國重徹の発言 (憲法審査会)
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○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
憲法審査会で議論が始まってから約十五年、NHKで中継されるのは今日が初めてです。
そこで、本日は、私たち中道改革連合がどのような姿勢で憲法に向き合っているのか、そして、今国会で集中的に議論がされた憲法九条や緊急事態条項を中心に、私たちの考えを国民の皆さんにお伝えしたいと思います。
私たちの基本姿勢は明確です。立憲主義を政治の土台とし、権力の濫用を防ぎ、個人の尊厳や国民の権利を守る。憲法は、権力を持つ側の都合のためではなく、国民の権利と自由を守るためにある。これに尽きます。
私たちは、改憲それ自体を目的とする立場には立ちません。現行憲法を固定的に捉え、時代や社会の変化に伴う新たな課題に目を閉ざす立場にもくみしません。一九四七年の憲法施行時には想定されていなかった課題が明らかとなり、憲法改正が必要と認められる場合には、その内容を真摯に検討していきます。その際の判断基準、それは、国民の権利と民主主義をより確かに守れるのかどうかという点にあります。
国民の皆さんの関心が高い憲法九条について申し上げます。
私たち中道改革連合は、憲法九条一項、二項を将来にわたって堅持します。その上で、積極的な対話と外交努力を尽くすとともに、憲法の専守防衛の範囲内で防衛力を着実に整備し、日米同盟を基軸とした抑止力、対処力を強化していく。これこそが、国民の命と安全、日本の平和を守り、国際社会からの信頼をより確かなものにする道である、そう私たちは考えています。
これに対し、憲法九条二項を削除して、他国の防衛それ自体を目的とする全面的な集団的自衛権を認めなければ我が国を守れないという意見があります。
しかし、私たちはそのような立場には立ちません。
憲法九条は、自衛のための必要最小限度の実力行使を否定するものではありません。さらに、二〇一五年に成立した平和安全法制によって、例えば、日本海の公海上で日本を防衛するためにパトロールをしているアメリカの艦船に武力攻撃があった場合、それによって日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由が根底から覆される明白な危険があるのであれば、自衛隊がアメリカの艦船を守るために武力を行使することも認められています。これによって、日米同盟の信頼性が向上し、抑止力が強化されました。我が国を守るための法制度は既に整っていると言えます。九条二項を削除しなければ我が国を守れない、そんな状況にはありません。
憲法の平和主義と国際協調主義に基づいて、我が国は専守防衛や非核三原則を堅持し、国際社会の平和と安定に貢献してきました。その積み重ねが、外交上の発言力や各国との連携を支える力にもなっています。平和国家としての信頼、これは日本の安全保障を支える重要な基盤です。この信頼の土台を自ら損なうようなことがあってはなりません。
一方で、自衛隊は我が国最大の実力組織です。だからこそ、自衛隊に対する民主的な統制をどう確保していくのか。例えば、憲法七十三条の内閣の職務権限に自衛隊に対する民主的な統制を書き込むことも考えられます。
こうした自衛隊の憲法上の位置づけを検討することは、権力の行使を統制するという立憲主義の観点から重要です。その際、長年にわたる国会での議論を通じて緻密に積み上げられてきた九条の解釈、これを変えないよう慎重に議論を深めていきたいと思っています。
次に、この憲法審査会でここ数年最も議論されているのが緊急事態条項です。
大災害を始めいかなる緊急事態にあっても、政府の独走を監視し、必要な法律と予算を成立させる国会の機能を維持しなければなりません。その上で、大災害などの緊急事態によって国政選挙が長期間できなくなった場合に選挙を一定期間延期し、その間、国会議員の任期も延長できるようにすべきかどうか。国会議員の任期の延長は憲法改正でしか実現できませんので、これが議論の焦点になっています。
大前提として、選挙権は国民の皆さんの極めて重要な憲法上の権利であり、国民主権の核心です。だからこそ、まずは、憲法が定める期間内にきちんと選挙ができるよう、あらゆる環境整備に力を尽くしていく。さらに、参議院の緊急集会などの現行制度も最大限に活用していく。それでもなお国会機能に空白が生じるのであれば、それを埋める最後の手段として議員任期の特例を検討する。憲法改正に係る議論をする際には、こうした順を追った慎重な検討が大切になります。
その上で、この特例が時の権力によって濫用され、政権の延命や議員の保身に使われるようなことがあってはいけません。どの程度広い地域で、どの程度の期間、選挙の実施が困難なのか、要件を厳格に、そして具体的に定めなければなりません。
これについて、中道改革連合は、例えば憲法五十六条一項の趣旨を手がかりに、どの程度の議員が選出されれば安定的に定足数を満たし国会の機能を維持できるのか、こういった観点から、要件を具体化する新たな提案をこの審査会でさせていただきました。憲法全体の整合性を踏まえ、濫用を防ぐ要件を具体的に詰めていく、これこそ、私たち中道が実践する、国民のための責任ある憲法論議の一つの形であります。
今国会では、緊急事態条項に関するイメージ案が示され、これまでの議論が可視化されるとともに、論点が一定程度整理をされました。同時に、多くの課題が残されていることも明らかになりました。こうした論点を丁寧に詰め、国民の皆さんに分かりやすくお伝えする工夫も必要になってくると考えています。
平時の国会機能について申し上げます。
今国会の衆議院では、与党が、圧倒的な議席数を背景に、委員長職権による極めて強引な国会運営を行う場面が目立ちました。選挙の結果は民意です。そして数は力です。しかし、数は正義でも良識でもありません。
こうした今国会の状況を踏まえれば、政府・与党の活動を監視する野党の役割はますます重要になっています。その野党の行政監視機能を弱めること、これは国民の知る権利と政治を正す力を弱めることにもつながります。
緊急時の国会機能も確かに重要です。しかし、国民生活により広く関わる平時においてこそ、国民の代表機関である国会がその機能をしっかりと発揮できるようにしていく。そのための議論は、国民のための憲法論議として、より優先して取り組むべき重要な課題であります。
特に、国会議員による臨時国会の召集要求に内閣が速やかに応じない問題、また、内閣による余りにも恣意的な解散権の行使については大きな課題があります。こうしたテーマについて臨時国会以降集中的に議論することを改めて提案いたします。
次に、憲法改正のルールである国民投票法についてです。
今や、潤沢な資金とAI、SNSを駆使すれば、世論を動かし、選挙や国民投票の結果にまで影響を与えられる時代になりました。フェイクニュースや不透明な広告によって国民の判断がゆがめられ、民主主義の基盤が損なわれるようなことがあってはなりません。
ネットの適正利用や国民投票運動の資金規制、ネットCM等の在り方については、既に国民投票法やその附帯決議で速やかな検討が求められています。国民投票の公正さを支えるルール、これが不十分なままでは、どんな憲法論議も砂上の楼閣にすぎません。その課題の解決に向けた議論を今後優先的に行うべきであります。
今国会では、特定の改憲テーマに絞った議論が多く行われました。その一方、国会の運営や政府の対応は憲法の理念に基づいたものと言えるのか、憲法で保障された国民の権利が現実社会の中でしっかりと守られているのか、こうした重要な憲法テーマがなおざりにされていた面は否めません。
国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる、これは与党自民党が自らの綱領に掲げた国民への約束です。私たちも全く同じ思いであります。こうしたテーマを、立法府の矜持を持って、時宜に応じてこの審査会で議論していくべきと考えます。
改憲ありきでも、護憲を唱えるだけでもない、我々中道改革連合はこれからも国民の皆さんの権利と日本の未来を守るための憲法論議を責任を持って進めていくことをお約束し、私の意見表明といたします。