諸富徹の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(諸富徹君) よろしくお願いいたします。京都大学公共政策大学院の諸富と申します。(資料映写)
今から二十分で、税財政についてということでお話をさせていただきたいと思います。
まず、財政についてということですけれども、最初は、スライドの三ページ目。危機管理・成長投資、これは高市首相が施政方針演説で表明された内容をまとめたものでありますが、特徴的なのは、財政の投資的な側面をすごく強調されたということだと思います。
財政支出といいますと、どっちかというと、成長にとってむしろ寄与しない、あるいは、逆に言うとマイナスである。経済学、伝統的に財政学の観点からは、公共支出というのは成長に、あくまでも民間こそが成長に寄与するというふうに考えられてきたわけですけれども、ここを大胆に成長投資という考え方を打ち出されたということですね。十七分野についてもよく言及されていますが、財政政策と産業政策が融合している側面をすごく表していると思います。
これは何も高市政権だけではなくて、この次のスライドですけれども、国際的にもそういう潮流に実はなってきているということなんですね。これはやはり経済安全保障の台頭、この経済安全保障という考え方が強調されるにつれて、自国の産業で非常にクリティカルな部分を伸ばしていく、あるいはそのサプライチェーンを自国内で完全に完結させるということは、このグローバリゼーションの時代難しいですけれども、それでも、なるべくクリティカルなサプライチェーンについては自国あるいはその友好国、同盟国といったところでなるべく完結するように持っていくというような努力が行われるようになってきているのが近年であります。ちょっと四つほど典型的な事例というのを挙げさせていただいています。
そういう意味では、政府の役割というのは大転換をしてきたと思います。どちらかというと、産業に対して、これまでの新自由主義的な産業政策を過去、そうですね、四十年ぐらいはそうだったというふうに思いますけれども、どちらかというと規制緩和、企業の、多国籍企業の活動の足かせにならない、政府がですね。また、法人減税をして負担減をして、多国籍企業を自国へ誘致をする競争といったものが行われてまいりましたし、また、産業が立地しやすいような条件整備をする。これが政府の役割であるということなんですけれども、それがすごく一転をしまして、戦略分野を指定して、そこに対して積極的な投資をしていく、あるいは立地支援をしていく。ラピダスの事例とか熊本のTSMCの事例とか、そういう形で戦略的に重要な産業を指定して国が積極的に投資を、全額でなくても手伝っていって、リスクの高いところを政府が手当てすることで民間の投資を誘導していくというようなスタイルに変わってまいりました。
そういう意味では、財政というのがその産業政策上極めて不可欠なパートを成すようになってきているということであります。これで、成長することによって、成長の上がりを今度再び国家が言わばリターンとして取ることによって、短期ではなく、年度ごとではなくて長期で収支均衡を取っていこうという考え方が出てきているわけですね。
ただ一方で、こういう形で財政拡張への懸念、あえて懸念点というのを申し上げますと二つあって、課題一、課題二とこのスライドに書かせていただいている点ですね。それから、今まさに長期でというふうに申し上げましたけれども、一方で、国会では単年度ごとに予算というのは計上されて、それをまさに、妥当性を審議する、それがまさに国会の使命なんですけれども、例えばそれが十年単位で見ていくとなりますと、どういう形で国会が年々の予算をチェックするのかという問題が根源的に生じてくる、財政民主主義との関係が生じてくるということになります。
次のスライド、六枚目に行きますが、首相は多年度で別枠で管理する仕組みを構築するというふうに言及をされています。具体的に言いますと、アメリカで実際にCBO、コングレッショナル・バジェット・オフィスで研究部門を持っていまして、そこで使われている手法がダイナミックスコアリングと呼ばれるもので、これは動学モデルなんですけれども、例えば、十七分野に対する戦略投資をやったことによってどれだけ成長が高まり、それによってどれだけ税収が上がってくるかというのをその動学モデルを使って試算をする。その中で必要な財政支出と上がりとなる法人税収の増収分というのを比較考量して、その後者が前者を上回るようであれば、支出が増収よりも少ないということであれば、少なくともイコールであればゴーサインを出せるというようなことをやるわけですね。
ただ、これでもいろいろ問題がありまして、動学モデルというのは設定次第で結果が大きく実は変わり得るということはよく知られているところですし、また、例えば十年間コミットするということになりますと、その間、財政は拡張する一方で、果たして上がりが、上がりとしての法人税収がしっかり入ってくるかどうか分からないわけですよね、本当のところ。こういったリスクを国の側が抱え込むことになってしまいます。
次のところ行きますね。
この点、もう少し展開しますと、産業政策的観点からいうと、民間から見ますと、十年間、政府がしっかりコミットしてくれる、逃げないということがやはり民間が投資をする場合に、予見性という点で、確かに首相が強調されるように望ましいわけなんですね。しかし、一方で、失敗に終われば投資コストは回収できないということで、国家が言わば損失を、税収を失うという意味で損失をかぶるということになります。
こういった、投資国家というんですけれども、こういった投資国家としての国家の側面をどう見たらいいのかということですけれども、やはりどうやって十年間、こういった予算枠を取る場合に、効果検証をしながら、仮にうまくいかない場合にチェックしていくかということは一つ仕組みづくりとして重要ですね。そういう意味では、定期的に財政支出とその効果検証、進捗度というものを国会の場で情報を開示して、まさに先生方に議論していただくという場をつくっていくことが私は必要かなというふうに思っております。
また、十七分野というのは総花過ぎるという批判もあるんですが、他方で、リスク分散と捉えることもできるんですね。ベンチャーキャピタルのお金の出し方が、まあ十案件を出して一成功するか否かという世界でやっているわけですね。その代わり、その成功する一がどかんと収益を、リターンをもたらしてくれるわけですね。ほかが損失しても、はるかにそれを上回る収益をその成功事例が、数少ない成功事例がもたらしてくれる。まあ国家がそういうギャンブルしていいかという問題あるんですけれども、なるべくリスク分散して広く投資をするという考え方もないわけではないというふうに思います。
さて、今後これが中長期的な財政にもたらす影響ということですけれども、これ内閣府の出している、経済財政諮問会議で出された資料ですね。過去投影ケースでいきますと、現在は公債残高の対GDP比は下がっていくトレンドの中にありまして、なのでこのまま行っても大丈夫だという声がある一方、しかし、金利が皆さん御存じのように上昇してきていますので、これが当然財政支出の側にも反映されてきますので、それを考えると、いつかはこれ反転をしてまいります。ですので、成長促進による成長の伸びの部分と金利上昇分の競争みたいになってくるわけですね。うまくいけばピンクのラインのようになりますし、最悪、Xマークの、この点線のブルーのようになってしまいかねない部分もあります。
また、一%程度金利が上昇しただけでどれだけ財政負担が高まるかは、この財務省の試算、左が昨年の試算で、右が今年の指標で、十兆円も財政負担が一%金利が上昇しただけで増えているという試算でございます。
さて、それを受けまして、今度、税制について、じゃ、この負担をどうするのかということですね。もちろん、成長で一〇〇%上がればいいんですけれども、その投資の財源を普通は手当てしなきゃいけないというふうに考えなければいけないと思います。
小塩先生が既に社会保障の支出面について述べられたところですけれども、こちらなどは日本の特徴、社会保障支出の特徴ですけれども、一番左、日本の特徴で、ブルーと紫のライン、これはほとんど高齢者向けなんですけれども、医療、介護、年金ですね。日本の特徴は、この高齢者向けの三つの支出で八割ぐらい占めているということで、欧州などはこれに対して現役世代、家族手当だとか子育て支援とか、勤労者に対する職業教育訓練とか、こういったものを社会保障に、あと住宅手当ですね、こういったものが含まれているという点に大きな違いがあるかというふうに思います。
それから、こちら御覧いただきますと、社会保険料、日本は社会保険システムが基本ですので、保険料収入はもちろん大きいんですけれども、公費の比率が年々高まっているというのが趨勢としてございます。
その社会保険料ですけれども、次の十三枚目に行きますけれども、報酬比例という言葉がございますように、賃金ベースで掛けるX%という形で保険料収入が入ってくる、労使折半ですけれども、これは頭打ちがありまして、賃金に対して一定の金額に達するとそこで上限がございますので、トータルでその賃金収入に対する保険料負担比率ということで見ますと、高所得者に行けば行くほど負担率が低下するという意味で逆進性を持っているということがよく指摘をされます。
とはいえ、社会保険料の伸びがなければ、恐らく日本の社会保障のファイナンスはもっと困難に陥っていたであろうというふうに思います。
こちら十四枚目に御覧いただいていますけれども、ちょっとブルー同士で見にくくて申し訳ないんですけれども、薄い方のブルーが社会保険料収入です。バブル崩壊で右肩下がりに一旦なってしまっていて、リーマン・ショックを越えて再び右肩上がりになっているのが濃い紺色が税収ですね。税収がバブル崩壊以降、右肩下がりで減少していった時期も社会保険料は引き続き増収をずっと記録していたという点で、非常に大きな財源調達効果を持っていたということになります。
ただし、ちょっとこのスライドはスキップさせていただきまして、こちらの十六ページ目になりますけれども、結果として、社会保険の負担率、社会保険料率と呼んでいますが、これは上昇の一途をたどってきたということになります。また、人口のコーホートが若い人ほど減っていますので、逆三角形になっているので、現役世代が、より少ない人がより多くの負担を負うというような形にやっぱりどうしてもならざるを得ないので、社会保険料の負担は、かつての若者、現役世代に比べて非常に高い比率で保険料を負担しているのがこの負担感につながっているということだと思います。
それで、小塩先生も言及されたように、応能的な負担というので考えられないかという議論が起きていて、それが全世代型社会保障構築会議というものの役割であったわけです。そこで窓口負担を、金融所得あるいは金融資産との関係で窓口負担を引き上げられないかという議論が起きてきたわけでございます。
実際、この資料に出ていますけれども、こちらの十八枚目のスライドは、いわゆる純資産、資産から負債を引いた純資産で見ると、確かに高齢者の方が純資産高いと、現役世代は家を買ったり車を買ったり、子供、子育てだとかで支出が多いし、どうしても負債先行になってしまうということで、高齢者が余裕があるんじゃないかという資料が出たり、また、それは同時に高所得者の方が資産が大きいという示唆が行われたりして、応能的な負担にも合致するんじゃないか、こういう議論が行われてきたところでございます。
ただ、私も窓口負担を引き上げることに対して若干慎重に考えるべきではないかなというふうには思っています。
じゃ、どうするのかということなんですが、ここからが御提案というふうになりますけれども、福祉国家の財源を調達するには、これまでは社会保険料を引き上げるか、あるいはもう消費税を引き上げるかの二者択一というふうに考えられてきたわけですけれども、社会保険料は逆進性、あと現役世代に負担を課すと。それから、消費税もまた逆進的影響を持つのはよく知られているとおりでして、そういう意味では国民の反発が非常に強いというのもまた事実でございます。
その中で、海外見ますと、今から御紹介いたしますように、新たな税、しかも社会保障目的の言わば第二所得税ともいうべき税金を導入している事例が出てきております。
それがフランスのCSGということで、これが二十二ページに出てきているとおりでございまして、例えば社会保険料というのは実質賃金税なんですね。賃金ベースのみに課税をする、報酬比例という形で課税をする税金と見ることもできます。これに対してフランスのCSGは、実は金融所得やくじ、このスライドの下の方に書いていますが、くじやカジノなどの獲得金、それからキャピタルゲインですね、投資益というふうに書いています、こういったものに対しても課税をしていく。代替所得というのは年金ですけれども、かなり広いベースに負担を課していき、しかも日本で問題になっている、こちら、ちょっともう少し先のスライドになるんですが、一億円の壁というふうに言われる、どうしても金融所得に対しては日本の所得税法上では二〇%の税率一本であるがために、金融所得の比率が多い一億円以上の年収の方々のところはむしろ負担率が下がってしまうという現象ですね。これに対してどう対処するかという点でも、課税ベースをもう少し広げることによって、賃金だけに掛けるのではなくて、こういったCSGのように金融所得に対しても掛けていくタイプの応能的な社会保障目的税というものも考えられてよいのではないかなというふうに思います。
これは導入されてから、この二十三枚目のスライドにございますように、税率は引き上げられていっております。また、これによって、次のスライド、二十四枚目ですけれども、社会保険料という一番表の上の横の行を見ていただくと、一九六八年から右の方へ二〇〇七年にかけて社会保険料率は引き下げられていく一方、社会保険の、ごめんなさい、収入比率は引き下げられる一方、真ん中ちょっと上にあるCSGと書いてあります、今御紹介したものが四割近くを占めるようになってきていると。こちら、要するに負担構造としてはより応能的になったということでございます。
また、アメリカはオバマ大統領が、オバマ政権のときに、オバマケアというものを導入する一方で、その財源の調達に投資純利益税というものを導入いたしました。同様に、課税ベースは今申し上げたような金融所得や、それからキャピタルゲインにも課税をするというスタイルを取っております。
日本はと申しますと、日本は一億円の壁が問題になってきたぐらいでございますから、やはり金融所得を分離で二一%一本で課税というふうになってきているわけですが、さすがにこれ問題だねと岸田首相の頃から問題提起をして、石破首相のときもこれ問題提起して、でも、いずれも株価がぼおんと下落したりして、ちょっと断念、先送りというふうになってきたのに対して、ようやく対処したのが通称ミニマム税というもので、これは非常に私は大事な一歩が入ったというふうに思っております。
具体的に言いますと、図示するとこういうふうになるんですけれども、三・三億円控除されますけれども、三・三億円から国税、所得税の最高税率である四五%の半分の税率、二二・五%のラインが点線で右の方に引かれています。ここに漸近線がずうっと点線で引かれてきまして、これは、意味は、これ以下の税負担というのは幾ら何でも、高所得者であれば、以下になるというのは幾ら何でもおかしいですよねと、最低これぐらいは払ってくださいねというラインが引かれているわけなんですね。現実の税負担は黒実線で、一旦、一億円で山に達して下がっていますので、これを下回っているところがちょうど斜線で引かれている面積の部分、ここが漸近線よりも現実の税負担が下回っているエリアということになります。この斜線部分に対して課税をし税収を得ているのがこのミニマム税ということで、余りにも税金が負担が軽くなってしまうのを是正する措置として導入されました。
こちら、しかし規模感をちょっと見ていただきますと、これ本当にまだ子供のような税金でして、左、日本ですけど、納税者は三百人、日本全体でたったの三百人、税収五百五十億円、右側を見ていただくと、投資純利益税の方は何と納税者五百四十三万人、日本円にして三・七兆円の税収ということですから、国の規模の違いを考慮しても非常に大きな違いがあります。日本はもう少しこのミニマム税を拡張できるんじゃないかな、そして社会保障財源に充てられるんじゃないかなと思っております。
これが最後のスライドです。
こういった税金を入れていく上でも、やはり税収基盤として所得をどういうふうにつかんでいくか、金融所得にしっかり課税をしようとしますと、どうしてもマイナンバー制度の活用、銀行口座の付番といったことが必要になってきます。こういった税制のデジタル基盤というものの整備も是非先生方に進めていただきたいなというふうに考えております。
以上でございます。ありがとうございました。