新藤義孝の発言 (憲法審査会)
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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。
五月十四日、二十一日と二週にわたりまして、緊急事態条項のイメージについての活発な議論が交わされました。これによりまして、各会派の意見がおおむね集約できたという意味でピン留めされた論点と、複数の見解があって今後更に議論を深めていく論点とが整理をされ議論の土台ができたことは大変よかった、このように思っております。
今後は、この土台を更に具体化する作業に入っていく必要があるわけであります。私としては、かねてより提案しております条文起草に関する取組について、各会派の皆さんと相談し実現を図ってまいりたい、このように思っております。
本日は、憲法改正の本体論議の中で、私なりに考えている議論すべきテーマについて申し上げたいと思います。
まず、九条に関してであります。
近年、ロシアによるウクライナ侵略、中国の軍事力の増強、そして北朝鮮による核やミサイル開発の進展、緊迫する中東情勢など我が国を取り巻く安全保障環境が劇的に変化している中で、国家の基本法にいついかなるときでも国と国民を守るための根拠規定を置くことの必要性はますます高まっているというふうに考えております。
自衛隊の実際の活動については、二〇一五年の平和安全法制の整備や二〇二二年の防衛三文書の閣議決定で着実に体制を整備してきており、防衛三文書については、更なる改定に向けた議論が行われています。
これら一般法レベルでの法整備により、存立危機事態や重要影響事態における活動、在外邦人等の保護措置などの整備が行われ、国の存立や国民の生命財産を守るために必要な体制は完成しており、我が国防衛のための措置は必要かつ十分に行うことができる、このようになっておるわけであります。
しかし、この一般法の根拠となる憲法には、誰がどのような手段で国を守るのかという国家の最重要任務に関する国防規定が定められておりません。
自民党が提案している条文は、平和主義を定める九条一項、二項はそのままにして、新たに九条の二を規定しようとするものであります。その中に、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つ国防規定を創設する、その担い手たる自衛隊を明記して、これに対するシビリアンコントロールの規定を設ける、こういった三つの要素を含めたわけであります。自民党案はこれによって、緊急事態条項の創設とともに、日本国憲法のいわば未完成部分を補い、憲法を頂点とする国家の法体系を完成させようとするものであります。
憲法改正の議論は、賛成か反対かの二者択一ではなく、何のために行い、どのような効果をもたらすのかを国民の皆様にお伝えするものにしなければならないと思います。
例えば、自衛隊は自衛のための必要最小限度の組織であって、持てる力の最小限度しか発揮できず、それでは不十分だという意見を聞くことがしばしばあります。
九条の解釈論で使われる必要最小限度とは、我が国防衛のために必要な実力のことであり、我が国防衛のためであれば、それは全て必要最小限度の範囲内、必要最小限度の実力行使だということになるわけであります。できないのは、自国防衛を超えて相手国を占領することや、自国防衛と関係のない局面での純粋国際協力の場面で武力行使をすることです。自衛隊は、必要最小限度の下、国と国民を守り切るために必要かつ十分なことは全てできる、その状態になっていることを丁寧に説明することが重要だ、このように考えています。
同じように、自衛隊は国際的には軍隊だが国内的には軍隊ではない、これは詭弁だという意見もしばしば聞かれます。
国の平和と独立、国民の生命財産を守るために武力行使をするという点では、各国が持つ軍隊と自衛隊の役割は何ら変わることはなく、そのような定義であれば、自衛隊は国際法上も国内法上も軍隊と言える組織です。
しかし、我が国の自衛隊は、他国を占領しないであるとか、自国防衛と関係のない純粋国際協力の場面で武力行使は行わない組織であり、この部分においては他国の軍隊とは違う面があるということだと思います。
さらに、我が国の自衛隊は、その行動が警察作用と位置づけられポジティブリストで規制されている、他国の軍隊のようにネガティブリストによる行動規範になっていない、これでは警察組織と同じではないか、国防を担えるのかといった意見、これもしばしば聞かれるわけであります。
確かに、自衛隊がこれまで活動してきた災害派遣、海上警備行動、スクランブル発進といったものは警察作用に属する活動に位置づけられますが、それは、他国の軍隊においてもこれらの活動は警察作用でございます。ポジティブリストで規制されているわけであります。
他方、幸いにしてこれまで一度も発動されていない防衛出動においては、自衛隊法八十八条二項の規定により、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えない限り何でもできることとされております。この点では他国の軍隊と何ら変わらない活動を行うものであり、防衛出動においては、文字どおり、ネガティブリストに基づく活動を行うことになるわけであります。
次に、合区解消、地方公共団体に関する憲法改正の必要性について申し上げます。
今後、少子高齢化、人口減少がますます進み、都市と地方の格差が拡大していく日本社会の在り方を踏まえると、法の下での平等をうたう憲法十四条に基づく一票の格差の問題に加え、地域の民意の適切な反映という民主主義の基本的な観点も重要だと考えております。
選挙区の設定に関してはこの二つのバランスが大事と考えますが、合区については、果たして地域の民意の適切なエリアとなっているのか疑問の声が当該地域より上がっており、投票率にも影響が出ているとの指摘も聞いております。参議院における合区の解消議論は喫緊の課題であり、今後早急に議論すべき論点と考えております。
こうした憲法改正の本体論議に加えて、手続法である国民投票法の整備についても議論が必要だと思います。
投票環境を定める外形的事項に関しては、二〇一九年と二〇二二年に、悪天候により離島で開票する際の開票立会人の規定整備、投票立会人の選任要件緩和、そしてAM放送に加えてFMによる政見放送という三項目の公選法の改正が行われています。これらは国民投票法においても投票環境の外形的整備事項として速やかに反映されるべきです。いわゆる国民投票法の三項目案は衆議院解散により廃案となっておりまして、早急に再提出して法整備を行う必要があると考えております。
加えて、国民投票の質の向上を図るため、令和三年の国民投票法改正の際には附則四条で検討条項が設けられており、この議論を深めることも当然です。
以上、今後議論すべきテーマの一端について申し上げましたが、何のテーマにするにせよ、ある程度絞って集中的に議論することが重要と考えます。
次回のテーマをどうするかは、本日の討議を踏まえ、筆頭間協議を行い、幹事会で決めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。