西尾末廣の発言 (予算委員会)

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○西尾國務大臣 官廳職員の待遇改善問題に関し、その経過及び中央労働委員会の調停案に対する政府の方針を御説明申し上げたいと存じます。
 官公廳各労働組合が全官公廳労働組合連絡協議会を組織して、八月十五日政府に対して、適正價格による生活必需物資の完全配給を裏づけとし、これに必要な地域差を考慮した最低賃金制の確立、及び生活補給金として一月より六月までの赤字補填金、本人二千円、扶養家族一人千円の支給を要求し、これに対して爾來数次の交渉を重ねたのであります。しかして政府は、この要求に対して、新物價体系を確立するため千八百円賃金基準の堅持が、労働者のみならず、國民全般の生活を安定帯に導くゆえんであるとして、その要求の全面的に承認しがたいことを主張してきたのであります。しかし政府は官公廳職員の生活困難の実情を認めまして、でこぼこ調整金の支給、あるいは給與の繰上げ支給等を行いまして、当面の生活困難打開に可能なる限りの措置を講じますとともに、政府の施策に照らし、正当なる要求はこれを承認して、その円満なる解決をはからんとしたのであります。しかるに官公廳各労働組合を代表する交渉委員の構成は、それぞれ異なる意図と共同闘爭的組織となつておりましたために、交渉は円満に進展せず、これをもつてしましては、その円満なる解決点に到達することが至難な情勢にあつたのであります。從つて政府は、中央労働委員会に対して調停を申請し、この調停機関による解決を期待したのてあります。組合側におきましても、その後九月十五日、全逓信從業員組合がまず中央労働委員会に提訴し、國鉄労組、日教組等も引続き提訴いたしたのであります。政府は中央労働委員会の裁定の公正を確信しその権威を尊重することが、労働爭議を平和的解決に導くゆえんであるとの信念に基きまして、調停案の速やかなる提示を基待しておつたのであります。全逓信從業員組合が提訴して以來、中央労働委員会が、この至難な問題に対して調停案作成に努力されたことに対しましては、深く感謝するところであります。かくて十一月十四日、全逓信從業員組合の申請に対する調停案が提示されるに至つたのであります。政府はこの調停案に対して、これを政府職員全体に対するものとして措置することといたしたのであります。中央労働委員会の調停案は、全逓信從業員組合、國鉄労組の申請に対するものでありますが、両者ともに大体同一のものであります。從つてここでは全逓信從業員組合に対する調停案を中心として、全官公廳職員の待遇問題に関して御報告申し上げることといたしたいのであります。
 御承知のごとく、全逓信從業員組合の調停申請事項は十項目の多きにわたつておるのでありますが、今回の調停案に取上げられました事項は、物價安定を基礎とする最低賃金制の確立及び生活補給金の支給の二項目であります。この二項目は全官公廳職員に共通する問題でありまして、これを解決することによつて官公廳職員の待遇改善問題はその解決を見ることとなつておるのであります。もちろん全逓信從業員組合の調停申請事項中には、電氣通信事業の民主的一元化、大藏省預金部中逓信省関係資金運用権を逓信省に移管し民主的に運営せよ、及び官廳勞働組合の團体協約に対する八月二十日附閣議決定を撤廃せよなどの項目がありますが、これらの事項を労働問題として労働爭議調停法に基き裁定すベきや否やに関しましては、幾多の検討を要するものがあります。政府としては、かかる政治行政部面において解決すベき事項をまで労働委員会の裁定に委ねることに対しましては反対の意向をもつておるのであります。これらの問題に関しましては、中央労働委員会に政府の意向を傳え、その公正なる判断を基待しておるのであります。
 今回の調停案に示された最低賃金制の確立、生活補給支給の大体の内容を申し上げますと、最低賃金制の問題に関しましては新給與体制を確立し、これを明年一月より実施することを指示しておるのであります。本件に新給與体制の確立に関しましては政府においてもすでにその必要を認め、これが準備を進めつつあつたのであります。すなわちこの際從來の給與制度を根本的に改善することといたし、職階職務給與制の採用と民間における能率給を加味した新給與体系を確立し、規律の確立と誠実なる勤労に対する生活の確保を期しているのであります。さいわいに中央労働委員会の調停案においてもこのことが指示されましたので、調停案の趣旨を尊重し、速やかに新給與体系確立に関する委員会を設置しまして、十分なる審議を逐げ、その万全を期したいと考えておるのであります。次に生活補給金の支給に関しましては、本年一月より十二月までの生活費赤字を推計し、乙地五人家族を水準としてこれに五千六十二円、二・八箇月分の支給を指示しておるのであります。この生活補給金の問題に関して政府は最も愼重なる檢討を逐げ、官廳職員の待遇改善に万全を期するとともに、健全財政の堅持、新物價体系に影響なきことを期しておるのであります。中央労働委員会の調停案に対する回答が、諸般の事情で未だ発表の時期に至つておりませんが、労働爭議を平和的に解決するためには中央労働委員会をその機関として権威づけることにあると信じます。從つて政府は調停案の趣旨を十分尊重し、調停申請事項の平和的処理に努力しておるのであります。調停案の指示する生活補給金は、労働組合側の要求にも示されておりまする通り、本年一月に遡及して、生活費赤字を救済しようとする、いわゆる犠牲補填の思想に出発するのであります。過去の犠牲を補填しようとする思想を容認いたしますときには、あらゆる部面において問題を派生することが懸念されますので、政府はこの思想に対しては断固否定せざるを得ないのであります。しかしインフレ進行の阻止に協力し、職責遂行に精進する官公職員の生活困難に対しては深く感謝し、同情の念禁ずる能わざるものがあることは言うまでもないのであります。この意味におきまして中央労働委員会の調停案は、これを十分尊重し、その生活困難を緩和せしめたいと考えておるのであります。そこで政府しいたしましては臨時的給與につきましてはこれを過去に遡及することなく、要求が提出され、労働協約の更改期以降について考慮することといたしたのであります。新物價体系に基く賃金基準は、生産能率に即應するものであつて、生産の上昇とともに、賃金もまた上昇する仕組となつておることは周知の通りであります。從つて新物價体系確立後において、民間企業の賃金水準が向上いたしましたことは、生産能率の回復を示すものとして、一面よりすれば慶賀すべき現象と言わなければならぬのであります。これに対し生産を伴わない官廳職員の給與は、民間企業の労働者と均衡を失するに至りましたことは、けだし当然と言わなければなりません。かかる不均衡を是正して、國民生活に均衡を得せしめるためにも、官廳職員の給與引上げの措置を必要としているのであります。
 政府は以上の理由に基きまして、調停案の提示する二・八箇月分の給與を支給することとし、これによつて官廳職員の生活を再建せしめ、もつてその職責遂行に遺憾なきを期せしめたい方針であります。しかし御承知のごとき現下財政の困難は、容易ならざるものがありまして、これを一時に支給することは、とうてい至難の状態にあり、從つて次のごとく措置したいと考える次第であります。
 最初の一箇月分については、先般すでに御協賛を願つたのでありますから、これを本月十五日前後に支給することといたしたいと思うのであります。次の一箇月分の支給については、後刻大藏大臣から御説明があることと思いますが、本月下旬にこれを支給することといたしたのであります。残りの〇・八箇月分については、目下その財源に関して極力研究努力しておりますが、これが調達は現在至難の状態にありますので、財源が確保され次第、國会に提案して、御協賛を得たいと考えております。その時期はおそらく大体明年一月の再開劈頭と予定しておる次第であります。
 以上政府は官廳職員の待遇改善に関して、健全財政堅持を大前提として、あらゆる予算的措置を講じ、その遺憾なきを期しているのであります。財政窮迫の折から、あえて中央労働委会員の裁定を尊重し、大乘的見地に立つて、爭議の平和的解決に努力いたしておりますのは、國民生活に均衡を得せしめ、一丸となつて現下の危機を克服し、國家再建に邁進せしめたいからであります。
 なおこの際特に一言いたしたいことは、官廳職員に対する今回の給與は、民間企業の給與と均衡を得せしめるためのものでありますことは、前にも申し上げました通りでありますが、この点さらに強調いたしますのは、從來の民間給與は、官廳職員に例をとる事実があつたのでありますが、官廳職員の今回の給與には、賞與とか、越冬資金という性質は、全然ないのでありまして、民間企業がこれに追随するようなことがありますれば、せつかく緩和しつつありますところのインフレを刺戟し、はかり知ることのできない経済危機を招來することすら懸念されることにつきましては、とくと御留意を願いたいと思つているのであります。
 最後に官廳職員の給與の増額は、國民の負担を加重することなくしては行えないのでありますから、一層職務に精励し、もつて國民の期待に報いなければならないのであります。從來生活困難を理由として官規をみだり、業務に支障を與えたものもあつたことは、まことに遺憾とするところであります。政府は惡質なる業務妨害に対しては、断固たる方針をもつて臨んできたのでありますが、今後さらに組合運動その他に名をかりて、公務員としての職責を自覚しない者がありますとすれば、官規に照らし嚴重に処断する方針であります。
 以上官廳職員の待遇改善を中心といたします調停案に対する政府の方針を御説明申し上げた次第でありますが、その生活困難の実情を御賢察くださいまして、政府今回の措置を何とぞ御了承くださらんことを、切にお願い申し上げる次第であります。

発言情報

speech_id: 100205261X00119471211_014

発言者: 西尾末廣

speaker_id: 25048

日付: 1947-12-11

院: 衆議院

会議名: 予算委員会