国民生活・経済に関する調査会

2026-03-11 参議院 全95発言

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会議録情報#0
令和八年三月十一日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 三月十日
    辞任         補欠選任
     星  北斗君     朝日健太郎君
 三月十一日
    辞任         補欠選任
     朝日健太郎君     生稲 晃子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         野上浩太郎君
    理 事
                小林 一大君
                山本佐知子君
                柴  愼一君
                水野 孝一君
                宮崎  勝君
                中条きよし君
                宮出 千慧君
    委 員
                朝日健太郎君
                生稲 晃子君
               いんどう周作君
                上野 通子君
                かまやち敏君
                小林孝一郎君
                泉  房穂君
                小島とも子君
               かごしま彰宏君
                川村 雄大君
                上野ほたる君
                白川 容子君
                尾辻 朋実君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        高嶋 久志君
   参考人
       学習院大学経済
       学部教授     宮川  努君
       東京大学名誉教
       授        吉川  洋君
       神戸大学大学院
       法学研究科教授  大内 伸哉君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済に関する調査
 (「情勢の変化に対応した未来志向の社会の構築」のうち、社会・経済情勢の現状(日本経済の現状)について)
    ─────────────
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野上浩太郎#1
○会長(野上浩太郎君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、星北斗君が委員を辞任され、その補欠として朝日健太郎君が選任されました。
    ─────────────
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野上浩太郎#2
○会長(野上浩太郎君) 国民生活・経済に関する調査を議題といたします。
 本日は、「情勢の変化に対応した未来志向の社会の構築」のうち、「社会・経済情勢の現状」に関し、「日本経済の現状」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 御出席いただいております参考人は、学習院大学経済学部教授宮川努君、東京大学名誉教授吉川洋君及び神戸大学大学院法学研究科教授大内伸哉君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、宮川参考人、吉川参考人、大内参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず宮川参考人からお願いいたします。宮川参考人。
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宮川努#3
○参考人(宮川努君) 学習院大学の宮川でございます。(資料映写)
 本日は、日本経済に関しまして私の説明の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。本日は、日本経済につきまして、その過去、現在、将来どのようになるかということにつきまして私なりの考え方を御説明させていただきたいと思います。
 資料の二ページ目をお開きください。
 私の資料ちょっと多くなっておりますので、まず最初に資料の概要と要旨を御説明させていただきます。そして、その後、図表を中心に、若干資料を飛ばしてまいりますが、図表を中心にその内容についてもう少し詳しく御説明させていただきたいと思います。
 最初は日本経済の長期停滞ということですが、後ほど図で説明いたしますように、私どもの、二十一世紀に入ってからの時点で考えますと、現在の時点では信じられないような経済停滞だったということが言えます。経済には需要サイドと供給サイドに分けて考えることができますが、私は、この原因は供給サイドを軽視してきたことだというふうに考えております。
 それでは、供給サイドというのは一体何なのかということですが、簡単に言えば生産のサイドのことです。特に、この生産サイドを考える場合、GDPを労働投入で割った生産性が非常に重要だというふうに考えられます。
 その生産性ですが、この生産性を伸ばすにはどうすればいいか、これは二〇一〇年代の後半ぐらいから注目をされておりますが、二つに分かれます。一つが資本蓄積であり、もう一つが技術進歩ということになります。この資本蓄積に関しまして、最近では政府投資が民間投資を刺激するといったような議論も見られますが、実は政府投資は過去民間投資を刺激したということは余りなかったということを申し上げたいと思います。やはり、民間投資そのものが自立的に増加することが重要だということになります。
 その中でも重要なのは、デジタル化と人材投資ということになります。これらの投資は関連しておりまして、バランスの良い投資の伸びが必要だと考えられます。そして、人材投資に関しては、企業レベルだけではなくて、教育段階も含めた包括的な人材育成というものが望まれます。
 生産性が上がれば、いわゆる好循環として賃金も上がっていくということが言われていますが、実は生産性と賃金の間には乖離が見られるというふうに、賃金の伸びの間には乖離が見られるというような指摘もございます。
 しかし、これをよく見ますと、二〇一〇年代の半ばぐらいまでは失業率がかなり高かった。日本のいわゆる完全雇用に近い失業率というのは大体三%程度ですけれども、これを上回る状態が続いていて、大体三%程度になったのが二〇一〇年代の半ばぐらいです。ここからの実質賃金の伸びとそれから生産性の伸びは、それほど乖離はしていない。乖離している部分は、やはりそこから起きた円安ではないかというふうに私は考えている、円安によって所得が流出していたという部分が影響しているというふうに考えております。
 最後に、政府や日本銀行は何ができるのかということですが、私は、実質利子率、名目の利子率から物価上昇率を引いた実質利子率はまだ低い状態にあるので、利上げの余地はあると考えております。
 財政支出ですが、財政支出、先ほど、政府投資は民間投資を刺激していないということですが、個別項目で見れば、まだ公的部門のデジタル化というのが民間部門に比べてかなり遅れております。これは推進する必要があると考えております。産業別に考えると、十七部門というのが考えられますが、十七部門は、それをもし日本単独でやるとしたら多過ぎて、やはり海外の知見を利用する必要があるんだろうと。そこは日本独自でやる部分、それから、日本と親しい国との技術協力でやる部分というものを分けて行うべきだろうと。
 それから最後に、生産要素と書いてございますが、資本や労働、生産に必要なものの移動というものがやはり十分でないということですので、そのための規制緩和ということは必要だということを述べたいと思います。
 それでは、各項目、少しずつ詳しく御説明させていただきます。飛んでしまう部分もありますが、そこはお許しください。
 日本経済の実質GDP成長率は、一九八〇年代、四%台でございました。これが九〇年代、二%台、二〇〇〇年代、一%台、二〇一〇年代以降は〇%台ということになっております。
 ここから少し資料を飛ばさせていただきます。資料の五ページ目の右を、これをほぼグラフで表したものが右のグラフです。これは、青い棒グラフでGDP統計の伸び率、それから、実は私が二〇〇〇年代、日本経済研究センターの研究員もやっておりましたときの長期予測値、これが二〇二五年までの予測でしたから、ほぼ現在と合うものになっております。これの予測値を比べたものであります。
 御覧のように、先ほど申し上げましたように、日本のGDP成長率はどんどん下がっていくわけですが、私の予測では、当初は不良債権の影響から成長率がそれほど伸びないと思っていたものの、後ほど、その二〇〇五年、二〇〇〇年代の後半以降は、オレンジのラインにありますように、ほぼ二%台の成長に戻るだろうと考えていました。これは、その当時、世界金融危機やコロナ禍というものを考えなかったせいでもありますけれども、それにしても、当初の、当時の予測、これは私だけの予測ではなく、多くのエコノミストが当初予測していたのとそれほど変わりません。そういう意味で、ここまで成長率が落ちる、また、他の先進国とも比べても成長率が低いということは予測できなかったというふうに考えられます。
 その一つの原因ですが、マクロ経済は非常に調子が悪かったんですが、ミクロの企業というのは、ある意味、収益が好調です。これは、海外に進出できた企業が非常に好収益を上げているという意味で、マクロの状況とミクロの企業との乖離がこの際起きてきたということです。
 結果的に、私の予測どおりであれば、この一番下に書いてございますように、二〇二五年には既に名目GDPは八百兆円を超えていたということになります。ですから、それを、今現在名目GDP六百兆円台ですから、想像を絶するような、当時、二〇〇〇年代の初めに六百兆円でとどまるということであれば、相当いろいろ議論があったかと思います。
 それでは、今までどういう政策を打ってきたのかということを七ページの総需要と総供給という形で御説明させていただきたいと思います。
 大体のエコノミストは、こういう右下がりの総需要曲線と右上がりの総供給曲線で説明をしております。七ページの左側、当初、特にアベノミクスですけれども、アベノミクスで行われていたのは異次元の金融緩和で、総需要曲線を右側にシフトして、インフレが起きてもGDPを増加させると、こういう考え方だったわけです。ですから、総供給のところは余り概念に入っていなかった。
 ところが、コロナ禍の後、またいろんな、ウクライナへのロシアの軍事侵攻等もありまして、供給サイドの部分というのが弱体化してしまい、だから、右上がりではなくて、需要を増やしてもなかなか供給サイドがそれに反応できないというような状態が起きた。結局、物価だけが上がってGDPが増えないというような状況がここ二〇二〇年代に起きたということであります。
 今、現政権が考えられていることは、八ページの右側の図だろうと思います。これは、総供給を増やす、で、総供給を増やすと同時に総需要も、まあ総供給を増やす時点で総需要も同時に増えていくわけですが、それが起きるということです。それによって、物価の上昇は弱くなりながらもGDPが増えるということを想定している。垂直だった総供給を、頑張って設備を増やしていくということだったと思います。
 この問題点ですが、同時に総需要曲線と、総需要と総供給が増えればいいんですけれども、まず総需要側が増えるというのが通常でございまして、したがって、総供給が増える前まではかなりのインフレを覚悟しなくてはいけないだろうということになります。それから、過大な投資をすれば逆に、例えばAIのための電力投資といったようなことがあれば、実はそのための附帯費用によってGDPが停滞する、まだ停滞が長く続くということも考えられます。
 その供給側を強化するというのはどういうことかということなんですが、それは、ちょっと省きますけれども、労働力、資本量、技術進歩、この三つの要因を増加させることになるわけですが、労働力は、やはり少子化が起きるので、持続的な供給力の上昇というのは望めないということになります。したがって、資本と技術進歩に依存する。そうしますと、ある意味、GDPを労働力で割ったいわゆる生産性という指標が重要になってまいります。
 十ページにこの生産性の指標を掲げてございます。これも、実績と私の予測というのを掲げております。私の場合も生産性がかなり二〇一〇年代、二〇年代と上昇するというふうに見ておりました。しかしながら、日本の生産性というのは、労働生産性というのは、どんどん落ちていくということになっております。
 十一ページがこの国際比較ですけれども、これを見ていただきますと、二〇一〇年代以降、日本はG7に比して大きく労働生産性の面で差を付けられている。供給力と言うならば、まずこの点から補強していかなくてはいけないということになります。
 じゃ、よく言われているんですが、労働力と生産性、労働を増やさなきゃいけないんじゃないかという議論があります。その点を少し、オリンピックのメダル数と若年層人口の推移というもの、十二ページで見ていただけるといいかなと思います。
 ここには、若年層の人口、十五歳から三十九歳までの人口が書いてあります。それをオリンピックの年に合わせて書いてあります。大体二〇〇〇年に入ってから一千万人ぐらい減っています。しかしながら、それの到達、まあある意味、オリンピックのメダル数をGDPだと考えれば、到達しているものはどんどん増えていくわけです。つまり、少子化であっても実は達成目標を増やすことができるというのは、日本のアスリートが実際に示していることです。
 じゃ、どうやってこんなことが起きているのか。もちろん、それは選手やコーチが一生懸命頑張ったからということになるわけですけれども、それは昭和の時代だって一生懸命頑張っていた、平成の時代でもそうだったということが言えると思います。
 重要なことは、やはり練習設備が充実している。つまり、設備が外国の人も来るような、外国人も練習に来るような設備が日本にはあった。それから、内外を問わないような優秀な指導体制、根性論ではなくて、データを中心とした指導。それから、日本で日本製品が開発した新しい用具の開発、こういったものですね。これはまさに、生産性を上げる設備投資や、それから技術開発と対応するものなんですね。ですから、もし人口が多ければ、まあインドがむしろメダルをいつも取っていれば、たくさん取っているというようなことになるかと思います。
 それでは、その資本蓄積というのはどうなっているのかと、つまり設備投資というのはどうなっているのかということを十五ページの表で、図で御覧いただきたいと思います。
 左側が先進国の設備投資の推移です。これを、二〇〇〇年を一〇〇として掲げておりますが、これを見ていただきますと、黄色線の日本は最下位ということになっております。もう他の先進国はそれなりに設備投資を行ってきたということです。先ほども言いましたように、実質金利は、設備投資を刺激する要因の一つである実質金利はまだ低いので、まだ金利を上げる余地があるという一つの根拠でございます。
 それでは、政府投資が民間投資、これは投資というのは民間が主体ですが、それを刺激するかということですが、次のページ、十六ページを見ていただきます。
 民間設備投資が青い線で、公的資本形成、これ政府投資ですが、これがオレンジの線になります。これを見ていただきますと、民間投資が低下しているときに政府投資が増えている。ほとんど逆の関係です。ですから、政府投資が民間投資を増やすという関係にはなっておりません。これちょっと、じゃ、政府投資の後に民間投資が増えるかという関係性を調べても、それほどの関係は出てまいりません。むしろ政府の投資というのは、景気が全体が落ち込んだときに下支えをするという役割で政府は使ってきたと私は思っております。
 民間投資で重要なことは、もう少し違う部分、もう少し詳しく考えなきゃいけない。十七ページを御覧ください。
 ここでは、二〇〇〇年代における昨今の重要な投資、研究開発投資、ソフトウェア、それから訓練、これ人材ですね、それから組織改革投資を取り上げております。日本はいずれについてもソフトウェア投資を除いて低いんですけれども、特に注目されるのは、訓練投資や組織改革投資がマイナスになっているということです。こんな国は先進国ではありません。そのことは、ソフトウェアや研究開発投資をするためには人材の育成というのが重要なわけですし、そのための組織の変更も重要なんですが、全くそうした連動性がないわけです。こうした連動性をつくり出すということが実はまず必要なことになります。
 資料の二十ページには、これはOJTといって、生産現場での教育ではなく、いわゆる生産現場を離れた教育投資というのを、企業の教育投資というのを見ていますが、御覧いただけますように、九〇年代の半ばから基本的に下降トレンドを描いております。
 時間の関係もありますので、先ほど申し上げました生産性が上がれば賃金が上がるという問題については、この図に書いておりますが、詳細な説明は割愛させていただきます。
 最後に、政府と日本銀行が何ができるかということで、日本銀行については簡単に申し上げましたので、政府のなすべきことについて申し上げます。
 二十四ページ、これが先ほど申し上げました、いわゆる先ほどの研究開発とソフトウェア投資が全体の投資に占める割合です。これを見ると、実は民間と公的部門の差は歴然であります。ここには教育や医療も入っております、公的部門には。それは余り増えていないということです。したがって、政府部門、公的な部門でのこういう、先ほど挙げたような研究開発やソフトウェア併せた人材投資というのが必要だろうというふうに考えております。
 最後に、最後の表ですが、規制緩和について述べさせていただきます。二十七ページでございます。
 これは、確かに産業というものの振興をしなくてはいけないというのは私も同意見ですが、産業ごとの生産性の集計と実は経済全体の生産性というのは時に乖離いたします。それはなぜかというと、実は生産性の高い産業へと人々やそれから資金が移動していないというケースがあります。それをこの表の真ん中で示しております。
 これを見ていただきますと、二〇二〇年、日本はマイナス〇・二四ということで、産業レベルで頑張っても、さらに経済全体では余りその生産性が上がらないということが起きています。これはコロナ禍のときですので、実は生産性の低い産業も補助金によって維持されていたということがあります。しかしながら、イギリス、アメリカではここの部分がプラスになっています。いわゆる失業も伴いますが、その間の自由な労働の移動によって、その後の生産の、生産性の回復が大きくなっているということです。逆に日本の場合は、二〇二〇年代、これをなかなか解除することができなかったのでゼロ%台の成長になっている。ここを早く規制緩和等によって生産性を促進していかなくてはいけないということになります。
 私からの説明は以上となります。どうも御清聴ありがとうございました。
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野上浩太郎#4
○会長(野上浩太郎君) ありがとうございました。
 それでは次に、吉川参考人にお願いいたします。吉川参考人。
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吉川洋#5
○参考人(吉川洋君) 吉川でございます。こうした機会をいただきまして、大変光栄に存じております。(資料映写)
 二十分という時間制限がありますので、画面あるいはお手元の資料を見ていただきながら、私からは幾つかファクトを皆様方に見ていただきながら問題提起をさせていただくと、そういうことでいければと思います。
 宮川先生のお話にもありましたが、日本経済の凋落ぶりといいますか、は大変厳しいものがあると。これはいろんな指標があるわけですが、一つ分かりやすいのは、見ていただいている一人当たりの、名目ですが、GDPのランキングです。これは一人当たりですから、人口減少とは関係ない。むしろ、人口が減ればその限りでは上がる。つまり、ケーキを四人で分けるんではなくて、同じケーキを三人で分ければ一人当たりの取り分が増えると、こういう理屈で、一人当たりのGDPのランキングだということに注意していただいた上で、二〇〇〇年というのは、バブルが九〇年代初頭に崩壊してから十年はたっていなくても十年近くたっていたわけですから、ある意味、この二〇〇〇年時点でのランキングというのは若干、驚きと言うとちょっと語弊もありますが、いずれにしても、見ていただいているとおり、日本は二〇〇〇年時点では世界の三位、スイス、米国よりは高いと。それが、二〇一〇年に十九位、二四年に四十位と、そういう形でランクダウンしてきたというわけです。そうした指標はたくさんあります。
 ランクダウンの話のついでと言うとあれですが、四ページで見ていただいているのは世界の港湾のコンテナ取扱個数ランキングと。これは皆様方のお仕事にも直に関係しているんではないかと思いますが、八〇年を取りますと、ランキング四位に神戸港が入っていて、二十位までに横浜、東京、三港がランクインしていた。あとはもう見ていただけばお分かりになるとおりで、〇六年にはトップトゥエンティーにはゼロ、二十三位の東京港が日本では一番と、二一年になりますとトップ四十位までにもう日本は一つも入ってないという、そういうことだと思うんですね。
 一つコメントしますと、〇六年、二一年と圧倒的に中国の港湾が伸びている。これはもう理由は明白で説明する必要ないと思うんですが、ただ、ほかの国の港湾もかなりハイランクにいるところがあると。例えば、七位の釜山、韓国。ちなみに、この釜山が現在日本のハブ港になっているわけですよね。日本にはハブの機能を担う港、これは一港もないわけで、基本的に釜山に依存していると。それから、オランダのロッテルダム十位、ベルギー、米国のロスも十六位くらいになっていると。ですから、それなりにいわゆる先進国の港も、中国はちょっと別格とした上で、かなり上位に入っているわけですが、残念ながら日本は御覧のとおり。
 これについては、指摘したいことは、二十何年、問題が言われてきたわけです、スーパー港湾。少なくとも、私の知識、理解は古いかもしれませんが、二十年くらい前でも、深さが十七メートルと当時は言われていたんですが、十七メートルくらいの大型のコンテナ船が着く港というのがなくなっちゃっていると。スーパー港湾という言い方でですね。
 個別の話になってしまいますが、民主党政権のときのたしか前原国交大臣が、前原先生が国交大臣やられたことあると思うんですが、大臣就任のときに、八ツ場ダムの問題についてどうというコメントと併せて、スーパー港湾が我が国ではなくなりつつあるというようなことを大臣就任時に言われたというふうに私は記憶しています。
 現在どうなっているかというと、現政権の下で成長戦略会議でしょうか、重点分野十七と、先ほど宮川先生の方から十七というのはちょっと多いんじゃないかと、普通の感覚で言えば重点が十七あるというのはどうなんだというのは私もそう思いますが、そういう中で、この港湾ロジスティクスというのが十七分の一で入っているんですよね。
 それはそれで分かるんですが、繰り返しになりますが、二十何年この問題、御覧になっていただいている表で、こういう問題があると国を挙げて言ってきたんですが、残念ながらこれまでは駄目だったと、成果なしと言わざるを得ない状況で、今回この重点分野の下でどういう新しいチャレンジが日本としてできるのか、その見通しはどうなのか、この点はちょっときっちり考えていただきたいというふうに思います。
 それで、とにかく日本経済のランクダウンが続く中で成長の基は何なのかというと、これは宮川先生の御説明の中には言葉は出なかったかもしれませんが、イノベーションなんですね。これはもう皆さんよく御存じのとおりで、シュンペーターという経済学者が言い出し、右側の写真は、余談になりますが、シュンペーターというのは大変日本を好きであってくれた経済学者で、日本にも来てかなり長期滞在したというわけですが、イノベーションということに尽きるわけです。
 それで、問題提起ですが、日本では投資が足りないというのは宮川先生のプレゼンのとおりで、私も全く同感なんですが、政府の役割はどこにあるのか、これは皆様方のお仕事で、是非ともよく考えていただきたい。我々の住んでいる経済、資本主義経済、自由主義経済の主役は民間の企業なんですね。投資という場合でも圧倒的に不足していると、基本的には民間企業による民間の投資が不足していると。このことはもう疑いない。では、政府はどういう役割を果たせるのか。繰り返しになりますが、そこのところは大いに議論を詰める必要があると思います。
 もちろん、公共投資というのは、これはまた別の役割として、これはこれではっきりあるわけで、先ほどの港湾もそうですし、ただ、人口も減ってきますし、皆さんもよく御存じのとおり、今後、日本では更新投資の役割というのが非常に大きくなるわけですね。これは偶然でないんですよ。
 というのは、私のようなビンテージだとまさに少年としてそれを見ていたわけですが、昔の一九六四年の東京オリンピックの前に、日本では今我々が持っているインフラストラクチャー、社会資本が整備されたわけですよ。ですから、ざっくり一九六〇年と仮に呼んでみると、現在六十六年目に入ったというわけで、約六十五年経過したわけですね。
 皆さんも御存じかと思いますが、偶然、今朝のニュースで、大阪で何か水道管の大きな事故があった。これは昨年ですよね、埼玉県で大きな事故があった。あるいは、京都市内でも去年あったように記憶していますが、そうした事例はもうたくさんある。これは、繰り返しになりますが、六十五年目を迎えた日本のインフラの更新時期なわけですから、こうした様々な水道その他、道路、事故というのは偶発的なものではない。したがって、この更新投資をやらなければいけない。限られたリソースの中で、では、新しいところは一体何をやるべきなのか、これは皆様方が是非真剣に考えていただければと思います。
 イノベーションというわけですが、イノベーションにはいろんなものがあります。ただ、大小様々あるわけですが、やはり私はキーになるのはプロダクトイノベーションだというふうに考えています。新しいものが出てくる、それによって成長が生まれ、しかし、やがてそれが天井にぶつかって減速する、そこでまた新しいものが生まれると。
 一つ具体的なイメージを持っていただくために、ここでは私は割に面白いと思っている例なんですが、紙おむつの例と。
 少し古くなっていて恐縮なんですが、紙おむつというものがあって、それは昔は赤ちゃん用だったわけですよね、でスタートしたんですが、高齢化社会の中でそれがやがて高齢者用に変わっていくと。まさに少子高齢化を反映して、少子化の中で赤ちゃんの数が減っていくわけですから、赤ちゃん用のおむつは頭打ちになる。しかし、この業界では高齢者用のおむつというのを考え出して、それが需要を牽引したと。
 これは非常に面白いストーリーが後日談もたくさんあって、初めは日本以外の例えばアジアとか中国、おむつに紙おむつを使うというほど所得水準が高くなかったわけですが、だんだん御存じのとおり東南アジアの国々も経済発展して、紙おむつというものがアフォーダブルになってきたということで輸出をするようになり、さらに、現地生産、典型的には例えばベトナムとかそういうところでも、中国もそうですが、そういうようなことまで出てきています。
 一点、ここで興味深いというのは、これは技術的にはほとんど、高齢者用の紙おむつというのはほとんど何も、どういうんでしょう、技術進歩というものはないわけですよね。もちろん面積が違うだろうというのはそのとおりなんですが。しかし、赤ちゃん用の紙おむつを生産していれば、高齢者用の紙おむつというのは形態とか若干工夫というのは当然あるんだろうとは思いますが、ブレークスルー的なハードの技術というのはなくて、やっぱりアイデアなんですよね。赤ちゃん用のおむつには限界があると、高齢者のおむつというのはどうなのかという形。
 私は、偶然ですが、これをやはり考案した会社の方と話をする機会があった。その方の話では、会社の中でも三度目で通ったというふうに聞きました。つまり、一度目にそれを提案したときには、おまえ真面目に仕事しろと言われたと。二度目は、かなり真剣に考えたけれども、リスクは取れるのかという話になった。三度目でようやくそれが通った。ここら辺が日本の企業あるいは日本社会全体の一つの問題かもしれません。
 時間も限られていますので、次は少しマクロでこのことを見たいと思うんですが、細かいことは後で質疑があればあれですが、要はメッセージとしては、いろんなプロダクト、いろんな部門、いろんなセクターが経済の中にあるわけですが、我々の頭の中では当然、全てが比例的に伸びるという経済成長というのももちろん理屈の上では頭の中で考えられる、あるいは想像できる。全てのもの、全ての部門、セクターが例えば五%成長すると、しかし現実の経済ではそういうことはないということです。必ず中ががらがら変わっていくから経済成長というのはあると。
 イノベーションというのは、シュンペーターが例のクリエーティブディストラクション、創造的破壊というややこわもての表現言ったとおり、伸びるもの、伸びるセクターの傍らには必ず消えていくもの、消えていくセクターというものもあるというわけです。
 そこで、どれくらい経済の中で構造変化が起きているのかという指標を作ってみて、それと経済成長の関係というのをマクロで見ると、経済成長が縦軸、横軸にどれだけがらがら変わっているかというのを見ると、右上がりの関係があると。右上が高度成長期ですが、高度成長期は高い成長率の下で中身ががらがら変わっていたと。しかし、だんだん左下の方に落ちてくるというようなことが見られると。それは、一つの産業の中でも同じようなことが見られると。
 それを押さえた上で日本の労働生産性というものについて改めて見ると、これは宮川先生が出された図と本質的に同じですけれども、日本では非常に伸びが悪いんですね。
 これを産業別に見てみました。これと同時に、これは労働生産性の伸び率が、まあ九年ですが、約十年ごとにどれくらい伸びているか、あるいは減っているか。落ちている場合もあるわけですが、産業別に見る。と同時に、働いている人の就業者のシェアが同じ産業別に十年ごとにどれくらい伸びているか減っているか。これは、縦軸、パーセントですが、就業者がある産業で前年と比べて、あるいは前の十年と比べて何%伸びているかというのではなくて、シェアが十年間で何%か。つまり、ある産業で働いている人のシェアが十年前には仮に五%だったと、それが八%にシェアが変わっていれば、上昇していれば、八引く五で三%という形で縦軸で測って見ているというパーセントです。
 いろいろ見て取れますが、もうよく御存じのとおり、一番左が農林水産業ですが、働いている人はずっと三十年くらい、十年ごとずっと減り続けていると。左から三つ目が製造業ですが、直近の十年ですと減り方は落ちているといっても、基本的には製造業減ってきていると。ずうっと右側の方に行くと、いわゆる三次産業、サービス産業になっていくわけですが、御存じのとおり、物からサービスへという形で変わってきていると。
 時間も限られていますので、注目したいのは左から二つ目ですか、ここでは健康衛生・社会事業となっているのが、ほかの表現で言えば医療、介護の分野ということになります。それともう一つ、情報産業、情報通信業というのが横軸の真ん中辺りにあるかと思います。
 問題は、先ほど見たセクター別、産業別の労働生産性の変化と就業者のシェアを十年ごとに張り合わせてみる。いいパターンというのは、労働生産性の伸びが高いセクターに人々が移っていっているというのが、俗の表現で言えば勝ちパターンと。これは宮川先生も指摘されていたかと思いますが、残念ながら日本ではそういうふうになっていないと。
 つまり、この十八ページ、縦軸の説明が抜けていて恐縮ですが、縦軸の方が就業者数のシェアの変化、横軸が労働生産性の変化率ですから、ざっくり、これが右上がりになっていると、労働生産性の伸び率が高いところはシェアが伸びているというふうになるわけですが、残念ながらそういうふうになっていないと。注目する保健衛生、一番上にあるところは、就業者のシェアは高まっていると。つまり、より多くの人たちが医療、介護で働いていると。そこはいいんですけれども、労働生産性の伸びはマイナスになっていると。そういうようなことです。
 時間が限られていますので後で質疑のところでお答えするとして、最後に、またやや話は飛ぶかもしれませんが、そうした中で、今、日本経済で、一つ経済としてポジティブなもの、これはもう先生方よく御存じのとおり、現在ではオーバーツーリズムの問題まで生まれているという、そういう副作用もあるわけですけれども、とはいえ、インバウンドの、海外からの旅行者が増えているというのは日本経済にとっては全体としてはプラスだと私は考えていますが。
 この図は、二つ色がありますが、上は日本人の出国ということなんで、下を見ていただけばいいわけですが、非常に伸びていると。コロナで落ちたということはあっても、その後も伸びているわけですが、これはやはり、政府が役割を果たしたんですよね。つまり、国会での議決等ももちろんあったということだと思いますが、ビザ要件や何かの改革や何かを進めて、そういう形で統計も整備したと。
 ただ、最後に言いたいことは、お金はほとんど使っていないんですよ、これ。ですから、政府部門においても、お金を使うなとまではもちろん言わないわけなんですが、お金より前に、やっぱりアイデアの方がパブリックセクターにも求められるんではないかと思います。
 どうも、時間少し超過して申し訳ありませんでした。私からの説明は以上です。
 御清聴ありがとうございました。
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野上浩太郎#6
○会長(野上浩太郎君) ありがとうございました。
 それでは次に、大内参考人にお願いいたします。大内参考人。
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大内伸哉#7
○参考人(大内伸哉君) 今日は、このような場を与えていただきまして、大変ありがとうございます。非常に光栄に感じております。(資料映写)
 私は、法律を専攻しておりまして、労働法という分野を専門にやっております。日頃は、大学では法の解釈とか判例とかそういうものを扱っておりますが、研究テーマとしては割と、かなりこの十年、十五年辺りは労働社会の変化というものについて関心を持って、未来志向、今日のテーマが「情勢の変化に対応した未来志向の社会の構築」と、こういうふうになっておりまして、まさに私が未来志向の社会というものを労働の観点からこれまで考えてきたことがございますので、その点について、限られた時間ではございますけれども、少しお話をさせていただければと思います。
 まず、今日与えられたテーマ自身は新しい働き方ということですので、それについて少し、まず、新しい働き方というのは一体どういうものなんだろうということで、スライドの一ページ目に、これは、ざあっと、実は生成AIに新しい働き方というキーワードで何か十五、六のワードを出してくれというふうに頼むと、多少私が付け加えたり減らしたりもしたんですけど、こんなものがざあっと挙がってまいりました。
 この辺が新しい動きなのかなということなんですけれども、新しいという以上は、その新しいの反対語としてあるのは古い、伝統的というものになるんですけれども、古いとか伝統的な働き方って一体じゃ何なのかということをまずは確認しておかなければ、新しさもよく分からないのかなということですね。
 それについては次のスライドに書いております。実はこれ二つあるのかなと思います。伝統的な働き方という、新しい働き方と対置される伝統的な働き方は二つに分けて考えた方がいいだろうと。
 一つ目は、法的な観点で出てくるもので、工場労働的な働き方。これは、労働基準法とか労働法の基本的な法律において前提とされている実は働き方なんですけれども、これが伝統的な働き方であって、特徴としては、ここに書いていますように、時間的・場所的拘束性があると。工場にみんな集まって、工場の稼働時間に合わせて働くということですよね。それから、上長の指揮監督がしっかりあると。工場長がちゃんと見ていて勝手なことはできないということになりますし、また時間に対する報酬という要素が強いと。何時間ここで働いたからこれだけの給料という形になりやすいということであります。
 これが伝統的な働き方で、こういうのを基本的な働き方として法制度というのは、あるいは法政策は、労働法政策は構築されてきたというふうに言うことができるわけですけれども、これがどうもさっき挙げたような新しい働き方とは不適合になっているのではないかというのが今日のまず一つ目の問題です。法制度上の問題。
 もう一つは、これ日本特有の問題かもしれないと言えるんですけれども、日本型雇用システムにおける正社員的な働き方というのがまた別途にあって、これと合わないような働き方も出てきている。これも新しい働き方なのかなという気がいたします。
 日本型雇用システムにおける正社員的な働き方の特徴というのは、ここに挙げていますような安定的な雇用、かつては終身雇用と言いましたが、終身ってちょっと大げさなんで長期雇用と言った方がいいのかもしれませんが、そういう長期雇用や、あるいは処遇における年功型です。もちろんこれはどんどん変化しつつあるとはいえ、まだこれが基本的なモデルになっていると。
 他方、こういう安定の代償として広範な人事権を企業が持っていて、いつでもどこでも何でもやるというような、残業はあるし、転勤もあるし、そして職種転換もどんどんされるというような働き方ですね。企業の命令でこういうことをやらなきゃいけないというような働き方というふうになっていて、これは正社員的な働き方。
 これは、だから安定とそれとある種のきつい働き方というのがセットになったこういう伝統的な、これもある種日本では伝統的な働き方で、これが新しい働き方とは不整合とまではいかないけれども、一生懸命この両立を今模索しているところなのかなということです。
 日本型雇用システムのこの特徴というのは、別に法律がこういうシステムを設けろということをどこにも書いていないわけでありまして、言わば自然発生的に生まれてきたものであるということなので、基本的に企業人事の問題なんだけれども、こういうものと新しい働き方が合わなくなってきているということで、この二つの側面があるということをまずは確認しておきたかったわけであります。
 次のスライドに行きます。
 新しい働き方、先ほど冒頭のスライドで挙げたようないろんな働き方は、実は多くはデジタル技術の影響ということになるのかなというふうに思います。
 ここで、特に分かりやすくするために二つ、ICT、情報通信技術の発達と、AIですね、人工知能の発達というのを二つ挙げておりますが、ICTの発達ということがもたらしたこととしては、労働者を場所的な制約から解放していくということになり、これは同時にかなりの程度時間的な制約からの解放にもつながっているということなわけです。どうしてこういうことになるかというと、作業内容がデジタル情報として処理できるようになって、人が同じ場所に集まらなくても仕事ができるようになってきたということですね。テレワーク、リモートワークというのがその具体的な形になってきますけれども、これはやはり大きなことであって、工場労働とは全く違うことになるわけです。
 それから、最近の話としてはAIでありまして、これは能力的制約からの解放というふうに書いておりますが、人が行っていた身体的作業からの解放というのは産業ロボットとかロボットの発達で既にある程度先行しておりますが、さらにそれが知的な作業にもどんどん及んできているということです。
 AIは当初、知的作業をやるといってもそれほど創造的なことはできないと言われていましたが、最近の生成AIの発達というのはもう目をみはるものでありまして、これ抜きにはもう仕事ができないような状況にもなりつつあるというぐらいでありまして、知的作業の一部と書いておりますが、かなりの部分を代替、補完できるようになってきているというのが現状であって、こういうものが新しい働き方の背景にあると。生成AIまでは行くとかなりですけど、少なくともそこまで行く前の段階でも、AIの発達段階からでも相当人々の働き方に影響を及ぼしている可能性があるということであります。
 次のスライド行きます。
 こういう新しい働き方、まあ技術の問題なんですが、もう少しこれがどういうふうに具体的にその現場への影響を及ぼしているのかというのを考えていきますと、こういうことなんだろうということです。
 労働というのは、言うまでもないことですけれども、いろんな人が分業して協働していくということであって、そういう形で生産をしてきたということなわけですけれども、技術革新の発達、とりわけ産業革命以降、いわゆる第一次産業革命以降は機械がこの分業の主人公に、分業において重要な役割を果たすようになってきたわけです。
 第一次産業革命というのは人間と機械との分業・協働関係を大きく変えたわけですけれども、それ以降も技術革新は常にあって、そのたびに分業の形態という、分業、協働の形態は変わってきたということはあるわけです。この辺まではある程度みんな慣れている話なわけですよね。どんどんだからスキルアップしていって、新しい技術に対応する形で対応するような分業・協働関係を築き上げていくということを企業はやってきて、労働者もそれに付いてきたと。
 ところが、この第四次産業革命と言われるこのデジタル革命が出てきたときには、この機械の、その分業における機械の役割が急速に、この急速というのが大きいポイントなんですが、そして、著しく大きく拡大していくということになってきたというのが一つのポイントです。技術革新はこれまでもずっとあったわけでありまして、それが何か、何が新しいのかということになるんですけれども、恐らくこのスピード感とそのスピード、短期間で急速に大きく広がっていくというところがポイントであって、これが社会に混乱を、あるいは不安をもたらす原因になってきているわけであります。
 ここでは、これはバツ、赤印はバツと書いて、しているんですけれども、これで人間のやる領域が減ってくるよねという話で、AI代替によるリストラが心配だという議論はもちろんあって、それは、その議論はそれなりに意味があると思うんですけれども、これはしかし、言い方を変えると、人間がやらなくていい領域が増えてきているという言い方もできるわけですね。これ言い方の問題ではあるんだけど、これはやっぱり重要でありまして、そういうポジティブに見ていくということもできるんだろうということです。
 そういう大きな流れの中で、新しい働き方として、この人間と機械の分業関係の違いは新しい働き方として徐々に現れてきているということですが、さらに、その特徴を見ていくと、私は個人の価値観に基づく選択の幅が拡大してきているのかなと。時間的な選択、場所的な選択、これはテレワークですよね。それから契約ですね、さっき週休三日制というのを挙げていましたけれども、そういうもの。そして、キャリアの選択ですね、キャリア自律性とか、こういういろんな選択の幅がどんどん広がってきているというのが新しい働き方の特徴で、それを支えているのがデジタル技術かなというふうに思います。
 しかし、これは個人の価値観が多様化しても、あるいはそれが技術的に発達しても、企業側が受け入れなければしようがないということもありますが、企業側も人材不足の中では結局その個人の多様なニーズに合わせていかなければしようがないということがあって、その辺が今働き方の多様化という形で具体的に現れてきているというふうにも考えることができると思います。
 こういうような新しい働き方が出てきたときに、労働政策、労働法にはどういう課題を突き付けるのかというのがまず法制度の課題ということなんですが、結論としては、個人の支援にフォーカスをというふうに書いております。この支援というのが一つ重要なワードでありまして、保護ではなくて支援ということなんですね。しかも個人と書いているんですけれども。
 労働法というのは、実は労働者というのは弱い存在で交渉力も低く、情報弱者であって、情報と交渉力の点で弱者であって、労働者というその集団を保護していかなきゃならないという使命の下に展開してきたということがあるわけでありまして、この個人を尊重して支援していくというのは、かなり発想というか大きく変わるわけなんですけれども、そっちに行かなきゃならないだろうと。
 なぜかということを下に書いておりますが、まず、さっき確認したような多様化の動きに対して、例えば現在の労働法では労働者か労働者じゃないかという二分法になっているわけなんですけれども、これ労働者概念の問題として、例えばギグワーカーの労働者性とかいう形で具体的に問題に、裁判にもなったりしているわけですけれども、この二分法で本当にいいんだろうかということですね。いろんな多様な働き方が出てくるときにそれを、その線を途中で引いて、あんたはもうこれから労働者、あなたは非労働者と分けて、それで対応していくと。労働者になれば保護ががっちりあって、非労働者になると全くないと。全くと言うと言い過ぎなんですが、そういう保護の少ない状態になってしまうということでよいのかと。
 あるいは、労働時間の問題も最近話題になっていますけれども、労働時間の概念というのは指揮命令下、指揮監督下にあるということなんですけれども、そういう指揮命令下という概念自身がまさに工場労働にぴったりなものでありまして、そういうのとは違う働き方が出てきているときに、労働時間かどうかという判断における指揮命令下基準というので果たしていいのかなんというような形で問題が出てきているわけであります。
 そもそも従来の支配従属構造、工場労働モデルですね、企業とその下で従属的に働く労働者というモデルを生み出したのは、そういう労働法の基本となるモデルを生み出したのは第一次産業革命の技術環境だったと。これは先ほど申しましたけれども、これがデジタル化で変容しているわけです。第四次産業革命は新たな技術環境を生み出していると。
 言いたいことは、技術環境、元々の労働法は従来の技術環境の下に対応してできたものなんだと。新しい技術環境が出てくれば新しい労働法が必要だろうと、こういうこと、新しい労働法と言うかどうかはともかく、新しい法制度、法政策が必要だろうと、こういうことなわけです。これについて、ちょっと後で労働時間規制の分野を例に挙げてお話をしたいと思っておりますが。
 もう一つ、さっき日本型雇用との関係で企業人事の問題というふうに言いましたけれども、企業人事は今一生懸命新しい働き方に対応しようと頑張っているのかもしれないんだけれども、実はこれは相当大変ではないのかというふうに考えております。というのは、技術革新の急速な展開によって、ここに書いていますように、安定雇用の前提基盤が弱体化しているのではないかということです。
 これ、もう少し言いますと、日本型雇用というのは、結局、長期的なスパンで人材を育て上げていくという、しっかり若い頃に抱え込んで長い期間雇用を保障して本人のスキルアップをしていくと、それによって企業に貢献していくと、そういうモデルなんですね。だから、長期雇用を保障しますとか、あるいは一生懸命頑張れば賃金が上がっていきますよというような形、あるいは昇進していきますよというような年功型というものがあった。これが日本型雇用というものなわけですけれども、この技術革新、先ほど、急速にかつ拡大していくということで、どんどん企業の中に今後デジタル化が進んでいくというふうに考えていくならば、企業が長期的なスパンで人材育成していくことが果たしてできるんだろうかというのが今の問題ということになります。
 こういう現実的に考えていくと、企業がそういうふうに安定的な雇用を保障していくということが難しくなるだろうと。そのことの意味することは、実は日本の企業というのは、労働者、やっぱり正社員ですね、とその家族に対する生活保障というのをずっとやってきたという面があるわけですね。雇用の保障ということはまさにそれの一番大きなポイントです。しかし、それが縮小していくということになるのではないかということです。
 そうすると、一体どうなるのか。いつまでも企業に頑張れというのは、もちろんそういう考え方もありますが、むしろ失業や貧困への対応というのは、本来は政府が社会政策として担うべきものであるというふうなのが現実的な発想で、そのためにはセーフティーネットをもう一回張り直すと。それから、実は弱者にならないような教育というものが大切だという話につながっていくわけです。
 次のスライドに行きます。
 先ほど、労働時間の規制についての話を挙げて言ったので、ここで少し、ちょっと労働時間のことにフォーカスを当ててお話をしてみたいと思うんですけれども、新しいこれからの時代における労働時間規制というのは皆さんも御関心あると思います。裁量労働制の問題とかいろいろ話題にはなっておりますが、私は次のように考えています。
 そもそも労働時間規制の主たる目的というのは何なのかと。ワーク・ライフ・バランスというようなこともありますが、元々は健康確保なわけですね。長時間労働による疲労から健康を守っていくと。今増えてきているのはホワイトカラー型就労なんですけれども、ホワイトカラー型就労というのは、労働時間が長いからといって、必ずしもそのまま疲労に直結するわけではないわけです。工場労働の場合には指揮監督下で拘束されて働くので、労働時間の長さと疲労というのは相当程度直結するわけなんですけれども、そうではないと。しかし、これまではホワイトカラー型就労であっても労働時間の長さで見ていこうとしてきた。それはなぜかというと、疲労というのは直接把握できないからです。だから、間接的な指標として労働時間というのは一応は指標になるだろうということです。
 しかし、現在は、デジタル技術が発達してきて、生体データのAI分析等によって疲労がもう可視化できるようになってきているわけですね。疲労が直接把握できるようになってきていると。こうなると、むしろ健康そのものに着目した自己管理ということをやった方がいいのではないかというふうに言えると。例えば、個人がその自分の生体データに基づいて、私は休息を取る必要があるというふうに言ったときに、それを企業は認めてあげると、そういうことですね。あるいは、自営の場合、フリーランスとか自営の場合には、そういうふうな個人のデータに基づく休息取得を促すような例えばそのアプリを開発して、それを国が課すとか、あるいは情報提供するとか、こういうような、そういう規制というのに組み替えていくというのが必要ではないかと。
 労働時間規制とは全く違う発想で、だから、これは要するに何のための労働時間規制かという元々をたどると健康保護だと。健康保護だとするならば、もっと違う方法で健康を守る方法があるんじゃないかと、そういうことを考えるべきだというのが私の言いたいことでございます。
 これを言うと、いやいや、現行の労働時間規制でも、それをちょっとずつ改良していくことでもいいんじゃないかと、そんなドラスチックなことを言わなくてもいいだろうと言われるかもしれません。しかし、労働時間規制については、御存じのように、現在の主たる規制方法は、三六協定を締結して割増し賃金を払わせるという、企業に払わせるということなんですけれども、三六協定というのは、締結主体は、多くは労働組合がないところでは過半数代表者という従業員でありまして、果たしてこれが労働者の代表としてきちっと活動できるかという適格性に疑問が持たれている。これはもうかなり常識的な話になっています。
 それから、割増し賃金というのは、払うと労働時間が短くなるんじゃなくて、もっと働こうという促進効果が、誘発効果があるというふうに言われています。それから、そもそもですけれども、労働時間というのは厳密な測定は難しいこともあるわけですね、工場労働ならやりやすいですけれども。そうすると、労働時間の長さに着目した規制というのは限界があるのではないかということです。
 さらには、労働時間規制は複雑で多くの例外があって、裁量労働制なんかもそうなんですけれども、例外が多いと。しかも、裁量労働制などは例外的な制度なので要件が厳格で、実は利用例がそれほど多くない、高度プロフェッショナル制度なんかはほとんど利用されていないと、そういう問題があると。結局、その既存の規制の枠内でちょっとずつ対応していくというのは限界があると。だから、デジタル優先主義で、デジタルが使えるものはそっちで使って本来の目的を実現しようということを私は考えていて、労働時間規制というのは実はその象徴的事例ではないかなというふうに考えております。
 最後のスライドに行きます。
 先ほど、セーフティーネットと教育の問題は大切だということを言いました。結局は多様化していくと。だから、フリーランス、自営的な働き方と伝統的な従属的な働き方と、その中間にいろんなグラデーションがあって、どこかで切って判断していくというのは難しいということを考える。あるいは、企業がもう生活保障をしていくというのは難しくなってきているという現実に向き合うと、やはり政府が直接個人にどう向き合うのかということです。
 そういう中でいうと、社会保障システムというのは非常に注目されるわけなんですけれども、例えば年金とか医療というのは、皆年金、皆保険でみんなカバーしているといっても実は制度間格差があると、健康保険と国民健康保険の違いもあるしとか、こうなってくるわけですね。
 私は、まあこれもドラスチック過ぎてあれですが、今日は未来志向ということなんで思い切ったことを言いますが、個人単位で雇用形態に関係ない公平に守られるようなセーフティーネットというのを構想していくべきではないのかということを議員の皆さんに考えていただきたいということです。
 その関係で、今現在、実は、人々が何かあったときにもらえる現金給付、所得保障というものはいろんなものが併存しているんですよね。雇用保険の給付もあれば年金もあれば生活保護まで、いろんなものが、児童手当とかいろんなものが併存しているんだけれども、こういうのってもっと統合してやれないのかということです。実は、給付付き税額控除というのは全然違った方向で議論が進んでいるようですけれども、これをうまくつくってこの給付部分を一本化していくというようなことになったらもっといい整理ができるのではないかというふうに思っています。これは、新しいセーフティーネット、つまり働き方に中立的な、そういうセーフティーネットとしてフリーランスも守られると、こういうようなものが考えられるべきではないか、これが一点。
 最後ですけれども、教育面においては、職業教育というのは、これまで日本では、これ企業が果たしてきたと言っていいんだろうと思います。学校のところで、もちろん職業専門学校ってありますけれども、普通教育というのは基本的に職業とは分離されている、職業教育とは分離されているところがあるわけですけれども、それは企業が担ってきた。でも、企業がだんだんとそういうふうなことができなくなってくると、やっぱりこれは政府として個人ということになってくるのではないかと、政府が個人の自学を十分にサポートするということが重要だと。
 ここでもやっぱりAIが使えると。アダプティブラーニングなどをもう少し活用して個人に合った、そしてさらには将来の労働社会、これはAIと共生していく社会だと思いますけれども、そのときにどういうふうな社会になっていて、そのときにどういうふうなスキルが必要なのかということを想定して、それを今から教育していくと。個人に着目して、その個人をエンパワーメントしていくような教育というものをしていくべきではないかということです。AIは非常にそのための、AIが出てくる社会を想定する、しかしそれに対応するのも実はAIを使うと、このAIをどう道具として使いこなすかということが大切であるというふうに私は考えておりますということで、時間も来ましたので、これで私のお話を終わりにさせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
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野上浩太郎#8
○会長(野上浩太郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
 まず、各会派一名ずつ指名させていただき、一巡後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。
 発言は着席のままで結構でございます。
 また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくようお願いいたします。
 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間が一巡目はお一人十二分以内となるように御協力をお願いいたします。
 これより一巡目の質疑を行います。
 質疑のある方は挙手を願います。
 小林孝一郎君。
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小林孝一郎#9
○小林孝一郎君 自由民主党の小林孝一郎です。
 本日、参考人の先生方に御説明をいただきまして、ありがとうございました。
 私が感じましたのは、日本経済の停滞という問題は、なぜ成長できなくなったのか、どこで成長していくのか、誰がそれを担うのかという三つの問いに集約されるのではないかと感じました。
 まず、宮川先生にお伺いします。
 日本経済の停滞については、長く需要不足が指摘されてきましたが、近年の研究ではそれだけでは説明できない供給側の問題があることも明らかになってきています。先生の御研究では、日本経済の成長率低下の背景として、一、全要素生産性の伸びの鈍化、二、人的資本投資の停滞、三、イノベーションの弱まりなど、経済の供給力の低下が指摘されています。また、国際比較を見ましても、日本の労働生産性は主要先進国と比べて依然として低水準であり、研究開発投資や人的投資の面でも必ずしも十分とは言えない状況が続いております。
 こうした点を踏まえますと、日本経済の停滞は、需要不足という面だけでなく、経済の供給力そのものの伸びが弱まってきたことに起因する構造的な問題として整理できるのではないかと感じております。
 そこでお伺いします。日本経済の停滞の原因を供給力という観点から整理すると、どのような要素によって説明をすることができますでしょうか。日本経済を長く分析してこられた先生のお立場から、是非全体像を御整理いただけたらと思います。
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宮川努#10
○参考人(宮川努君) 御質問どうもありがとうございます。
 私の資料で申し上げましたが、いわゆる供給力というのは、いわゆる生産力というふうに申し上げてもよいかと思います。これは、九ページにございます。生産側の変化は、労働力、資本量、技術進歩、これが生産を変化させる要因ですが、労働力はよく指摘されていて、少子化で働き手が少なくなったというふうに言われているわけですが、実は二〇一〇年代、第二次安倍政権の以降、就業者数は増えているわけですね。
 ですから、労働力というのが生産の制約要因であったかというと、必ずしもそうは言えない。しかも、よく言われます高度成長期、ここの九ページに書いてございますが、年率九・九%の実質GDPの成長率の中で、就業者の伸びというのは一・八%だったわけです。ほとんどがやはり資本の蓄積、設備の増加によるものと、それから技術進歩によるものになります。
 やはり設備がなかなか、先ほど吉川先生もおっしゃったように、民間の設備も更新されていないんです。今日の資料にはございませんが、一九九〇年ぐらいに設備の年齢というのは大体十年ぐらい、十年ぐらいの設備で作っていました。ところが、もう三十年たって、大体更新を続けていても設備の年齢が二十年に、つまり古い設備を使いながら何とか生産を行っているという状況になっているわけです。ですから、何よりも民間が設備を増やしていかなくては国内の成長力は増えないだろうというふうに思います。
 吉川先生のお話にもありましたように、もう一つはやはり新たな製品を作る力、イノベーションということになります。
 これもスタートアップ企業ということが言われますが、実は日本の伝統的な企業もかなり製品を入れ替えていて成功している企業があります。こういった例、例えば、東レさんであれば、繊維から炭素繊維、化学繊維。富士フイルムさんであれば、フィルムメーカーから、そうですね、今や化学製品だとか、それからちょっと昔ではデジタルカメラですか、そういうものへと転換しているわけです。そういった企業の新製品力を後押しするということも必要だろうと。実はこれ、海外の論文と比較してみますと、日本の既存企業の新製品の開発力というのがやはり米国に比べて若干低いという結果も出ております。
 私から申し上げることは以上でございます。
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小林孝一郎#11
○小林孝一郎君 ありがとうございました。
 続きまして、吉川先生、吉川参考人にお伺いします。
 先ほどの議論を踏まえますと、日本経済が再び成長していくためには、供給力を高めると同時に、どの産業分野で成長を実現していくかという視点も大事になってくると思います。
 産業構造を見てみますと、日本では必ずしも労働生産性の高い分野に労働が十分に移動しているとは言い難い状況が指摘されています。この生産性の伸びが比較的高い分野と就業者が多く集まる分野との間に必ずしも十分な一致が見られていないという点は日本経済の課題の一つかと思います。一方で、これからの日本を見渡しますと、インバウンドの拡大に伴う宿泊、観光、飲食などの分野や、医療、介護、創薬、バイオヘルスなどのヘルスケアの分野でも技術革新を通じた新たな価値を生み出していく可能性があるのではないかと思います。
 そこでお伺いします。日本経済が再び力強い成長を取り戻していくためには、どの産業分野でイノベーションを起こし、生産性を高め、そこに人材が集まる構造をつくっていくべきでしょうか。これからの日本経済が進むべき勝ち筋について是非御示唆をいただけたらと思います。
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吉川洋#12
○参考人(吉川洋君) どうも御質問ありがとうございました。
 もう既にお話ししたとおり、中身が変わらないと経済というのは成長できるものではないということはお話ししたとおりなんです。ただ、次に問題になるのは、御質問の中にあったんですが、どういうふうに変わっていけばいいのか、そういう問題があるんですが、先生方のお仕事との関係でいうと、それを政府が見極められるのかという問題があるんですよ。
 実は、イノベーションの生みの親であるシュンペーター、あるいはハイエクという有名な経済学者もそうなんですが、イノベーションというのは基本的に草の根にあるという、イノベーションの基は草の根にあるというのが一つ重要なことなんですね。
 私はもう大学リタイアして大分たっていますが、大学で昔教えていたときに、学生に説明するのに、そのことを納得してもらうための例として、要は草の根にイノベーションの基があるということなんだけど、やや唐突な例になりますけど、子供用の歯磨きのペーストってありますね、バナナの味がするとかイチゴの味がする、今どういうものがあるのかちょっとよく分かりませんが、あれは旧ソ連のゴスプランでは作れないということなんですよ。あれはやはり、歯磨き粉、ペーストを一生懸命売ろうとして朝から晩まで歯磨きのことだけ考えている人しか、イチゴやバナナの味のするペーストがあれば子供が飛び付いて売れるんじゃないかと、そのことを一国の政府が考えるということは不可能なんですよね。これはもちろん極端な例かもしれません。
 しかし、基本的にシュンペーターとかハイエクが言っていたのは、実は、資本主義経済、自由主義経済というのが中央集権の経済より優れているその理由は、イノベーションの基が草の根にあって、これは中央集権ではできないという、そこにあるという、つまりは分権した経済のある種の強みということだと思うんです。
 ただ、私が今お話ししたことと百八十度矛盾するようですが、では、政府の役割はないのかとか、国家プロジェクトみたいなものがないのかというと、それはまた極端で、そういうものもあるんですよね。それは、そのことを我々に納得させる歴史的な事例としては、宇宙、旧ソ連が当時の米国よりも、最初は一九五〇年代に先んじて、犬を乗せた衛星、人間を乗せた衛星、それから女性の宇宙飛行士を乗せた衛星、全て旧ソ連の方が早かったわけですよ。そういうこともあります。
 したがって、国が主導するようなプロジェクトの意味というのがないというのもそれは極端で、ただ、大本はイノベーションの根というのは草の根にあって、それこそが我々の住む自由主義経済の大本だということはやはり国会議員の先生方に是非とも御認識いただく必要があると思います。
 ですから、先ほども挙げましたけど、インバウンドの例とか、そういうところで大きな役割、政府、役割果たしたわけですが、最後に、もう時間もあれですが、そういう中で、一つ、今後、我々の社会で間違いなく伸びていく、あるいは伸びることは間違いないと思われるのは、やはり医療、介護じゃないでしょうか。この医療も介護も、御存じのとおり、公的な保険があって、それは正しいと私は考える立場ですが、ありていに言えば、そこでのプライスというのは公定価格なんですよね。ですから、その公定価格をどのように設定するかによって医療事業者も介護事業者も、またセクターとしての医療・介護分野というのがどういうふうに発展していくかと、大きな影響を受けるわけです。これは民間の市場に任せておけばいいという話ではないですから、そこは政府、そして先生方の役割が非常に大きい分野だと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
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小林孝一郎#13
○小林孝一郎君 ありがとうございました。
 終わります。
    ─────────────
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野上浩太郎#14
○会長(野上浩太郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、朝日健太郎君が委員を辞任され、その補欠として生稲晃子君が選任されました。
    ─────────────
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野上浩太郎#15
○会長(野上浩太郎君) 柴愼一君。
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柴愼一#16
○柴愼一君 立憲民主・無所属の柴です、柴愼一です。よろしくお願いいたします。
 質問に入る前に、本日は三月十一日ということで、十五年前の今日、東日本大震災が発生しました。お亡くなりになられた方々の御霊がお安らかなることをお祈りするとともに、この十五年は節目ではあるけれども区切りではないという、そんな思いで被災地の復興再生にこれからも私も取り組んでいきたいというふうに思っております。
 その上で、三名の参考人の先生方におかれては、各専門分野からの視点で貴重な御示唆をいただきました。本当に感謝申し上げます。
 私、私自身は労働組合の出身ということで、今日のテーマは「日本経済の現状」という大きなものですが、そんな自分の出身だということもあって、主に働く者の視点からお聞きをしていきたいというふうに思っています。
 まず、宮川参考人にお聞きいたします。
 働く者を取り巻く環境を見るときに労働市場の状況を考える必要があるというふうに思っていますという反面、私、労働市場という言葉が嫌い、嫌いでして、労働は商品ではないということはもちろんなんですが、それにも増して需要と供給の市場原理が働いていないんじゃないかというふうに感じることも大きいです。
 二〇二四年問題のトラックドライバーの不足であるとか、介護人材始めエッセンシャルワーカーの処遇の問題、人材不足の要因の一つは処遇の低さにあるということに、それにもかかわらず、それが改善がされません。これは極めて重大な問題だと思っているんです。東京都のドクターヘリが整備士が確保できなくて運航停止になったというニュースも出ていましたが、インフラ含めてそういう整備などに当たる方々、そういう方面で、各方面で必要な人材のなり手がいないという深刻な問題があるというふうに思っています。
 我が国においては、労働者の処遇が労働の価値とか必要性ではなくて旧来の職業イメージ、何ですかね、この仕事はこのぐらいの給料とか、逆転しないようになっているんじゃないかというふうに思ったりすることもあって、今コンサルが非常に人気があるみたいですが、全員がコンサルになったら現場で働く人がいなくなっちゃうということで社会が成り立たなくなるんじゃないかというふうに思います。
 先生のシートにも、十九ページ、シートの十九で、高度な大学院教育を受けた人たちか手に職がある人たちが相応の報酬を受ける社会へと転換していくという御指摘もありましたが、私、そんな問題意識強く持っているんですが、このことについての宮川先生、参考人の御意見をお聞かせいただけたらと思います。
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宮川努#17
○参考人(宮川努君) どうも御質問ありがとうございます。
 それでは、十九ページで私が何を考えていたかということを中心に御説明をさせていただきます。
 今、いわゆるエッセンシャルワーカーと言われている方々の人材不足が言われています。一方で、先ほど御指摘があったように、コンサル系が人気があるということですけれども、既にアメリカではコンサル系の会社の失業者はどんどん増えております。コンサル系こそ最もAIで代替できる職業なわけですから、そうした職業は多分なくなるだろう。私も卒業いたしました東京大学ではコンサルに最近は就職する人が多いと言いますが、大体、東京大学で人気のある職業というのは十年か二十年うちに没落産業になると。それは、昭和三十年代に石炭産業や繊維産業に行った人たちが石油危機でかなり苦しい思いをされていた。私が就職したときに銀行系は非常に人気でありましたけれども、不良債権で沈没してしまったということですから、必ずしも今そういう人気があるからといって、それが将来も続くと、いわゆる長期雇用を前提として将来も続くというのは、私も長い経験をしてそのとおりだなというふうに思っております。
 問題は、そうしたエッセンシャル、先ほども言いましたように、エッセンシャルワーカーの方々の方がむしろこれから大事になるので、そういった教育をいわゆる学校教育のときからもっと、コロナのときのように、そういう職業の重要さ、そういったものをやる。何かこうAIで代替できるようなものが貴重かのようなものを、やはりこれは考え方の転換にもつながるかと思いますけれども、もう少しエッセンシャルワーカーのような方々の重要性みたいなものを教育の段階でやはり強調していくということが重要です。
 そのことが私が包括的な人材育成と申し上げた由来で、決して今、柴先生がおっしゃったことと矛盾するというわけではないと思います。
 以上です。
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柴愼一#18
○柴愼一君 ありがとうございます。
 続いて、吉川先生、参考人にお聞きします。
 人口減少社会においても一人当たりGDPの成長で一定の経済成長なんかを生み出すことができるのではないかという御指摘もいただいたというふうに思います。そのためにはイノベーションが必要というお話だと思います。
 あと、その一方、労働生産性をどう見るかということについてお聞きしたいと思います。
 日本の労働生産性の低さが指摘されているということですが、生産性は、先ほども話あったとおり、付加価値を労働投入量で割ったものだということであれば、適正な付加価値の設定がされていないことに私は問題意識があります。先ほどの医療、介護とかの公定価格の話もあったのかもしれませんが、労働の価値に見合わない商品、サービスの価格となっているということ、スマイルゼロ円じゃないですけど、労働は投入ってただだということとか、デフレ下で安いことが正義だったということを含めて、そんなことが労働生産性の低さの要因の一つになっているんじゃないかということを一つお聞きしたいということと。
 もう一つ、先日、参議院の派遣で海外調査に行ってまいりました。シンガポールとタイの港湾や物流施設を見てきたんです、行ってきたんです。無人化とか自動運転とか、すごい大規模に進んでいるんですね。日本の企業の子会社も視察をして、親会社よりも機械化が進んでいる状況を見たときに、なぜ子会社なのに親会社にそれ導入しないんですかって質問をしたら、答えは、シンガポールの人件費というのは時給三千円とか四千円なので機械化する意味があるんだけど、日本の時給は千五百円ぐらいなので人間でやらせた方が安いんだと、機械化のメリットがないという悲しい回答があったんですね。
 ということは、そういうやっぱり労働力の評価を、時給とかそういうものを上げることがかえって技術革新につながるんじゃないかということも思ったりするんですが、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
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吉川洋#19
○参考人(吉川洋君) どうも御質問ありがとうございました。
 お答えする順番がちょっと逆になるかもしれませんが、二番目の論点と関わるところでは、御存じの最低賃金の問題というのが分かりやすいんじゃないでしょうかね。
 私は最低賃金もうちょっと上がっていいという考えなんですが、ただ、これには御存じのとおりの慎重論みたいなものもたくさんあるわけですけれども、しかし、マクロで見ると、やはりその賃金がある程度上がる、先生がおっしゃっているような、それに見合ったような生産性を生み出すというのが私は経営の役割だというふうに思うんですね。港湾労働者の場合、日本の現実でどういう問題があるのか。それは個別の問題あるかもしれませんが、経済全体で見たときには、分かりやすく言えば、日本の賃金は少し安過ぎるということだと考えています。それが二点目に関わるところですが。
 一点目の方の問題については、一つは、大きな論点として生産性の高いところに人が移っていくというようなことが必要だというような話は宮川先生や私もお話しさせていただいたかと思うんですが、重要な論点として、日本では人が移動しないから駄目なんだという、だから、まずは人が移動できるようにすることが大事だと、そうすれば人は生産性の高いところに流れるようになって経済成長もするという、そういう考え方もあるんですね。
 私が理解している限りでは、政府でもそういうことを随分言われてきましたし、私の属するプロフェッションなる経済学者の中でもそういう考えの人も随分いるかと思いますが、私がそういう意味では少数なのかもしれませんが、私はそれに反対なんですよ。つまり、人は黙っていれば、いい職があれば黙っていても動いていくだろうと思っていて、日本で人がなかなか移らないということであれば、移りたいと思うような職、ジョブが不足しているからだと、そちらの方が問題だというふうに考えているわけです。
 ですから、何よりも生産性の高い仕事、これを生み出すということで、先ほど私のプレゼンで見ていただいた具体的な例で、ある種私が言おうとしていること御理解いただけるかなと思うんですが、例の紙おむつですよね。紙おむつの会社あるいはセクターで、もし高齢者用の紙おむつが生み出されなかったとしたらどういうことになっていたかということですが、恐らくはそうした企業あるいはセクターでの生産性は著しく低下しただろうと思うんです。
 やはり、こうした企業が伸びていくというのは、高齢者用の紙おむつなるコンセプトを生み出して、そのプロダクトイノベーションの力で伸びていったと。それを生み出したのは結局は、もちろん現場のエンジニア、あるいは社員という方々かもしれませんが、最後にそれを採用したのはマネジメント、経営ということでしょうから、経営が果たすべき役割を果たしたということだと思うんですね。残念ながら、この何十年か日本の経営、企業が果たすべき役割を果たしてこなかったということだと思います。
 御質問に直に答えることになっていないかもしれませんが、一応私からのお答えとさせていただきます。どうもありがとうございます。
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柴愼一#20
○柴愼一君 済みません、大内参考人にも質問準備していたんですが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
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野上浩太郎#21
○会長(野上浩太郎君) かごしま彰宏君。
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かごしま彰宏#22
○かごしま彰宏君 国民民主党・新緑風会のかごしま彰宏と申します。
 本日は、三名の先生方、貴重な時間で御講演賜りまして、誠にありがとうございました。
 また、私からも冒頭、本日三月十一日ということで、東日本大震災から十五年を迎えました。犠牲となられた方々に改めて哀悼の意を表しますとともに、御遺族の方々にもお悔やみ申し上げたいと思います。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 宮川先生にまずお伺いをさせてください。
 投資のお話、本日全体を通してたくさんあったと思います。やはり、この投資を呼び込み、そこからいかに生産性を向上させて利益を上げていくかといった基本的な流れというのは、やはりこれはどういう産業においても重要だろうと思う中で、アメリカや中国、大きくGDP離されてしまっておりますが、そうした国に対抗していくためには、そうした大きなマネーパワーのあるところからたくさん投資を日本の国内に呼び込んでこないとなかなか太刀打ちできないというふうに思っています。これまでも国としてもそういったことにチャレンジをしてきたけれども、なかなかうまくいっていないというのが現状だと思っています。
 そうした中で、先生の観点から見て、どうしてこれまで日本は海外からの投資をそんなに呼び込めなかったのか、そして、これからどうしていったらいいかといった御知見があれば御教示いただけたら幸いです。
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宮川努#23
○参考人(宮川努君) ありがとうございます。
 簡単に申し上げますと、私も実は対日直接投資の論文を書いておりまして、小泉政権のときからビジット・ジャパンというプロジェクトの説明等も行っておりました。そのときから事態は余り変わっていないかのように思います。
 二つ、まあ一つですね、論点がありまして、一つは、やはり海外の企業が投資をするときに非常に手続が煩雑だということですね。各省庁にまたがっている。例えば、弁護士事務所を探さなきゃいけない、それから会計士事務所を探さなきゃいけない、そうやってどんどんと士業のところを回らなくちゃいけないということがあります。それが非常に煩雑で、ほかの国はこういったものを全てコンサルティングという形でもう統一していると。ですから、先ほどおっしゃったようなAIの時代ですから、こういうのはもう全てまとめられるようにしていけばいいんじゃないかと。
 それからもう一つは、やっぱり中国とかが行って成功したような特区をきっちり本格的にやるということだと思います。形式的に日本は特区をつくっておりますけれども、それはやはり海外と比べると少し見劣りがするということですので、これやはり、日本のやっぱり地域での平等的な扱いということもあるのかもしれませんが、やはりきっちりと特区をつくるということが必要なのではないかと思います。
 以上です。
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かごしま彰宏#24
○かごしま彰宏君 ありがとうございました。
 その手続面の部分と、特区という形で特定の地域にやはり投資をより促していくといった方向かと承ったんですけれども、そうした中で、今回、先生の御講義の中でも一部触れられていた現政権の十七の重点投資分野あると思います。やはり、先生も若干触れられておりましたけれども、十七、風呂敷を広げ過ぎると、やはり広げ過ぎてしまってうまくいかないのではないかということで、ある程度絞る必要はあるだろうといったことをおっしゃられていました。
 そうした中で、政府の方は六月辺りに各重点分野のロードマップみたいなものを示すというふうに言っておりますけれども、先生の目から見て、このロードマップにどういった条件、要件、こういったものが重要になってくるかといったような御知見があれば御教示いただければと思います。
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宮川努#25
○参考人(宮川努君) 政府の方々がロードマップを示されるということですが、重要なことは、作られるのはいいんですけど、問題は点検ということと、それからいわゆる柔軟な修正が必要かと思われます。
 御案内のように、今、中東でかなりの紛争が起きています。世界情勢、非常に今緊迫した状況で、そのことが、例えば日本の場合、どのような産業を育成していくにせよ、外からの供給制約というのが非常に課題になってまいります。そのことが良くなる場合もありますし、悪くなる場合もあると。そういうことに即して、やはりロードマップを作る際にも、柔軟なとか、それからプランA、プランBといったようなものをちゃんと書いておくということが必要なのではないかと思います。
 以上です。
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かごしま彰宏#26
○かごしま彰宏君 ありがとうございました。大変参考になりました。
 続きまして、吉川先生にお伺いをさせてください。
 私も農林水産委員会というところに所属をして農業の関係の議論をしているものですから、ちょっと農業の生産性という点でお伺いをさせていただきたいんですけれども、やはり先生のお話の中でも、農業というのは基本的にやはり生産性が余り高くない分野であるといった中で、一方で、今の政府の方針としては、農業の生産性を高めていこう、言ってしまえば稼げる農業を実現をしていこうというような方向性があります。できる部分、できない部分あると思うんですけれども、この政府の方向性について、まずちょっと先生のお感じになられる点、御所感、まずお伺いできればなと思います。
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吉川洋#27
○参考人(吉川洋君) どうもありがとうございました。
 農業については、御存じのとおり、国の政策も随分変わってきたと思うんですね。まず第一に、日本の農業の一番大きな柱としては、我々の主食である米、何とかいっても米作、米というのが一つの大きな柱で、この米作、米作りをどうするのかというのは大問題ですよね。
 直近で大きな問題が生じているというのは、これはもうよく御存じのとおりで、政府として、やはりこの米作についてどういうふうにするのかというのはしっかりした方針を示す必要があるんじゃないでしょうか。私の理解では、前政権と現政権、随分米作りに関する方針も変わったというふうに私は理解していますけど、変えるんであれば、それをどういう理由で、こういう理由で変えたというのを説明する必要というのはやっぱりあると思うんですよね。
 米については、御存じのとおり、付加価値、労働生産性といっても、それだけを見ていればいいという問題でもないということになるんだろうと思います。つまりは、じゃ、日本の農家がみんなでルッコラを作っていればそれでいいのかというと、もちろんそういうことにはならないと。
 繰り返しになりますが、米というものを大きな柱としてあるというわけですし、今のような状況だと、確かに農業というものには、どういうんでしょう、食料を作る一つの産業、ビジネス以外の、これは農水省や何かずっと長年言ってきたことだろうと思いますが、国土の保全とかそういうような問題ということも確かに関係しているんだろうと思います。ここら辺をどういうふうに評価するのか。これは労働生産性というものを測るときにも、分子の方をどういうふうに考えるのか、マーケットのプライスというのが本当に私たちが望んでいるものを正確に反映しているのか。これを、安易にこういうことを言うべきではないと私は思っているんですが、ただ、農産物の場合には、確かにそういう面も考えなければいけない時代になっているというふうに私も思います。
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かごしま彰宏#28
○かごしま彰宏君 大変ありがとうございました。
 吉川先生おっしゃっていただいたことは私も本当に同意見でございまして、やはり農業を今、私、例に挙げさせていただいたんですが、例えば介護であったりですとか、それこそ医薬品といっても様々ですし、利益が出ないものもあります。ただ、必要なものであって、そこには利益だったり生産性といったものが、重要ではあるけれども、それが必ずしも高くなくても社会的に担保しなければならない、そういった意義も含まれてくるんだろうというふうに思っております。
 そうした中で、生産性の低いものだけれども社会にとって必要なものに対しては社会的にサポートをしていくということはどこの国でもそれなりに行われていると思います。ただ、やっぱりこの程度をどこに置くのかというのは、これは国会の中でも政府の中でもしっかり議論をして決めていくべきことであるというふうに思っておる中で、こういった議論もこれから日本でも進めていくんですが、海外でそういった大きな、生産性と社会的必要性の比較といったような、こういった議論が、もし有名なものなど御存じのものがあれば教えていただきたいなと思います。
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野上浩太郎#29
○会長(野上浩太郎君) それでは、質疑の途中でありますが、この際、一言申し上げます。
 間もなく東日本大震災から十五年目の発災の時刻となります。
 ここに、犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするため、午後二時四十六分に合わせ、一分間の黙祷をささげたいと存じます。
 それでは、どうぞ御起立願います。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕
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