久下勝次の発言 (在外同胞引揚問題に関する特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○説明員(久下勝次君) 只今御質問になりました樺太の歯科医師の取扱いにつきましてのお答を申上げます。お答をいたしますのに、直接御質問と関係ないかも知れませんけれども、御関係のことでもございまするので、廣く一般問題に関連して御説明を申上げたいと思うのでございます。
終戰後樺太のみならず、朝鮮、台湾、満洲、或いは中國、南方諸地域に各種の医師制度がございまして、この方面から帰つて参りまする医師、歯科医師につきまして、如何なる取扱をすべきかということにつきましては、私共といたしましても、愼重に考慮をいたした積りでございます。申すまでもなく、医師、歯科医師は人の生命に関する仕事をいたすものでありまするので、この免許につきましても、極めて愼重に考える必要があると思うのでございます。樺太、朝鮮、台湾というような外地につきましては、実は終戰時までは内地の医師制度と異つた特別な医師制度が行われておりましたのでございます。その理由は、主として内地の医師、歯科医師の免許を持ちました者は、外地におきまして医療に從事するということが余り行われませんので、それぞれの外地におきましては、内地における医師、歯科医師よりも程度を下げました医師、歯科医師の制度を設けまして、そうしてその地の住民の医療を担当さしておりましたのでございます。朝鮮、台湾におきましては、これが段々人も殖えて、医師、歯科医師が殖えて参りまして、最近におきましては逐次にその資質の向上を図つておりましたのであります。樺太につきましては、全然内地と同じような医師制度が一方において布かれますと同時に、今申したようないわゆる現地開業医、開業の土地を限りまして、或いは開業の期限を限りまして医師、歯科医師の免許を與えておりましたのであります。これらの以上申上げましたような外地或いは満洲その他の各地におきますその土地々々の医師制度につきましては、終戰後できる限りの調査もいたしまして、先ず第一にこの人々に対しまして、内地の医師免許を與える資格があるかどうかということにつきまして、十分愼重な考慮をいたしたつもりであります。そういたしまして、結局私共として制度として取上げましたものは、先ず全般的に申しました場合は、いずれも先程から申したような趣旨でもあります関係上、内地の医師に比較いたしましては、全般的にその能力が低いということは爭われない事実でございましたが、併しながら朝鮮、台湾及び満洲の開業の地域、或いは期間を限られない、いわゆる私共では現地開業と申しておりますが、現地開業にあらざる医師、歯科医師につきましては、特別な措置を以ちまして、簡便に内地の医師、歯科医師の免許を與え得る道を開きましたのであります。残つておりますのは、御質問になりました樺太の現地開業医、朝鮮、台湾、満洲、更に南方方面でやつておりました医師、歯科医師であります。これらはいずれも今申上げました一應簡易な方法で免許を與えますようにいたしました者と比較いたしまして、更にその程度が低いと考えられます。これにつきましては、現在の医師、歯科医師の制度から申しますると、どうしてもこのまま免許を與えるということにできない事情にあるのでございます。尚この点につきましては、余談でございますが皆さんにお聞き願いたいと思いますることは、昨年の九月以降関係方面の意向もございまして、内地の医師、歯科医師の制度を非常に向上をいたしましたのでございます。即ち医師、歯科医師につきましては、その教育機関をすべて大学の程度に上げなければならん。更に又学校を卒業いたしました者につきましても、医師につきましては更に一年間病院で実地修練を行い、その後に一律に國家試驗に合格しなければならない。その後でなければ免許を與えないという制度に変りましたと共に、歯科医師につきましても、学校卒業後更に國家試驗を受けて、そうしてその上でなければ内地の医師免許を與えないという、根本的な制度の改善が行われておるのであります。さような関係で、從来の制度のままでさへも内地の医師、歯科医師の免許の扱いにつきましては、以上申上げたような事情がありまする上に、更に今申上げるような関係で、内地の医師、歯科医師制度そのものが、非常に程度を高くすることになりました関係で、益々以てこの問題につきましては、極めて困難な事情があるのでございます。尚私共といたしましては、この点につきましては、関係方面と十分連絡をいたし、そういう特別なお話のような事情も十分承知をいたしておるつもりでございまするので、なんとか便宜な方法を採りたいと思いまして、種々昨年の、一昨年と申してもよろしいのでございますが、主として昨年の秋以來、たびたび折衝をいたして見ておるのでございまするが、只今までの状況といたしましては、これ以上に外地引揚の医師、歯科医師に対しまして、免許の範囲を拡げるということは、先ず不可能と申してよろしいような実情に相成つております次第であります。併しながら折角彼の地でそれぞれ医療に從事しておりました人々で、衛生方面に対しましては相当な知識なり、技能なり持つておられる方々でありますので、なんとか内地におきましても、この技能を活かして行きたいということを考えまして、本年春以來、全國的に約六百七十ケ所程ございます保健所にいろいろな衛生指導の職員を増置することに相成りましたので、この方面に外地の医師、歯科医師で、内地に免許を與えられないような人につきましては、優先的に採用して、そうしてその持つております衛生上の知識、技能を十分生かして頂く、同時に又このことが、この人々の生活の一助にもなるというような意味合で、本年の春に、地方廳に対して厚生省から通牒を出して、取扱いをいたしておりますような次第でございます。大体御質問に対して以上申上げます。