栗山良夫の発言 (本会議)
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○栗山良夫君 片山内閣が盲政治の打破の一方便として経済危局の実相を発表せられましたことにつきましては、一應敬意を表しまするけれども、併しこの問題をめぐりまして、現在輿論は大勢悲観説に傾いておるのであります。而も賃金の釘付け、マル公價格の大幅引上げによりまして、勤労階級は明日の生活の戰慄すべき状態を思い、今日只今この議場の討論よりも、より眞劍な、より現実的な討論が、全國の勤労階級において巻き起されておることを、我々は知らなければならんのであります。(拍手)私共はこの労働者の、勤労者の不安を一掃するためにも、この不安の根抵をこの機会を通じて一掃すべく努力をしなければならんと思うのでありまするが、既に緊急経済対策の矢は弦を放れたのであります。若しこの対策が失敗に帰せんか、一片山内閣の問題ではないのであります。日本の経済は重大なる破局に追込まれることは必至でありまするが故に、どうしても成功をさせなければならんと思うのであります。この意味において、私は勤労者の立場から重要なる三点について質問を申上げたいと思います。我々の了解の行く具体的な明快なる答弁をお願いいたします。
質問の第一は報告書の不備杜撰な点を一点指摘したいのであります。白書全般を通じて我々勤労階級が直感いたしましたことは、國家経済の危局を理由といたしまして、勤労階級の犠牲と耐乏とを理論付け合理化するためにあらゆる努力が傾注された跡が、歴然と見えるのであります。(拍手)一家の経済に國家の経済をたとえ、國民総耐乏も結構であります。けれども國民の中で特に苦しい犠牲を要求されておるところの勤労階級を了解納得させるためには、重要なる点において説明の不備を発見するのであります。即ち現在新円階級を含めて、國民各層の貧富の差による、又戰爭の犠牲の程度による生活苦の差は、実に甚だしいのであります。(拍手)然るに勤労者の明日の苦悩の生活を思わず、料理飲食店の休業前の七月四日、全國の料飲店に展開された飲み、食う、歌うのあのらんちき騒ぎは一体誰がやつたのか。又経済緊急対策において、或いは首相の演説において、新円所得者には重税を課すると宣告されたが、これに対して殆んど反対の声を聞かなかつたのであります。敗戰下の欠乏社会にこのような不自然な状態が存在することは誠に遺憾であります。これでは國民の総耐乏、奮起など望むべくもないのであります。政府は何故率直に、新円階級を含めて、國民各層に於ける生活余裕度に関する詳細なる資料を以て、國民各層における生活耐乏可能の枠を示さなかつたか。これを伺いたいのであります。
次に政府は統計において本年四月の労働者の生活費は黒字であると発表せられましたが、労働者は正直であります。いかに悲観的な材料が宣傳せられても、食えさえすれば默つて働くのであります。又いかに樂観的な材料が宣傳せられましても、食えなければ現実の問題として血の叫びを挙げざるを得ないのであります。(拍手)私は終戰以來、インフレと闇のために次々重加して來るところの生活苦悩の叫びが何故政府当局に届かないのか、遺憾に堪えないのであります。昨年の秋に比して、四月の状態において、我々の承知しておるところでは、生活費は二倍に昂進しておると信じておるのであります。然るにこの四月が黒字であつたというがごときは、当局の完全なる実情無視の作文であると談じたいのであります。(拍手)この二点について安本長官の明快なる答弁をお願いいたします。
次に質問の第二点は、新賃金体系と物資の裏附けの問題であります。暫定平均賃金の決定をめぐりまして、給與審議会では政府と労働組合とは鋭い主張の対立の状態にありまするが、政府はこれに対して円満なる解決を待つことなく、業種別平均賃金を策定し、事実上賃金のストツプ令を発表いたしたのであります。勤労階級の要求は決して名目賃金の引上げではなく、最低生活の維持のためにする実質賃金の要求なのであります。政府は業種別平均賃金の策定に当り、必要物資の完全なる裏附けを確約しておりまするが、労働者は又仮約束かと、國民の政治に対する信用を失墜せるために、反対をいたしておるのであります。政府は万難を排してその約束を実行しなければならないと思うのであります、然るにマル公價格の改定に伴う労働者の生活費の赤字七百五十円の中の主要部分を占める五百円は、主食の確保によつて保障すると言つておるのでありますが、農林大臣はその口の下から十月までの一箇月の欠配を宣告いたしました。そうして而もこの問題について方々から、衆議院といわず、参議院といわず、或いは新聞の座談会においても、農林大臣は殆んどどこへ行つても同じ答弁を繰り返しておるのであります。何回となくどこにおいてもこの問題が質問に出されておるということは、いかに國民が眞劍にこのことを考えておるかということであります。我々の要求しておることは答弁ではない。答弁ではなく、直ちに明日からでも実行されるところの裏附けを要求しておるのであります。(拍手)我々は今直ぐにでもこの今までの欠配を直ちに取戻すところの対策の実行を迫りたいのであります。若しかくのごとき状態で進むならば、勤労階級の政府に対する信用は完全に失墜するであろうということを私は論じたいのであります。この点について農林大臣の責任ある答弁をお願いいたします。
次に第三は闇の追放の点であります。歴代の内閣は今まで何回となく闇の追放を叫び、具体的取締りをしばしば行いましたが、そのたびに大闇は逃がし、小闇は線香花火的に終らせ、その結果はどうであつたか。現在の政治力、警察力を以てしては絶対に撲滅不可能という印象を國民に強く與えまして、取締りの都度政治的信用を失墜しておるのが現状であります。併し闇の撲滅が物資の裏附けと共に今度の緊急対策成否の鍵であるならば、私は恐らく政府にもはつきりした具体策があると思うのでありますが、どのような手を以て永続的に、而も絶対的な闇封じの政策を行わんとするか。司法当局、いや総理大臣にお伺いいたしたいのであります。殊に私は甚だ遺憾に堪えないことは、昨日の東京の或る新聞におきまして、政府は料飲店に廻す予定であつたところの業務用の酒が閉店によつて不要となつたために、これを自由販賣して、三十億乃至五十億の収入を見込んでおると報じておるのであります。自由價格の追放、闇價格の追放を叫ぶところの現政府が、まだその政策の緒に着かない今日において、かくの如き信ずべからざる見解を以て自由價格の販賣を行わんとするならば、私共は断乎としてこれを糾彈しなければならんと思うのであります。(拍手)この眞相について、やはり大藏大臣からはつきりとした答弁をお願いいたしたいと思います。
以上三点について、我々の了解のできる……今までのような曖昧な、答弁のための答弁でなく、私共が明日からの勤労に直ちに意欲を発揮し得るような点において御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕