松原喜之次の発言 (本会議)

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○松原喜之次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府の一般経済並びに財政金融政策に関する質問を試みんとするものであります。(拍手)
 今回、政府は、総合経済六カ年計画を策定して、みずから長期の見通しをもつて総合的な計画を明らかにし、経済の拡大発展と完全雇用の達成をはかる旨を発表いたしましたが、この構想を見まするのに、わが党が一昨年秋発発表たしました平和経済建設五カ年計画と、その多くの部分においてきわめて近似いたしておるのであります。それのみではありません。昨日の首相並びに一萬田蔵相の施政方針や財政に関する演説を承わつても、社会保障の充実強化といい、あるいは政官界の綱紀粛正といい、その他住宅対策の飛躍的拡充、中小企業対策の充実、勤労者、中小企業者、農民等の低額所得者に対する減税等々、あたかもわが党内閣の施政演説を聞くがごとき錯覚をさえ起すのであります。従つてもしこの言うところが言葉通りに実現可能なりとするならば、わが党もこれに賛成するに決してやぶさかではございません。〔拍手)
ただ、しかし、選挙宣伝のために羊頭を掲げて狗肉を売り、あるいはトラと称してネコを描くというような実体を、われわれは国民とともに見のがし得ないものであります。たとえば、低額所得者の負担軽減を唱えつつ、間接税の増額を行なつてその負担を増大し、あるいは四十二万戸の住宅建築を誇示しながら、その実、財政支出の増額はわずかに数十億円にとどまるというがごとき、その一例でありま了。結論から先に申しますると、政府り示すところ、ほとんどことごとくが全く画餅に近く、その実を伴つていないと断じても過言ではないと私は考えるのであります。(拍手)従つて、わが兄の政策に近似しているからといつて、にわかに声援を送り得ないものであります。
 経済六カ年計画によりますれば、三十五年に至り輸出は二十三億ドルに達し、特需援助等による対米依存を除くも国際収支はほぼ均衡し、経済自立体制は完成いたすということになつているが、私は、国際収支に対する政府の見方は相当甘いし、またその外交方針を大きく転換するにあらざれば、これらの計画は実現不可能であると考えるものであります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
たとえば、計画の第一年度たる三十年度国際収支については、この計画はことさら表示を避けておりますが、これに関して別に発表されました政府の見解と見るべきものによりますと、相当楽観的に見ている傾向があるのであります。すなわち、特需は二十九年度に比しさらに減少するが、輸出は好調であつた二十九年度より大した減退を見ない、また輸入は二十九年度程度にとどまるというのであります。
 第一番に、輸入面よりこれを見ますると、ドル及びポンド・ユーザンスによる支払い繰り延べの有利な条件も、また前年度の輸入ブームによる豊富なる在庫の食いつぶしの条件も、三十年度にはもはや存在しない。さらにまた、輸出面より見れば、焦げつき債権の累積された韓国やインドネシアあての輸出は減少せしめざるを得ないし、二十九年輸出の伸びた大きな原因であるところの下半期の西欧を中心といたしまする世界貿易の拡大や、ポンド地域に
 おける対日貿易制限の緩和、あるいはまた出血補償リンク制、その地のいわゆる特殊貿易や国内のデフレ政策の圧力による出血輸出等は、決して正常なる輸出拡大の原因と見ることはできない。従つて三十年以後の国際収支に関しては、もつともつと厳密に考えて、政府の楽観的数字をこの際是正し、国民
 に対し真実を訴えて輸出拡大のためには確固たるコスト引き下げ策を実施しなければなりません。この点に関して通産大臣はいかに考えられるか、御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 貿易に関して輸出商品のコスト問題が最も重大なることは申すまでもありませんが、市場問題もまたこれに劣らざる重要度を有するものであります。わが国は、特に対共産圏貿易において、一々数字をあげるまでもなく、著しく立ちおくれを喫しておることは周知の事実であります。戦前のわが貿易額のうち平均一八%を占めていた中国貿易が、今や輸出の〇・六%、輸入においては一・六%という微々たるものであるという事実は、吉田内閣の最も重大な失政の一つでございます。今回鳩山内閣がいち早くこの問題を積極的に取り上げられたことは喜ぶべきことでありまするけれども、しかし、実はいまだ本物と考えるわけにはいかないのであります。(拍手)すなわち、去る十二月十四日発表された民主党政調会の具体案なるものによりますると、依然として現在のココム協定の線まで緩和をするよう努力するとなつておりまするし、石橋通産相は、組閣当時の大々的な宣伝をあたかも忘れたかのように、最近では、中国貿易はそれほど期待できないと、吉田内閣当時と同じ口吻に豹変しておられるのであります。(拍手)ココム・リストまでの緩和ならば、日本経済の切実なる要請にはこたえられないし、また中国貿易は断じて本格的なものとはなり得ないのであります。しかし、それですら、通産省の計算によると、年額七千万ドルは可能であり、もしココム・リストを撤廃すれば、一億七千万ドル可能の線が出ているのであります。適切なる方策をもつていたしますれば、さらにはるかに多額の取引もまた必ずしも不可能ではありません。この事実を無視して、石橋通産相があまり期待できないと言われるのは何ゆえであるか。おそらく対米関係を考慮し、アメリカに気がねをして国民に真実を語らないのでありましよう。(拍手)私は、この事実を見て、選挙前ですらこの通りであるから、選挙後にもし鳩山内閣が続くようなことがありとすれば、政府の態度がどのように後退するか危惧にたえないのであります。(拍手)鳩山内閣は、吉田内閣の対米一辺倒外交を変更せずに、アメリカとの関係をさらに緊密に保ちつつ、他方において中国貿易を増大させ、対ソ国交の調整を行うというのであるが、国民は、この鳩山・重光外交に対して、今やひとしくその矛盾を知り、その不安を感じつつあるのであります。(拍手)政府の計画によりますると、六年後には輸出は二十三億ドルに上り、第一年度に比し約七、八億ドルの増加を見込んでおるのであるが、この七、八億ドルの増加市場を一体どこに求めようとするのでありまするか。現に過剰生産の欧米地域にそれを求め得ざることは明らかであり、結局主たる増加先を中国及び東南アジア諸国に求むるにあらざれば、この計画は成り立つべくもないのであります。もしそうであるとするならば、中国貿易軽視の石橋発言と全く食い違うのでありますし、民主党の方針や政府の外交方針をもつてしては、この総合経済計画は実現不可能であると言わなければなりません。(拍手)石橋通産相及び経済審議庁長官は、この点に関していかにお考えになりますか、承わりたい。
 次に、同じ六カ年計画の前提条件によりますると、東南アジア貿易については、米国の東南アジア援助計画は進み、それだから日本の東南アジア貿易も拡大すると言つておるのであります。これは明らかにアメリカのMSA政策のコロンボ計画食い込みに便乗したものの考え方であります。ところが、東南アジアの情勢は、御承知のごとく、そのようなものではありません。すなわち、さきにインド、ビルマ、インドネシア等の主要国は、いずれもアメリカのMSA政策を警戒して、これを拒否しているのであります。そして中国と平和共存の五原則協定を宣言しているのであります。また他方、英米はこの地域において相当深刻なる経済対立を持つておるのでございます。かかる情勢の中に、MSA政策の尖兵のごとき日本が友好的な進出を実現できるということは思いも寄らざるところであります。(拍手)従いましてもし韓国とか台湾、フィリピン、タイ等、アメリカの純衛星国だけを相手とするにあらずして、自主中立のインド、インドネシア、ビルマ、その他の主たるコロンボ諸国と提携して本格的な東南アジア貿易を行わんとするならば、軍事的なMSA政策とはきっぱり訣別いたしまして、たとえば、国連のエカフェ機構を通じて資金の調達をはかるなり、あるいは親英的なる立場においてコロンボ計画に協力するなり、必然的に中立的方策をとらねばならないということになるのであります。(拍手)かくて、アメリカの立場からアジアの立場へ転じてこそ、ここにアジア開発計画の平和的、長期的な一環に参画して、これらの諸国と緊密なる連携が可能となり、東南アジアは初めて日本貿易拡大の相手地域となり得るのであります。(拍手)すなわち、ここに日本外交の一大転換が必然的に要請されるのでありまするが、鳩山首相にこの事実の認識と外交転換の決意があるかどうかを伺いたいのであります。(拍手)また、この点、六カ年計画の責任者である高碕経審長官のお考えをも承わりたいのであります。次に、政府は、施政方針の重点を、住宅建設、失業対策等の社会保障対策、中小企業及び貿易の振興と、さらには減税等に置くと宣伝しておられるが、今までに経済審議庁や大蔵省等よじ発表された三十年度の経済の見通しや資金計画要綱等から判断いたしまして、現に政府より誇示せられているそれらの諸方針というものはほとんど実現性がなく、単なる選挙目当てのから宣伝になり終る可能性がすこぶる多いのであります。(拍手)このことも、今や天下周知の事実とならんとしておるのであります。すなわち、第一番に、三十年度の経済見通しにおいて、経済審議庁の見るところでは、国民所得は二十九年度の六兆一千億とほぼ同様であり、入口は約百万の増加となつているのであります。従いまして、一人当り所得は昨年度よりも下回るのではないかと見られておるのであります。この点より判断いたしまして、予算規模は、自然増収どころか、自然減収の傾向にあるのであります。その上五百億円の減税を行うというのでありまするから、歳入はいよいよもつて減少し、しかも歳出は、政府が誇称するところの諸政策を織り込まないでも、なおかつ増加を免れない傾向にあるのであります。その第一は防衛庁費で、政府は、防衛分担金の減額をアメリカ側に求めて、防衛費全体として増加せしめないことく処理しようとしておるようでありまするが、昨年の実績から見まして、これはほとんど不可能であり、従つて、この経費の増額は免れないところで参ります。第二に、平和回復善後処理費は、本年より、御承知のごとく、対ビル賠償引き当て、ガリオア利払いの引き当てその他の計上によりまして、これまた増額を見るのであります。失業対策費も、政府のデフレ政策継続により必然的に増額を要することは明らかで、おそらく四百億円近くに達するでありましよう。
 以上のごとく、歳入の減少傾向と逆に歳出は増加傾向を有するのであるが、政府は、この対策として、わずかに調弁価額の五%引き下げ、物件費の節約、補助金の整理等をあけているにすぎません。物件費の節約のごときは、前内閣においてもしばしばこれを行なつて、今やほとんど限界に来ているのであります。すなわち、たとえば文部省の施設のごときは、冬季暖房用の石炭もない、実験研究用の資材を購入する財源もないというありさまで、もはや、つとに限界に参つておることは明らかであります。かくて当然増額を要する諸支出に対してさえすでに財源難を免れない現実を無視して政府は、住宅対策の飛躍的拡充を唱えたり、社会保障の強化、中小企業対策の充実を約束するのみならず、さらに五百億の減税をも行おうというのであります。わが党は、これらの政策の必要性を認め、かつ、ぜひともこれを実現したいと思うものでありまするが、その財源といたしまして、わが党といたしましては軍事費を削減してこれに充てんとするもので、その他に一兆円のワク内でその財源を求むることは不可能であります。(拍手)政府の財源としてあげている調弁価額の引き下げその他の方法をもつて捻出し得るものは、政府側の見るところにおいてもわずかに三百億程度であるから、結局において、いろいろ理想的な政策を掲げて大げさに宣伝しているけれども、その裏づけたる財源はかくのごとく貧弱なるものでありまして、政府の誇称する諸政策の限度と限界は、真に微々たる、また局限せられたものにすぎないことは明らかなるところであります。すなわち、政府はその言うところはあまりにも大きく、その行い得るところはあまりにも微々たるものにすぎないというのが鳩山内閣の諸政策の実体でございます。(拍手)
 大蔵大臣は来年度四十二万戸の住宅建設を約束されたが、聞くところによれば、これがために予定されている増加支出は、昨年度の住宅対策費に比して僅々四十億円にすぎないというのであります。一萬田大蔵大臣がかねてから防衛費六百億円を削減してこれを住宅建設に充てるという説を唱えられたのは有名なるところでありまするが、今はわずかに四十億の金額であります。そのような金額をもつてして、飛躍的な住宅政策の拡充と言えるでありましようか。(拍手)住宅対策の詳細とその財源をこの際明示してもらいたいと思うのであります。
 一体、政府は予算大綱を発表いたしましたが、数字のない予算大綱などというものは全くナンセンスであります。(拍手)
    〔副議長退席、議長着席〕
これは、おそらく、数字を示せば、そのなし得る限度のあまりにも微々たるものである事実が暴露するから、これを避けたのではないか。大蔵大臣の明確なお答えを望むものであります。
 以上私の所論によりまして明らかになつたことは、政府は何ほどの財源をも持たずして、あたかも何事をもなし得ざるなしというがごとき欺瞞的な宣伝を事としておられるのであります。これに対して鳩山首相の責任はきわめて重大なりと私は考えるのであります。(拍手)
 繰り返して申しまするが、その掲げる政策はきわめて誇張されているが、そのなし得るところはきわめて微々たるものであつて、必然的にその結果は国民の政府に対する不信となつて現わるることはよいとして、政治そのものに対する信用を失墜する結果となるのでありましよう。(拍手)民主政治の確立を唱えておられる鳩山首相は、かかる政治的欺瞞行為に対して深くその責任を感じらるべきであります。私はこの点に関して首相の良心的な御答弁を求めて私の質問を終るものであります。(拍手)

発言情報

speech_id: 102105254X00819550123_029

発言者: 松原喜之次

speaker_id: 17397

日付: 1955-01-23

院: 衆議院

会議名: 本会議