山下義信の発言 (本会議)

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○山下義信君 私は質問をいたしまする前に、先ず政府の当局者に念を押して置きたいことがあります。それは今回の経済緊急対策が六月十一日に発表せられ、続いて國民運動の要綱、或いは食糧緊急対策、或いは経済実相の報告書、或いは物價と賃金の改訂要綱、それらの幾多の当局の政策要綱が発表せられて來たのでありまするが、それがこの國会の御発表がいつも後廻しになつておるということは、これは一体どういうわけでございますか、(拍手)國会は只今開会中であります。開会中であるにも拘わらず、一般への御発表が先でありまして、職員は朝新聞を見て初めて知るというがごときことは、我々の頗る了解に苦しむところでございます。(拍手)先般羽仁五郎君からこの点につきまして、意味は違いますが、羽仁君は國会の名において発表したならば効果的であろうという意味でございましたが、本員は一般に御発表に相成る前に先ず國会に御発表相成るかどうか、今後は左樣になさるかどうかということを政府当局からはつきりと御答弁が願いたいと思うのであります。(拍手)
 私は今回御発表に相成りましたる経済白書、これが根本になりまして左右両翼に展開されておりまするこの内閣の経済緊急対策、それらを通覧いたしまして、なかなか構想といたしましては纏まつております。なかなか文章も巧みでございます。殊に経済白書のごときは名文でございます。或いは講義がございます。或いは説教がございます。或いは訓戒がございます。泣くがごとく、訴うるがごとく、誠に名文ではございまするが、(拍手)併しながらこれらの緊急対策、これらの白書の中に私は肝腎なものが拔けていると思う。肝腎なものは何であるか、生きた政治が拔けていると私は思うのであります。(拍手)それはどうしていうかと申しますと、これらの経済対策というものが悉く実体のあとをあとを追つかけているところの対策ばかりでございます。言いかえて申しますると、後手の政策ばかりでございます。後手の対策をごてごてと並べている。(笑声、拍手)生きた政治というものは先手を打つことでございます。(拍手)先手を打つて、そうして新たに経済現象がここに発生するがごとき、大きな力強い対策がたつた一つでよろしいから私はこれを断乎としてやるべきであると思うのでございまする。安本長官は力強い先手をしつかりとお打ちになりまする御決意がありまするかどうか、又その対策の中にそういう先手の対策がありまするならば承りたい。こういうふうに実体に遅れまして、後手々々の対策ばかりいたしまするから、闇屋はにんやりと笑つておるのでございます。正直者が浮ばれないのはこれがためでございます。この点につきまして私は安本長官の御説明、御決意が承りたい。この内閣の経済緊急対策、即ち白書の中心点となつておりまするところはどこにあるかと申しますると、これはいうまでもなく‥‥焦点がないと仰しやつた同僚議員がございますが、私はそれに同意いたしません。焦点はあるのであります。どこにあるかというと、即ち物價と賃金との惡循環を断ち切る、ここに狙いを持つておいでになります。私達もそれは同意いたしまする。併しながらその狙いに対するところの対策というものがなにかあるかといいまするというと、極めて微温的なものばかりでございまして、今いつたごとき先手の大きな大鉈というものが少しもございません。そこで我々はこの統制経済の方式の下に、果して物價と賃金とが、あの白書で非常に憂慮せられておるがごとき惡循環がありやなしや。これに多大の私は疑問を持つているのでございます。物價と物價との間に惡循環があるといい、物價と賃金との間に惡循環があるというがごときは、私は自由主義の経済原論の目で見た経済の考え方かと思うのであります。この統制経済の方式の下におきましては、物價と物價、物價と賃金との間に少しも惡循環というものはないのであります。もしあるとしましても、極めて稀薄であるべきが私は原理ではないかと思うのであります。若し白書にいうがごとく、この物價と賃金との間に惡循環ありとしまするならば、これを断ち切る手というものは、物價と賃金とのバランスを保つということより以外に手はないと思います。然るに今日の物價と賃金の改訂要綱を見まするというと、御承知のごとく物價は六十五倍に上げておいて、そうして賃金は頗る低いところに止めておかれておる。物價と賃金を不均衡のままにおいて、そうしてこの循環を断ち切るとは自己矛盾も甚だしいではないか、この点について安本長官の私は御説明が承りたいのであります。若しそれ政府当局者は、名目賃金はあそこのところに止めておくけれども、いわゆる千八百円のあの平均水準に止めておくけれども、実質賃金として引上げる考であるとおつしやるのでありますが、物價は六十五倍に上げた。それが既に昨日からその値段で配給されております。然るに実質賃金の充実引上げというのはいつ具現いたすのでありますか、それが具現いたしますまでには時間の或る間隙というものがあるに相違ないと思う。間隙の間はいわゆるこの物價の騰貴に対する賃金の切り捨であるに相違ないと私は思うのでございます。なぜ安本は思い切つた、当局は思い切つた賃金の大巾の引上げをやらないのであるか、若し物價と賃金の惡循環ありとするならば、物價より低きに賃金を止めて置くことも亦惡循環の原因ではないかと私は考えるのであります。この実質賃金というものを引上げてやる。これは私はそういう賃金形態には賛意を表しますが、併しこの実質賃金を引上げるといつて、名目賃金を抑えて置くことは、これは只今はよろしいけれども、併しながらやがて來るべき失業が生じましたときには、これは失業手当をやらなければならん。解雇手当をやらなければならん。その失業手当なり、解雇手当なりの算出の基準は名目賃金に置くや実質賃金に置くや、私は米窪國務相に伺いたい。若し名目賃金に置くというならば、やがて來たるべき労働恐慌、この整理されます失業者諸君に対しては、低い名目賃金で失業手当を與えるというがごときは(拍手)そもそも巧言令色鮮きかな仁といわなければならん。私はこの点につきまして当局の御答弁を承りたい。
 最後に重大なることをお尋ね申上げます。それは今回発表相成りましたる経済白書というものは、いかにも今日の日本の経済実相が報告せられておると仰しやいますが、併し私はこれは半分しか御発表に相成つておらんとしか思えないかと思うのであります。いわゆる民間の、國民の経済資料はお集めになつた。併しながら政府のお持ちになつているところの物資です。厖大なる物資です。國民がいろいろな疑惑で眺めておるところの物資、なにをどのくらい政府が握つているかということの実情が、少しも報告せられておらないことでございます。今日の日本の経済は國民の経済、國民の持つておる物と政府の持つておる物と、その全貌を悉く発表いたしまして初めて日本の経済実相が明白になるといわなければなりません。今日の経済秩序の混亂、或いは政治理論の貧困とか、或いは無為無策の結果とか、いろいろと議場におきまして御議論がございましたが、それは議論。実際はです。終戰以來あの膨大な軍用物資が無秩序に放漫にこれが処分せられたことが、今日の経済秩序の潰乱、道義の頽廃の原因を成すものである。(拍手)而してその続きといたしまして、政府が統制経済の、これは当然ではありまするけれども、多数の物を握つておる。この物がどれだけあるか、どこにあるか、なにがあるのかということを明白にいたさなければなりません。見よ、経済関係の各省の玄関には数十台の自動車が朝夜取り巻いておることは、この物を狙うところの一部の餓鬼共が集まつておる事実ではございませんか。このことが明らかにいたされなければ、政府がどのようなことを仰しやいましても、國民が政府に対して、政治に対して信頼するということは不可能であると思います。殊に昨日新聞を見まするというと、やはり御承知の世耕機関事件でございます。この新聞記事の中には、安本には軍服が二三百万著あるということが述べられております。果してこれは事実でございますかどうか、御答弁が承りたい。又かくの如き事件が沢山ございまするか、司法当局は世耕機関についてどの程度まで眞相が御糾明に相成つておるか、その途中の経過を当議場におきまして御発表相成るのが至当であると私は考えるのでございます。私は経済白書から、政府の持つておるところの物資を、これを國民に明らかに示すことを経済黒書と申したい。この経済黒書の御発表相成るところの意思がありや否や。片山首相にお尋ねいたしたいが、御不在で、又片山首相にお代りになるところの西尾國務相か、或いは芦田外相、副総理かその辺が分りません。どちらかお決めになりまして、御答弁が煩はしたいと思う者でございます。私の質問いたしたいという要点は以上のごとくでございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 100115254X01419470709_006

発言者: 山下義信

speaker_id: 13475

日付: 1947-07-09

院: 参議院

会議名: 本会議