吉川洋の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(吉川洋君) 吉川でございます。こうした機会をいただきまして、大変光栄に存じております。(資料映写)
 二十分という時間制限がありますので、画面あるいはお手元の資料を見ていただきながら、私からは幾つかファクトを皆様方に見ていただきながら問題提起をさせていただくと、そういうことでいければと思います。
 宮川先生のお話にもありましたが、日本経済の凋落ぶりといいますか、は大変厳しいものがあると。これはいろんな指標があるわけですが、一つ分かりやすいのは、見ていただいている一人当たりの、名目ですが、GDPのランキングです。これは一人当たりですから、人口減少とは関係ない。むしろ、人口が減ればその限りでは上がる。つまり、ケーキを四人で分けるんではなくて、同じケーキを三人で分ければ一人当たりの取り分が増えると、こういう理屈で、一人当たりのGDPのランキングだということに注意していただいた上で、二〇〇〇年というのは、バブルが九〇年代初頭に崩壊してから十年はたっていなくても十年近くたっていたわけですから、ある意味、この二〇〇〇年時点でのランキングというのは若干、驚きと言うとちょっと語弊もありますが、いずれにしても、見ていただいているとおり、日本は二〇〇〇年時点では世界の三位、スイス、米国よりは高いと。それが、二〇一〇年に十九位、二四年に四十位と、そういう形でランクダウンしてきたというわけです。そうした指標はたくさんあります。
 ランクダウンの話のついでと言うとあれですが、四ページで見ていただいているのは世界の港湾のコンテナ取扱個数ランキングと。これは皆様方のお仕事にも直に関係しているんではないかと思いますが、八〇年を取りますと、ランキング四位に神戸港が入っていて、二十位までに横浜、東京、三港がランクインしていた。あとはもう見ていただけばお分かりになるとおりで、〇六年にはトップトゥエンティーにはゼロ、二十三位の東京港が日本では一番と、二一年になりますとトップ四十位までにもう日本は一つも入ってないという、そういうことだと思うんですね。
 一つコメントしますと、〇六年、二一年と圧倒的に中国の港湾が伸びている。これはもう理由は明白で説明する必要ないと思うんですが、ただ、ほかの国の港湾もかなりハイランクにいるところがあると。例えば、七位の釜山、韓国。ちなみに、この釜山が現在日本のハブ港になっているわけですよね。日本にはハブの機能を担う港、これは一港もないわけで、基本的に釜山に依存していると。それから、オランダのロッテルダム十位、ベルギー、米国のロスも十六位くらいになっていると。ですから、それなりにいわゆる先進国の港も、中国はちょっと別格とした上で、かなり上位に入っているわけですが、残念ながら日本は御覧のとおり。
 これについては、指摘したいことは、二十何年、問題が言われてきたわけです、スーパー港湾。少なくとも、私の知識、理解は古いかもしれませんが、二十年くらい前でも、深さが十七メートルと当時は言われていたんですが、十七メートルくらいの大型のコンテナ船が着く港というのがなくなっちゃっていると。スーパー港湾という言い方でですね。
 個別の話になってしまいますが、民主党政権のときのたしか前原国交大臣が、前原先生が国交大臣やられたことあると思うんですが、大臣就任のときに、八ツ場ダムの問題についてどうというコメントと併せて、スーパー港湾が我が国ではなくなりつつあるというようなことを大臣就任時に言われたというふうに私は記憶しています。
 現在どうなっているかというと、現政権の下で成長戦略会議でしょうか、重点分野十七と、先ほど宮川先生の方から十七というのはちょっと多いんじゃないかと、普通の感覚で言えば重点が十七あるというのはどうなんだというのは私もそう思いますが、そういう中で、この港湾ロジスティクスというのが十七分の一で入っているんですよね。
 それはそれで分かるんですが、繰り返しになりますが、二十何年この問題、御覧になっていただいている表で、こういう問題があると国を挙げて言ってきたんですが、残念ながらこれまでは駄目だったと、成果なしと言わざるを得ない状況で、今回この重点分野の下でどういう新しいチャレンジが日本としてできるのか、その見通しはどうなのか、この点はちょっときっちり考えていただきたいというふうに思います。
 それで、とにかく日本経済のランクダウンが続く中で成長の基は何なのかというと、これは宮川先生の御説明の中には言葉は出なかったかもしれませんが、イノベーションなんですね。これはもう皆さんよく御存じのとおりで、シュンペーターという経済学者が言い出し、右側の写真は、余談になりますが、シュンペーターというのは大変日本を好きであってくれた経済学者で、日本にも来てかなり長期滞在したというわけですが、イノベーションということに尽きるわけです。
 それで、問題提起ですが、日本では投資が足りないというのは宮川先生のプレゼンのとおりで、私も全く同感なんですが、政府の役割はどこにあるのか、これは皆様方のお仕事で、是非ともよく考えていただきたい。我々の住んでいる経済、資本主義経済、自由主義経済の主役は民間の企業なんですね。投資という場合でも圧倒的に不足していると、基本的には民間企業による民間の投資が不足していると。このことはもう疑いない。では、政府はどういう役割を果たせるのか。繰り返しになりますが、そこのところは大いに議論を詰める必要があると思います。
 もちろん、公共投資というのは、これはまた別の役割として、これはこれではっきりあるわけで、先ほどの港湾もそうですし、ただ、人口も減ってきますし、皆さんもよく御存じのとおり、今後、日本では更新投資の役割というのが非常に大きくなるわけですね。これは偶然でないんですよ。
 というのは、私のようなビンテージだとまさに少年としてそれを見ていたわけですが、昔の一九六四年の東京オリンピックの前に、日本では今我々が持っているインフラストラクチャー、社会資本が整備されたわけですよ。ですから、ざっくり一九六〇年と仮に呼んでみると、現在六十六年目に入ったというわけで、約六十五年経過したわけですね。
 皆さんも御存じかと思いますが、偶然、今朝のニュースで、大阪で何か水道管の大きな事故があった。これは昨年ですよね、埼玉県で大きな事故があった。あるいは、京都市内でも去年あったように記憶していますが、そうした事例はもうたくさんある。これは、繰り返しになりますが、六十五年目を迎えた日本のインフラの更新時期なわけですから、こうした様々な水道その他、道路、事故というのは偶発的なものではない。したがって、この更新投資をやらなければいけない。限られたリソースの中で、では、新しいところは一体何をやるべきなのか、これは皆様方が是非真剣に考えていただければと思います。
 イノベーションというわけですが、イノベーションにはいろんなものがあります。ただ、大小様々あるわけですが、やはり私はキーになるのはプロダクトイノベーションだというふうに考えています。新しいものが出てくる、それによって成長が生まれ、しかし、やがてそれが天井にぶつかって減速する、そこでまた新しいものが生まれると。
 一つ具体的なイメージを持っていただくために、ここでは私は割に面白いと思っている例なんですが、紙おむつの例と。
 少し古くなっていて恐縮なんですが、紙おむつというものがあって、それは昔は赤ちゃん用だったわけですよね、でスタートしたんですが、高齢化社会の中でそれがやがて高齢者用に変わっていくと。まさに少子高齢化を反映して、少子化の中で赤ちゃんの数が減っていくわけですから、赤ちゃん用のおむつは頭打ちになる。しかし、この業界では高齢者用のおむつというのを考え出して、それが需要を牽引したと。
 これは非常に面白いストーリーが後日談もたくさんあって、初めは日本以外の例えばアジアとか中国、おむつに紙おむつを使うというほど所得水準が高くなかったわけですが、だんだん御存じのとおり東南アジアの国々も経済発展して、紙おむつというものがアフォーダブルになってきたということで輸出をするようになり、さらに、現地生産、典型的には例えばベトナムとかそういうところでも、中国もそうですが、そういうようなことまで出てきています。
 一点、ここで興味深いというのは、これは技術的にはほとんど、高齢者用の紙おむつというのはほとんど何も、どういうんでしょう、技術進歩というものはないわけですよね。もちろん面積が違うだろうというのはそのとおりなんですが。しかし、赤ちゃん用の紙おむつを生産していれば、高齢者用の紙おむつというのは形態とか若干工夫というのは当然あるんだろうとは思いますが、ブレークスルー的なハードの技術というのはなくて、やっぱりアイデアなんですよね。赤ちゃん用のおむつには限界があると、高齢者のおむつというのはどうなのかという形。
 私は、偶然ですが、これをやはり考案した会社の方と話をする機会があった。その方の話では、会社の中でも三度目で通ったというふうに聞きました。つまり、一度目にそれを提案したときには、おまえ真面目に仕事しろと言われたと。二度目は、かなり真剣に考えたけれども、リスクは取れるのかという話になった。三度目でようやくそれが通った。ここら辺が日本の企業あるいは日本社会全体の一つの問題かもしれません。
 時間も限られていますので、次は少しマクロでこのことを見たいと思うんですが、細かいことは後で質疑があればあれですが、要はメッセージとしては、いろんなプロダクト、いろんな部門、いろんなセクターが経済の中にあるわけですが、我々の頭の中では当然、全てが比例的に伸びるという経済成長というのももちろん理屈の上では頭の中で考えられる、あるいは想像できる。全てのもの、全ての部門、セクターが例えば五%成長すると、しかし現実の経済ではそういうことはないということです。必ず中ががらがら変わっていくから経済成長というのはあると。
 イノベーションというのは、シュンペーターが例のクリエーティブディストラクション、創造的破壊というややこわもての表現言ったとおり、伸びるもの、伸びるセクターの傍らには必ず消えていくもの、消えていくセクターというものもあるというわけです。
 そこで、どれくらい経済の中で構造変化が起きているのかという指標を作ってみて、それと経済成長の関係というのをマクロで見ると、経済成長が縦軸、横軸にどれだけがらがら変わっているかというのを見ると、右上がりの関係があると。右上が高度成長期ですが、高度成長期は高い成長率の下で中身ががらがら変わっていたと。しかし、だんだん左下の方に落ちてくるというようなことが見られると。それは、一つの産業の中でも同じようなことが見られると。
 それを押さえた上で日本の労働生産性というものについて改めて見ると、これは宮川先生が出された図と本質的に同じですけれども、日本では非常に伸びが悪いんですね。
 これを産業別に見てみました。これと同時に、これは労働生産性の伸び率が、まあ九年ですが、約十年ごとにどれくらい伸びているか、あるいは減っているか。落ちている場合もあるわけですが、産業別に見る。と同時に、働いている人の就業者のシェアが同じ産業別に十年ごとにどれくらい伸びているか減っているか。これは、縦軸、パーセントですが、就業者がある産業で前年と比べて、あるいは前の十年と比べて何%伸びているかというのではなくて、シェアが十年間で何%か。つまり、ある産業で働いている人のシェアが十年前には仮に五%だったと、それが八%にシェアが変わっていれば、上昇していれば、八引く五で三%という形で縦軸で測って見ているというパーセントです。
 いろいろ見て取れますが、もうよく御存じのとおり、一番左が農林水産業ですが、働いている人はずっと三十年くらい、十年ごとずっと減り続けていると。左から三つ目が製造業ですが、直近の十年ですと減り方は落ちているといっても、基本的には製造業減ってきていると。ずうっと右側の方に行くと、いわゆる三次産業、サービス産業になっていくわけですが、御存じのとおり、物からサービスへという形で変わってきていると。
 時間も限られていますので、注目したいのは左から二つ目ですか、ここでは健康衛生・社会事業となっているのが、ほかの表現で言えば医療、介護の分野ということになります。それともう一つ、情報産業、情報通信業というのが横軸の真ん中辺りにあるかと思います。
 問題は、先ほど見たセクター別、産業別の労働生産性の変化と就業者のシェアを十年ごとに張り合わせてみる。いいパターンというのは、労働生産性の伸びが高いセクターに人々が移っていっているというのが、俗の表現で言えば勝ちパターンと。これは宮川先生も指摘されていたかと思いますが、残念ながら日本ではそういうふうになっていないと。
 つまり、この十八ページ、縦軸の説明が抜けていて恐縮ですが、縦軸の方が就業者数のシェアの変化、横軸が労働生産性の変化率ですから、ざっくり、これが右上がりになっていると、労働生産性の伸び率が高いところはシェアが伸びているというふうになるわけですが、残念ながらそういうふうになっていないと。注目する保健衛生、一番上にあるところは、就業者のシェアは高まっていると。つまり、より多くの人たちが医療、介護で働いていると。そこはいいんですけれども、労働生産性の伸びはマイナスになっていると。そういうようなことです。
 時間が限られていますので後で質疑のところでお答えするとして、最後に、またやや話は飛ぶかもしれませんが、そうした中で、今、日本経済で、一つ経済としてポジティブなもの、これはもう先生方よく御存じのとおり、現在ではオーバーツーリズムの問題まで生まれているという、そういう副作用もあるわけですけれども、とはいえ、インバウンドの、海外からの旅行者が増えているというのは日本経済にとっては全体としてはプラスだと私は考えていますが。
 この図は、二つ色がありますが、上は日本人の出国ということなんで、下を見ていただけばいいわけですが、非常に伸びていると。コロナで落ちたということはあっても、その後も伸びているわけですが、これはやはり、政府が役割を果たしたんですよね。つまり、国会での議決等ももちろんあったということだと思いますが、ビザ要件や何かの改革や何かを進めて、そういう形で統計も整備したと。
 ただ、最後に言いたいことは、お金はほとんど使っていないんですよ、これ。ですから、政府部門においても、お金を使うなとまではもちろん言わないわけなんですが、お金より前に、やっぱりアイデアの方がパブリックセクターにも求められるんではないかと思います。
 どうも、時間少し超過して申し訳ありませんでした。私からの説明は以上です。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 吉川洋

日付: 2026-03-11

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会