田村文吉の発言 (労働委員会)
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○田村文吉君 今行われておりますデフレーシヨンの問題でありますが、これは国の一番大きな消費者である国家がその財政を緊縮することによつてデフレーシヨンの一助となすということは、私どもは極めて穏健な尤もな考えと思うのですが、たまたま金融の異常な引締めをやられたために今日の経済界の極端な恐慌に近いような不況状態を起したわけなのでありますが、私はこういうことをなさる前には必ず成る対策というものをお立てになつて、そうしてお進みになるべきじやないかと思うのであります。
例えば今御説明になりました輸出の対策であります。これは物価が平均して二割或いは三割国際物価に比べて国内物価が高いというならば、それに対応して輸出のできるような方法が一方に見付けておかれないで、ただ金融が引締められたということでは非常に困難を来たす、こういうふうになるのじ中ないか。又現在各業界におきまして、実は今御説明でわかつたのでありまするが、鉱工業の生産指数が昨年は約一六二であつたものが今年は一六四であります。大体大した変りはないが、下期に来て若干の減少があつて、年間に行つたら或いは昨年と同様くらいに行くのじやないか、こういうようなことで、私は非常に詳細な松尾調整部長さんの御説明を了承したのでありますが、この数字が示しておるごとく、今日のような非常に金を締められて来た場合には、鉱工業生産指数の一六四とか一六二とかいうものが多過ぎる。実はかような場合には当然一五〇か一五五くらいまでは引下げられて然るべきものである。ところがそれを阻んでいるものは何かというと、独占禁止法というような法律が今でも残つておりまして、そうして業界は或る程度まで二重設備をしまして、そうして生産が過剰になつて来た。こういうことは或る程度まで調整をして行かなければならんのでありますが、これを妨げているものは独占禁止法なんです。こういう非常に厄介なものがありますために、品物が余つても、値が下つて来れば生産費を切下げるために、いやいやながら生産を増加して競争力に堪えるようなことを中らざるを得ない、こういうところに日本の産業の大きな欠陥が出て来ているわけなんです。で申すまでもなく日本の経済というものは非常に底の浅い経済でありまして、ちよつと景気がよいとすぐ増資をいたします。するとすぐ品物が余る、すぐオーバー・プロダクシヨンで物の値が下つて来る。こういうようなことで非常に危険な状況にあるところへ持つて来て、レギユレーテイング・バルブになつておりました独占禁止法の操作で、余つた場合は或る程度までこれにカルテルの力によつてコントロールして行く、そうして下げるときに一つの落下傘の役目をして行く。無論独禁法が全然ない場合でもアウト・サイダーというものがございまするから、決しで物価というものはそう独占価格というものにはなり得ないのでありまするが、それをしも今日は禁止している。これを許可を得ようとするには半年も一年もかかる。こういうようなことでは今日の状況には間に合わない。こういうような問題が一つ大きな障害になつている。
又税の問題にいたしましても、実際今日の中小企業者だけでない。あらゆる産業をやつている人でも、或いは又資本の蓄積をやつている人でも、今日は税というものが非常に高い。これは比較して申上げるまでもないのでありますが、戦争前に比べると物価が三百六十倍とすれば、所得税とか法人税とかいうものは約二千倍近いものになつている。こういうような非常に高い税金を今日は払わされている。
又これは労働関係の法律でありまするが、同僚諸君の中には或いは反対のことをお考えになる方もあるかも知れませんが、今日のような日本の経済の再建の場合に、一方においては五千円、六千円の金がもらえるかもらえないかといつて非常に悲惨な生活をしなければならない人があるかと思うと、一方には二万円、三万円という所得があつて、而もなお労働争議を起して賃金の増額を要求している。こういうようなことで労働法に乗じまして、そのために非常に国内の状況は不公平だ。こういうようにまだ数え立てるといろいろございますが、そういうものに手を書けないで、ただ一面金融の引締めだけで似て直せばいいというようなことをおやりになつていらつしやつたところに私は非常な間違いが起つて来ているし、これがなかなか困難な問題であるのではないかと思うのでありまするが、成るほど今のお話のように物価は一時中りました。ひどいものになりまするというと四割も五割も下つたものもございまするが、まだなかなか末端の小売価格まではその影響は大きく来ておりません。下りましたが、この下落について、今のお話では年間一割というお話があつたのであります。これは私は十九国会の初めに伺いましたところでは、大体年間に五分か六分の値下げをするということを考えておられたようでありますが、今一割という数字を伺つて、或いはそういうことをお考えになつていらつしやつたのかということを初めて知つたわけであります。いずれにいたしましても、物によりましては三割も四割も下つたものもありまするが、さつき御説明があつたように生産費が実際に切詰められてそうなつたのではないのでありまして、もう金融の関係上止むを得ず投売りをせざるを得ないというのが今日のいわゆる物価が下つたとい形になつているのであります。これで以て日本の経済に物価の低落というものが果して望み得るかどうか、こういうような点になりますると非常に疑いなきを得ない。いわんや今の輸出の状況がたとえ僅かでも六月は黒字になつたとおつしやるのですが、これは特需関係を見込んでの上であります。それにいたしましても若干の黒字が出るようになつたと言えば幾らか明るいような気がいたさんではありませんが、これも決して国内に高く売つて国外に安く売つたといういわゆるダンピングではないのでありますが、如何せん投売りをせざるを得ないような状況で海外に輸出をする。こういうようなことのために非常に輸出が思つたよりは出た。こういうことなのだろうと私は思つておりまするので、そういうような問題が未だに解決されないで参りまするということは、ただ徒らに金融を引締めて行けば、まだまだもつと深刻な状況が出て、今まではいわゆる商社の問題だけで済んだ、或いは石炭であるとか或いは造船業とか、繊維産業とかいうような特殊のもので済んだのが、今日は日本のあらゆる産業がここへ来て脅威を受けて、半恐慌状態のようになるのじやないかということを非常に心配する。
その結果はどうなるかというと、今でさえ失業者の方々が多くて困つていられる際に、なおより以上の失業者を出さなければならない。こういうことになりますので、非常に私はその点について憂慮に堪えませんので、今日は両大臣にお見え頂いてよくその辺のところの御真意を質したいと考えたのでありますが、無論そういう点についての十分の御配慮はあることとは考えております。又今日御出席にならんでもそれぞれ次官の皆様方から私の微意のあるところをお伝え願えると考えるのでございますが、そこで私は当面さしかかつた問題として、この間新聞に、吉田総理は計画経済ということは仰せにならないが、或る程度まで経済の計画性を持たせるということについて再検討をすべきではないかというようなお話があつたかのように聞いておるのでありますが、そういう点について経審のほうでは何か新機軸としてお考えになるべき時期が来ているのじやないか、又それについても総理からそういう旨に従つて問題をお進めになつておるかどうか、その問題が一つ。
もう一つはこれは松尾調整部長さんに伺いたいのですが、今の自由党内閣としては外資の導入について非常に熱心である、私どもは外資の導入必ずしも悪いと言わないけれども、日本のいわゆる本当の自立経済という点から考えると、必ずしも外資の導入によつて日本の自立経済を立てるというようなことは余りに安易な考え方ではないか、むしろこれがためにインフレーシヨンを巻起すような虞れが却つてありはせんか、そういうような点を実は心配しておるのでありますが、これは吉田総理が非常に熱心にお考えになつておるので、経審の部長さんとしてこういうものに対しての御見解を御発表になることが或いは困難であるか知りませんが、その点について私は疑いを持つておりまするので、そういう点について若しお考え等が明らかにして頂ければ結構だと思うのであります。
最後にさつき申上げました労働関係の問題でありますが、私はどう考えても、一方で三万円も四万円も所得がある人があり、一方には四千円、五千円でやつて行かなければならない悲惨な人があるというこの有様を考えて実に国の憂いはここにあるということを潔く感じまするが故に、実は昨日来の近江絹糸の問題等につきましても、余りこういう問題に強く……、ただただ過去の惰性で労働運動々々々々で進められて行くということについて著しい不満を感じておることを申上げたのはその意味なのであります。今日本の立ち、日本民族の立つている足もとは非常に危い、いわゆる砂の上に立つているような危険な状況下にあるのであるまするので、私は失業問題が最も大きな問題としてそのよつて来たるゆえんをはつきりと承わつてみたい、こう考えておつたわけであります。通産政務次官及び松尾調整部長から御見解をお聞かせ頂ければ結構だと思います。
なお更に私はこの機会に物価を上げないという問題として、電気料金の値上問題について、大体新聞では値上をされないように決定したかのように聞いておるのでありまするが、この問題につきまして附加えて政務次官から御答弁を願えれば仕合せだと思います。