していないけれども、少しずつ回復していますよというのが東京の転入超過ということになります。
 地方創生戦略、いろんな取組があって、非常に良い取組もあるんですけれども、中でも移住者を獲得していこうという取組が各基礎自治体の中で積極的に行われていました。これ、一見成功しているように見えるわけですね。これはある県の、左側のグラフですね、ある県の移住者数の推移を表したもので、二〇一五年、地方創生戦略始まった頃ですね、百人だったものが現在では毎年七百人ぐらい入ってきますよということ、合計でこの十年間で四千人ぐらい入りましたというのがある県の報告書に載っているものなんですね。
 一見成功しているようなんですが、右側のグラフ、全体としての、その県全体としての転入超過数であるとか転出入者数を見ていただきますと、ほとんど連動していないということがお分かりいただけると思います。この赤い線で表しました転入者数見ていただいても、移住者数が増えている割に、徐々に転入者数減っております。特に二三年辺り、ぐっと減ってきているわけですね。全くこの移住者数と連動していないという状況があります。また、転入超過数、この黒い折れ線グラフですが、これは左軸の方を見ていただきたいんですけれども、三角千と書いています。これはマイナス千という意味で使っております。ですから、この県はずっと転出超過、出ていく人の方が多かったという状況なんですが、これも結構激しく動いているんですが、それと移住者数が全く連動していないということです。結局、移住者というのは、この大きな人口移動の流れの中で全く別の力学で動いているという理解が必要だと思います。
 この地方創生戦略、十余年やってきて一つ分かったこと、まあ改めて分かったことなんですけれども、結局、大きな人口移動というのは、人の流れというのは、より良い雇用がどこにあるかということによって大きな枠組みが決まってしまうということなんですね。移住者支援、全く無意味かと言われるとそうでもないかもしれませんけれども、大きな流れを変える力はなかったということだと思います。
 その重要なより良い雇用、優良な雇用はどこにあるかという話の延長線なんですけれども、こちら見ていただきたいと思います。
 これは、東京圏の転入超過を年齢別に見たグラフということになります。黒の折れ線グラフは総数を表しておりまして、あとは年齢別、棒グラフは年齢別なんですね。特に濃い青、見ていただきたいと思いますが、こちらは、やはり一九年の段階で非常に多くて全体の八割ぐらいを占めていた、九割ぐらいですかね、占めていたという状況なんです。コロナ禍で一旦この青も減っていくんですが、この青は十八歳から二十九歳という新卒世代なんですね。なので、東京圏の経済にすごく影響を受けやすいという状況があります。コロナ禍で少し減ったんですが、既に二三年の段階で一九年の水準、戻っているということなんですね。東京圏の転入超過、まだ一九年の水準、戻っていないよというのが一般論なんですが、若い世代だけ見ると、既に東京圏の転入超過は非常に強い状況にあるということがお分かりいただけると思います。まさにこれが、雇用の強さによって人の移動というのは決まってくるんだ、特に若い世代は決まってくるんだということだと思います。
 そうした中で、特に雇用の面を注意深く見ていただきたいと思います。こちらの表なんですけれども、ちょっと細かいので、もしかしたらお手元で見ていただいた方がいいかもしれません。
 二つの表が載っておりまして、これはどちらも似たような話なんですが、上が二〇一四年を基準としたときに一九年までに増えた雇用の総数、それを一〇〇としたときに、どの地域でどの産業が受皿になったかというのを見ることができる、そういった表になっているんですね。二〇一四年、地方創生戦略が始まった頃を基準としたときに、増えた雇用の総数がどこでどの産業で増えたかというのを見れるということです。
 まず、どの地域でというのは、横に見ていっていただきたいんですが、東京圏四五%です。東京の雇用というのは三割強しかないのにもかかわらず、新規雇用は東京で四五%生まれました。半分近く生まれていますよということなんですね。そのほかにも、東海、近畿がなかなか強い状況にありまして、三大都市圏がひとしく人を引っ張っていたということがお分かりいただけると思います。
 今度は、じゃ、どの産業が受皿になったかというのは、この縦軸方向に見ていただきたいんですけれども、まず製造業ですね。三角〇・二と書いてあります。これはマイナス〇・二という意味で使っておりますけれども、まあ、ほぼゼロ、増えも減りもほとんどしていませんでしたというのがこの製造業五年間の実績ということです。
 主にサービス業で雇用が伸びたわけですけれども、その内訳を細かく見ていただきたいと思います。情報通信業以下ですね。一部抜粋ではあるんですけれども、例えば情報通信業、五・七%の増加でしたということですね。それから、宿泊業、飲食サービス業一〇%。この当時、既にインバウンドが一九年にかけて非常に伸びていたということもあって、雇用が伸びました。また、医療、福祉は、介護とか高齢化の影響で二二%という非常に大きな伸びを示した。ただ、全般的に言って、どの産業が特別強かったということはなくて、全般的に産業が増えていった、それが二〇一九年までの雇用の伸び方だったということになります。
 こうした状況が一変するのがコロナ禍なんですね。下の表に移っていただきたいと思いますが、これは、今度は二〇一九年を基準として二四年、昨年までの雇用の増加分、それを一〇〇としたときに、新規雇用はどこで生まれたか、あるいはどの産業が受皿になったかというのを見ています。
 横に見ていただきますと、一番上の行ですね、東京圏五八%、前の期よりも大きく伸びていることが分かります。東京の新規雇用をつくる力というのが伸びてきているということです。ずっと横を見ていただきますと、東海が四・二%、かなり落ちているんですね。東海は製造業中心ということもあるのかもしれませんけれども、少し弱め、弱含みであったということ。また、近畿は比較的強くて、結局コロナ禍では東京と近畿、関西圏ですね、この二つの地域が雇用の担い手であった、創出の担い手であったということが分かります。
 じゃ、どの産業がというのは縦軸方向に見ていただきたいんですが、実は製造業を見ていただきますと、三角一二・六とあります。要は、製造業はもう雇用が減っているということなんですね。これは生産性が向上したことによるものという場合もあるんですけれども、全体としてやっぱり産業として弱含みであるということが言えるかと思います。
 主にサービス業で伸びているんですが、情報通信業を見ていただきたいと思います。四八%近い数字ということで、増えた雇用の半分近くを情報通信業が担っていましたというのが、これが二四年までの五年間ということなんですね。結局、リモートワークとかあるいはAIが伸びてくるというような状況の中で情報通信業は非常に多くの雇用を増やしたということです。
 それから、一番下、医療、福祉ですね。これ、やはりコロナ禍ということで、介護それから看護の辺り、すごく雇用を増やしたんですが、それが終わって、二三年、二四年と、これ実はもう大きく数が減ってきているんです。数字としては減ってきているので、雇用としてはパイはだんだんだんだん伸びが小さくなっていると。
 結局、産業として成長に寄与しているのは情報通信業一択であるというのがコロナ禍以降の雇用の伸びということになります。そうした中で、そういった人材、IT関係の人材が東京に集中してくるということで、東京に多くの若者が流入してくるという状況があったと思います。
 情報通信業が成長していただくこと自体は結構なことなんですが、ここには一つ大きな問題があると思っています。実は、IT人材と呼ばれるこれからの日本の成長を担っていく人材だと思いますけれども、例えばプログラマーであるとかプログラムを考える人、設計する人ですね、それからAI技術者、ホームページを作る人、こういった特殊技能を持っている人たちの人材がIT企業に集中しているということがあるんですね。
 これ、日本の特殊性なんですけれども、この表を見ていただきたいと思います。IT人材がIT企業に集中している割合が七五%近い、特に女性では七五%ということですね。特に、それ近年伸びてきているという状況なんです。
 IT人材がIT企業で働くのは当然じゃないかと、こう一般に思われるかもしれませんが、これは日本の特殊性なんですね。アメリカを含む先進国諸国、右下に書いておきました。IT企業で働いている人の割合、三五%から五〇%に届かない水準であるということですね。多くのIT人材がそれ以外の企業、私どもではよく事業会社なんという表現しますけれども、AI、IT関係以外の会社で働いていて、そういった個々の会社でDXの中心的担い手となっていく、内発的なDXを進めていく人材になっているんだということなんですね。
 日本の場合は、残念ながら、IT人材がIT企業に集約しているものですから、それぞれの企業とか中小企業に人材がいないんですね。ですので、DX進めなさいと言っても、外の方にお願いしてコンサルティングを受けるというパターンが一般的です。それでうまくいく場合もありますが、場合によってはうまくいかないということもあるし、契約が切れればDXが止まってしまうということもあるかもしれません。そういった問題を抱えているということですね。
 もう一つ重要なポイントとして、IT企業というのはどうしても東京に集まっているものですから、おのずと東京に人材が集まっちゃうという問題が、東京圏への集中、六〇%以上、特に女性で高い状況にありますので、これをどうにかできないか。地方に若い人材、特に女性の定着ということを考えていく上で、いかに中小企業とか、それまでIT人材を抱えていなかったようなところにITの人材を導入していくかと、その辺り、それによって地方に若い経済人を誘導することができるのではないかというふうに考えています。
 ここで御紹介したいのが、フジワラテクノアートという岡山県の会社です。こちらはもう既に有名な、ここ二、三年で一気に有名になった会社で、もしかしたら、この中にも訪問された方とかもいらっしゃるかもしれません。醸造機械メーカーで、社員は百五十名程度の中小企業なんですけれども、社長が女性でして、女性の働き方改革に非常に熱心に取り組んでおられる。女性の幹部登用などにも取り組んでおられるんですけれども、そういったことを好感して、二〇一七年に一人のIT技術者、女性のIT技術者が転職をしてきてくれたということなんですね。
 二〇一六年までは、この企業はもう全くのアナログ企業でした。他社とのやり取りはファクス、図面は全て紙管理というような状況でした。それが、一人の技術者が、女性が入ってきてくれたことによって一気にDXが進んで、今では普通の技術者、中高年の技術者が自らプログラミングをつくって生産性向上に資するというところまで僅か五年ぐらいで進んでしまったということだそうです。これは、経産省のDXセレクションという表彰制度でもグランプリを二三年に受賞するというところまで来ております。
 たまたまここでは女性技術者ということなんですが、もちろん男性でも結構だと思います。ただ、近年、御存じのとおり、女性の地方からの流出が多い、東京へ女性が多く入ってくるということは聞いたことがあるかと思います。二〇一〇年以降、やはり女性が男性を上回って東京圏転入超過が続いている状況にあるわけですね。ですので、女性の職場として、IT系の仕事、特に地方でIT事業者以外のところでも定着していくということが重要だと思います。
 もう一つ重要なポイントが、特に地方の場合、問題となると思うんですが、ジェンダーギャップの問題があると思います。
 こちらの右側のグラフをちょっと注目していただきたいんですけれども、これは非常に難しいグラフです。これ、産業ごと、産業大分類の産業ごとにジェンダーギャップの状況を一つの表、グラフでまとめたものというふうに御理解ください。ちょっと細かいので、私、一つずつ説明をしたいと思います。
 横軸を見ていただきたいんですが、これは正規職、各産業の正規職で働いている男女のジェンダーギャップ、賃金であるとか昇進のスピードがどれだけジェンダーギャップがあるかというのを統合指標にしたものだというふうに御理解いただければいいと思います。正規職で働いている人同士のジェンダーギャップですね。
 右側に行けば行くほどジェンダーギャップが大きく、左側の方が小さいということになりますけれども、例えば、この一番右の方にあるのは金融、保険業なんですね。金融業というのは、総合職のほかに、昔は一般職というような、窓口業務を主に担うような女性を正規職で採用していたんですね。今はもうそういった制度はほとんどないんですけれども、その名残が今も残っていて、賃金が女性の方が低かったりというようなことがあって、右側の方に寄っています。
 今度は縦軸なんですけれども、縦軸は、今度は正規雇用比率のジェンダーギャップを見ています。
 一番上の方に、左上の方にある宿泊業、飲食サービス業とか卸売、小売ですね、この辺りはどうしても、特に地方などそうなんですけれども、非正規の女性に依存した産業ということでジェンダーギャップが大きくなっているということだと思います。下に行けば行くほどジェンダーギャップが小さいということで、この図表、望ましい方向性としては、この緑の大きな矢印のように原点に近づいてくることが望ましいと考えられるわけですね。
 で、このグラフの中に各産業を落とし込んでみますと、奇妙なことにというか面白いことに、この点線に沿った、右下に下がっていくような点線に沿った形のところにいろんな産業が分布してくるということなんですね。だから、どっち付かずなんです。大体、日本の産業はどっちかの特徴を持っているということなんですね。
 ところが、少し原点に近い方に、赤く書いていますけど、情報通信業が一つだけぽんと離れてあるということは、今、情報通信業が新興産業として、より能力の高い人たち、これもう男女問わずですね、採りたいという強い意向があって、ジェンダーギャップのない雇用慣行というものをつくっているということがそういったことをもたらしているんだということだと思います。ですから、ほかの産業でも、自らの立ち位置というものをしっかりと理解してジェンダーギャップを改善していくということも一つ地域に女性を定着させる大きな方向性かなというふうに考えています。
 最後、まとめさせていただきます。
 人口流出への対処ということで、今まで細かいことをいろいろと言ってきましたけれども、私は、目の前の転出超過に余り焦らない方がいいだろうというふうに考えています。東京圏の転入超過をゼロにするという大きな目標を掲げてスタートしたわけですけれども、そこに注目してしまうと、どうしても基礎自治体レベルでは人口の奪い合いというような状況が生じてきてしまうということになります。移住促進にお金を投じても、地域によっては、特に比較的大都市では余り大きなリターンは得られないだろうというふうに考えています。特に、昨年話題となりました消滅可能性自治体みたいな言葉に余り踊らされずに、地道にやっぱり産業競争力を高めていく、あるいは企業の競争力を高めていくということが重要だと思います。
 企業に高度人材をいかに雇っていくか、IT人材を含め理系人材とか研究開発にお金を投じていく、そういったところにこそ人材定着の大きな方向性があるのではないかと思います。
 そのときに、地方の企業は一つ考えなければいけないことがあると思っています。これまでは、人が欲しいといったときに、自分たちの県のある程度のエリアの中にいる人たちを採用しようというふうに動いていたと思います。ただ、今リモートワークとかができるようになったことによって、既に人材獲得競争というのはもう日本全国、一つの土俵しかないということですね。東京が人が欲しいと思ったら、地方にいようが何しようが、リモートワークで働いてもらえばいいじゃないかと、そういったような動きになってきているわけですね。ですから、地方の企業、中小企業であっても、東京の企業と同じ土俵にのっているんだという理解は必要だと思っています。それだけ待遇とかを改善していかなければいけない、ジェンダーギャップを改善していかなければいけないということです。
 また、具体的にと書いたのは、これは具体的に国とか地方自治体がどのようなことを考えていかなければいけないかということなんですが、やはり理系人材を育成していくということですね。IT人材を含む研究開発ができるような人、そういった人たちを増やし、特に女性で増やしていくということが必要だと思っています。それは、やはり大学の再編であるとか、あるいは中高のキャリア教育、そういったところからも見ていくという意味で国の責務は大きいのではないかと私は考えています。
 それから、産業育成、雇用の創出ということ、特に雇用の創出という話になってきますと、基礎自治体にはやや荷が重いかなというふうに考えていて、人口問題はなるべく広いエリアで考えることが望ましいと私は考えています。余り小さなところでやると、どうしても移住促進みたいな話に集約していってしまうので、ある程度の、県レベルであるとか圏域レベルで議論をする、どういった人たちを定着してもらうのかということですね。ですから、県の責務というのは非常に大きくなってくるというふうに思います。
 最後に、地域企業の生産性向上、これはもう不可欠です。人を採用するためにはやはり高い賃金を払える企業になっていくということです。ですので、当然、IT人材とここでは書いていますけれども、研究開発などにしっかりと投資をしていく。その際には、地元の経済界などと連携しながら経営者の意識改革などを進めていくということが必要だと考えております。
 私の方からは以上です。

発言情報

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発言者: 藤波匠

speaker_id: 17365

日付: 2025-02-12

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会