松雄金蔵の発言 (労働委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○説明員(松雄金蔵君) 只今通産政務次官からお話のございましたそれに若干数字を入れまして、補足的な説明をいたすことに相成ると思いますが、先ほど通産政務次官からお話がありましたように、今の、いわゆる引締め政策と言われておりますものは、国際収支のバランスをとることがやはり終局の目標であろうと思います。この点はいわゆる引締め政策によつて輸出が伸びて、輸入が成るべく自然の姿で縮小するというような形でバランスするのが理想的であるわけです。そういう意味で輸出を伸ばすためには、国内の物価はでき得るだけ国際価格に近いところに安定をすることが望ましいわけでありまするし、又輸入が自然の形で成るべく縮小するということを望みますためには、原材料その他の輸入が輸出の方面に使われることは別でございますが、国内の消費の面にそれが多く使われるということが抑制されればいい。こういう理窟になるわけであります。こういう点から見て参りますると、国際収支の面は御承知のように、最近の情勢では輸出は大体一億ドル、毎月一億ドルを超えるような状況になつて参りまして、輸入のほうはそれに対してかなりの程度落ちて参つております。従いまして国際収支の月々のバランスは、本年の一、二、三月に比べまして、かなり本年度に入りまして落ちて参りまして、御承知のように四月には国際収支の赤字は九百万ドル程度に圧縮されたのであります。二十九年の一月には八千七百万ドル、二月には五千万ドルという支払超過でございましたものが、四月に九百万ドル、五月にはやや殖えましたけれども千七百万ドル、六月には僅かではございますが、若干の黒字に転じております。こういう国際収支の数字を見て参りまして、これが本当の意味の輸出の実力による伸びであるのか、或いは御承知のようなポンド協定、日英協定の結果の現われでありますとか、或いはその他の、本当の日本の輸出の実力による原因以外の伸びが或る程度現われて来ておるのかというような点は、かなり判断としてはむずかしいと思うのでありますが、先ず先ず輸出の点は若干伸びる力を加えて来たものだというふうに一応想定していいのではないかと思います。
併し輸入の点も、従来の輸入の実績に比べましては、例えば二十九年の一月が二億二千八百万ドルという大幅な輸入でございましたけれども、最近は大体一億七、八千万ドルくらいのところまで落ちて参つております。この原因は、直接には御承知の輸入金融の引締めが響いて来たのでありましようし、又国内の生産状況その他も反映しておると思いますが、又一面にはポンド・ユーザンスの利用というような点も入つて来ておるだろうと思います。従いまして最近の輸入状況を以て将来を直ちに楽観することは必ずしも許されないのではないかと思いますけれども、全体としては先ほど申しましたように国際収支のバランスは徐々に最近の傾向としては当面よくなりつつあるということは、この点が引締め政策の終局の目標ということになりますれば、こういう輸出入のベースが将来ともだんだんと強化されて行きますならば、現在とられております政策はその点ではだんだんと成功を収めておるというふうに言えるのではないかと思います。併しこの点は将来の判断はなかなかむずかしいと思われますし、特に特需の最近の減少傾向はかなり大幅になつておることは御承知の通りであります。本年度、二十九年度の国際収支の見通しといたしましては、年度間一億ドル以内の赤字にとどめることを一応の目安にいたしておりますけれども、このうちには御承知のように約七千万ドルほどの二十八年度、昨年度の緊急食糧輸入のズレが入つて来ておりますから、二十九年度だけを裸にして考えてみますれば、二十九年鹿の赤字予定というものはそれほど大きな赤字ではないはずであります。併しそう言いますと、二十九年度だけの彩では大体均衡に近いような状態になるかと申しますと、併しこれもやはり特需に対して七億ドル以上の期待を含んでのバランスでございますから、ここで特需が減少して参りますと、この赤字の幅はそれだけ増加する危険があるわけであります。特需の減少を埋めるだけ輸出の伸張がもつともつと伸びますれば、そのバランスはとれるわけでございますが、現状ではそれらの点の見通しはかなりむずかしいようであります。
最近の物価の状況は先ほど政務次官からお話がございましたように、生産財の卸売物価については昨年の二月のピークに比べますと約六%程度落ちております。年度間におきまして時点差で約一割くらいの物価の低落を一応期待と申しますか、予想しておるということから申しますと、現在すでに六%程度の物価の低落はかなり目標に近い数字のようにも一応思われるかも知れませんけれども、これも本当の意味のロストの低下その他による物価の下落で、こういう下落の傾向で安定するかどうかという点は、これもかなり判断の問題がむずかしいのでありましようし、又小売物価なり消費者物価の点は、御承知のように現在頭打ち或いはやや低落の程度でございまして、これが循環的に物価の低落を導いて行くほど現在の状況では期待できないような状態でございます。
国際物価との比較を申しますと、この程度で日本の国内物価が国際物価に追付いたというような水準に達したということは勿論現状では言いにくいのでございます。併しこの程度で輸出の伸びが次第に地固めをして参りますならば、これは一つの目安としては成功に近いところに行くのではないかと思いますが、先ほど申しましたような輸出の見通しにつきましては、かなり判断のむずかしい点があろうと思うのであります。
生産の点は、生産そのものが落ちて、或いは雇用そのものが落ちるということがこの政策の目標でないことは申すまでもないのでありますけれども、先ほど申しましたように、輸出が伸びて輸入がセーブされるという意味では或る程度鉱工業生産指数の低落も止むを得ないというようなことを目指さなければならないと思います。併し二十八年度と二十九年度の比較をいたしてみますと、私どもの一応の想定では年度間平均では鉱工業生産指数はほほ同じ水準であるということを一応想定いたしております。最近の鉱工業生産指数の実勢は大体一六四乃至五くらいのところに現在来ております。昨年度の年度間平均の鉱工業生産指数は最近の新らしい指数で大体一六二くらいになるはずであります。そういたしますと、現在の生産の実勢が下半期でどういうふうな姿をとるかということで、本年度の鉱工業生産指数の動静がわかることになるのでありますが、現在の見通しではやはり下半期においてかなり生産のダウンが起るのではないか、現在大体頭打ち或いはやや低下の傾向を見せておることは御承知の通りであります。全体といたしまして当初に申上げましたように、生産の低下或いは物価の低下、雇用の低下ということそれ自体が決して政策の目標ではないのでありますけれども、貿易の収支バランスの点で現在の傾向が本当の実力であるという判断の付くような日本の経済実勢を期待して、その辺が一つの何と申しますか、政策の狙いであろう、こういうふうに考えておるような次第でございます。
一応私の説明を終ります、