林弘高の発言 (予算委員会公聴会)

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○林公述人 ただいま鈴木委員長から指名されました日本興業組合連合會中央常任委員林弘高であります。本日は興業組合連合會及び日本映畫演劇勞働組合竝びに全國映畫演劇勞働組合、三者を代表しまして意見を述べるのであります。
 すでに新聞紙上で御承知でありましようが、映畫に對する課税の方針というものが、あまりにも重税であり、あまりにも苛酷であるという點に關しまして、われわれ業者一同は蹶起して、去年九月十一日以來、まさに本日まで連續的にこの入場税の引上に對して反對してきたのであります。すでに十五割という税額の引上に對しましては、これをあらかじめ察知しまして、九月二十六日において、まず全國の先がけとしまして、日本劇場において日本興業組合連合會、竝びに日本映畫演劇勞働組合、全國映畫演劇勞働組合、これが全部集まりまして、自由黨から上林山代議士、田口代議士、民主黨から並木代議士、社會黨から松谷代議士、第一議員倶樂部から堀江代議士、農民黨から北代議士、共産黨から林代議士、各代議士の諸氏にお集まり願いまして、その意見を聽きましたところが、完全にわれわれは反對である。かくのごとき大衆課税をもつて日本の文化の向上と言い、文化國家と言うようなことはけしからぬというようなことを個人としてわれわれ關係者に傳達し、また同時にこの入場税の反對に對して、絶對にわれわれも反對である。議會はこぞつて反對であるというところまでもつていこうというような公約にひとしい意見をわれわれは頂戴しておるのであります。しかるにやはりその公約にひとしい言明は、殘念ながら非常に微弱で、十五割というものは決定的であるというようなところに到達しましたので、改めて十一月一日にまず東京においてこの反對に對するデモを敢行しまして、この會衆は約五千人、これに對する反對デモを決行したのであります。同時に鈴木委員長に面會しまして、かくのごとき重税を課するということは、いたずらに文化の向上を阻害し、しかも大衆に對する課税である。いかにこれが國民生活は對する影響がある重大問題であるかということを述べて、これに對する善處方を要求したのであります。われわれは映畫演劇のことにつきまして、とやかく言うことは、すでに遲いのであります。皆さん御承知でありましようし、映畫の重要性、演劇の重要性ということに對して、再びこれに言及することは、われわれは殘念であるのであります。しかし戰前戰後を通じまして、わが日本においては、文化、映畫、演劇、殊に大衆文化に對する關心というものは、非常に低く、戰時中はやはり丙種であります。さりとてこれに對する利用の方は、甲種以上の利用をもつて、あらゆる面においてわれわれは戰爭能力に對して驅使され、映畫界は、縦横に活動されたのであります。しかしながら、やはり依然として戰後におきましては丙種産業の域を脱し得ず、二十二年度の通常豫算においては、約二十三億四千八百萬圓で、非常に入場税も樂である。非常に課税の對象も樂であるというような方面からしまして、おそらく今度の五割増税、十五割というような苛酷な税が課せられるように考えられるのでありますが、われわれは、まず第一にこの十五割も増税した場合におきまして、ほんとうにそれによつて四十五億が徴收し得られるかどうかということを檢討したいと思うのであります。すでに皆樣御承知でありましようが、十五割の増税によつてどうなるかということを數字的に説明しますと、われわれが業界で調査しましたところによりますと、八月の調査でありますが、二十一年の八月から二十二年の七月にかけまして、全國の映畫演劇動員數は、五億六千三百萬人であります。これに對しまして、この九月の一日以來最高五圓の入場料では、われわれはやつていかれないというので物價廳の方竝びに議會諸氏の後援によりまして、これが十圓となりました結果、どういうふうな動員數になつたかという結果を調べてみますと、全國を通じまして、約三割五分の動員が減つたのであります。これを數字的に調べますと、約五億六十三百萬人から三割五分減りまして、三億六千五百九十萬人であります。この推計からしまして、われわれが十圓と限られましたその最高價格、そして演劇が二十五圓、二十圓、アトラクシヨンが十五圓というようなことを推定しまして、一番安い五圓から上は二十五圓で、これを平均しますと約八圓五十錢になるのでありますが、これを頭數から出しますと、約三十一億一千五十八萬圓見當であります。こういうふうなことからしまして、これが入場税が十五割に上ることによつて、どういう變化が起るかということをまず推定しますと、これもまた二割五分動員數が減るのじやないかということが、われわれ業者の長年の勘によつて想像できるのでありす。二割五分減りますと、またまた減りまして、五億六千三百萬人の一箇年の動員から割出しますと、二億七千四百五十萬人というような數字が、概算できるのであります。これをもちまして、約平均額の八圓五十錢をかけますと、當然に出る公衆負擔の面、いわゆる大衆から徴税する面が、二十三億三千三百萬圓、こういう數字になるのであります。これをもちまして、ほんとうにこれに十五割かけるとどうなるかというと、約三十五億の數字が出るのであります。三十五億の數字と申しますと、これはわれわれがかつて考えました五億六千、業界では一箇年を通じて六億と申しておりますが、六億を動員することによりまして、八圓五十錢で平均すると五十一億であります。最近において三割五分というように、入場料が十圓に上りまして、そうしてこれに對する十割の税金、現行法をもつてすると五十一億の税金が漸次囘復するじやないかと考えておるのであります。しかしかてて加えまして、今日の配電状況であります。政府は今度の豫算で、こういう數字をあげましたが、この税の對象である公衆の面を考えておるのみでありまして、完全に興行できる營業状態を無視しております。これは現在民間において困つておりますように、配電關係というものは、この休電關係が、たて續けに惡いところでは一週間休んでおります。東京のような六大都市においては、まず一週に三日休んでおります。地方の進駐軍に關係ないところは五日休みまして二日間、その二日間もわずかに二、三時間しか興行できない、この面から想像しまして、この二日ないし三日、多いところで五日というような面をば考えてみますと、この點滅方法とても計畫的にやつておるわけではありません。萬事波状的な節電方法をもちまして、進駐軍關係にあらざる都市は、全部波状的な送電であります。そのために客は安心して館にこない。はいると同時に消える。それもあすくればいいとか、あさつてくればいいという確固たる目安がないのであります。そういう點から考えて、現在の數字というものは、單に全部の電氣關係が完全にできたものとしての一つの政府の豫算であります。現在横に流れておる電氣の配給というものを相當に無視した考えであります。こういうような考えで、政府がやつておるということ自體が、非常にわれわれとしては、いかにこの政治が貧弱であり、ただ數字の面だけを考え、業界のほんとうの面をば考えておらぬかということがはつきりわかるのであります。もう少し業界と密接な關係をもち、もう少し業界の動きを考えて、この租税が少くとも四十五億要るならば、これに對する徴收方法というものはもつと他にありはしないか、ただ數字の面だけで五割の増額を考えて、これでもつて、この六十五億の七〇%、全國の入場税の七〇%は映畫であります。演劇は一五%、演藝が七%、その他スポーツとか、あらゆるものにおいては約八%であります。そういう一番大事な面における徴收方法は、實に曖昧模糊とした數字から割出したものであります。こういう面をそのままやつておることによつて、われわれはどういう結果を招くかということを考えますと、現在これは單に興業者だけの聲でなくて、これを動員することによつて經營が成り立たないと思うのであります。成り立たないことによつて、勞働者の生活の安全が期し得られない。かかることによつて、かつて絶えず對立しておつた勞資が、この線におきましては完全に一致して全部が反對であります。この反對の聲はどこにあるかということをいま少し考えてみますと、御承知の通り、映畫演劇にはやみはありません。しかるにその他におきましては、全部がやみであります。この成りたち得ない入場税の増額によつて、われわれはいかにしても從業員の生活の安定を確保することができない。ただいま話しました一つの動員數の減ることによつて、完全にわれわれは從業員の生活の安定を確保できないということが、十分に言えるのであります。試みに全國におきまして、映畫館は約二千館ありますが、このうち平均大體月十五萬圓見當の館が約千七百館、封切館と申しまして月約四十萬圓以上の館が約二百館あります。その他月四萬圓というような、非常に寒村僻地のところにあります館が、約二百館あります。この全部の館の經營から考えまして、もしこれが現在電氣の配給も十分であり、そうして十分な資材の供給のもとにわれわれがやるならば、現在映畫の製作、映畫の興行、演劇の興行について、決してわれわれは政府に訴えて税金の増額に對して反對はしないのであります。御參考までに興行の内譯を申し上げます。興行の大體の經營状態として、普通總興收の五割三分を映畫とニユースにあてておる。一割五分は家賃にあてておる。それから一割ないし一割二分を宣傳費にあてておる。その他あらゆるこまかい消耗費を一割とみておる。人件費は一割ないし一割五分と仰えておる。これをもつてしても、總計九八%、利益を度外視しても、大體九八%ないし九〇%が現在の興行の總經費でありまして、これに對する業者の利益は一割ないし、現在最低で二分ないし一分という低額であります。これをもしただいまの數字をもちまして、電氣の配給が現在の一週間に二日ないし三日、あるいはきついところで五日というようなところを參酌しますと、大體興收そのものは約半額になります。二十萬圓が約十萬圓、五十萬圓が約二十五萬圓、大體そういう數字でありますので、經營は落ちないが、收入は全額においてまず半減するので、業者は經營不能になり、當然從業員の生活に對する保障ができない結果になるのであります。これが現在の業界の非常なあからさまな状態であります。ここに全國的に期せずして從業員も經營者も一體となつて、この入場税に對して反對をする根據があるのであります。われわれは往々にして敗北しに國民は映畫を見る必要がないではないか、芝居を樂しむ必要がないではないかというようなことを聞くのでありますが、一國の文化は、そういうような戰爭に負けたとか、負けないとかいうことに大きな影響をします、あすの勞働に對するほんとうの慰安は、今日映畫、演劇をおいて他にないと思うのであります。しかるに最近映畫も必要であるが、映畫の影響はよろしくない。戰後エロチツクな、非常に下劣な映畫が多いではないかということをまま聞くのでありますが、元來戰前戰後を通じて、日本ほど大衆映畫、演劇に對する關心をもたない政府は、おそらく今日まで聞いたことがないのであります。少くとも文化の向上、文化の基礎は、政府それ自體がそれに對して關心をもつ、もたぬによつて、その推進力に大いなる進歩發展があるのではないかと思うのであります。しかるに殘念ながら、わが國においては、あらゆる面から考えて、未だに丙種産業からこれが脱し得ないというところに、國會それ自體、いわゆる政府それ自體、これに對して關心をもたないことを物語つている。そこにわれわれ民間の藝術、民間の娯樂、民間の文化というものが發展し得るかどうか、はつきりわれわれはつかみ得ると思うのであります。今日この状態でいきますと、まず映畫も當然でありますが、最近の状態においては、芝居は滅亡に近い状態になつておる。戰前と比べますと、約二千百館ありました映畫演劇の興行場のうち、約三割は芝居の館であり、演劇の館でありました。ところが最近におきましては、燒けた關係もありますが、芝居はすべて中央からシヤツト・アウトされて、ようやく地方においてその餘命をつないでおる状況であります。それはなぜかというと、今の丙種産業もさようでありますが、あらゆる面から考えて、芝居に對する動員數が少くなる。芝居は映畫と違いまして、映畫はかりに千萬圓かかりましても、プリントが約十五本ないし二十本つくられますので、この點まだ十分な進歩發展がありますが、最近においては、芝居に對する關心、芝居に對する大衆的力が、今日の状況でいきますならば、全部が全部物資の暴騰、俳優の暴騰、その他入場税の苛酷な課税によつて、すべて芝居を見るよりも、映畫の方がいい状況になつておるのであります。最近の有樂座の調査によりますと、これはちよつと高級でありますが、昭和十七年十一月と本年十一月の公演費、入場税、入場料金の對比をあげてみると、仕込みその他の經費から考えて約三十八倍になつております。これはエノケンを參考にしたものであります。それから昭和十七年と今日と比べますと、今日入場料は四十圓で抑えられている。昭和十七年の入場料は、わずかに二圓五十錢、それから考えますと、入場料は十六倍でありまして、諸經費は三十八倍、これでは當然バランスとれない。あれほどはいつた芝居がどうして赤字であるかという點は、こもごも話しますとわかるのでありますが、まず經費の膨脹、あらゆる面における人件費の膨脹という面において、芝居というものは、當然今日成り立ち得ないという點が、あらゆる角度からはつきりしたのであります。この點に關しても、芝居というものは、必要であるかないかという點等も、もう少し考えていただかなければならぬと思います。なお歌舞伎でありますが、これは國家に必要な歌舞伎であるという一つの考えもありますし、また殘しておかなければならぬ傳統的なものの一つであります。この歌舞伎でさえも、本年の七月、八月に對する赤字は、七月は約十五萬、八月は大體百二十萬の赤字が出ております。八月の興行はたまたま吉右衞門が倒れました結果でありますが、これとて倒れなくても、やはり二十萬近い赤字が出るのであります。あらゆる面から考えて、芝居ですら入場税の増額によつて、ますます偏頗的に一般大衆が見られなくて、やみその他やみの階級に近い人しか見られない芝居の状況であります。こういうことが、國の政治としていいか惡いかということも、一考していただく必要があるのではないかと感ずるのであります。同時にわれわれが考えておりますのは、現在の免税點は約二圓であります。この二圓の免税點で何ができるか。六・三制を考えても一番必要である學生の面とか、あらゆる面から考えて、免税點がただ二圓であるというのは、申譯的な數字であると思います。これとてももつともつと必要であれば、最低五圓までの免税點に引上げていただいて、よき映畫であるならば、これを學生諸子に免税で見せるということも、大幅に考えていただきたいというのが、われわれ業者の意見であります。われわれの窮状は、どこまでも今日の十五割でいくならば、四十五億の數字は絶對に止らぬ。逆に十割でありました當時の水準を、より以上もつていく方が結構ではないか。八圓五十錢の平均數字が約六億に達するとするならば、この數字でもつて一般大衆課税に對する負擔は輕減し、一方それに對する電氣の配給量をより以上考えていただいて、これを實行していただくならば、もつともつと徴收方法は十分にいくのではないかという確信を業者はもつております。その以外において、もつと國會において映畫に對する關心、あるいは映畫に對する品位向上會というものを設けられまして、よき映畫には完全に免税する。同時に惡い映畫に對してはどうである、こうであるという問題は、この審議會の運營で、民間と政府兩方が完全に一致するならば、もつと進んだ映畫ができ上るのではないか。そしてその進んだ映畫によつて、今日の十五割をこのまま十割の減税におき、さらにもつと業者の協力を得て、徴收方法を考えていただく方が、もつと效果があがるのではないかというようなことを考えておるのであります。ドイツのことは知りませんが、戰後フランスにおいては、四十割の映畫入場税を課しておりましたが、聞くところによりますと、これを免税にいたしたようであります。さらに現在アメリカは一割七分、英國においては一割であるというようなことを聞いております。國に對するわれわれのほんとうの要求は、現在このままで行けば、外國映畫が氾濫して、日本映畫は危機に頻する。われわれは敗戰國でありますから、その結果に對し云々はできませんが、もしわれわれがほんとうにいい映畫をつくり、いい演劇をつくろうというならば、今日よりして、政府にもつともつとこれらに關心をもち、映畫、演劇に對する保護政策を具體的にあげていただいて、そうして一般大衆に對する課税を、もつともつと輕減することによる、民間の協力と、徴税方法というものを、われわれとともに考え、これを實行していただきたいというのが、私の本日の意見であります。時間もありませんので、この程度にして終ることにいたしますが、何か御質問でもありましたら、お答えいたします。

発言情報

speech_id: 100105262X00219471112_018

発言者: 林弘高

speaker_id: 731

日付: 1947-11-12

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会