鈴木茂三郎の発言 (本会議)

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○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、衆議院の総選挙を行うための国会の解散を前にして、鳩山総理に若干の質疑をいたしたいと思うものであります。(拍手)
 今回、衆議院が、政府によつて憲法第七条によつて解散するごととなつておりますのは、申すまでもなく、昨年十二月九日の首班指名に当つて両派社会党から国会の解散と総選挙を条件として鳩山首班を指名することになつて取りかわした、いわゆる三党の共同声明、すなわち、鳩山内閣の誕生の上は、早期解散によつて民意を明らかにし、休会明け早々に衆議院解散を断行し、昭和三十年三月上旬までに衆議院議員の総選挙を完了する、こうした趣旨に基いて解散が行われることと相なつたという事実を、私はまず重ねて内外に明らかにしておく必要があると思います。(拍手)
 われわれ両派社会党が鳩山首班の指名に際して、国会の解散と総選挙を条件といたしましたことは、政権授受の民主的な方式は、議員の寄せ集めや国会の取引によるような、これまで保守派の間で行われて来た方式をとるべきでない。正しい政権の民主的な授受の方式は、われわれは、国会を解散して総選挙を行い、民意に従つて行わなければならないと信じておるからでございます。ことに、自由党の吉田内閣が、六カ年にわたつて政権を壟断し、内外の政策を全く行き詰まらせた結果起つた野党の不信任決議案の上程に際して、ついに総辞職したことは、諸君のよく知られるところであります。(拍手)従つて、これにかわる安定した首班を作るための政権の授受は、不信任されて総辞職した吉田前内閣の流れをくむいかなる亜流にも政権を渡すような方法をとるべきでないと考えたのであります。(拍手)このことは国民的な強い要望でもあつたわけでありますから、なおさら、われわれが、国会の解散、総選挙によつて政権の授受をきめるという民主的な方式をとつたことは、国民の総意をくみ取つた当然のことであつたのであります。(拍手)
 さようなわけでありますから、鳩山内閣の性格は、われわれも国民も、選挙を公正に行い、それを事務的に取り運ぶことを唯一の使命とするものであり、総選挙の完了をもつて退陣する選挙管理内閣というように承知をいたしておるのであります。(拍手)国会の解散、総選挙を前にして、民主党が党の方針や政策を示すこと、これはよろしい。それは当然のことであります。しかし、選挙管理内閣の首班たる鳩山首相が、あたかも実行でもするかのような幻影を国民に与える施政方針、それは不用意のうちに作られたものではございますが、そうした施政方針を述べられたことは、私の了解しがたいところであるのであります。(拍手)しかも、選挙管理内閣に名を連ねておるだけの各大臣が、選挙を目当てに無責任な方針、政策を次々と発表しております。防衛問題について見ましても、大蔵大臣は、来年度は自衛隊はやむなく現状のままだと言つておられる。厚生大臣は、自衛隊の費用を少し削つて厚生施設に使いたいと、こう述べられておる。防衛庁長官は、陸海空軍の全般にわたつて兵員を増強したいと述べられておるのであります。一体、鳩山内閣の各大臣が述べられたこの意見は、どれがほんとうでありましよう。事実はどれもほんとうであり、どれもうそであると見るほかはないのであります。(拍手)かように国民を欺瞞するような言動は、私は不謹慎といわなければならないと思います。(拍手)私は、この点に関して、鳩山総理の意見をただしたいのであります。
 次に、鳩山内閣は、短命を宿命づけられた、寿命の短かい選挙管理内閣であることが明らかでありますのに、施政方針を述べ、また、それぞれの閣僚は無責任な放言と思われる政策を随時随所において発表しておられます。国民の中には、鳩山内閣に対して、さまざまな観点から惑いを持ち、疑いを抱くに至つておる現状であります。それゆえ、私は、この質疑応答を通じて、国民の惑いを、疑いを解明するためにも、この際引き続き若干の質疑を行なつて、国民の前に問題の所在を明らかにしておきたいと思います。(拍手)
 その第一点は、憲法改正の問題であります。吉田内閣と鳩山内閣、自由党と民主党の政策の基本的な相違点は、平和憲法を武装憲法に改正して堂々と軍隊を持つかどうか、この一点にあつたはずであります。しかるに、鳩山内閣は、憲法改正と軍再備の強化は国民に不人気であることを憂慮された結果か、吉田内閣とほぼ同じような意見に内閣の見解を統一されたように見受けられるのであります。しかるに、施政方針においては、総理は、憲法調査機関を設置して現行憲法改正に依然として熱意のあるところを明らかにされております。しからば、鳩山総理としては現行憲法第九条をいかように改正しようと考えておられるのであるか、必然に徴兵制度を設けることになるのではないか、また憲法第三章の国民の基本的人権をいかように制限しようと考えておられるか、また憲法改正の時期を鳩山総理はいつごろが適当と考えておられるか、承わりたいのであります。
 第二点は、防衛の問題であります。政府は、昭和三十年度に、自衛隊は基本方針として漸次充実する方針をとる旨明らかにされております。政府が、アメリカの力による平和の方式をとる陣営の一員たることを光栄として、日米協力関係を推進せんとする方針である以上、一萬田大蔵大臣が軍事力の充実をうたわれたことは当然であつて、今後軍事力はいよいよますます増強されるものと見なければならないのであります。そういたしますと、自衛隊の充実は、政府としては将来どこまで充実せしめようとするのか。財政を勘案すると言われておる。しかし、アメリカが仮想敵国としておる中ソの科学的兵器がさらに進歩し充実するにつれて、すでに越えておる財政の限界を越えて、際限もなく自衛隊を充実しなければならないことになるのではないか。力による平和の方式との協力関係を推進されようとする以上、その力による平和方式の一つとして、最近作られました東南アジア防衛同盟と並べてさらに作られようとしておる東北アジア防衛同盟韓国、台湾、タイなどとの軍事同盟に加担せざるを得ないことになるおそれが十分あると私は思います。鳩山総理は、むしろ進んでかような軍事同盟に加担したいと、ひそかに考慮されておるのではないかと考えられる節がございます。総理の所見をただしたいのであります。
 さらに、鳩山総理は、幸いにして中国が日本を侵略するというばかばかしい宣伝に対して、私と同じように、そういう、中国が日本を侵略するということは信じがたいと所見を述べておられます。そうといたしますればなおさらのことでありますが、中ソとの間に平和共存の方式について話し合い、同時にアメリカとの間にも力による平和、その危険について話し合い、それによつて米ソの対立を幾らかでも緩和せしめる平和外交を推進する、私はこれがほんとうの平和外交であると考えるのでございます。(拍手)そういたしまして、むだな自衛隊の財政的負担を軽くすることが、同時に日本の安全の保障と生活と経済をよくする唯一の方途ではなかろうか。
 以上、防衛の問題に関しまして、総理の所信をただしたいのであります。
 第三点は、外交上の問題であります。鳩山総理と重光外相との間にしばしば外交方針上重要な意見の相違、食い違いのあつたことは、国民の目をおおい隠すことのできないところでございます。鳩山総理の率直な言葉をそのまま私がここで表現すれば、民主党は寄せ集めの政党であつて政権を担当することは潜越しごくだ、こうお考えのようでございます。従つて、外交上、台湾問題、中国問題、あるいは日ソ閲の戦争終結宣言、これらの諸問題について、総理と外相との間に意見の食い違いが起つたことは、当然の帰結として、私はそれを了承いたします。しかし、そこで総理にお尋ねいたしたいのは、総理も外相も、自主独立の外交とか、自主独立の精神の作興とか、これを強調されて、総理の施政方針においては、自主独立の達成のためにということを言われております。重光外相もまた、自主独立の完成こそ民族の悲願であるとさえ言われておるのであります。これはその通りでございます。まことに重要な発言でございまして、今日まで、政府は、軍隊を持つ便宜のために、独立国であるということを主張して国民を欺瞞して参りました。(拍手)しかるに、自主独立の達成であるとか、自主独立の完成とか言われておることは、その言葉によつても、総理も外務大臣も、わが日本は講和の成立後三カ年に及ぶ今日いまだ自主独立のないことをみずから認められた証拠として私は重要なる発言であると思います。(拍手)そういたしますと、わが国の自主と独立を妨げておるものは何かこれが重要であります。鳩山総理の言うように、単に占領下において制定された諸法令、諸制度はそもそも末の問題であつて、わが国の自主と独立を制約しておる問題の根本は、アメリカの日本占領を永久的に承認を与えた講和と、講和後に締結された日米の条約や協定、これが日本の自主と独立を緊縛し制約しておるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 私がそれに関連して総理にお尋ねいたしたいのは、アメリカの軍隊の占領を永続的なものとした平和条約に基いて締結された安保条約、行政協定、MSA協定等、一連のこれらの条約や協定は、軍事上、外交上日本を制約しておるだけではなくて、経済上においてもアメリカに従属することを余儀なくされておるのであります。(拍手)こうした条約や協定を改廃する意思は総理は持たれないのであるか。日本を制約しておる、かような条約や協定をそのままにしておいて、廃止も改正もしないで、どうして自主独立の外交を行い、自主独立の精神の作興ができるとお考えですか。(拍手)私は、日本のほんとうの独立と平和は、こうしたアメリカの永続的な占領と制約からます日本を解放することが先決であると思うが、総理はいかがお考えでありましようか。(拍手)、また、総理も外相も、アジアの平和とアジア諸国との修交の必要を言葉の上で是認されて、国交回復の障害を克服しなければならないことを主張されております。しかしながら、総理も外相も、他方においては吉田内閣時代のアメリカとの関係は変更しないと声明をされ、談話を発表されておるのであります。さらに、米国との緊密な提携、協力を外交の基本方針とすると言われておるのであります。私は、アジアの平和とアジア諸国との国交回復のための障害は、日本が、韓国や台湾やフィリピンと同じように、アメリカ一辺倒の外交や中ソを仮想敵とするアメリカの軍事同盟の一員たること、これがアジアの平和に障害を与えておる最大のものであると思います。(拍手)総理はいかようにお考えであるか。
 第四点は、中小企業を圧殺し、勤労者、農民の生活を締め上げているデフレ政策であります。鳩山内閣は、引き続きこの財政政策を金科玉条とされておるようであります。しかるに、これは、一方においては保安隊に続く自衛隊のためにわが財政力としては不当に大きな軍事費を投入いたします結果、そこに必然的に起つてくるインフレーシヨンを、他方においてこれを押える。すなわち、中小企業や勤労者や農民の生活を犠牲といたしまして、全般に対して不当な引き締めを行わんとするものでございまして、この政策はアメリカの要請に基く吉田内閣時代からの方針であるところから、世間ではこれをドツジ・池田ラインと呼んでおるのであります。(拍手)鳩山総理は、そのことは承知されておらないかもわかりません。しかし、今日まで日本銀行総裁としてこのドツジ・ラインに忠実に協力をしてきた一萬田大蔵大臣は、特にこの事実を承知されておるはずであります。一兆円のワクの中で、自衛隊の軍事費をそのままにして、どうして経済の自立や産業の復興ができますか。(拍手)どうして低額所得者を中心に税金をまける減税ができますか。社会保障を強化すると言われるが、どうして社会保障の強化ができますか。(拍手)ここに並べられた鳩山内閣のこうした政策は、私は社会党の政策を盗み取つたとは申しません。(笑声、拍手)しかしながら、社会党の政策を写し取つたかような政策は、一方において軍事費を節約しない限り、実現することができない政策であることは明瞭であります。(拍手)従つて、世間ではこれを無責任な放言だと批判をしております。選挙の事前運動だと酷評をされております。鳩山総理は十分責任を自覚されなければならないのではないか。
 最後にお尋ねいたしたいことは、鳩山総理は、口を開けば、もつともらしく、社会道徳の確立とか国民道義の高揚とかいうことを言われております。さらに、一政界の粛正とか公明選挙とかいうことも言われております。私は、選挙の公正は、保守派が選挙にむだな金を使わないことが選挙公正の先決であると確信をいたします。(拍手)選挙の粛正はそこから起らなければならないと考えるのであります。社会道徳の確立とか国民道徳の高揚ということは、造船疑獄によつて氷山の一角が明るみに出たと見られておる政界、官界、財界の一切のこうした腐敗を剔抉し、疑獄を摘発すること、私は、吉田内閣によつてくさいものにふたをしたようなふたを取り除くこと、これが政界粛正の先決であると思うが、総理はいかようにお考えであるか。
 以上十数項にわたつて鳩山総理の御回答を得たいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 102105254X00819550123_006

発言者: 鈴木茂三郎

speaker_id: 18314

日付: 1955-01-23

院: 衆議院

会議名: 本会議