宮川努の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(宮川努君) 学習院大学の宮川でございます。(資料映写)
 本日は、日本経済に関しまして私の説明の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。本日は、日本経済につきまして、その過去、現在、将来どのようになるかということにつきまして私なりの考え方を御説明させていただきたいと思います。
 資料の二ページ目をお開きください。
 私の資料ちょっと多くなっておりますので、まず最初に資料の概要と要旨を御説明させていただきます。そして、その後、図表を中心に、若干資料を飛ばしてまいりますが、図表を中心にその内容についてもう少し詳しく御説明させていただきたいと思います。
 最初は日本経済の長期停滞ということですが、後ほど図で説明いたしますように、私どもの、二十一世紀に入ってからの時点で考えますと、現在の時点では信じられないような経済停滞だったということが言えます。経済には需要サイドと供給サイドに分けて考えることができますが、私は、この原因は供給サイドを軽視してきたことだというふうに考えております。
 それでは、供給サイドというのは一体何なのかということですが、簡単に言えば生産のサイドのことです。特に、この生産サイドを考える場合、GDPを労働投入で割った生産性が非常に重要だというふうに考えられます。
 その生産性ですが、この生産性を伸ばすにはどうすればいいか、これは二〇一〇年代の後半ぐらいから注目をされておりますが、二つに分かれます。一つが資本蓄積であり、もう一つが技術進歩ということになります。この資本蓄積に関しまして、最近では政府投資が民間投資を刺激するといったような議論も見られますが、実は政府投資は過去民間投資を刺激したということは余りなかったということを申し上げたいと思います。やはり、民間投資そのものが自立的に増加することが重要だということになります。
 その中でも重要なのは、デジタル化と人材投資ということになります。これらの投資は関連しておりまして、バランスの良い投資の伸びが必要だと考えられます。そして、人材投資に関しては、企業レベルだけではなくて、教育段階も含めた包括的な人材育成というものが望まれます。
 生産性が上がれば、いわゆる好循環として賃金も上がっていくということが言われていますが、実は生産性と賃金の間には乖離が見られるというふうに、賃金の伸びの間には乖離が見られるというような指摘もございます。
 しかし、これをよく見ますと、二〇一〇年代の半ばぐらいまでは失業率がかなり高かった。日本のいわゆる完全雇用に近い失業率というのは大体三%程度ですけれども、これを上回る状態が続いていて、大体三%程度になったのが二〇一〇年代の半ばぐらいです。ここからの実質賃金の伸びとそれから生産性の伸びは、それほど乖離はしていない。乖離している部分は、やはりそこから起きた円安ではないかというふうに私は考えている、円安によって所得が流出していたという部分が影響しているというふうに考えております。
 最後に、政府や日本銀行は何ができるのかということですが、私は、実質利子率、名目の利子率から物価上昇率を引いた実質利子率はまだ低い状態にあるので、利上げの余地はあると考えております。
 財政支出ですが、財政支出、先ほど、政府投資は民間投資を刺激していないということですが、個別項目で見れば、まだ公的部門のデジタル化というのが民間部門に比べてかなり遅れております。これは推進する必要があると考えております。産業別に考えると、十七部門というのが考えられますが、十七部門は、それをもし日本単独でやるとしたら多過ぎて、やはり海外の知見を利用する必要があるんだろうと。そこは日本独自でやる部分、それから、日本と親しい国との技術協力でやる部分というものを分けて行うべきだろうと。
 それから最後に、生産要素と書いてございますが、資本や労働、生産に必要なものの移動というものがやはり十分でないということですので、そのための規制緩和ということは必要だということを述べたいと思います。
 それでは、各項目、少しずつ詳しく御説明させていただきます。飛んでしまう部分もありますが、そこはお許しください。
 日本経済の実質GDP成長率は、一九八〇年代、四%台でございました。これが九〇年代、二%台、二〇〇〇年代、一%台、二〇一〇年代以降は〇%台ということになっております。
 ここから少し資料を飛ばさせていただきます。資料の五ページ目の右を、これをほぼグラフで表したものが右のグラフです。これは、青い棒グラフでGDP統計の伸び率、それから、実は私が二〇〇〇年代、日本経済研究センターの研究員もやっておりましたときの長期予測値、これが二〇二五年までの予測でしたから、ほぼ現在と合うものになっております。これの予測値を比べたものであります。
 御覧のように、先ほど申し上げましたように、日本のGDP成長率はどんどん下がっていくわけですが、私の予測では、当初は不良債権の影響から成長率がそれほど伸びないと思っていたものの、後ほど、その二〇〇五年、二〇〇〇年代の後半以降は、オレンジのラインにありますように、ほぼ二%台の成長に戻るだろうと考えていました。これは、その当時、世界金融危機やコロナ禍というものを考えなかったせいでもありますけれども、それにしても、当初の、当時の予測、これは私だけの予測ではなく、多くのエコノミストが当初予測していたのとそれほど変わりません。そういう意味で、ここまで成長率が落ちる、また、他の先進国とも比べても成長率が低いということは予測できなかったというふうに考えられます。
 その一つの原因ですが、マクロ経済は非常に調子が悪かったんですが、ミクロの企業というのは、ある意味、収益が好調です。これは、海外に進出できた企業が非常に好収益を上げているという意味で、マクロの状況とミクロの企業との乖離がこの際起きてきたということです。
 結果的に、私の予測どおりであれば、この一番下に書いてございますように、二〇二五年には既に名目GDPは八百兆円を超えていたということになります。ですから、それを、今現在名目GDP六百兆円台ですから、想像を絶するような、当時、二〇〇〇年代の初めに六百兆円でとどまるということであれば、相当いろいろ議論があったかと思います。
 それでは、今までどういう政策を打ってきたのかということを七ページの総需要と総供給という形で御説明させていただきたいと思います。
 大体のエコノミストは、こういう右下がりの総需要曲線と右上がりの総供給曲線で説明をしております。七ページの左側、当初、特にアベノミクスですけれども、アベノミクスで行われていたのは異次元の金融緩和で、総需要曲線を右側にシフトして、インフレが起きてもGDPを増加させると、こういう考え方だったわけです。ですから、総供給のところは余り概念に入っていなかった。
 ところが、コロナ禍の後、またいろんな、ウクライナへのロシアの軍事侵攻等もありまして、供給サイドの部分というのが弱体化してしまい、だから、右上がりではなくて、需要を増やしてもなかなか供給サイドがそれに反応できないというような状態が起きた。結局、物価だけが上がってGDPが増えないというような状況がここ二〇二〇年代に起きたということであります。
 今、現政権が考えられていることは、八ページの右側の図だろうと思います。これは、総供給を増やす、で、総供給を増やすと同時に総需要も、まあ総供給を増やす時点で総需要も同時に増えていくわけですが、それが起きるということです。それによって、物価の上昇は弱くなりながらもGDPが増えるということを想定している。垂直だった総供給を、頑張って設備を増やしていくということだったと思います。
 この問題点ですが、同時に総需要曲線と、総需要と総供給が増えればいいんですけれども、まず総需要側が増えるというのが通常でございまして、したがって、総供給が増える前まではかなりのインフレを覚悟しなくてはいけないだろうということになります。それから、過大な投資をすれば逆に、例えばAIのための電力投資といったようなことがあれば、実はそのための附帯費用によってGDPが停滞する、まだ停滞が長く続くということも考えられます。
 その供給側を強化するというのはどういうことかということなんですが、それは、ちょっと省きますけれども、労働力、資本量、技術進歩、この三つの要因を増加させることになるわけですが、労働力は、やはり少子化が起きるので、持続的な供給力の上昇というのは望めないということになります。したがって、資本と技術進歩に依存する。そうしますと、ある意味、GDPを労働力で割ったいわゆる生産性という指標が重要になってまいります。
 十ページにこの生産性の指標を掲げてございます。これも、実績と私の予測というのを掲げております。私の場合も生産性がかなり二〇一〇年代、二〇年代と上昇するというふうに見ておりました。しかしながら、日本の生産性というのは、労働生産性というのは、どんどん落ちていくということになっております。
 十一ページがこの国際比較ですけれども、これを見ていただきますと、二〇一〇年代以降、日本はG7に比して大きく労働生産性の面で差を付けられている。供給力と言うならば、まずこの点から補強していかなくてはいけないということになります。
 じゃ、よく言われているんですが、労働力と生産性、労働を増やさなきゃいけないんじゃないかという議論があります。その点を少し、オリンピックのメダル数と若年層人口の推移というもの、十二ページで見ていただけるといいかなと思います。
 ここには、若年層の人口、十五歳から三十九歳までの人口が書いてあります。それをオリンピックの年に合わせて書いてあります。大体二〇〇〇年に入ってから一千万人ぐらい減っています。しかしながら、それの到達、まあある意味、オリンピックのメダル数をGDPだと考えれば、到達しているものはどんどん増えていくわけです。つまり、少子化であっても実は達成目標を増やすことができるというのは、日本のアスリートが実際に示していることです。
 じゃ、どうやってこんなことが起きているのか。もちろん、それは選手やコーチが一生懸命頑張ったからということになるわけですけれども、それは昭和の時代だって一生懸命頑張っていた、平成の時代でもそうだったということが言えると思います。
 重要なことは、やはり練習設備が充実している。つまり、設備が外国の人も来るような、外国人も練習に来るような設備が日本にはあった。それから、内外を問わないような優秀な指導体制、根性論ではなくて、データを中心とした指導。それから、日本で日本製品が開発した新しい用具の開発、こういったものですね。これはまさに、生産性を上げる設備投資や、それから技術開発と対応するものなんですね。ですから、もし人口が多ければ、まあインドがむしろメダルをいつも取っていれば、たくさん取っているというようなことになるかと思います。
 それでは、その資本蓄積というのはどうなっているのかと、つまり設備投資というのはどうなっているのかということを十五ページの表で、図で御覧いただきたいと思います。
 左側が先進国の設備投資の推移です。これを、二〇〇〇年を一〇〇として掲げておりますが、これを見ていただきますと、黄色線の日本は最下位ということになっております。もう他の先進国はそれなりに設備投資を行ってきたということです。先ほども言いましたように、実質金利は、設備投資を刺激する要因の一つである実質金利はまだ低いので、まだ金利を上げる余地があるという一つの根拠でございます。
 それでは、政府投資が民間投資、これは投資というのは民間が主体ですが、それを刺激するかということですが、次のページ、十六ページを見ていただきます。
 民間設備投資が青い線で、公的資本形成、これ政府投資ですが、これがオレンジの線になります。これを見ていただきますと、民間投資が低下しているときに政府投資が増えている。ほとんど逆の関係です。ですから、政府投資が民間投資を増やすという関係にはなっておりません。これちょっと、じゃ、政府投資の後に民間投資が増えるかという関係性を調べても、それほどの関係は出てまいりません。むしろ政府の投資というのは、景気が全体が落ち込んだときに下支えをするという役割で政府は使ってきたと私は思っております。
 民間投資で重要なことは、もう少し違う部分、もう少し詳しく考えなきゃいけない。十七ページを御覧ください。
 ここでは、二〇〇〇年代における昨今の重要な投資、研究開発投資、ソフトウェア、それから訓練、これ人材ですね、それから組織改革投資を取り上げております。日本はいずれについてもソフトウェア投資を除いて低いんですけれども、特に注目されるのは、訓練投資や組織改革投資がマイナスになっているということです。こんな国は先進国ではありません。そのことは、ソフトウェアや研究開発投資をするためには人材の育成というのが重要なわけですし、そのための組織の変更も重要なんですが、全くそうした連動性がないわけです。こうした連動性をつくり出すということが実はまず必要なことになります。
 資料の二十ページには、これはOJTといって、生産現場での教育ではなく、いわゆる生産現場を離れた教育投資というのを、企業の教育投資というのを見ていますが、御覧いただけますように、九〇年代の半ばから基本的に下降トレンドを描いております。
 時間の関係もありますので、先ほど申し上げました生産性が上がれば賃金が上がるという問題については、この図に書いておりますが、詳細な説明は割愛させていただきます。
 最後に、政府と日本銀行が何ができるかということで、日本銀行については簡単に申し上げましたので、政府のなすべきことについて申し上げます。
 二十四ページ、これが先ほど申し上げました、いわゆる先ほどの研究開発とソフトウェア投資が全体の投資に占める割合です。これを見ると、実は民間と公的部門の差は歴然であります。ここには教育や医療も入っております、公的部門には。それは余り増えていないということです。したがって、政府部門、公的な部門でのこういう、先ほど挙げたような研究開発やソフトウェア併せた人材投資というのが必要だろうというふうに考えております。
 最後に、最後の表ですが、規制緩和について述べさせていただきます。二十七ページでございます。
 これは、確かに産業というものの振興をしなくてはいけないというのは私も同意見ですが、産業ごとの生産性の集計と実は経済全体の生産性というのは時に乖離いたします。それはなぜかというと、実は生産性の高い産業へと人々やそれから資金が移動していないというケースがあります。それをこの表の真ん中で示しております。
 これを見ていただきますと、二〇二〇年、日本はマイナス〇・二四ということで、産業レベルで頑張っても、さらに経済全体では余りその生産性が上がらないということが起きています。これはコロナ禍のときですので、実は生産性の低い産業も補助金によって維持されていたということがあります。しかしながら、イギリス、アメリカではここの部分がプラスになっています。いわゆる失業も伴いますが、その間の自由な労働の移動によって、その後の生産の、生産性の回復が大きくなっているということです。逆に日本の場合は、二〇二〇年代、これをなかなか解除することができなかったのでゼロ%台の成長になっている。ここを早く規制緩和等によって生産性を促進していかなくてはいけないということになります。
 私からの説明は以上となります。どうも御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 宮川努

日付: 2026-03-11

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会