荒畑勝三の発言 (予算委員会)

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○荒畑委員 政府が官公吏の給與改善の意思のあることを明らかにいたされましたことは、私は滿足であります。一體われわれが先きに千八百圓ベースの堅持を一應認めました事柄は、一方に生活必需品の配給を豐富にする。他方にはやみ撲滅に力を注いで、流通秩序の確立をはかつて、そうして生計費中のやみの割合を漸次に縮めていくことができ、十一月には黒字になるという政府の對策に期待したからであります。しかるにその後の傾向を見ますと、流通秩序はなかなか確立されない。やみ値は公定價格の上るに從つて上昇しておりますし、殊に十キロ十九圓から百四十八圓五十錢に値上げされた米價は、主食費の支出を五割増大させている。そうしてこのために消費者負擔は四十四億と言われ、一世帶五人家族として、まさに二百五十圓にあたるという状態であります。こういう状態で、千八百圓ベースを堅持するというのは、もう不可能のことであつて、單に役人の面子の問題で、こういう不可能を大衆、特に官公廳の職員に求めることはできない問題だろうと思うのであります。この點について十分に政府の善處を要望したいのであります。
 最後にお伺いしたのは、これと關係しましたやみ撲滅の問題であります。タバコが非常な値上りをしてをタバコの値上が一般やみ物價の騰貴を刺戟することは明白であります。家庭配給だけで千八百圓ベースを守ると申しましても、從來の消費を三割減少した上のことであつて、一般の喫煙者が三割減少の家庭配給で滿足し得るかどうかは別問題であります。またもし國民一般がタバコの減配に甘んじて、自由販賣のピースあるいはその他の新生とかいうタバコを購入しないとすれば、二百六十億の專賣益金の増加は困難となつて、豫算に大穴をあけざるを得ないことになる。安定本部は千八百圓ベースは自由販賣のタバコを計算に入れてないというお勘定でしようが、そうすると、一箇月三十億本の自由販賣のタバコは、勸勞者層以外に買手を求めなければならない。それがやみ利得者の手にはいることになりますと、正直者がばかを見るということを天下に證明するにほかならないと思います。ひとりタバコばかりでなく、主食、生鮮食料品、または繊維製品、そういうものについても、依然としてやみ行爲が今日行われて、不徳漢が暴利をむさぼつている。そういう現状を政府はどうごらんになるか、知つているのか、知らないのか。知つておればこれに對してどういう方針をおとりになるのか、やみ取引の横行と不當利得者の跳梁を默認、看過して、これで經濟危機を克服するということは、木に縁つて魚を求むるにひとしいものと言わざるを得ないのであります。安定本部長官も、新聞はお讀みになつていると存じますが、讀めば必ず私はこういう事實にお目を止められたろうと思う。それは十月十三日の新聞に出ていたのですが、十月十一日の夜福岡縣人の田中伊勢吉という六十五になる老人が、宮城前で切腹した上に首をくくつて死んだ。そしてそばに遺書があり、それには「引揚、戰災の戰爭犠牲者をよそに利得をむさぼるやつがおり、世は矛盾だらけだ。米一升三十錢、酒一升一圓のとき貯金した十年間の金も、やみ値二百倍の生活では一箇月で底をたたいた。政府の保護法なども潔く受けられぬ。二人の息子は南方で戰死、老後の夢も破れた。敗戰の苦杯を全國民で味わえ。」という遺書を殘して腹切つて、その上に縊死を遂げた者がある。こういう事實があつて、しかも一方にはやみ利得者が跳梁跋扈をきわめている。これではだれが何と言いましても、民主主義日本の再建はできないと思う。さらに最近には隣家のやみ屋の贅澤を見て義憤を起して、少年が放火したという新聞記事も現われております。現在のやみ屋の跳梁跋扈が、少年をしてかような犯罪行爲に出でさせておる。さらにその後には、あくまでやみを拒んで遂に榮養失調に陷つて死んだ判事の例もある。いやしくも今日やみを拒めと政府の要望せられる倫理道徳を守る者は、榮養失調となつて死ななければならない立場におかれておるのであります。そうかと思いますと、一方では九月三十日の晩には、淺草田島町の料享「とんぼ」で秋田縣の知事その他が飲食をいたしまして、警察に引つ張られたという例がある。十月八日の夜には中野區千代田町の貸席「みゆき」方で、遞信省總務局主計課の事務官らが飲食をして引つ張られた例もある。こういう料亭は禁止せられておるにもかかわらず、政府の權威を無視して、半ば公然と裏口營業で行われておるのであります。これに對して政府はどれほどの強力なる方針をもつて臨まれておるか。また今後臨むおつもりなのか、なるほどしばしばこれを禁止するという政府の政令などが出、またときには、そういうことに對して手入れも行われておりますが、いつも三日坊主に終つてしまつておる。先だつても勞働委員會の席上で、和田長官に私はこれについてお質しをいたしました。市中には百匁三百八十圓で白砂糖が公然と賣られている。白いコツペが賣られている。ズボンが賣られている。殊にけしからぬのは、第三國人といえども賣ることができないということになつておるにもかかわらず、第三國人が、あるいは第三國人の名をかりて公然とこういうやみ行爲をやつている者がいるのであります。それに對して警察が何の手も出すことができない。もし第三國人なるがゆえに、日本の警察がこれをいかんともすることができないならば、政府は總司令部に懇請をいたしまして、その力をかりて日本國の經濟秩序の維持のために、日本國民の生活確保のために、斷固としてこれを取締る決意があるかどうか。私はそれを政府に質したいのであります。また六月に全國暴力團刈りが行われましたが、十月十八日の現在では、檢擧數七千八百二十六人、未檢擧數が博徒、てき屋、不良千二百六十團體、五萬三千五十一人になつている。こういう團體の數がわかり、人間の數がわかつているのに、政府は斷固として取締らないのか。淺草あたりでは、芝山組であるとか、あるいは松田組とか、そういう博徒、不良、テキ屋、そういうものの親分が、依然として羽振りをきかしまして、その子分、子方が、まじめな商店を脅かして横暴を働いておる。その庇護のもとにある者は、禁制品を大道で公然と賣つておるのであります。そういう親分連は警察と通謀いたしまして、そういう子分、子方をかばつておるのであります。こういうことに對して私は政府が徹底的な手段を一日も早く講ずることを要望せざるを得ない。
 もう一つ申し上げたいのは、今日は御承知のように、住宅難ということが國民の生活上の一大關心事であります。現在日本には家のない家族が三百八十五萬世帶を算えるといつておる。そのために六疊一間が部屋代三百五十圓、權利金一萬圓もしておるという、こういう大きなやみが行われておるのでありますが、その一方において、十月六日の朝日新聞の投書欄に、國鐵と文化住宅という投書がある。その大意は省線西千葉驛に近い高臺の雜木林が忽然として百軒ほどの文化住宅街となつて、これを近所の人は特殊部落と呼んでおるそうでありますが、そのほんとうの名前は、東京鐵道局管理部高級職員住宅と言う。その建築資材というものは、國鐵の顔に物を言わせて、一氣呵成に百軒の立派な文化住宅ができ上つてしまつた。電力は省線のケーブルから直接に引込んで、電力制限で近所の主婦連がまつ暗な中で炊事をしておるときに、そこだけは戸ごとに煌々と電燈が輝いて、屋外燈はさながらイルミネーシヨンのようである。そういう記事が出ておる。ところがこれはひとり西千葉だけの例ではなくして、東京の目と鼻の先にあります池袋の鐵道局員の住宅も、この通りであります。そういう餘裕が一體鐵道にあるのであるか。鐵道はただいまも御説明がありましたように、厖大な赤字を出しておるときに、こういうことをやる餘裕が鐵道にあるのであるか。縣知事やその他の役人の政府の政令を無視した、かような不始末といい、鐵道が國民の負擔となるところの厖大な赤字をよそに、こういうような建築を勝手にやることができるということは、政府は責任をお感じにならないかどうか。これを私はお伺いして、政府はこれに對してどういう覺悟、どういう態度、どういう方針をもつてお臨みになるつもりであるか。これができなければ、國民一般勤勞者に對して、耐乏生活を求めましても、それはただ反感を挑發するだけであります。國民に一方において耐乏生活を求めるならば、一方において、こういう大小のやみ行爲というものの徹底的な取締りを行うのでなければ、國民は決して滿足するものではありません。そういう實證を見せつけて、初めて國民も喜んて耐乏をいたすのであります。そういう點について、私は政府の責任ある御答辯を承りたいと存ずるのであります。

発言情報

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発言者: 荒畑勝三

speaker_id: 23595

日付: 1947-11-07

院: 衆議院

会議名: 予算委員会