亀田得治の発言 (本会議)
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○亀田得治君 私は日本社会党を代表して法務大臣の検察行政指揮権並びに犬養国務大臣より国警担当を解いたことに関しまして、若干の質問を吉田総理に対していたしたいと存じます。
汚職の問題の処理が如何に重大であるかは、今更改めて論ずるまでもございません。今やそれは、内外注視の的となつておるのであります。検察側の追及も漸く最後の段階に達し、国民はこぞつて、この際問題の根源を明るみに出し、その責任の所在を明らかにしてもらいたいと望んでおるのであります。このときにあたり、去る四月十九日、突如として犬養法務大臣の国警担当が解かれるという事態が生じたのでありますが、これは国民に対し、いろいろな疑惑を起したのでありますが、更にそれに引続きまして、昨二十一日、政府からの検察当局に対する重大なる干渉という事態が新たに附加わつて来たのでございます。私は、これらの点に関し、以下五つの点について吉田総理の所見を伺いたいと思うのであります。
その第一点は、法務大臣から国警担当を解いた理由であります。国警担当が解かれた直後の福永官房長官の談話或いは二十日の衆議院内閣委員会における緒方副総理の答弁などを要約いたしますると、法務大臣が、法務省の仕事で非常にいそがしい。これが、国警担当を解いた理由のようであります。そこで私は、社会党の決議に基きまして二十日の日に質問の通告をした際には、その理由と言われている法務省の如何なる仕事がいそがしいのか。これを具体的にこの議場で説明して頂くつもりでありましたが、その後の情勢の発展を見ますると、今やその説明は必要がないほどに、国警担当を解いた理由が明らかになつて来ておるのであります。(拍手)即ち犬養法務大臣は、政府と検察の間に狭まれて進退に窮し、去る四月十七日、緒方副総理に辞意をすら漏らしたようであります。然るに翌々日の十九日、吉田総理、緒方副総理、犬養法務大臣と三者会談が持たれたとき、法務大臣がここでやめるくらいなら、一つ佐藤、池田両氏の逮捕請求を延期するために最後の努力をしたらどうか。こういうことにきまつたのが事の真相なんです。即ち法務大臣を国警担当から解いた、法務省の仕事がいそがしい。これは単なる表向きの言訳で、実際は犬養法務大臣を、汚職の引延ばしと、もみ消しの専任大臣にしたのが今回の措置であります。(拍手)これはもう総理の弁解を待つまでもなく、その後の事実関係によつて明白でありまするが、併し、これは極めて重大な措置でありまするから、改めてあなたの御答弁をここでお伺いしたい。
質問の第二点は、何故に国警担当を小坂労働大臣に兼任させたかという点であります。警察法の改悪が行われるならば、その最大の被害者となるのは、労働大衆でございます。労働大臣は、不幸にして警察の不当な圧迫というようなことがあつた場合には、これに対し労働大衆をできるだけ守る。そういう立場にあるのでございます。従つて理論的にも実際的にも、この二つの地位の兼任ということは甚だ不適当なのでございます。この点については、例えば過去におきましても、加藤労働大臣が今申上げたような立場から、治安関係を兼任することを拒んだ例もあるのでございます。たとえ犬養法務大臣の兼任を解かれたといたしましても、もつとほかの国務大臣に担当させるべきではないかと私どもは考えるのであります。この点については、吉田総理と緒方副総理との意見が、相当食い違いでがきたやに私どもは聞くのでございまするが、如何なる考えを持つて、事もあろうに労働大臣に対して、たとえ一時的にせよ、国警担当ということをあなたは命ぜられたか。この点についての明確なお答えをお願いする次第でございます。
質問の第三点は、吉田総理は、すでに犬養法務大臣に命令をして、検察庁法第十四条によりまして、佐藤自由党幹事長に対する逮捕請求を抑えたのでありますが、これは日本の政治に対して大きな汚点を残している。これについて如何ようにお考えになつているかを承わりたい。私は先日、吉田総理欠席の本会議においても申上げたのでございますが、国会の会期中に議員が許諾なくして逮捕されないようにしたこの制度は、これは決して議員の破廉恥罪を保護するためのものではありません。それは時の権力者による議員に対する不当な圧力、即ちクーデターに対して議員を守り、その良心的な政治活動を保護する。こういうところに歴史的な意味があることは申すまでもございません。然るに国民怨嗟の的となつている汚職問題、これに関連して、この特権を濫用し、その逮捕請求に掣肘を加えるがごときは検察行政に対する不当な圧迫であつて、我々の断じて許すことのできない暴挙であると申さなければならない。(拍手)こういうむちやな総理大臣の措置に対しまして、二つの反応がすでに起きております。その第一は、去る二十一日の午後一時、佐藤検事総長は、談話を発表いたしましたが、その中で、今回の措置によつて、今後捜査を続ける上において相当困難を来たすであろう。こういうことが言われている。更に今回の指揮権発動については誠に遺憾に思うという意味のことが、明確に述べられているのでございます。この事件は、世間が注目している問題でありますから、検察当局が余ほどのことがなければ、このような談話を発表することは、私どもはないと考えます。私は、この検事総長の談話なるものは、吉田内閣に対する検察陣からするところの不信任の意思表示であると考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)あなたはどうおとりになりますか。いろいろな犯罪者を取締る。これが検察当局の任務である。そういう任務を持つている検察当局から、一種の不信任にも値するような談話を突き付けられて、総理大臣は一体如何ように考えられるかをお伺いをしたい。第二の反応は、国民の輿論の上に澎湃として起つているのでございます。極く少数の法律専門家の間では、法務大臣の指揮は、法律上可能である。こういうようなことを申されているかたもありますが、併しそのようなかたでも、今回の措置が妥当であつたとは誰一人申しておらないのであります。いわんや一般の国民大衆は、政府というものは一体何とむちやなことをやるものであろうかと、あきれ返つておるのが今日の世論の状態でれります。(拍手)吉田総理は、この国民の声に対してどのようにお考えになつておるか、どういう心境でおられますか、お聞きをしたい。(「責任をとれ」と呼ぶ者あり)
質問の第四点、従つて、私はこのような事態になつて参りますれば、すでに政府が責任をとる時期が来ておると考えますが、あなたは如何にお考えになり手か。総理は従来しばしば、事件の全貌が明らかになつたときには背任はとります。こういう意味のことを副総理も繰返して言つておる。ところが、すでに現在問題になつておる佐藤、池田両氏の問題、これは過去において重要な閣僚のポストにも坐り、現在でも幹事長、政調会長、こういう地位にある。この二人のかたが現在は吉田内閣に席を置いておらないからと言つて逃れるような詭弁は許すことができない。政党における幹事長、政調会長の地位、これが普通の閣僚よりも重い地位である。如何に重要な地位であるかということはあなたみずから御存じの筈だ。若し単なる形式論を以て詭弁的に責任を逃れようとするならば、これは政党政治をあなた自身がみずから否定することになるのでございます。(拍手)私は、これが自由党の内閣であろうと、或いは他党の内閣であろうと、このような態度を若し時の責任者がとられたとするならば、それが今後日本の政治に及ぼす影響というものは極めて大きいものがあるということを考えるのでございます。あなたは、或いはまだ責任をとる時期ではない。こういうふうに重ねて後ほどおつしやるかも知れない。それならば、一体あなたが責任をとると言うのはどういう場合なんだ。吉田総理は、おのれ自身に問題が直接に降りかかつて来なければとらないとおつしやるのかどうか。明確にこの点の所信を伺いたいのでございます。伝え聞くところによりますと、政府は、佐藤幹事長の逮捕という事実さえなければ、責任はとらなくともよい。こういうふうにお考えになつておるようでもございます。恐らくそのために、しやにむに今度の検察権に対する干渉となつたものであろうと思いますが、併しあなたにお聞きしたいことは、逮捕の事実がここに現れるか現れないかというその前に、逮捕すべき根拠、理由、これがあるかないかということが大事なんだ。検察当局は、すでにこれは犯罪の容疑者であるということで以て成規の手続をとろうとした。単に逮捕の事実がここにあるかないか、これは形式の問題であります。国民の常識というものは、実質的にそのような断定を下されるところまで来ておるならば、この際、責任をとるのが当然であると考えておりますが、あなたは一体どういうお考えでございましようか。(「政治責任をとれ」「国民を何と考える」と呼ぶ者あり)
質問の第五点は、私は率直にお聞きしたいのでありますが、あなたが今日とつておられる頑冥な態度、これは何か外からの圧力でもあるのではないかという点でございます。吉田内閣の退陣を求める声は、殆んどこれは一致した国民の輿論、従来あなたを支持されていた新聞でも、この問題に関しましては、支持しておらない。良心的な人であるならば、自由党の内部においてすらこの際は、やはり潔く退陣すべきである。こういう意見を持つておられるかたがたくさんある。(拍手)私はこういうような事態になりましても、なお且つあなたが踏みとどまるその理由がさつぱりわからない。反対に、吉田総理は二十日の閣議におきまして、MSA協定及びそれに関連する重要法案の審議の促進、こういうことを各閣僚に求めたようでございまするが、これは全くあきれたことです。そういう重要な問題があればあるほど、きれいな人がこれを処理すべきなんだ。あなたが退陣をされても、あとは幾らでもやつて行ける。腐れ切つた吉田総理が、この重要な問題点について、最後の土壇場において、おれでなければならないというような考えを持つておられることは、およそ国民の常識とは反しておる。それでもあなたは頑張つておられるが、私どもは、そういう頑冥な態度から感ぜられることは、何か外国の圧力が、あなたをそうさせておるのではないかと感じますが、この点、如何あなたがたはお答えになりますか。
時間がありませんので、簡単にあと一点お尋ねいたします。犬養法務大臣は、すでに責任を感じて辞表を出された。私は、犬養をしてああさせたのは、あなたなんだ。責任は一つだと思う。犬養だけをあなたは見殺しにするのか。この点をどうお考えになつておるか承わりたい。(拍手)
〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕