齊藤貢の発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(齊藤貢君) 今日はどうもお招きいただきまして、大変恐縮でございます。齊藤でございます。
 私の説明は、今お配りしてあります「論点」という紙を使いながらお話しさせていただきます。
 まず、重要なポイントから申していきますが、私がこの戦争を観察していて、一番当てはまるキーワードが非対称性という言葉でございます。
 まず、一番大きな非対称性は、皆様御承知のとおり、二月二十八日に戦争が始まりましたが、イランは全然軍事的には、ただし初めの段階ではとここで申し上げます、これは後で意味がありますので、初めの段階では全然軍事的にはかなわなかったと。そこで、イラン側は、ホルムズ海峡の通航を阻害することによって国際石油価格を上げて、その結果として、アメリカのガソリン価格を高騰させて、トランプ大統領に圧力を掛けています。
 具体的に申しますと、二月の二十六日の段階で一ガロン当たりアメリカの平均ガソリン価格は二・九八ドルだったんですね。一ガロンというのは大体四リットルとお考えください。で、今の四月十四日、昨日でこれが四・一一に上がっていまして、約、実に三八%もガソリン価格が上昇しております。これが、車社会のアメリカでは、ガソリン価格というのは政治問題になりますので、非常にトランプ大統領に圧力が掛かっている状態でございます。
 あと、二つ目の非対称性というのは、これは余り気付かれないんですが、私たちからすれば、既にイランで国民が二千人か二千人以上亡くなっているとか、あと、いろんな橋とかいろんなインフラが壊されて、全然抵抗してもかなわないから、イランはもうそろそろ手を上げてもいいんじゃないかというふうに思われがちなんですが、これは、実は我々の感覚とイランの感覚は非対称的でございまして、イランの今のイスラム革命体制というのは、最も重要なことは、ここに書いていますが、体制の存続にあるわけです。それで、我々的な価値観からすると理解し難いのですが、今のイスラム革命体制は、かなりの程度までの人的、物的損害というのは体制維持のために許容範囲だと考えていると私は考えています。
 あと、アメリカ海軍は世界一と言われるんですが、今、ホルムズ海峡をめぐっていろいろ軍事的な動きもございますが、どうもああいう狭い場所で、イランが使いますドローンとか高速艇による攻撃に対して、必ずしもアメリカ海軍が勝てるかというと言い切れない面がありまして、ここでもイランは世界一のアメリカ海軍に対して非対称戦を挑んでおります。
 さらに、イラン側は、イスラエルとあと対岸の、ペルシャ湾の対岸のアラブ産油国にある米軍基地に対して弾道弾ミサイルとかドローンとか巡航ミサイルで攻撃しています。弾道弾ミサイルの例でいいますと、大体イラン側の弾道弾ミサイルは一発数千万円ぐらいと言われているわけですね。それに対して、米軍はTHAADという大気圏外で迎撃するミサイルを使うんですが、これが一発二十億円もして、かつ、迎撃というのは普通二発打ちますから、四十億円と。数千万円のものに対して四十億円掛けていると。これも非常に非対称的な、アメリカからするとコスパが悪い状態が続いております。
 次に私が申し上げたいのは、通常、イランの指導部というのは狂信的な聖職者だと思われがちなんですが、実際は非常に合理的な、冷静な人々から成っております。
 さらにもう一つ、三点目として、私がイランを見ていて感じるのは、イランはチェスを指し、トランプ大統領はポーカーをするという話でございますね。要するに、双方が今戦争という、ゲームと言っちゃいけないんですが、ある種のゲームをしているわけですが、要するに、そのルールが違うので、お互いのシグナルを見間違うことが非常に危険だと私は思っています。
 この例の四月九日というのは何かというと、四月九日にイランが公式に機雷の散布を宣言しました。これ、明らかに、機雷をホルムズ海峡に散布するというのはこの戦争が一段階エスカレートしたことを意味しますが、私の理解では、それには前段階がありまして、四月十一日ですか、交渉が始まる前ですね、ですから、四月の七日、八日、九日、ここら辺ですが、トランプ大統領は激しくイランを非難しました。例えば、いきなり、おまえらはもう戦争に負けているとか、そういうことを言ったわけです。
 これは、要するにポーカーをしているトランプ大統領からすればブラフを掛けているわけです。要するに、交渉を始める前に思いっ切り高い球を投げた、彼としてはごく当たり前の行為だったんですが、チェスを指しているイランは、要するに彼らはブラフという感覚が余りないので、それを言われたままに受け取って、トランプ大統領がその脅迫をまた強くすると、それに対抗して機雷をまくというエスカレーションに出たと。これが私は最近のでは典型的な例だと思うんですが、要するにイランとトランプ大統領ではやっているゲームが違うということでございます。
 あと、四点目、これはほとんど語られることがないのですが、私は今回の戦争で、実は隠れた敗者はアラブ産油国だと思っております。どうしてかといいますと、要するに、ただ、今でもまだ何か日本ではドバイチョコレートとかいう話があるかと思いますが、結構ドバイが、ドバイ自身、実は石油が出ないので、正確な繁栄ではないんですが、要するに、あそこら辺のペルシャ湾の湾岸アラブ産油国というのは豊かな石油とか天然ガスを持っていて、それで最近は非常に、太陽光発電なんかもやって、非常に我が世の春を謳歌していたわけですが、しかし、今回、イラン側がこれらの諸国の石油関連施設や生活インフラ施設を攻撃すると、実はこの我が世の春が極めてもろい土台の上にあったということが分かってしまったということでございます。
 具体的に言いますと、大体、アラブ産油国の飲料水というのは八〇%、平均で八〇%が海水淡水化で作られていますが、淡水化工場を壊されたり、あと、淡水化工場というのは電気が要りますから、その電気を作る発電所を壊されると、八割の飲み水がなくなったら、これはもう、その国の国家の存立に関わる深刻な事態になるわけで、要するに、このアラブ産油国は実は、余り皆さん意識されていませんが、実は隠れた敗者だと私は考えております。
 ここから簡単に、戦況の推移と今後の見通しをお話しさせていただきます。
 まず、この戦争は二月二十八日にアメリカとイスラエルがハメネイ最高指導者を殺害したという、斬首作戦というんですが、で始まりました。これは、私はベネズエラのユーフォリアと書いていますが、要するに、その前にベネズエラでアメリカがマドゥーロ大統領を誘拐してベネズエラの独裁体制が倒れたという先例に従って、これは今となってはみんな批判するわけですね、ベネズエラとイランは違うだろうと言うんですが、少なくとも当時、アメリカとイスラエルはベネズエラを、柳の下にドジョウは二匹と思ってやったわけですね。
 ところが、その思惑は外れまして、その後、イスラム革命体制は崩壊したわけではございません。なぜ崩壊しなかったかと簡単に申しますと、イランという国は、百年ぐらい前から官僚制度という、ないしはその国家の体制というものを整えておりまして、私は、ですから、言葉遊びなんですが、要するにベネズエラが独裁体制ならばイランは独裁型体制だと。要するに、ベネズエラならばその全ての権力が集中している独裁者を拉致すれば体制は崩壊するけれども、イランの場合は、確かにハメネイ最高指導者が一番その体制のトップにいましたが、しっかりした官僚制度があるために、それで直ちに崩壊することはなかったと。
 その後、この両国はイランを激しく空爆したわけです。これもさっき非対称性のところで申し上げたとおり、イラン側はエネルギー戦略を発動して、むしろガソリン価格の高騰を通じてトランプ大統領を政治的に追い詰め出しました。
 その次、アメリカとイスラエルは、その空爆です、要するに、外から打撃を与えてもイランのイスラム革命体制が崩壊しないので、今度は内部崩壊を狙って、例えば、前から分離独立傾向の強い、人口の一〇%ぐらいいるクルド人の分離独立闘争をけしかけてみたり、これは全然うまくいかなかったんですが、あと国民に対して反乱を呼びかけ、かつ、本格的ではないですけれども、発電所とかガス田、ガス田をなぜ攻撃するかというと、イランの発電の八〇%が天然ガスなので、ガス田、ガスがなくなると発電が止まるという、そういうロジックですが、こうやって、要するに国民生活を圧迫しつつ、国民に対して、こういうことになったのは今の体制が悪いからだといって反乱を呼びかけました。しかし、結局うまくいきませんでした。
 それで、私は恐らくこれ、イランは初めから読んでいたと思うんですが、戦闘が続く、要するに長期戦化するに伴い、今二ページ目の、(4)ですが、アメリカとイスラエルの迎撃ミサイルが枯渇し始めたわけですね。その結果、米軍に関して言うと、基地の防空が十分にできなくなって、特にAWACSと言われます、日本語で空中早期管制機と言うの、虎の子の飛行機を一機失ってしまったことが大きな痛手となって、なぜかというと、この空中管制機というのはいろいろ使い方があるんですが、一つの使い方は、これまでアメリカとイスラエルがイラン上空を自由に空爆ができたのは、戦闘機の積んでいるレーダーというのはやっぱり距離に限界がございますので、このAWACSというのは背中に大きなレーダーを積んでいまして、要するに戦闘機の後ろにいて、戦闘機にいろんな必要な情報を与えて、管制ですから、あそこに行け、こっちに行けと指示した。その飛行機がなくなってしまったということで、米軍のイラン領空での作戦が制約されるようになりました。実際、四月三日には戦争が始まって初めて米軍機が撃墜されました。
 もう一つ、トランプ大統領は時間的制約というものもございます。
 一つは今申し上げた迎撃ミサイルの枯渇ですが、さらに、五月十四、十五には中国に行かなきゃいけないと。中国に行く前に戦争が片付かないと、やっぱりアメリカの中国に対する立場が弱くなるし、さらに、七月四日には建国二百五十年祭がございます。こういう二百五十年祭というお祝いのときにやっぱり戦争をやっていたり、いわんや、その最中に米軍兵士が亡くなるようなことがあったらこれは大騒ぎになるので、これまでには何とか収めたいとトランプ大統領は考えているでしょうし、今、私が既に申し上げたとおり、ガソリン価格が上がって、ガソリン価格の高騰と反比例してトランプ大統領の支持率は下がっております。十一月三日には中間選挙がございまして、トランプ大統領としてはこの選挙に勝たなきゃいかぬということで、こういう時間的な圧迫も受けているわけですね。
 そこで、少し前までは、トランプ大統領は何度もイランに対して、石器時代に戻してやるとか、一つの文明が崩壊するとかという強い言葉でイランに圧力を掛けながら、発電所等の大規模な民生インフラを破壊することを示唆し、何だったらイランの石油の九〇%を輸出しているカーグ島への限定上陸作戦などを画策したわけです。
 ところが、八日でしたっけ、トランプ大統領が何回かその期限を延長した最後のタイミングの数時間前に、突然、こういう攻撃をやめて、パキスタンが提案しました二週間の休戦をのみました。これは、なぜこうなったかというと、ここに書いていますが、攻撃するというその期限の前の日の夜、このWTIというのが、アメリカの石油の指標でございますが、これが何と数時間で一〇%も上がってしまったわけです。先ほどちょっとアメリカのガソリン価格を申し上げましたが、四〇%なんて上がったら、それは例えば日本でもとんでもない政治問題になるわけで、さらに、石油価格がそのままガソリン価格に反映するわけじゃございませんが、攻撃する前に一〇%上がったが、攻撃したらもっと上がって、そうすると、もうトランプ大統領は完全に石油、ガソリン価格で追い詰められてしまうということになって、トランプ大統領は、最終的にインフラ攻撃をちゅうちょして、それで交渉による問題の解決を図ろうと一旦はしました。
 ただ、私は、一貫して、(6)のところですが、イランとアメリカとはホルムズ海峡の航行に対して根本的に百八十度立場が違うわけです。要するに、トランプ大統領としては、早く、一刻も早くホルムズ海峡が通れない状態を解消して、ホルムズ海峡から石油が出るようにすると。言い忘れていたと思いますが、ホルムズ海峡というのは世界の石油マーケットで二〇%の割合があるので、それで、だから石油価格が上がっているわけですね。だから、これを何とか解消しなきゃいかぬと思っている。ところが、イランにしてみると、ホルムズ海峡を封鎖することでトランプ大統領を、要するにガソリン価格の上昇で追い詰めていると。こんないい手段はないということで、彼らは絶対これは手放さないわけです。
 ということで、私は初めから全然この話はまとまらないと思っていたんですが、実際何が起きたかというと、まず、WTIは一六%下がったんですが、ガソリンは全然下がらないわけです。なぜ下がらないかというと、当たり前の話なので、要するに、ガソリンスタンドは自分たちが仕入れた高い値段のガソリンを全部売らないと、その後に値段が下がって、その価格が下がったものは、今ある在庫がなくならないと売れないわけですよね。だから、そんなに急に下がるわけない。要するに、石油価格が下がっても、一、二週間はタイムラグがあるわけです。ところが、その後のトランプ大統領の発言を見ていると、非常に、ガソリン価格がすぐに下がらないことにいら立ちを示していたということですね。
 さらに、彼に追い打ちを掛けたのは、イランが機雷をまいてしまったわけです。私の理解では、その引き金を引いたのはトランプ大統領なんですが、トランプ大統領からすると、要するに、話合いをしても、ここに書いていますが、機雷の掃海というのは、多分、普通の一般民間船が通れるようにするには恐らく数か月掛かると、そうすると、話合いでホルムズ海峡を開いたとしても、全然そのホルムズ海峡が使えないということで、彼は恐らく急速に交渉による協議をやめてしまって、四月十一日に始まった協議というのは何と一日で終わってしまったと。
 アメリカ側は、これは核の問題だと言っているんですが、そういうことは私はあり得ないと思うわけです。なぜなら、核の問題というのは、もうアメリカとイランは何年、トランプ政権だけでも何年も話している話で、何年もないか、大げさです、数か月は話している話なので、これがどれだけ難しい問題か彼らも知っているはずで、そんな一日の協議で片付くわけがないと。だから、核問題というのはあれは煙幕でして、やっぱり本音はガソリン問題。ただ、アメリカ側としては、ガソリン問題、まあ正確に言うと、ホルムズ海峡問題で折り合いが付かなかったと言うとイラン側をますます喜ばせてしまうということで、あえて核の問題と言ったと思います。
 その後、次の手に困ったトランプ大統領は、イランの海上封鎖を宣言しました。今日も、今日のニュースだと、既に六隻のイランのタンカーをアメリカの海軍が追い返したと言っていますね。このようなことは、やはりガソリン価格の高騰を懸念して、余りハードな、要するに、先ほど申し上げたようなインフラ攻撃とかをするとまたガソリン価格がばっと上がってしまうおそれがあるので、こういう弱い作戦を取ったと思われますが、ただ、これにはやはり限界があって、いずれの段階で、トランプ大統領はまた強硬策に戻らざるを得ないと思っております。
 ちなみに、今、たった今、トランプ大統領は数日中に再協議宣言、再協議が始まるという宣言をしていますが、私は、これはガソリン対策で言っているだけで、実際は協議は、そうですね、ほとんどないと思っております。理由は、イラン側からすると、今このタイミングで再協議すると、もう、要するにイランは海上封鎖をされたために屈服したんだというふうに国際社会も国民も受け取りますから、それはやっぱりイランとして体面上、受け入れられないと。したがって、もし本当に今週末にも協議があるんだったら、やはり私はイラン側がそれを確認しないと駄目だと思います。
 それで、トランプ大統領がなぜその時間稼ぎをしているかというと、もう一つ、先ほど、イランが機雷をまいたことが私はトランプ大統領が交渉による協議の諦めた理由と申しましたが、実際、十一日の前、十日ぐらいにトランプ大統領は掃海を宣言したわけですが、実際、じゃ、掃海するには掃海艇というものが要るんですが、どこにいるかと調べてみると、二隻、実は世界中に米軍は掃海艇を四隻しか持っていなくて、そのうちの二隻が実は佐世保にいたんですね。これを急遽、中東に向けていて、今、たしかプーケットまで来ているんですが、掃海艇というのはスピードも遅いですから、あと一週間、二週間は掛かると思われると。それともう一つ、LCSという新型の艦艇がございまして、これは三隻、実はアジア方面に展開していることが確認されて、これもちょっと調べたところ、やっぱりどんなに一番、三隻別々のところにいるんですが、どんなに早くても、一番近くにいる船で一週間は掛かると。そうすると、実は、米国は掃海をすると宣言しながら、実際接近できるのはあと二週間後ぐらい。なぜこうかというと、要はともかくガソリン価格を下げたいというのがあると、そういうことでございます。
 この戦争は、こういうことで、一つは非対称戦、大国といえども、結局、非対称戦をうまく使うんですね。弱小、まあ弱小とは言えませんが、イランのような国でも十分戦えるということ。もう一つ、実はこの戦争は、現場ではなくてアメリカのガソリンスタンドで戦っていると、そういうことでございます。
 ちょっと長くなりまして、失礼いたしました。

発言情報

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発言者: 齊藤貢

日付: 2026-04-15

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会