天田勝正の発言 (本会議)
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○天田勝正君 私は、日本社会党第二控室を代表いたしまして、政府の今回とられた異例の議員逮捕請求拒否の措置について、若干の質疑を試みたいと思うのであります。
佐藤自由党幹事長逮捕要求にからまるこの奇怪なる措置は、三つの段階を経て発展いたしておるのであります。即ち第一には、只今同僚亀田君が指摘されましたように、法相の国警担当を解任して法務専任といたしましたことは、法務専任即検察圧迫専任の疑惑を国民に与えたことであります。第二に、法務大臣による検察指揮権の濫用によつて、検察当局一致の意思である佐藤幹事長逮捕の請求が拒否され、法の前には何人といえども平等なるべき民主主義の原則が覆えされ、国民をして、権力の座にある者は如何なる不正をも行い得るという、極めて暗い印象を与へ、国民の倫理観に甚大なる悪影響を及ぼしたのであります。(拍手)第三には、遂にこれが法務大臣の辞職という事態に発展したのでありますが、検察行政はもとより法務大臣の所管であります。従つてこの事態処理の矢面に法相が立たされる結果になつたのでありまするが、元来、内閣の連帯責任でありまする行政責任を、一個の法務大臣を窮地に陥れて、国民に見離された吉田内閣の命をば、一日延しに延しておるという印象を国民に与えておるのであります。
今日汚職事件の進展を見まするに、日と共に、いよいよ深く、ますます広く拡がりまして、極まるところ測り知れざる様相を呈しておるのであります。検察当局から議員逮捕許諾の請求が発せられたものは、すでに六名に及んでおります。誠に戦前戦後を通じて、最大の不祥事と言わなければなりません。(拍手)今や逮捕要求の第六号として、自由党幹事長佐藤榮作君にこれが発せられんといたしまするや、(「側近第一号だ」と呼ぶ者あり)政府は、この破邪顕正の剣を奪い取つて、事件を闇に葬むり去らんとするところの奇怪なる行動に出たのであります。国民の憤激は、今や怒濤のごとく湧き起りつつあります。政治に対する国民の不信と念慈は、勢いの赴くところ、フアツシヨの抬頭を招来して、漸く緒についた我が国の民主政治をば崩壊せしむるの不幸な事態に立至らないと誰が保証するでありましよう。政府並びに与党の諸君はよくお聞き願いたい。去る四月十六日、五名の暴漢が本院に潜入いたしまして、国会中央塔を一時占拠して、「汚職政界よ恥を知れ」というビラを撒いたことは御存じでございましよう。国民の政治に対する不信と憤激が、かかる事態を誘発せしめたのでありまして、この際、政府、国会は、こぞつてみずからを匡し、政界の浄化を行いまして、国民信託に報ゆるの覚悟を新たにいたさなければならんときであります。
そこで政府にお伺いいたしますが、私はあいまいな答弁による再質問の煩を避けますために、先ずお断り申上げておきまするが、今回犬養法務大臣が辞職される。けれども、この辞職と否とを問わず、在任中における法務大臣の言動は、一切吉田内閣の閣僚として行われたのでありますから、又国会の指名は、総理大臣一名に与えたのでありまするから、その責任は、当然に吉田総理に帰すべきものである。こういうことをば、先ず御承知の上、御答弁を願いたいと思うのであります。
質問の第一点、犬養法務大臣は、佐藤幹事長逮捕要求拒否の措置をとりましたが、この措置の事前に、政府並びに与党幹部によつてこれが決定されておるのであります。すでにこのことは、昨日の各新聞紙に報ぜられておりますけれども、この全文を読む煩は省きますが、吉田総理は、二十一日朝、緒方副総理、佐藤幹事長、松野参議院議員会長、福永官房長官らをば、芝白金の公邸に招いて協議した結果、法相の検事総長に対する指揮権発動の方針をきめ、今国会中には、佐藤、池田両氏の逮捕というような事態が起らんよう、あらゆる努力をすると申合せた。こう伝えられておるのであります。これは一体事実でございましようか。恐らく今日までの吉田内閣のとつた態度からいたしますならば、必ず事実と思うのでございまするが、然らば、如何なる根拠と責任において、かかる決定をなされたのでありまするか。この際事態を明らかにして頂きたいと思うのであります。
質問の第二点、吉田総理は、この幹部会同において、二十二日即ち本日であります。自由党の総務会に出席して、時局担当の決意を持つところの政府の下に、党は動揺せず一本となつてこれを支持するよう要請することにきまつたと伝えられております。又二十日の閣議におきましても、この際、内閣は総辞職しないと言明されたというのであります。かようなことは誠に思い上つた言動でありまするけれども、これが一体事実であるのかどうか、この吉田総理の言葉は、誠に吉田内閣の重大危機と国家の重大危機とをは混同したのでありまして(「その通りその通り」と呼ぶ者あり)汚職に関する逮捕の請求が、自由党の中心部に及びまして、屋台骨を揺がそうと、自由党が消えてなくなろうと、それは一切吉田内閣と自由党の責任であつて、自由党内閣が消えれば、国家の存続が危いというような思い上つた考え方こそ、我が国の民主政治を危くするものであると存ずるのでありますが、かかるひとりよがりの態度を以て一切の責任を回避する所存であるかどうかを承りたいのであります。
質問の第三点、検察庁法第十四条の解釈でありまするが、これは先にも亀田君が言われましたように、日本著名の法学者は、成るほど法律的には可能であつても、今回の措置は検察権の独立性を失わしめ、政治的に歪められる結果になると指摘いたしているのであります。元来検察権は、行政権の一部でございましよう。併しながらその内容を見まするならば、司法権の一部とも解せられるのであります。法務大臣の指揮権は例外的に認めるという趣旨から、この十四条の但書に書いてあるのであります。その本文においては、検察権を行政事務から独立せしめようとの精神が貫かれているのであります。従つて検察指揮権の発動は、国民生活に重大な影響を与える行過ぎや、外国との友好上、好ましからざる結果を招く危険のある場合だけ発動すべきものであつて、この凶器を用いて、内閣と自由党幹部の身辺を守らんとするに至つては、心外至極と言わざるを得ないのであります。本朝の新聞は、汚職件の捜査が停頓すると伝えられているのでありますが、この際、その態度と方針を明確にされたいのであります。又これが池田政調会長、星島二郎君等の大物に逮捕請求が参つた場合、これと同様な措置をとる考えであるかどうか。
質問の四点、緒方副総理は、一昨日の新聞におきまして、幹事長の逮捕請求は、閣僚の逮捕請求と同様に考えると語つているのであります。私はこのことは誠に当然であると思うので、民主主義政治は、申すまでもなく、政党による責任内閣制であります。我が国の政党において、幹事長と政調会長は、その二本の柱であります。殊に与党の幹事長、政調会長は、政府提案の重要な案件を事前に決定する権能を持つているのでありますから、単なる大臣、それ以上の権能を持ち、義務を負わなければならないと思うのであります。自由党におけるこの重要な役目である佐藤、池田両氏は、現閣僚以上の実力を有しておりますることは、世人のひとしく認めるところであります。この与党の最高幹部の不正行為、即ちこれが逮捕要求という形になつた場合には、各閣僚と同様に重く見るというあなたの考え方は、誠に正しいのであります。そこで幹事長を閣僚と同様に考えるとは、その措置の責任も同様政府の責任と見るということになると思うのでありまするが、副総理は如何なる責任を考えておられまするか、明確に御答弁願いたいと思います。
〔議長退席、副議長着席〕
質問の第五点、今回法相の指揮権の発動によつて、佐藤幹事長の逮捕は一時停止されましたけれども、停止されましても検察庁が逮捕の請求を決定したことは事実であります。形式上の逮捕と否とを問わず、被疑内容は逮捕すべき十分の理由ありと解すべきでありますが、かかる被疑者が与党の幹事長として重要な国策の決定権を握ることに対する政治責任を如何に考えておられるか。明確に御答弁願いたいと思うのであります。(拍手)
最後に、昨日の朝日新聞に掲載された「大衆はこう政治家に訴える」というアンケートは、政府も御存じでございましよう。このアンケートによれば、このままでよろしいと言う者は一人もないのであります。すでに国民は、吉田内閣に信を置いておりません。権力を濫用して、自党の利益と政権を守るために、罪悪を取締る立場にある大臣がこれを庇うというならば、一体、正しい生活に生きようとする国民は、何を頼つて生きて行けばいいのでありましよう。地位を利用して賄賂を取り、社会を腐敗の泥沼に突き落しておる吉田内閣の重要人物が、権力によつてその罪を逃がれ、半面、今日一日を生きるために、たつた一升の闇米のために冷圄の身となつておる庶民の姿と比べる場合、いずこに正義ありやと叫けばざるを得ないのであります。まさに吉田内閣こそ、正直者が馬鹿を見るという言葉を立証し、悪の芽を助長して世の乱れる源を作つておるものと言わなければなりません。私はおよそ人の先頭に立とうとする者は、みずから他よりも苛酷に扱つてこそ、大衆の信用を得る途であると思うのであります。従来政府は、この事件が司直の手によつて事態が明確になつてから善処すると言つて来たのでありますが、一体疑獄の性質上、これが明らかになるには数年間かかるのであります。それは結局におきましては、政治責任をとらないという結果になるのでありますが、現在の汚職の状況を見ても、この重大なる事態に立至つた場合、この際こそ内閣は総辞職を断行して、罪を国民に謝すべきだと思うのでありますが、政府の所信を明らかにして頂きたいのであります。如何に吉田内閣が小手先の延命策を弄したとて、大衆の審判は峻厳であります。