木下辰雄の発言 (本会議)

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○木下辰雄君 私は先般発表されました経済緊急対策、いわゆる危機突破対策に対しまして、水産という立場から二三意見を述べたいと思います。先日來この議場の質答應答において、主要食糧に関する問題は十分論議されたと思います。併しながら水産の問題については殆どなかつたことを私は遺憾に存じます。固より主食の増産確保ということは、現在において最も必要なる事項でありましよう。併しながらこれは如何に力を盡し、如何に工夫を凝らしても、到底不足する。その不足をどうして補うか、如何なる物を以て補うかということは、現下の最も重要な問題であろうと思います。固より輸入物資の懇請も必要であります。併しながら政府も申されている通り、日本におけるあらゆる政策を講じて尚且つ足らん場合に輸入物資を懇請すべきである。これは本日のマツカーサー司令部の御声明にもありました。然らばどういう施策があるか、我が國の食糧増産にどういう施策があるかと申しますると、これは現下の状態として水産物の増産加工が最も緊急であり、これ以外にないと固く信ずるのであります。我が國は水産國であります。四囲の海洋は世界に稀れなる水産資源があります。戰前においては優に二十億貫を突破する生産を得たのでありますが、戰爭のために非常に激減いたしまして、現在においては僅かに五億貫以内であつたのであります。本年においては私共八億貫の生産目標を立てまして、その実現に努力いたしておりまするが、若し政府が十分に力を入れますならば、恐らく八億貫はおろか、それ以上の水産資源も決して不可能ではないと固く信ずるのであります。歴代の農林大臣が水産を決して無視しておつたとは申しません。併しながら少なくとも熱意が足らなかつた。幸い現平野農林大臣並びに和田安定本部長官はこの水産物の増産加工に非常に熱意を持つておられる。そういう見地から私は政府の御所信を問いたい。
 第一は水産行政の問題であります。現在こういう主食を補う重大なる水産物の増産加工をなす行政官廳は農林省の一局であります。片隅に小さな水産局があるに過ぎません。そうして漁船は運輸省の所管であり、資材は商工省に残つておる。水産局は僅かに許可であるとか、免許であるとかいうような事務的の仕事をしておるに過ぎない、これでどうして水産が進展いたしましようか。数十年來水産業界においては水産省設置を唱えておる。これは輿論であります。昨年の衆議院におきましても水産省設置の建議案は滿場一致通過しておる。然るに今まで水産廳さえもできていない、農林大臣は本議場において將來は水産廳を作ると言明せられておる、何時作られるか、どういう構想で作られるかということを、この際はつきり御尋ねして置きます。
 次に漁業用資材でありますが、先に山下義信君からもお述べになりましたが、非常に隠退藏資材が多い。我々は重油並びに魚網につきましては連合軍の非常なる厚意によりまして、先行は決して悲観しておりません。併しながらその他の資材は殆ど二割以内が配給されておるが、後は殆ど闇であります。闇ではどうやらこうやらとにかくある。この闇を徹底的に摘発するということは現下の急務であります。政府はこの経済緊急対策の中に隠退藏物資を徹底的に摘発する云々ということが書いてあります。どういう御方針によつて摘発するか重ねてお伺いしたいと思います。これは國民が納得が行くように一つ具体的の方策をいつて戴きたいということを私は申上げて、政府の所信を伺いたい。
 次はこの緊急対策の第一の第四にこういうことが書いてあります。「主食の中心が当分米以外のものとなることは避けがたいので、食生活の改善、特に蛋白資源の確保に重点をおき、鮮漁介の統制を確実に実行するとともに加工水産物にもその適用範囲を拡大する。」確実に実行するということが謳われております。この見地から現在の水産物の集荷配給の機構ができ上つたのであります。これは現在の機構を見ますると、私共果して政府の機構がうまく運行できるかどうか甚だ疑問を持つております。例えば例を東京都に取つて見ますると、東京都においては二十四の入荷機関を東京都は許可した。その條件は一團体は資本金二百五十万円以上の会社、若しくは組合でなければならん。もう一つはこの六月中に、先月中に六万貫の魚を加工しなければならんというような條件の下に二十四團体に許可を與えたのであります。そのために二十四の團体は非常に努力をして、そうして集荷に奔走した。そうしてその手数料は僅かに三分に協定されている。この三分の手数料を……、現地に集荷人を派遣してあらゆる方策を講じて六万貫の集荷に努めたのであります。しかのみならずこの六万貫の集荷をするために二割或いはそれ以上の‥‥二割と申しますのは賣上高の二割、それ以上のものを生産者に現金を交付して、そうして魚を集荷した事実が到る処にあるのであります。これほど努力してやつても、それで六月末においては二十四團体の機関は総て数十万円の欠損を來たしている。こういうことで決して機構が成立つ筈がないと思う。いずれは收支のバランスを合わせるために闇のほうに轉換しやしないかということを私は非常に憂慮する。これに対して、これを作られた政府の御方針、將來の御監督、そういう点についてはつきりした御見解を承りたいと思います。
 次には水産教育の問題であります。これはこの第一の第九項に「水産の増加をはかるため漁業の科学化」ということがあります。水産業界においては未だ一校の大学もありません。又水産專門学校というものが國立が僅かに三つ、後は私立が二つばかりあります。殆んどいうに足りません。今後の水産の重要性に鑑がみて政府はこの水産業をどういうふうに持つて行くかということについて(拍手)十分なる一つ御熱心な御研究を願いたいと思います。
 それからその次に、現在水産業團体法による團体というものは近く解散になります。これに代るべき水産協同組合の法案並びに漁業法中改正法律案、これは私共非常に提出を要望しておりますが、政府はいつ出されるか、本議会に出されるかどうかということを一つはつきり御明答願いたい。まだ二、三ありますけれども、時間が参つたようでありますから、私の質問はこれにて終ります。(拍手)
   〔國務大臣平野力三君登壇〕

発言情報

speech_id: 100115254X01419470709_014

発言者: 木下辰雄

speaker_id: 7473

日付: 1947-07-09

院: 参議院

会議名: 本会議