栗山良夫の発言 (労働委員会)
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○栗山良夫君 今逓信大臣からいろいろ事情をお聽きしまして、政府側の考えておられること、採られた処置については大体明らかになつたわけでありますが、問題はこの日々深刻化して行くところの生活、特に私は官吏労働者諸君に非常に同情をしておるものでありますが、生活苦の中におきまして大体こういう事件が持つ上つたことについて、この火を消すに余りに急であつて、組合に対して相当嚴しい手を政府は考え、すでに打たれておるのであります。問題は仮りにこの火が消えましても、根本的な問題が政府の手において十分に解決されなければ、又再び第二、第三の事件が起ることは必須であります。今年の二月一日の未完成ストライキの後、満一年を経過しない中に再びこういうような大きな労働紛爭が起きて來た。この根底はやはり官吏労働者諸君の生活苦の嚴しさを端的に表明しておるものと私は思うのであります。仮りに現在業種別の平均賃金はすでに國会において七月以來論議し盡されておる。今更これについて何も申す言葉を持たないのであります。結局民間の労働者は業種別平均賃金の枠におきまして、企業が許すならば團体交渉によつて待遇改善をやつて行く、こういう政府の見解に基きまして、すでに多数の民間労働者は千八百円の枠を越えて実質的の待遇改善を受けておる。然るに政府におきましては「國家財政」云々、「國情の許す限り」、こういうようなことを名目にされまして、実質的に官吏労働者のみは千八百円の枠を超えるどころではなくて、更に下廻つておるのであります。これは政府当局者の方々が一番よく知つておる実情であろうと思うのであります。私は「國情の許す限り」という限界でありまするが、現在の國情の許す限りということは結局國家財政に直ちに繁がつた問題でなければ解決の余地はないと思うのでありますが、國家財政の今度の追加予算案の組立て方を見ましても千八百円の維持をするために政府が國民に大きな約束を沢山されております。そうしてその約束は殆んどどれもこれも効果を現わさない中に、更にその根徹を崩すような大衆課税的な税金或いは物價の引上げをどしどしやつてこれで以て勤労階級に生活の耐乏に堪えろ、こういうことを言われても、これは毎日嘗めておるところの生活の辛酸から迸るところの運動であるならばこれは決して抑えることはできない、こう心配をする者であります。從つて過日私は総理大臣にも税に関するところの質問書を提出いたしまして、政府の所信を明らかにし、そうして更にあれをよく研究をいたしまして、第二、第三の質問をいたしたいと考えておりまするが、要するに政府はこの際今までのいろいろな行き掛りを捨てまして國家財政をもう少し根本的な立場において確立される必要があるじやなかろうか。即ち総理大臣が内閣をお作りになりました劈頭において、力のある者は力、智慧のある者は智慧、資力のある者は資力を提供して日本の再建をしようではないか、こういう呼び掛けをされたのであります。ところが現実におきまして私は最近も関西で聞いた話でありますが、一部においては一尺祭り、一貫祭りということが盛んにいわれておる。新円を一尺積めば、或いは新円が一貫に達すればお祭りをする。そうして新円の山を積んで贅沢な暮しをしておる階級が國民の、特に苦しい國民の顰蹙を買つておることも御承知の通りであります。この資力の偏在を國の力を以て徹底的に建直さない限りには、私は「國情の許す限り」と称するところの官吏労働者の待遇改善は絶対にでき得ない。でき得ないばかりでなしに、千八百円を固守せられ、そうしてその固守の裏口からどんどんと新らしい物價の値上げ及び大衆課税によつて勤労階級の生活を圧迫されて行くならば、いかに國家の力を以て官吏諸君の労働規律の確立を力で以ておやりになろうと思つてもできないと思うのであります。私が心配することは今後の労働情勢は誠に險惡でありまするが、恐らく今後労働攻勢がますます熾烈化して來るのは民間労働者の手によることなく、日本の二百五十万の官吏労働者の手によつて火蓋を切られる、こういうことを私は心配しておるのであります。これは官吏の待遇が今年の春頃までは民間労働者とほぼ歩調をとつて來た、ところが現実におきましては誠に甚だしい懸隔を生じております。このような状態において、官僚機構の民主化も、官吏の公僕としての奉仕も私は期待できないと思う。現に私は過日山口、九州方面から大阪、京都方面を労働委員として視察に参りましたが、或る官吏のごときは、このままで千八百円を押付けられるならば、官吏は國民の非難を浴びてもやはり惡いことをせざるを得ないであろう、或いは怠業をせざるを得ないであろうということを全逓の職員ではないのであります、地方の自治團体の職員がはつきりと私にそういうことを、而も相当に責任ある人が私の耳に入れて來て呉れておるのであります。過日も私は参議院におきまして私の会派に属する二十六歳の婦人の人の泣き言を聞いている。七百五十円の賃金である。そうして交通費が約三百円、弁当を持つにはどうしても二百五十円から三百円かかる。あと、残りが百何円、これで、何のために國会に來て働いているのか、賃金だけを考えれば意味をなさない。こういうことを言つて歎いている。これは國会の或る職員だけの極めて劣惡な賃金状況かと思つて調べて見ましたところが、これは日本の官吏の大体の水準であるということを聞かされまして、尚更深く驚いたのであります。現在民間労働者におきましては、殆んど交通費のごときは会社が支弁しております。七百五十円の收入の中で三百円も交通費をみずから負担して、そうして職場に挺身するということは到底考えられないことだと思います。運賃の値上げをしたものは政府みずからである。いろいろな各般の状況を考えて見まして、この際國情の許す限りと言われた大臣のお言葉は、少くとも現在の官吏諸君が民間の労働者諸君とほぼ同樣の生活態勢を維持し得るところまでは是非とも引上げる。そこまで廣い幅を以て「國情の許す限り」を解釈して、そうしてそのためにはあらゆる強力な措置を取られ、而もこの措置を刻々と迫つて來るところの、年末に迫つておりますところのこのインフレの過程においては、一日を爭うけわしい問題であります。即刻に取上げられまして、一日も早く労働不安を一掃せられんことを強くお願いをする次第であります。