河上丈太郎の発言 (本会議)
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○河上丈太郎君 私は、日本社会党を代表して、鳩山首相の施政方針演説、重光外相の外交演説、一萬田蔵相の財政演説に対し、私の了解しあたわざる諸点につきまして、政府の所信をただし、明確なる答弁を求めんとするものであります。(拍手)
私は、かつて数次にわたりこの壇上から吉田前首相に対し質問演説を試みたことがあるのでございます。しかし、吉田氏の非民主的な態度は、しばしば私をして憤激せしめたのであります。今鳩山首相の態度を見ると、吉田前首相に比して、きわめていんぎん丁寧なことくではありますけれども、質問の核心に触れていない点については同罪であると私は思うのであります。(拍手)私は、鳩山首相並びに閣僚が、民主主義の真髄に徹し、大胆率直にその所信を吐露せられんことを切に希望する次第であるのであります。
新聞紙の伝うるところによりますれば、政府はしきりに早期解散を望み、質疑応答についても委曲を尽すことを回避するやに見られるのでありまするが、われわれとしては、その真意を了解することができないのであります。今回の質問戦は、来たるべき総選挙の前哨戦であつて、国民に各党の有する政策の全貌を知らしむることが目的であると信じておるのであります。(拍手)鳩山内閣は、その成立以来、短時日の間に、いわゆる閣僚放言の形において傍若無人なる宣伝戦を展開して参つたのであります。(拍手)選挙管理内閣は完全に選挙事前運動内閣となつたのであります。(拍手)われわれとしては、かかる鳩山内閣の放言の中において、何ができ得るのか、何ができないのか、どこまでが真実であつてどこからが、から宣伝であるかを、国民大衆の前に明らかにいたさなければならないと存ずるのであります。自分の宣伝だけは百。パーセントにやつて、あまり質問を許すとボロが出るから一日も早く切り上げようというのでは、鳩山首相の民主主義も、御都合主義の民主主義であると言わなければならないのであります。(拍手)
私の見るところによると、来たるべき総選挙のおもなる闘争の題目は三つあると私は信ずるのであります。その第一は、憲法改正の問題であります。その第二は、中ソとの国交調整を含む外交政策転換の問題であります。第三は、いかにして経済自立と国民生活の安定を具現するかの経済政策の問題であると私は思うのであります。(拍手)私は、以下順次、これらの問題について、基本的な諸点をただしたいと存ずるのであります。
第一の憲法改正の問題は、すでに緒方君、鈴木君によつて論ぜられておりますけれども、鳩山首相は、憲法を改正して再軍備を行う、自衛隊をして憲法上の孤児たらしめまいといつたことをもつて、あらゆる鳩山君の政治行動の基準としておつたようであるのであります。鳩山首相は、緒方君の先ほど指摘したことくに、自由党より分れ、自由党に帰り、また自由党を出て民主党を作られるまでの目まぐるしいほどの政治遍歴も、わずかに憲法改正を理由として合理化していたのであります。しかるに、鳩山首相が今政権の座につかれて、みずからの政治的生命を国民の審判にゆだねようとするときに、何ゆえに憲法改正に対する信念を打ち出さないのでありましようか。(拍手)
昨日、総理は、憲法改正に対し、民主主義と平和主義を堅持すると言われたのである。しかしながら、民主主義と平和主義を堅持するならば、憲法改正は不可能と感ずるのであります。(拍手)憲法を改正しようとするならば、民主主義、平和主義に挑戦するほかはないと私は信ずるのであります。(拍手)私は、ドイツにおきますところのワイマール憲法が廃止されて、ヒトラーのファッショの政権が成立いたしましたところのこの過程を顧みまして日本における憲法改正が、日本におけるファッショの政治の抜け道を作るのではないかと、心から憂えて、いる一人であるのであります。(拍手)また、鳩山君の理論によりまするならば、憲法第九条の改正なくしては自衛隊、自衛軍を持ち得ないはすであつて少くともこの理論をもつて鳩山君は吉田前首相を攻撃する主たる武器としておつたはずであります。しかるに、一たん組閣をなすや、自衛軍の創設は憲法違反でないという、憲法無視ともいうべき理論をかり来たつて前日の自説を全くほおかむりしているのでございます。吉田自由党の態度が憲法を空文化するところの憲法上の————であつたとするならば、鳩山首相の態度は、白日堂々と憲法をじゆうりんする憲法上の————と言わなければならぬのであります。(拍手)私は、鳩山首相が、組閣以来の憲法理論において、伝来の政治的言動に照らし、顧みて何ら恥ずるところなきやを問わんとするものであります。
また、鳩山内閣は、昨年予算委員会において自衛隊の増強については吉田前内閣の方針をそのまま踏襲すると称して、年々四万人の増強計画を承認されました。しかるに、最近予算編成大綱なるものを発表し、昭和三十年度の防衛費は二十九年度以上に増強しないと発表されたのでありますが、それは明らかに矛盾ではないかと考えるのであります。私は、そこで鳩山首相に問わんとするのでありまするが、自衛隊の増強計画は既定方針に従うという言明が誤まりでありたのであるか、それとも予算編成大綱が選挙目当ての人気取りの政策であつたのであるか、私は、鳩山首相の政治的良心に照らし、明確なる御答弁を求める次第であるのであります。(拍手)
第二は、中ソとの国交調整を含む外交政策の転換の問題でありまするが、鳩山内閣は、その発足以来自主外交を標傍しておりまするが、果して完全独立、平和及び経済自立の達成についていかなる具体策を持つておられるのか。昨日の御演説を拝聴いたしましても、これに対する何らの回答が与えられていないのは、まことに遺憾とするところであります。(拍手)われわれは、まず国民的要望であるところの領土問題の全面的解決を望むものであります。小笠原、沖縄、歯舞、色丹、千島、南樺太の完全復帰について、その所信と施策を現内閣に伺いたいのでございます。
さらに、独立の完成には、先ほど鈴大君も言われましたことくに、日米安全保障条約、日米行政協定等の一切の不平等条約の改訂が必要であると信ずるのであります。(拍手)これはまた中ソ国交の回復の一つの前提の条件ではないかと私は考えるのであります。この点についての施策を承りたいのであります。
われわれは、すべての国との協力によつて世界平和を築く立党の精神にのりとつて、自由世界、民主陣営との協力を必ずしも否定するものではないが、もしアメリカが日本をもつぱら共産圏に対するところの軍事基地として利用し、わが憲法、国民経済及び国民感情を無視し、再軍備を強要し、SEATOやNEATOにわが国を引き入れんとするところの、いわゆる反共十字軍的な戦略方式をもつて臨むとするならば、われわれはアメリカの深刻なる反省を求めなければならないと信ずるのであります。(拍手)最近、アイゼンハワー大統領の言動が、さきにネール首相も指摘いたした通りに国内の一部の好戦分子を押えて、平和の持続と探求に向つて積極的な面を示しつつあることは喜ぶべき現象でありまするとともに、われわれは、ますますこの傾向を助長するがごとく、アメリカに友誼的苦言を呈することが必要であると認めるのであります。(拍手)首相は果してかくのごとく苦言をアメリカになすところの信念がおありであるかどうか、承わりたいと想うのであります。(拍手)われわれは、真の永続的な世界平和は、資本主義と共産主義との両極の対峙に求むべきではなくして、資本主義にもあらず、共産主義にもあらず、第三の道である民主社会主義によつてのみ達成されるのであると確信するものであります。(拍手)米ソ両陣営間にある国際緊張は、戦争によらす、話し合いによつて解決し、両陣営の間に平和時代が続くことをこいねがうとともに、少くともアジアの問題については、わが国の自主的な立場から、アメリカに対して堂々と所信を述ぶべきものと思うけれども、首相の御意見がどうであるか、承わりたいのである。(拍手)
次に、ビキニ水爆実験の被害の事件について、政府は過般アメリカとの間に総額二百万ドルの慰謝料受け取りをもつて最後的解決と認めるという措置をとつたことを、誇りげに昨日も申しておりましたけれども、われわれは、物質的な損害賠償の額の多少よりも、一事件の本質であるところの原水爆の実験の停止、さらに進んで有効なる国際管理制度の確立と原水爆の禁止、原子力の平和利用の確立等を全然等閑に付して、これがために原水爆問題に関するわが国の強力なる道義上の発言権を放棄したことは遺憾千万でありまして、(拍手)われわれは、平和を愛する国民の名においてへ政府の責任を断固追及するのであります。それに対するところの政府の所信を承わりたいのであります。次に、ソ連、中共との国交調整については、一鳩山内閣がしばしば言明をし、かつ宣伝するところであります。他方、ソ連、中共側においても、これに呼応して最近はサンフランシスコの条約または日米関係の破壊を日本との友好関係樹立の条件としない趣旨を示すようになりました。このことは、サンフランシスコ条約に調印し、わが国の独立の第一歩を踏み出すとともにソ連、中共その他の未調印国との国交回復に努力することが妥当な順序なりと主張したわれわれの立場が正しいことを証明したものと信ずるのであります。(拍手)しかしながら、政府の言明はしばしばその内外に対する説明問に矛盾を示し、かつ総理の積極論と外相の消極論との間に重大なる食い違いを露呈するために、国民をして帰趨に迷わしめ、対外的に国家の信用を失墜するの重大なる醜態を犯しているのであります。かくのごときは、特に厳粛なるべき国の外交方針を選挙目当ての政略の具に供するものであつて断じてわれわれの承服し得ないところであります。(拍手)私は、国民の名において、あらためて次の諸点に対する総理及び外相の明確なる態度を伺いたい。
一、中ソとの国交調整の方途は、基本的には日本とインドとの間の平和条約のごとく簡潔なる平和条約を締結することであり、具体的にはソ連との間にはとりあえず戦争状態の終結に関する両国共同自書が適当であると考えるが、政府はいかに考えられるか。(拍手)
第二は、中国の問題であります。中国問題は、二つの政府の争いであるとともに、台湾をめぐる重大なる国際紛争の種であるという二面的な性質を持つておるが、台湾の処理は、あくまで平和的方法によることを要求するとともに、まず停戦の実現、次いで台湾の非軍事化と台湾の帰属に関する台湾住民の自由意思に基く決定という方式を日本が提唱すべきではないかと考えるけれども、政府はいかに考えるか。(拍手)一方、中共に対しては、中国本土の主人たる地位を容認し、これとの周に、先ほど申したような単独平和条約を締結すべきではないか。対中共貿易の拡大についても、右のような日中両国国交調整の基本的政策を持ち合わせずしてまた対中共貿易の厳重な統制をはずして純然たる武器弾薬以外は自由貿易とするような多角的な積極外交の努力なくしては、鳩山内閣の中共貿易拡大の看板は、から宣伝に終るものと思うが、政府はどう思うか。
最後に、石本外交の重点をアジア、特に東南及び南アジアに指向してアジア各民族の独立の完成を援助し、アジア後進地域の経済開発を推進することが肝要であると信ずる。特に、四月のアジア・アフリカ会議に対しては、わが国は積極的に参加すべきものと信ずるけれども、政府はいかなる方針をもつてこれに臨まんとするか、承りたいと思うのであります。(拍手)
第三は、経済自立、国民生活安定のための経済政策の問題でありまするが、この点に関する鳩山内閣の態度はきわめて不徹底であると思います。内閣が正式に閣議決定をして発表した経済復興六カ年計画及びその初年度としての昭和三十年度の予算編成大網と、各閣僚のまちまちなその都度放言とでは、あまりにも大きな食い違いがあつて、国民をして判断に迷わしむるからであります。まず国民の知らんとするところは、鳩山内閣は吉田内閣の末期に強行されたデフレ政策に対していかなる態度をとるかということであります。これを継承強化するか、それとも経済政策の転換をはかるかということであります。この点は、昭和三十年度の予算編成大綱を見ても、何らの回答を見出すことができないのであります。何となれば、これには数字の裏づけがなく、ただ一兆円のワク内に押えると言つているだけだからであります。一兆円のワク内に押えると言えば、デフレ政策の継続のごとくでありまするが、減税といい、住宅政策の強化といい、社会保障の増強といい、輸出金融措置の強化といい、自立防衛態度の整備といい、インフレ的要因を多分に含んでいるからであります。(拍手)この矛盾あるがゆえに政府は数字の裏づけができず、数字の裏づけなきがゆえに国会に提出することができなかつたのではない、かと思うのであります。(拍手)国会に提出できないほどのものを何ゆえ政府の方針と銘打つて一般に発表したのであるか、明確なる答弁を私は特に大蔵大臣に求めたいと思うのであります。(拍手)
世間一般には、鳩山首相並びに閣僚の放言を聞いて本年の経済界の前途に明るい見通しを抱く者がふえて参りましたけれども、証券相場においても一斉に値上りを示してきたことは周知の通りであるけれども、鳩山内閣はこれをあたかも自己の手柄のごとくに錯覚し、しきりに楽観的放送をしております。しかるに、一般的には好転せるかに見える経済情勢の奥に、深刻なる行き詰まりが一そう拍車をかけられつつあるという事実を、政府は知つておるのでありましようか。(拍手)中小企業の倒産と困難なる事情は、鳩山内閣の成立した年末よりも、一月に入つて一そう加重して参つたのでございます。東京都労働局の調査によりますると、職業安定所に職を求めるところの失業者は、昨年末の十三万から十五万にふえておるのであります。(拍手)さらに、人を求める求人数は、二、三万あつたものが、今日は皆無の状態に減つてきておるのであります。この一事をもつてしても、鳩山内閣成立以来表面明るく見える経済界の実体が、いかに深刻な不況に進みつつあるかということが了解されると思うのであります。(拍手)政府は、この事実に直面しつつも、なお楽観的な気休め放送を続けようとなさるのでありましようか。この際真剣なる経済政策の樹立を必要とすると信ずるのでありますが、政府の所見いかんと私はお尋ねいたしたいのであります。(拍手)
昨日の一萬田蔵相の演説を聞くと、為替貿易の自由化、財政の健全化、金融の正常化を目途とし、これに社会保障の強化を加え、全くけつこうずくめの財政経済政策を開陳されました。しかも、社会保障を強化するためには、住宅四十二万戸の建設、平年度五百億の減税、中小企業対策、就労対策など、これまた手放しの迎合政策の羅列であります。予算のワクを一兆円に押え、防衛費は前年度と同一の金額を確保し、しかもこれらの諸政策に要する経費をどう見積ろうとしておるのでありましようか。できない相談を持ちかけるにも限度があると私たちは考えるのであります。私は、この点に対し、政府の明確なる答弁あらんことを期待いたすのであります。(拍手)
要するに、鳩山内閣の放言が、いかに実体のないものであるか、選挙目当ての人気取り政策にすぎないかを明らかにし得たと信ずるものであります。私は、鳩山内閣に一片の良心があるならば、もつとまじめに、もつと真剣に、政治の現実に対処せられんことを望むのであります。
最後に私は一言申したいと存じます。一九五五年は一大転換期である。国内的にも国際的にも重大なる変貌を遂げつつあるということであります。この重大なるときに際会して、果して軽焼浮薄な鳩山内閣によつてこれが乗り切れるかどうかということは大きな疑問だと存ずるのであります。(拍手)終戦以来十年、官本は不幸にして保守勢力の誤まれる指導のもとに歩んで参つたのであります。しかも、その支柱であつた吉田自由党内閣は、昨年の暮れ、国際情勢の新しい発展と全国民の反抗にあつて遂に倒れ去つたのであります。しかしてこれにかわるべき勢力は何でありまするか。これからの日本を背負うて立つ勢力は何であるか。まさにこれを問わんとするのが来たるべき総選挙であると信ずるのであります。この総選挙は保守、革新の決戦であつてわれわれは総選挙を通じて憲法改正を阻止し、再軍備を食いとめ、国民生活の安定をはかり、社会主義政権樹立に邁進せんことを誓うて私の質問を終る次第であります。(拍手)