宮崎雅人の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○参考人(宮崎雅人君) 埼玉大学の宮崎でございます。今日は、このような機会を頂戴いたしましてありがとうございます。(資料映写)
 私の方は、地域コミュニティーの再生ということでお話をしたいと思います。
 まず初めにということで、私、もう三年前になりますけれども、「地域衰退」という本を書きまして、その中で、基盤産業が衰退した地域が衰退しているという、まあ、ある種当たり前の話をしまして、基盤産業アプローチというものに依拠してそういった話を書きました。
 先ほど桜井先生からお話がありましたけど、そういう背景には、グローバル化の中の産業の変化といいますか、工場がなくなるというような話があるわけです。そういった中で、衰退した地域においては市場経済を復活させるしかないのか、もう少し丁寧に言えば、例えば工場がなくなったところでは新しい工場をですね、半導体とか今かなり盛り上がっておりますけれども、そういったものを呼んでくるしかないのかとか、あるいは、シンガポールのようにスタートアップ支援に力を入れて、地域においてもそういった企業を興していくということしかないのかというふうに考えたりもするんですけれども、そういったことができる地域というのは限られているだろうという前提に立って今日のお話をしていきたいと思っています。
 そういった衰退した地域において地域コミュニティー再生のためにどういったことが必要かということなんですけれども、例えば地域の外からどうやって収入を得るかとか、あとは、先ほど桜井先生からありましたけれども、移動の話ですとか、今日取り上げるのは買物難民の話なので移動と関わる話なんですけれども、地域の困ったことにどう対応していくかということで、そういった対応のために一つの解決策として社会的連帯経済の取組があるのではないかということで、今日、事例を幾つか紹介していきたいと思っています。
 この社会的連帯経済は何かというと、分かりやすく言うと、人々の協力によって成り立つ仕組みであって、危機が起こると人々が助け合うということですね、その中で、参加者が議論していく中で経済をつくり上げていくという、そういう仕組みです。これは、国連の社会的連帯経済に関する国連機関間タスクフォースの方で定義がありまして、ここに書いてあるような内容なんですけれども、重要なのは、やはり民主的、参加型のガバナンスであるといったところですとか、あとは集団的利益あるいは一般的利益に奉仕する活動ですね、そういった組織を包括するものであるということです。これは既に国連総会で持続的発展のための社会的連帯経済の促進という宣言が採択をされているものであるということであります。
 それで、社会的連帯経済が生産するものは何かということなんですけれども、あらかじめこういうものを生産するということが決まっているわけではなくて、参加する人々の議論の中でどういったものが必要なのか、供給すべきなのかということが決まってくるというものであります。
 繰り返しになりますけれども、集まる人々がそれまで漠然と考えていたようなことが認識されて、特定されて供給と需要がつくられていくような、そういう世界であるということです。
 実は、新しいものでもないといいますか、既に日本において社会的連帯経済の範疇に入る組織というものはありまして、協同組合が中心的な担い手ですので、農協が特に大きいですけれども、農協、漁協、森林組合、あとは生協ですとか、あとは商店街振興組合、更に言うと信金とか労金、こういったものが中心的な担い手とされております。
 ただ、これ以外にも重要な担い手がありまして、特に地域ということを念頭に置いたときに、例えば山口県においては、社会的連帯経済の範疇に入るような取組が地域経営会社という呼び方をされておりまして、中山間地域の地域課題を解決するようなNPOですとか一般社団とか、こういったここに書いてあるような組織において取り組まれているということで、協同組合以外も社会的連帯経済として位置付けることができるということです。
 ここがちょっと抽象的なお話でありまして、じゃ、具体的にどういった取組があるのかということで事例を挙げたいと思うんですけれども、協同組合が社会的連帯経済の中心的な取組だと今申し上げたんですけれども、必ずしもそういった協同組合だけではないという事例を、地域における事例を御紹介したいと思うんですが、まず一つは熊本県小国町のわいた地区というところの取組です。わいた会という組織の取組です。
 ここでは、地熱発電ですね、温泉というか、湯気がもうそこらじゅうから噴き出しているような地区でありますけれども、その地域において地域資源である地熱を使って発電を行っております。
 当初といいますか、初めは、一九九〇年代に外部の大手ディベロッパーが開発しようとしまして、共有地を取得しようとしました。共有地の取得に際して、推進派、地熱発電進めるべきだという推進派と、いや、そうではないという慎重派に地域で分かれてしまって、鋭い地域対立が起こってしまって、結局そのときは用地取得できませんで、大手ディベロッパーは撤退をしていきます。そこでできてしまった対立が地域の中で尾を引きまして、共有地の野焼きですとか用水路の管理ですとか、あとは盆踊りですね、地域の統合の象徴といいますか、そういったものまで行われなくなってしまったわけです。
 そういった中でも、地域衰退、地域がどんどん高齢化が進んで人口も減っていくということで、これをどうにかせねばならぬということで、推進派だった世帯がわいた会を設立をいたしまして、今申し上げた発電事業に着手をすると。その後、進める中で、これが非常に重要だと思うんですけれども、慎重派も参加をして、わいた会に加入をして、発電事業に参入といいますか、発電事業を行っていくという仕組みになりました。
 ちょっとスライド戻りますけれども、このわいた会が共有している土地を使って、ふるさと熱電という会社が、これ東京が本社だったようですけれども、熊本の小国町に本社を移転したようですけれども、そこが協力をして発電を行っております。
 売電収入は年間六億円ということで、現在、第一発電所ですけれども、第二発電所の建設を今行っているようですけれども、八割は業務委託費としてふるさと熱電に支払われると。残りの二割ですね、まあ残りの二割といってもかなり大きな額になるかと思いますけれども、わいた会が配当として受け取って、ここに書いてあるような地域における課題ですね、これを解決するようなものに対して支出をしているということです。
 中でも用水路の補修に関しては、自治体である小国町も財政が厳しい中で、町と協議したわけではないというお話でしたけれども、町が行っているようなことも含めてわいた会の方で、農業に従事されている方も多いと伺いましたけれども、地域における課題をこの発電によって得られた財源で賄っているということです。
 ここにあります岳の湯大地獄の整備ですけれども、これ動画配信サイトというんですかね、そこで簡単に見ることができますので、御興味のある方は是非御覧いただきたいと思います。この取組は、以前どこかのテレビ局でも朝取り上げられておりましたので、それなりに注目されている取組なのかなというふうに思っております。
 今見てまいりました、わいた会が持っている熱電ですね、地熱の資源というのは、これ共有地ということでコモンズということになります。先ほど宇沢先生のコモンズという議論もありましたけれども、有名なノーベル経済学賞も取ったオストロムが議論しておりますけれども、彼女の議論を引用すれば、スイスと日本では共有という形、共同体所有という形で、村落経済の重要な一面としても土地を使用してきたんだということですね。なので、社会的連帯経済は別段新しいというか、更に言うと輸入品でもなくて、日本において、日本の村落においてずっと行われてきたようなものであるということですね。
 なので、何というか、抽象的な概念が先にあって、それに取り組むというよりは、この危機に際して、今回わいた会はそうですけれども、危機に際して実践をしていくという、そういう積み重ねの中でできてきた考え方というか、そういう取組ということになります。わいた会は、地熱資源を守りながら、地域の持続可能性を高めるような努力をしているということです。これが一つ目の事例ということになります。
 もう一つは、寺前村振興公社ということで、これは兵庫県の神河町というところで買物難民対策ということで取り組まれているような地域のスーパーですね。
 平成の大合併でできた神河町ですけど、それ以前の昭和の大合併の単位ということで寺前村というものがあったんですね。そこ、地域唯一のスーパーが突然閉店をしてしまったそうだということで、その閉店直後に地域の方のどなたかが亡くなって、お通夜があって地域の方がわあっと集まったときに、どうしようということで相談になったそうで、そのときにいろいろ議論があったんだと思います。結果として、区長さんやその町から選出されている町会議員の方や、あと県会議員の方が発起人になって対策を考えたということです。
 民間のスーパーが閉店をしたので、民間が続けるというのはなかなか難しいだろうということだったわけですね。じゃ、町営でできるかとなりますと、これ合併自治体だったので、旧町村というんですかね、旧自治体の単位というのがあるので、このバランスを崩すというのもなかなか難しいということで、町営の施設でスーパーを設置するのも難しいという議論になって、じゃ、どうしようかというときに、寺前地区はお金を持っていたということなんですね。
 どういうお金かといいますと、これ、神河町の中にある寺前財産区が持っていた土地が、共有地がですね、関西電力のダムの用地になりまして、そこで売払い金とか協力金が得られた、貯金を持っていたと。これ、地域振興基金としてお金を持っていて、それをじゃ使いましょうということで、区長さんから成る寺前地区活性化協議会というものが組織されて、そこがスーパーをつくろうということで取組を始めたと。これはまさに民主主義ということになりますけれども、住民同士の意見交換を行っていて、経営とか決算の状況について報告会を行っているということです。
 スーパーが閉店したのは二〇一七年の九月ということだったんですけれども、もう二〇一八年の七月には、次のというか、後継のスーパーですね、寺前楽座「まちの灯り」という施設ができ上がったということで、かなり開店まで急いだそうです。お客さんが離れてしまうということもありますし、地域の人たちにアンケートを取ったそうですけれども、やっぱりスーパーが必要だということで、急いでいろいろな国の財源も集めながら、国の制度も活用しながらお金をかき集めて、貯金も使いながら何とかスーパーを設置したということで、この寺前村振興公社は、ここに挙げているような人たちが役員になって、出資金を、みんなでお金を出し合って、もちろん、このみんなで出し合うお金だけでは足りないので、貯金ですとか国の交付金というものが活用されたわけですけれども、そういったお金を出し合って地域のスーパーを再生させたと、そういう取組です。
 文字が多いスライドをなぜパワポでやっているのかというと、写真をカラーで見ていただきたいということで、雰囲気を伝えたかったからなんですけれども、実際、私も参りまして、実は埼玉大学の学生がこの事例を見付けてくれまして、じゃ、私も一緒に行こうということで行ったんですけれども、現地に行ったんですけれども。こういう形で、地域の買物難民といいますか、買物に困るようなお年寄りがいらしているんですけれども、それ以外に地域のコミュニティーの核にしようという思いが寺前村振興公社にはあったということで、「まちの灯り」という名前になっております。
 それで、国の交付金という話をいたしましたけれども、店舗の整備、改修資金には、総務省の地域経済循環創造事業交付金が充てられたりして、あとは、土地は、民間スーパーが開店する前は、社会的連帯経済の担い手である農協が経営していたAコープがあったんですね、それが、Aコープさんもいろいろ大変だと思いますので、撤退をして次のスーパーができたんですけれども、それも撤退してしまったということで、その用地を貯金を使って町名義で所有をすると。運転資金については、これは住民から出し合うということではなくて、一戸当たり、地域振興基金から出すということでお金を出し合ったということですね。
 なので、先ほどは、小国町のわいた会は熱源ということになりますけれども、今度は共有林ですね、共有林を売り払って得た資金を活用して地域のスーパーを運営しているということです。
 ここまで簡単にまとめますと、地域におけるコモンズを活用して資金を調達し、地域課題を解決していくと。そういったものがない地域はどうするかというのは残りの数分でお話しいたしますけれども、アイデアとして一つあるかなと思っています。
 この社会的連帯経済の取組と位置付けている二つの事例においては、住民による議論と協力が非常に重要な役割を果たしていたということで、地方創生二・〇の基本的な考え方で、産官学金労言の議論に至らなかったという問題点を政府自ら指摘をしていますけれども、より小さい単位で議論をしていくと、地域にとって本当に必要なことは何かということを真剣に議論して課題を解決していくという意味で、こういった取組は一つ参考になるのかなと思っております。
 最後、財源がないところはどうするかということで、時間迫っていますけれども、営農ソーラーの取組ということで、ソーラーシェアリングですね。太陽光パネルについてはかなり問題点を指摘する声も大きくなっていることは承知しておりますけれども、こちらの取組は別に、幽霊団体といいますか、太陽光パネルの下で何もしていないというものではなくて、太陽光パネルを設置してその下で農業を行っております。
 耕作放棄地だったところ、かなり石があって大変だったようですけれども、そこを農地化して、ここに挙がっているような、中には社会的連帯経済の担い手が入っていますけれども、こういったところが協力してソーラーシェアリングの取組を行っているということです。実際に、農業用水も確保できて、昨年秋からホウレンソウを株式会社アグレスさんが生産を始めていったということです。利点としては、水の管理ですとか、今温暖化と言われておりますけれども、遮光をすることで水の利用の効率が高まるということが言われております。
 資金調達は、地元の地方銀行であるところの出資ですとか融資ですとか、あとは生活クラブ生協による出資、こういったものがあって、固定価格終了後は生活クラブ生協が買い取るという仕組みになっております。
 こんな感じで、私、実際参りましたけれども、この下で、元々ハウスがあるようなところなので、その上に太陽光がばあっと並んでいても余り違和感がないような、そんな印象を受けました。
 時間来ましたのでまとめますけれども、地域におけるコモンズを活用した二つの事例と、あとは、そういったところがない場合は太陽光発電という形で資金を得ることができるんではないかということですね。そういった資金を使いながら、地域の衰退ですとか買物難民ですとか耕作放棄地の問題に対処していくと。そういった中で、住民が議論、協力しながら、いろいろなリソースを活用して経済をつくっていく中で、地域コミュニティーというものは再生していくんではないかというふうに考えております。
 私の報告は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 宮崎雅人

speaker_id: 15562

日付: 2025-02-12

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会