信定ひとみの発言 (財政金融委員会)
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○参考人(信定ひとみ君) 私は、スルガ銀行不正融資被害者同盟に所属しております信定ひとみと申します。
本日は、このような場で被害者の声を直接お伝えする機会を賜りましたこと、心より御礼を申し上げます。
まず申し上げたいのは、私は、不満や感情を述べるためにここに参ったということではないということです。この問題は、金融機関による組織的不正とそれを是正できない制度の欠陥が結び付いた構造的な金融行政の問題であり、被害者の人生を破壊し続けている現在進行形の社会問題です。
私たちは、スルガ銀行の不正融資によって生活基盤を失い、人生設計を根底から覆されました。職を失った方、家庭が崩壊した方、心身の健康を害した方は数え切れません。この問題を苦にして自死、自己破産を、追い込まれた方も複数存在します。それでも私たちは、せめて元の生活に戻りたいと必死に耐えてまいりました。しかし、昨年末の調停和解案では、売却後に債務が残る被害者の約八割が、一千万円以上、中には一億以上という支払を続けなければならないという現実を突き付けられております。
まず、白物件として切り捨てられた私の被害について御説明を申し上げます。
被害に遭ったのは二〇一七年のことで、私はごく普通の会社員でございました。子供への教育費や親への援助など老後資金に強い不安を感じていた頃に、貯蓄から投資へという言葉を耳にして、投資を学ぶために不動産セミナーに参加いたしました。そこで不動産業者から、投資用物件とともにスルガ銀行を紹介されました。すぐに夫名義で仮審査が通り、ここで私たちは決定的な誤解をいたしました。銀行が融資するということは、物件価格が妥当で、家賃収入の見込みもあり、銀行としての審査を通過した安全性の担保があるのだと思ったんです。
そして、二〇一七年十一月、二億八千二百万円のローンを組み、物件を購入いたしました。ところが、僅か四か月後には家賃の振り込みが突然止まり、返済日は迫り、業者とは連絡が取れなくなり、初めてだまされたと気が付きました。私たちはすぐに担当行員に相談をしたんですけれども、融資のときには業者を優良業者だと評価していた彼は、驚く様子もなく、どこか他人事のような態度でした。後になってその業者がシェアハウスにも関与していたということを知りました。
その後、物件の実態が次々と明らかになりました。家賃表は二十万円ほど高く偽装されており、査定すると価格は八千九百万円で、購入価格の約三分の一でした。必死に銀行へ返済条件の見直しをお願いして、どうか助けてくださいと頭を下げ続けましたが、状況は好転しませんでした。
その頃に被害者同盟の設立を知り、私たちはわらにもすがるつもりで参加をいたしました。そして、銀行に対して融資審査資料の開示を求めます。そこで初めて、家賃表だけではなく、預金通帳など複数の書類が偽造、改ざんされており、過大な融資が実行されていた、それを審査部も分かっていたと知り、銀行が不正に関与するなど想像もしていませんでしたから、とても驚きました。
購入したのは築二十九年の築古物件で、入ってくる家賃は必要経費や修繕費用のため手元にはほとんど残りません。結果、返済もできなくなりました。もし返済を止めていなければ自己破産をしていたと思います。実際に被害者の多くがこのような悲惨な状況です。
ここで強調させていただきたいのは、被害者は融資を希望したわけではなく、勧められたという点です。是非融資させてください、この物件を買えるあなたは幸運です。銀行という社会的信用を持つ組織にそこまで言われれば、一般市民が疑うことは極めて困難です。にもかかわらず、スルガ銀行は、投資判断は自己責任と主張を続けています。融資の主導権は銀行側にありました。その責任を被害者に転嫁しているのです。
スルガ銀行が旧経営陣を訴えた静岡の裁判でも分かりましたが、スルガ銀行の不正は個々の行員の逸脱行為ではありません。不動産業者を介在させ、被害者の手元に証拠が残らない形で融資審査資料を改ざんし融資額を水増しするスルガスキームという組織的不正構造については、第三者委員会でも報告がございます。
特にアパート・マンション融資では、家賃表の改ざんが常態化し、実態と懸け離れた収益性を前提に融資が実行されておりました。その結果、百社を超える不動産業者が同様の手口で通帳や家賃表を改ざんしておりました。この不正の全国的な横行は銀行がハブとなっていたものです。
しかし、スルガ銀行は、シェアハウス案件については新規性のある商品であり、賃料相場を見誤ったという点で銀行の有責性を認めるとして代物弁済で解決したものの、アパマン融資においては個性が強いとして一括解決を拒んでおります。
ところが、この不正の実態はシェアハウスと本質的に同一であり、むしろ悪質性はアパマンの方が上回ります。スルガ銀行は、改ざんされた家賃表を基に、収益還元法によって過大な融資額を算出し、高額物件に仕立て上げ、不当に融資を実行していたことは皆様御存じのとおりでございます。
そして、更に深刻なのは、スルガ銀行は過去の不正融資から巨額の利益を得続けているという点です。
銀行の公表資料では、不正が認められた又は疑いのある債権は約五千二百八億円、そこから得た累計利息を試算すると、二〇一八年の三月以降だけで少なくとも七百九十三億円に達しております。被害者に取得家賃の拠出を求めるのであれば、スルガ銀行も不正で得た利益七百九十三億円を返還すべきではないでしょうか。そして、現在も、物件収入の範囲内で返済を求めるという名目で、不正につくられた債権から利息を取り続ける構造が維持されています。不正融資から利息を得続け、損失は被害者に背負わせる、これは、救済ではなく不正行為の継続ではないでしょうか。
一方で、金融庁は、七年以上もスルガ銀行への業務改善命令を解除せず、昨年、報告徴求命令を発出してくださいました。しかし、何も進展はございませんでした。
現行制度において、金融庁には三つの制約が存在しているようです。一つ、銀行に不正資料の提出を強制できない。二に、債務免除型の救済を命じられない。三は、調停に委ねることしかできない。さらに、金融庁の監督体制自体も、FATFの対日審査においてマネーロンダリングの対策は不十分と評価されるなど、国際的にも課題を指摘されております。
また、証拠の扱いにも重大な問題があります。
処分行員リストなど、組織関与を判断する上で重大な資料が調停の場では開示されず、被害者は直接証拠を出せと求め続けられました。銀行が証拠を秘匿し、被害者に立証責任を負わせる制度設計では、公正な救済など不可能です。
そのような中に、一月二十日の調停において、百九十三物件の被害者は泣く泣く和解に応じました。しかし、スルガ銀行は昨日、IR資料を公表し、四百十物件については、不正行為が成立しないことを前提として解決する、被害者は損害賠償請求権を行使しないことを確約するという方針を公式に示しました。これは、調停の場で処分行員リストなどの重要な証拠が十分に開示されないまま、銀行側が一方的に不法行為ではないと分類し、被害者に権利放棄を迫るものです。
証拠を保有している銀行がそれを開示せず、証拠を持たない被害者だけに立証責任を負わせたまま、不法行為ではないと結論付けることが果たして公正な手続と言えるのでしょうか。解決金を受け取っても、物件売却後に債務が残る物件は四割以上、しかし、和解に応じなければ、支払督促をされ、期限の利益が喪失し、一括返済を迫られます。これは、自由な合意ではなく、生活を人質に取った脅しだと和解した被害者は受け止めています。また、来月以降和解することになる解決金のない物件においては八割以上で債務が残ります。
ここで、片山大臣に対して、制度そのものの不合理さについて発言させてください。
自動車や家電など一般の製造物においては、PL法により、商品に欠陥や過失が認められた場合は、企業はリコールを行い、契約を事実上なかったことにし、被害者に対して補償を行うことが当然の責務とされています。
ところが、金融商品は、たとえ商品設計や審査資料が組織的に改ざんされ不正につくられた契約であっても、契約は有効、債務は残るという扱いです。不正によって成立した契約であるにもかかわらず、なかったことにできない金融商品とは一体何なのでしょうか。これは一企業の問題ではなく金融行政の設計そのものの問題だと思うのですが、いかがでしょうか。
そこで、大臣にお願いいたします。
有責性が認められた百九十三物件と銀行が不法行為が成立しないと分類した四百十物件について、一、不正の実態、二、組織的関与の範囲、三、内部統制の欠陥、四、証拠管理の実態、これらを金融庁に再検査させ、再検証させ、なぜ百九十三物件のみが認定されたのかを説明させてください。これは被害者の感情の問題ではありません。金融行政の信頼、日本の金融システムの健全性の問題です。
そして、私たち被害者が望んでいるのは次の三つです。被害回復による生活の再建、事件の真実の公表、そして再発防止のための法整備です。銀行の不正融資がどこまで組織的に行われ、誰が関与し、その結果、銀行が幾らの利益を得て、なぜ行政は止められず、なぜ被害者だけが今も債務を背負い続けているのか、その全体像を金融庁が公式に検証し、国会と国民の前に提示してください。
最後に、スルガ銀行にお伝えします。
貴社は十二月十五日のIR資料で、裁判所によって当社の不正行為が、不法行為が認められる可能性が低い物件については、いたずらに時間を掛けることを避けるため、調停不成立の上申をしたと公表しました。司法の判断に委ねるといいながら調停を不成立にして訴訟へ進ませることは、被害者に長期訴訟という恐怖を植え付け、和解を迫る強い圧力になります。これは裁判所の判断に影響を与えかねない行為であり、公正な紛争解決の在り方として極めて不適切です。
また、昨年末、加藤社長は河合弁護士に、支払督促は取り下げる、そして、現在の行員の中には不適切な融資に関与した行員はもうほとんどいないと説明されたと伺いました。河合弁護士は加藤社長のことを信用すると言いました。しかし、今も被害者の下に裁判所から督促状が届いています。そして、不正に関与した行員が今も役員や支店長として在籍し、私たちの窓口である顧客対応室には不正に関与した行員が少なくとも八名は在籍していることが分かっています。
物件収益の範囲内での返済しか求めないという約束も形骸化しております。新たに提示したプランでは、金利収入を得ることを前提に物件収益を上回る返済額が設定されて、被害者は生活費や年金を削っての手出しを強いられる形になっております。返済プランの正体は、被害者を救済するものではなく、一生涯にわたって集金ロボットとして縛る極めて残酷な仕組みだと被害者は受け止めております。
月々の返済をごく少額にする代わりに元本の大部分を最終回に一括返済させるテールヘビー方式、これは三十年以上にわたって多額の借金を背負わせ続け、銀行の損失を先送りする不当なスキームです。このプランは、八十五歳未満という団信保険の期限を盾に、死ぬことでしか債務が終わらないという構造を前提としております。信用情報にも傷が付いており、被害者は死ぬまでクレジットカードの作成も住宅ローンの締結も開業資金の準備もできず、社会生活から排除されたまま一生を銀行にささげよというものです。
自らはリスクを負わず、不正から得た利益を被害者が死ぬまで吸い続けようとするこの姿勢は、金融機関として倫理に著しく欠け、これをもって最善のプランであるとする銀行の態度に被害者は納得することはできません。私たちが求めるのは、お得な返済プランではなく、不正負債から解放されることだからです。
加藤社長は、銀行が不正を隠匿することに成功した四百十物件を白案件などと表現する印象操作はやめてください。不法じゃなくても不正ですよね。であるならば、このような解決はおかしいと思います。私の物件も白案件だとされており、物件売却後に約一億七千万円の債務が残ります。このまま地獄が続きます。どうかこれ以上被害者を追い詰めないでください。
本日が、日本の金融行政を前に進め、被害者が再び普通の生活を取り戻す第一歩となることを心から願っております。
片山さつき大臣及び金融庁の皆様、何とぞよろしくお願いいたします。
そして、私たちの声に耳を傾けてくださった全会派の先生方、誠にありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。