河合弘之の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(河合弘之君) 私は、スルガ銀行不正融資被害弁護団の共同団長である弁護士の河合弘之と申します。
声、聞こえていますか。
私は、二〇一八年一月に発覚したかぼちゃの馬車事件の被害救済のために立ち上がったスルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団の共同団長も務めてきました。
かぼちゃの馬車、スマートデイズ事件はシェアハウスが対象物件で、そこにスルガ銀行が不正融資をしたことで大きな被害となりました。二〇二〇年三月にスルガ銀行は、シェアハウスの一括売却による代物弁済的方法により、物件売却後に残った借金と同額の解決金支払義務を認め、相殺することにより、この不正融資事件は被害者を完全に救済することができました。
これに対して、本件のアパート、マンションを対象物件としたスルガ銀行の投資用物件に係る不正融資については、対象物件の違いがあるだけで、スルガ銀行と悪質不動産業者との連携、預金通帳やレントロールなど融資審査資料の偽装、改ざんの形態などは全く同様でした。
私たちは、二〇二一年五月に新たな弁護団を立ち上げました。当弁護団は頻繁に被害者説明会を開きますが、毎回三、四百人にも及ぶ被害者が出席します。その人たちが皆二億から五億円の返す当てのない借金を抱え苦しんでいると思うと、大げさではなく頭がくらくらし、胸が苦しくなるほどです。それでも私たちは、望みを捨てるな、団結しよう、自殺なんか絶対考えるなと励まし続けてきたのです。しかし、アンケートを取ると、自死を考えたことのある人は六〇%に上るのです。誠に危険な状態と言わなければなりません。
当弁護団は、立ち上げ当初からスルガ銀行側代理人と交渉し、スルガ銀行に対しシェアハウスと同様の解決を求めました。しかし、スルガ銀行は頑強にそれを拒みました。そこで、やむを得ず二〇二二年二月に東京地裁に調停の申立てをし、シェアハウスと同様の解決を求めてきました。これに対してスルガ銀行は、シェアハウス不正融資は事業形態の新規性から定型的不法行為性が認められるのに対し、アパマン不正融資は定型性が認められず、個別に判断されるべきであるという、組織的不法行為の実態から目をそらす不当な主張に終始しました。
東京地方裁判所の調停委員会は、スルガ銀行のこのような主張にはくみせず、弁護団の主張を総論では認めてくれましたが、不正融資に関与した銀行員が誰で、どのような行為に及んだかの説明を求めてきました。それに対して私たち弁護団は、被害者の供述、第三者委員会調査報告書、被害者に協力してくれる当時の不動産業者の証言、証拠などを基に、調停委員会に不正融資に関与したスルガ銀行行員が誰で、どのような行為に及んだかを説明しました。それにより、調停委員会は、悪質性がある特定の行員が関与した物件については不法行為に該当する可能性が高いことを認定してくれました。そして、その結果、解決金支払対象になった被害案件が百九十三件となったのです。
しかし、第三者委員会調査報告書によると、不正融資に関与したスルガ銀行行員は他にもたくさんいます。スルガ銀行は、事件発覚後に自ら全件調査を行い、不正融資に関わっていた行員七十五名、役員を含めると百名を超える行員を懲戒処分にしていますので、誰がどのように不正融資に関わったのかは分かっています。当弁護団は、スルガ銀行が調査した結果に基づく懲戒処分の報告書の提出を再三にわたりスルガ銀行にも金融庁にも求めましたが、スルガ銀行は個人情報を理由に頑強に拒否し続けてまいりました。
スルガ銀行は、二〇二五年十二月十五日のIR情報で、当社は、裁判所の求めに応じた適切な情報提供、例えば二〇一九年五月に公表した全件調査の詳細や担当社員の人事処分の有無なども含めて調停委員会限りの形での資料提供をしておりますと記載していますが、そのような事実はないと思います。私ども弁護団は、そのような事実は存在しないと見ています。
この点については、本年一月二十日、一昨日ですが、調停期日においても調停委員会に確認をしました。裁判官は何と言ったかというと、そのような資料提出を受けたことは認識していないと明言されました。そして、念のため、その場でスルガ銀行の代理人にも聞きました。答えは、そのような資料を提出したとは聞いていない、知らないということでございました。
そもそも裁判所には証拠共通の原則というのがあります。一方当事者が提出した証拠を他方当事者に開示することなく事実認定に用いるなどというアンフェアなことをしてはならないことになっているのです。もし当弁護団が再三にわたりスルガ銀行や金融庁に開示するよう求めた資料が調停委員会にきちんと提出されていれば、もっと多くの物件が解決金支払対象となり、被害回復ができた案件はずっと多かったはずです。
今回の調停委員会による解決金支払の対象になるならないの仕分は、証拠の偏在とスルガ銀行の非協力に起因するいびつな認定と言わざるを得ず、その結果、被害者の多くに解決金の支払を認めない、内容の不十分な解決案になってしまったのです。
今からでも遅くありませんので、スルガ銀行は懲戒処分の報告書を出して、本来解決金の支払の対象となるべき案件がもっとあるということを自ら認めていただきたいと思います。
一方、私どもは、昨年十月二十一日の裁判所調停勧告の枠組みを受け入れて、十二月十五日にスルガ銀行と共同で声明を発しました。その理由は、スルガ銀行が解決金の支払の対象となる百九十三物件だけでなく、解決金の支払の対象にならないとされている四百十物件も含めて、被害者に対して、今後希望を持って生きられるような解決に向け、誠意ある対応をすると約束してくれたからです。加藤社長がそのように約束をしてくれたのです。スルガ銀行も、同日の声明において、通常の日常生活を営むことにも困窮するような取立ては行わないと表明してくれています。
当弁護団も、調停勧告の枠組みにより、被害者が今後希望を持って生きられるような救済策を与えられるようになると考えていますが、現状を見るとまだ不十分と言わざるを得ません。
一番問題なのは、被害者の物件を売却し、借入金返済に充当した後も、まだ足らずに多額の債務が残ってしまうということです。そうなると、被害者は、収入源、すなわち家賃が全く入らなくなったにもかかわらず、給料などから一生残債を返済していくことになるということなのです。これでは古代ギリシャの債務奴隷と同じです。いつもスルガ銀行から財布の中をのぞかれ、少しでも余った金があれば持っていかれます。それでは夢も希望もありません。これは、解決金支払の対象にならない物件だけでなく、解決金支払の対象になった物件でも同じことが起こります。
当弁護団の調査では、対象物件四百五十物件のうち三百物件以上、すなわち三分の二以上の物件で売却後も債務が残る、しかもその残債務額は平均で五千万円に上るというのが現状です。これではとても被害者が希望を持っていけるような状況とは言えません。
この対象物件売却後にも債務が残るという問題について、スルガ銀行は、一、分割払の月額は極小化する。例えば月に一、二万円とする、一、二万円以下とする。二、その結果残る大きな債務残額は返済期を四十年後とし、最終返済期に一括支払とするいわゆるテールヘビー方式にするという提案をしてくれています。当弁護団から被害者にその説明をしたところ、強い拒否反応を受けました。被害者の声は次のとおりです。それは今、信定さんが言ったこととも重なります。
一、それだと子供に巨額の借金を押し付けることになる、それを避けるためには団体信用生命保険の有効年齢である八十五歳までに死なないといけないことになる、私たちに自殺しろと言うのですか。二、年金生活者又はそれに近い人は、物価高の今日、月十五万円程度の平均的な年金から月一万円でも出すのは苦しい。三番目、長期分割といえども巨額の債務を負っていると借入れ不可、巨額債務を負っていると借入れ不可又は借入総額制限に引っかかり、住宅ローンの借入れ等ができず、今後の人生設計、人生開拓ができない。四番目、親から相続、親から若しくは先祖から相続した自宅がある場合、テールヘビーの最後の巨額債務を免れるための自己破産もできない、子供の相続放棄もできない。こういう反論が被害者の方たちから強くありました。
この問題を解決するには、例えば次のようなアイデアが考えられます。
一として、物件売却後の残債務と同額の、同額の不正融資に起因する支払義務を認めてもらって、それを相殺して残債務をゼロとするということです。これは簡易裁判所での即決和解手続を取れば柔軟な解決としてできます。スルガ銀行は多額の貸倒引当金を積んでいるので、財務上の問題はないと考えます。
二番目の解決方法としては、アイデアとしては、スルガ銀行が不正の融資で得た既払いの利息を引き直して、それを残債務元本に充当するという方法です。それによって対象物件売却後の残債務ゼロになる人が大きく増えます。
三番目に、例えば物件売却後の残債務をサービサーに極安値で売却し、被害者が極安値でそれを買い取る、こんなアイデアも考えられると私どもは考えています。
スルガ銀行においては、調停進行中も一旦調停が終了した後も、更に良い解決となるよう、上記のような方法を真摯に考えてもらいたいと思います。
さらに、これに加えてスルガ銀行に要請したいことは次のとおりです。
まず、まずは信用情報の回復です。
現在は、被害者の人々は、スルガ銀行からCICなどの信用情報機関に対する通知によって、金融機関からの借入れができません。先ほども信定さんはそれを訴えていました。そのため、自宅の購入資金や新規開業資金などの借入れができないので、今後の人生設計や発展ができません。この信用情報通知を解除してください。
二番目にお願いは、現在スルガ銀行が行っている被害者に対する支払督促手続、訴訟手続を即時取り下げてください。被害者は恐怖におびえています。
なお、当弁護団は、今般スルガ銀行の加藤社長が全面的かつ根本的な解決への意思表明をしたことを高く高く評価しています。経営者としては大変な英断だと思います。これは銀行員にとっても良いことです。誰からも恨まれることなく、良い銀行の社員として胸を張って働くことができるようになるので、本当に銀行にとってもいいことなんです。
しかし、前記のとおり、まだまだ不十分な点、未解決な点が多くあります。私たちは、今の調停委員会が示してくれた枠組みに応じた和解解決路線に乗って、全面的、根本的解決に向けて最大の努力をします。ちゃぶ台返しなどはしません。しかし、スルガ銀行においても、解決金支払の対象となる物件を拡大し、かつ、前述した問題点を克服する方法を誠実かつ具体的に講じてほしいと思います。
最後に、国会議員の先生方にお願いを申し上げます。
事態がここまで進捗してきたこと、特にスルガ銀行が真摯に全面的かつ根本的解決を志向してきたことは、先生方のおかげです。先生方の御尽力のおかげです。心からお礼申し上げます。
しかし、事はまだ不十分な点、未解決な点が多岐にわたります。まだ解決の入口に、解決の入口に差しかかったばかりなんです。枠組みはできましたが、具体的な解決策ができるのはこれからです。その交渉の過程でスルガ銀行側がどのような案を出してくるかはまだ分かりません。真の解決、被害者の人々が全員希望を持っていける、かつかつの生活ができる、何とか生きていけるということでなくて、希望を持って生きていける解決となるよう、最後まで監視、指導してくださるようお願いいたします。
また、同じことを金融庁にもお願いいたします。
この四年間、当弁護団は金融庁に数十回陳情、相談に伺いましたが、金融庁は、報告徴求命令などを出してくださいましたが、基本的には私たちの要求に対しては聞きおく、スルガ銀行に対しては報告を徴求するという対応に終始しました。そして、積極的に踏み込んだ対応をしてくれませんでした。そのため、約五年間の歳月が経過してしまいました。
本件は例えれば欠陥商品であり、本来であれば、金融庁がこの欠陥商品の回収命令、すなわち不正融資を初めからなかったことにするという是正命令を出すべき事案であったと思います。今度こそ踏み込んで、被害者が希望を持って生きていけるよう、スルガ銀行を指導監督していただきたいと思います。その意味で、金融庁の気概が問われていると思います。
そして、国会議員の先生方も、金融庁に対する指導監督を通じてこの問題が真の解決に至るように、また、今後このような被害者の人生を台なしにする不正融資が他の金融機関により再び行われないよう監視、監督していただきたいと思います。
この事件は、日本経済の中核を担っている真面目なサラリーマン、中小企業の経営者を食った事件です。日本の経済社会、社会をむしばんでいる、そういう事件なのです。それを是非御理解いただいた上に私どものお願いを聞き取っていただけますよう、心からお願い申し上げます。
御清聴ありがとうございました。